携帯怪獣地方 ジョウト   作:あたらんて

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美女ジムリーダーと野生の伝説

 

相も変わらずジムリーダーと接触する手段はジム戦のみである。

ジムトレーナーを跳ね除け、カスミと対峙する。それにしてもこのジムは水着の子ばかりで眼福だ。

 

 

「ますたー。どこ見てるんですか?次はジムリーダーですよ!」

 

 

おっと。みずタイプのジムリーダー、カスミ。ミュウツーについて聞くための挑戦だったが、ジム戦も修行になる。しっかりと戦おう。

 

 

「やっと来たわね!えーと、ジョウトのバッジを4つだったかしら?ヤナギさんを倒すなんて中々やるじゃない。あの人は私がジムリーダーになるずっと前からジムリーダーだった人でタイプも近いから色々とお世話になってたのよ」

 

 

今回は手持ちを強くする要請はしていない。お願いを聞いてもらうなら複数より一つの方が良いだろうというわけだ。

 

 

「まあさっきまでの戦いを見るにポケモンも相当強いし指示もちゃんとしてるからこの手持ちじゃ敵わないでしょうけど…全力で行くわよ!」

 

 

当然こちらも全力で立ち向かう。ミュウツーのことを聞くならある程度の実力を見せることは必要だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー…わかってたけどやっぱりやるわね!はい、ブルーバッジ。あんたなら今年のポケモンリーグに出てくるわね。そこで当たるのを楽しみにしてるわ」

 

 

ポケモンリーグ…正直ジムバッジは修行として行っているため出る気はあまり無かったのだが、ここまでレベルの高いトレーナーたちが集まるというのなら見てみたい。ミカンちゃんの応援でもしていようか。

 

 

「ありがとう。それで、結構重要な話をしたいんだが」

 

「人に聞かれたくない話?それなら奥に来なさい」

 

 

カスミに連れられてジムの奥へ入る。

奥はジムリーダーの仕事場のような感じで、結構乱雑な状態の部屋だったが用意された椅子に座り、本題を切り出す。

 

 

「ミュウツーのことについてなんだが」

 

「…!アンタ、その名前をどこで知ったの」

 

 

カスミの表情が一気に真剣になる。

 

 

「ナツメから教えてもらってな…俺はポケモンの研究とかもやってるんだが、話を聞きたくて来たんだ。勿論、捕獲しに行くつもりなんて全く無いし誰にも情報は漏らしていない」

 

「そういうことね」

 

 

勿論、嘘である。ナツメは俺に情報源なんて聞いてこないし、カスミもジムリーダーの名前が出れば信用せざるを得ないためどうとでも誤魔化せる。ポケモンの研究はミュウに隠れて確かにやっているが、カスミの想像しているようなものでは無い。捕獲しに行くつもりは全く無いわけ無い。情報を漏らさないのは多分本当だ。

 

 

「それなら話してあげる。私がミュウツーに出会ったことよね?あれは大分前のこと。ロケット団が壊滅した後のことよ」

 

 

そう言って、カスミはお茶を淹れながら話し始めた。

 

 

「もうその時はカツラとナツメによってミュウツーがハナダの洞窟にいることはカントーのジムリーダー皆がわかっていたわ。

私も当然ハナダシティのジムリーダーとして洞窟の立ち入り規制をより一層強化して見張るようにしていたの」

 

 

カップに注がれたお茶を受け取る。

 

 

「これ、エリカからもらったの。タマムシのジムリーダーね。すごい美味しいけど私お茶は普段飲まないから。ああそれで、話を続けるわね。

何故かしら、禁止されていることをやりたがるのが人なのよ。とあるエリートトレーナーがどこかからか強いポケモンがいるという噂を聞きつけて見張りの協会員を倒して侵入してしまったの。

その話を聞いて私は急いで洞窟に入って、探索を始めたわ。中は相当暗くって、スターミーがいなかったら歩くことすらままならなかったでしょうね。ほら、この子よ。私の自慢のポケモンなの。この子がいればアンタにも負けないわよ」

 

 

そう言ってカスミは当時を思い出すかのように傍にいるスターミーを撫でる。

 

 

「ああ、それで洞窟ね。久しぶりとはいえ昔はその洞窟に入り浸っていたから最奥部に辿り着くのにそう時間はかからなかったわ。おかげで、辿り着いた時はまだトレーナーは生きていたわね。周囲には恐らく彼のポケモンも横たわっていたけど、彼も一応挑む自信を持つ程度の実力を持っていたってことでしょうね。全員瀕死でまだ息を保っていたわ。

それで、恐らくミュウツーはトレーナーにトドメを刺すところだったんでしょうけど、私を見てトレーナーを離したの。新手に警戒したんでしょうね。

その時、ミュウツーが私に話しかけてきたの。ものすごく驚いたわ。多分あれが念話ってやつね」

 

 

なるほど。少なくともミュウツーは会話できる程の知能を有しているというわけだ。

 

 

「『何故貴様らは私を付け狙う!』…だったかしら。きっと今までその力を求めるやつらに追われてたのね。私それで可哀想になっちゃって。闘う意思が無いことを示すためにボールを全部地面に置いたのよ。その時のミュウツーの表情ったら…私ちょっと笑っちゃったわ」

 

 

恐らくミュウツーが言っているのはロケット団のことだろう。この世界のミュウツーは恐らく復讐などは考えていない。コピーやクローンのことについても気にしておらず、ただただ安寧を求めているのだろう。

 

 

「そしたら『何をしている!?何故笑っていられる!』…って。私が『敵意は無いわ。仲良くしましょう』って言ったの。そうしたらようやくあっちも敵意をなくしてくれたみたいで。

エリートトレーナーも私も帰してくれたの。

それから何回も会いに行ったりもして、結構仲良くできてる自信があるのよ?今じゃ週に1回は会ってるもの。あの子は全然仲がいいって認めてくれないけど。

…こんなものね。ごめんなさい、研究に役立つような話はできなかったかしら」

 

「いやいや、とっても参考になった。ありがとう、このお礼はまたいつかさせてもらう」

 

 

参考にはなった。古今東西、心を開き始めた怪物には苦難が襲い掛かるべしと相場が決まっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦は決まった。

 

 

「ミュウ。これから3時間ぐらいかけてこのハナダ周辺のポケモンの分布を調べてきてくれ。調べられる限りで良い」

 

「ますたーはどうされるんですか?」

 

「ミュウツーの対策を行う。なに、危険なことはしないさ。危なくなったらお前を呼ぶ」

 

「そうですか。それならいいですけど…。じゃあ、行ってきますね」

 

 

そう言うとミュウはどこかへ飛んで行った。なら、作戦開始だ。ミュウツーへの対策はとっくに出来ている。これでもあの家での地獄を耐え抜いたのだ。そこらの魔術師とは出来が違う。

俺は、魔術を使い一人ハナダの洞窟へと入り込む。

 

 

道中に出会うポケモンは蹴散らして行く。肉体の強化など専門中の専門であるし、この世界に来てから体に魔力が漲るようになっている。この程度のポケモンなら自分のみで倒せる。

やがて、実力の差を分かったのか襲ってくるポケモンの数も一気に数を減らした。

ゆっくりと探索を続け、ようやく最奥部へと辿り着く。そこには伝説のポケモン、最強の一角であるミュウツーが存在した。

 

 

「何者だ」

 

 

ああ、その声の重圧は確かに凄まじいものがあるがアルセウス、ホウオウ、そして何より常日頃からミュウの声を聴いている俺にとってはまるで意味が無い。

 

 

「やあ、被検体五号。君を迎えに来たんだ」

 

 

俺がその名を口にすると同時、右腕が弾け飛ぶ。

 

 

「今すぐ引き返すが良い。さもなくば次はその首から上が消し飛ぶぞ」

 

 

…思っていたより優しい対応だ。これもカスミとの交流のおかげだろう。

 

 

「嫌だなあ、勘違いしてないか?俺はロケット団じゃないよ。痛いじゃないか」

 

 

そう言って右腕を拾おうとすると体の動きが止められる。

 

 

「ならば何者だ?その名を知っているという時点で奴等と関わりがあるのは事実だろう」

 

「ああ、単純な話だよ。俺はロケット団のアジトからデータを抜き取って君の存在を知っただけの話さ。いや何、君にとっても悪くない話を持って来たんだ。聞いてくれるかい?」

 

「黙れ。今すぐ引き返せと言ったはずだ」

 

 

急に金縛りが解かれる。しかし、随分と警戒心が強い。ただ、生まれてから数年のまだまだ赤ん坊だ。話さえ通じるならどうとでもなる。

 

 

「へえ~?良いのかい、君は随分とカスミと仲が良いようだけど」

 

 

その名前を出すと同時に、ミュウツーから放たれるプレッシャーが爆発的に増す。

 

 

「貴様、どういうことだ…!!」

 

「だから、俺はただ話を聞いてくれとしか言ってないんだってば。わかる?君」

 

 

ああ、簡単だ。適当なハッタリをかましているだけで大人しくなる。ミュウツーは世界のことを何もわかってない。その力があればそれこそ何でもできるだろうに、初めて優しくしてくれた存在を失う事への恐怖が、全ての判断を狂わせる。

生まれてから取ったコミュニケーションなど無に等しい。実に、簡単だ。

 

 

「君さあ、覚えてるでしょ?昔何回も何回も人間が君を追っかけまわしてきたこと。最近無いから大丈夫だと思ってた?そんなことはない。人間は力への欲求は一際凄まじいものがある。

君も薄々気づいてたんじゃないの?こんな日常が続くはずないって。あ、それとも誰も攻めて来なくって週に一回カスミと話すなんていう幸せな日常が一生続くと思ってた?」

 

「…!」

 

 

段々とミュウツーは俺の話に引き込まれていく。間違っている。これからもその日常が続いて欲しいと願うなら今すぐ俺を殺すべきだ。その力はミュウツーにはある。

 

 

「ロケット団は残党すらも倒されて、本当に苦しい状況に陥っている。そんな中自分たちが作り出した最強のポケモンを放っておくと思うかい?どれだけ犠牲者が出ても君のことを追い続ける。

君は大丈夫だろう。でも、やがてロケット団はカスミに目をつける」

 

「…カスミは、私が守る!それで話は終わりだ!!」

 

「本当に?」

 

「…!!」

 

 

ああ、本当に幼い。こちらの言葉を一切疑わずこちらが作った前提の中で考え続けてくれる。

 

 

「本当に、君が守れるとでも?この洞窟から出られない君が?出たらなおさら狙われる君が?」

 

「ならば、どうしろと言うのだ…!」

 

力を与えよう

 

 

心に深く、入り込むように言葉をかける。

 

 

「…!」

 

「力を、更なる力を。『最強』では足りない。『絶対』の力が必要なんだ。そうすれば誰も君に近寄らない。誰も君を傷つけない。君は誰も傷つけなくなる」

 

 

ミュウツナイトYを()()で取り出す。

 

 

「この石を手に取れ。そうすれば契約成立だ。君は『絶対』の力を手に入れる代わりに、俺のお願いを数回聞いてくれれば良い。ただ、それだけだ。

何、大したお願いはしない。カスミには絶対に迷惑はかからないし、その力を振るえばすぐに終わるようなものさ」

 

 

俺の手を取るのか、否か。結果はわかっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかしいわね、いつもは私が洞窟に入ったらすぐにやってくるのに…。

おーい!ミュウツー!いないのー!?……留守かしら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ますたー!全部調べて来ましたよー!何に使うんですか?」

 

「ああ、もう大丈夫だよ。思っていたより簡単だったんだ。予備の命も持って来ていたんだけど、無駄になっちゃったね」

 

 

ああ。実に、簡単だった。

 

 

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