無個性で錬金術師な少年のヒーロアカデミア 作:等価交換
原作:僕のヒーローアカデミア
タグ:残酷な描写 アンチ・ヘイト クロスオーバー 鋼の錬金術師 緑谷出久 出久強化 爆豪ファンはブラウザバックを推奨 初投稿
※爆豪への当たりが強いと思われます。
※初投稿につき、ぐっだぐだ
初投稿で爆豪への当たりがどれぐらいの程度でアンチ・ヘイトになるかわからなかったのでとりあえずつけてます。他にも追加した方が良いタグとかあったら教えてほしいです。
基本的に出久視点です。
「師匠、今日は何教えてくれるんですか?」
もう十三歳だというのに弟子は興味に目を輝かせて俺に問うてきた。
「弟子、もうお前に教えることは無い。もうお前は立派な『錬金術師』だ」
弟子と出会った、十年前が鮮明に蘇る。
道端で体を丸くして少年が泣いていた。
綺麗な緑色をした髪だった。
『どうしたんだ?』
何を考えたのか、俺は声を掛けていた。
少年は驚いたように俺を見つめて、ポツリと呟いた。
『ぼく、むこせーなの』
その言葉御聞いて俺の身体はその場に打ち付けられように動かなくなった。
俺と同じだ。
『むこせーなだけで、みんないじめてくる』
俺の手を無意識に伸びて少年の頭を撫でていた。
『俺のとこで修行するか?』
『…しゅぎょーしたらひーろーになれる?』
『あぁ、お前はヒーローになれる。たとえ無個性だったとしても、な』
先ほどの涙はどこへやら、満面の笑みで俺の手を掴んだ。
『俺のすべてをお前に叩き込む、半端な覚悟じゃ耐えられないぞ』
脅すように低い声で告げるが少年は笑顔のまま大丈夫と答える。
『ぼく、緑谷出久。あなたのなまえは?』
『俺に名乗る名なんてねぇがそうだな…鋼の錬金術師とでも名乗っておこう』
それから数年間かけ、俺は少年にすべてを叩き込んだ。
「ぜんぜんですよ僕なんて!師匠と違って錬金陣を描かないと発動できないんですから」
「それで十分なんだよ、普通は。それに、俺はもう長くないんだ」
「え!?」
驚愕の表情を浮かべる弟子に一枚の紙切れを弟子に渡す。
「これは…?」
「俺がいなくなったらやるメニュー表だ。頑張れ…よ」
「師匠!?」
俺は椅子からずり落ち、視界が徐々に暗くなって息がするのが辛くなっていく。
「心臓の病を患っててなぁ…かかりつけにも長くないと言われてて…」
「喋らないでください!すぐに救急車が来てくれますから!」
もう救急車を呼んだのか、判断が速くなったな…。
「さすがは、俺の見込んだ弟子だ」
少し笑みを浮かべ声を振り絞って言った瞬間、意識がぷつりと途切れた。
◆
無個性の僕に錬金術という希望を与えてくれた師匠が目の前で息絶えて一年の月日が経ち、僕は中学三年生に。
日課になった師匠の墓参りを行き道で済ませ、中学までの道を歩いていると怒号が聞こえた。
敵かな?
少し気になって僕は怒号の聞こえた方に体を向けていた。
行われていたのは敵のヒーローの交戦。敵は怪物化の個性のようだ。こんな市街地で使っても目立って捕まるだけだろうに。対してヒーローは人気急上昇中の若手実力派の「シンリンカムイ」。
シンリンカムイが小さく呟いた瞬間僕はヒーローの勝利を確信し、今の時間を取り返すように早足で歩き始めた。
「えー、お前らもついに三年ということで!!本格的に将来を考えていく時期だ!」
持っていたプリントを配るのかと思いきや空中に放る。
「だいだいヒーロー科志望だよね~」
担任がそう言った瞬間クラスメイトが個性を発動させる。
室内で周りの被害を考えずに発動させるのはどうかとは思う。口に出すわけにもいかず、僕はただひたすらに自身の机に積み上げた分厚い本を読む。
個性使用を注意する担任に反抗するように一人のクラスメイトが声を上げる。
「せんせえーー‘‘皆‘‘とか一緒くたにすんなよ!俺はこんな‘‘没個性‘‘共と仲良く底辺なんざ行かねーよ」
爆豪勝己、僕を一時期いじめていた張本人。昔のことだからあまり気にしていない。恵まれた派手な強個性、頭も働くという誰もが羨む才能。
「あー確か、爆豪は『雄英』志望だったな」
雄英高、国立高校で偏差値は軽く70を超え、倍率も毎年あり得ないほど高い。入学できれば大半の生徒はヒーローとして名を馳せる。例を挙げるとするなればトップヒーロー『オールマイト』や№2ヒーロー『エンデヴァー』など。
机の上に上がり、自分の未来を堂々語るかっちゃんに担任がいらないことを告げる僕、緑谷出久も雄英を目指していることを。
全員が僕の方を向き、クスクスと笑い声を上げる。
「雄英に行く~!?テメェがみたいな‘‘没個性‘‘どころか‘‘無個性‘‘のお前が行けるとでも思ってんのかァ!?」
「…今は授業中だよ、周りに迷惑だよ」
「っけ!」
かっちゃんを席に戻し、授業が再開した。
放課後、本をまとめ終わり教室を出ようとする僕の前にかっちゃんが立ちはだかった。
「何?僕忙しいから」
避けて教室を出ようとする僕の肩を押し戻すとリュックを奪い、地面にばらまく。
「この本、たいそう大事にしてるよなぁ」
一冊拾い上げて僕の目の前で爆発させる。
殴りたくなる気持ちをグッと抑えて続く言葉を待つ。
「錬金術ゥ?お前のそれは個性じゃないってか、あぁ!?個性持ちってのは嘘か!?」
「関係ないだろ、…それ以上本を爆破するなら…たとえかっちゃんでも容赦しない」
キッと睨みつけ本を拾ってリュックに放り込み、かっちゃんが持っていた本を取り返す。
「ッチ!」
僕は舌打ちするかっちゃんを無視して僕は教室を出て、帰路に着いた僕は相も変わらず本を開いていた。
「この理論は…駄目だな‥」
本を閉じてリュックに戻し、また新しく本を出す。
「Mサイズの、隠れミノ」
後ろから声がしてどろりとした液が触れる、咄嗟に僕は振り返って蹴りを入れる。
「うがっ!」
反撃されると思っていなかったのか無防備だった急所に直撃したようだ、ご愁傷様。
どうしよう、動きを止める物なんて持ってないし、地面に固定しても相手は見た目流動系だし逃げられる…。襲い掛かろうとしてきたやつを目の前に唸っていると声を掛けられる。
「これは君がやったのかな?」
「あ、はい。…もしかして駄目なやつでしたか…?」
声のした方に振り向きながら言って、声の主を瞳でとらえた瞬間僕は石造の如く動かなくなる。代わりに大声が口から漏れる。
「お、オールマイト!?」
「意図的にではないだろうが敵逮捕のご協力感謝するよ、少年!」
「い、いえ、お役に立ててよかったですぅ!」
声が裏返ってしまう。
「お礼はサインということで許してくれ少年、ではまたどこかで!」
いつの間にかサインが書かれていて、僕は咄嗟にオールマイトのズボンを掴む。
「あ、貴方に聞きたいことが――――うぇ?…うわぁぁぁ!」
景色は突然変わり、雲一つない空が視界を染め上げた。オールマイトが空に飛びあがったのだ。
我ながら間抜けな声ではあると思うがジェットコースーターもまともに乗れないのだ、仕方ない。
「な、少年!?」
「あ、貴方に少し聞きたい、ことがぁぁぁ!すみまぁぁせぇぇん!」
「わかった、わかったから口と目を閉じるんだ!」
オールマイトはどこかのビルの屋上に着地して僕を降ろす。
「で、何かな?少年」
「僕は、‘‘無個性‘‘なんです。無個性でもあなたのような立派なヒーロになれますか!?…ぉぉぉおおオールマイト――!?」
地面に向けていた死線をオールマイトに向ける。僕は大声で叫んで驚く。
先ほどの筋肉質な体からは想像できない骸骨のようなオールマイトが腹を押さえて立っていたからだ。
「プールサイドで腹筋、力み続けている人がいるだろう、あれさ!」
「う、うそだ!」
「この姿を見られたついでだ少年、何があってもネットに書き込むな?
――五年前、敵の襲撃で私は傷を負った」
服をまくり上げ、折ったであろう傷の跡を見せる。
その傷跡のあまりの異端さに悲鳴を上げる。
「呼吸器半壊、胃袋全摘。幾度の手術と後遺症で憔悴してしまってね。私のヒーローとしての活動限界は今や一日約三時間程なんだ」
僕は絶句して固まる、それ以外に取れる行動が無かった。かける言葉など思いつかなかった。
「プロはいつだって命懸けプロはいつだって命懸け…個性がなくとも成り立つとはとてもじゃないが口に出来ない…が、君は諦める気など毛頭なさそうだ」
「師匠との約束も、ありますから!」
僕がそう笑みを浮かべて答えると首を傾げた。
「し、師匠って言うのは僕に『錬金術』を教えてくれた人というかなんというか…」
「『錬金術』!?」
オールマイトは声を荒らげて僕の両肩を掴んだ。
「君は『錬金術』が使えるのか!?」
「え、え?つ、使えますけど…なにか…?」
「い、いや。なにもない、――私はもう行くとするよ」
気持ちを紛らわせるように階段をいそいそと降りていくオールマイトを見送り、僕は少し時間を置いて階段を降り始めた。
「…お腹空いたしなんか買いに行こう」
帰り道、ふと思い立ち僕はコンビニに向かって歩き始めた。
コンビニ近くの商店街に近づいていくにつれ、何かが爆発する音が幾度となく聞こえてくる。疑問を抱きながら歩いていくと音と重なって焦げ付いた匂いが流れてきた。
火事でも起きたのだろうか?口と鼻をハンカチで押さえながら歩く。
人混みをかき分けて先頭に行くと、今起こっていることがよく分かった。
僕を襲った敵が一般市民を取り込もうとしていたのだ。
空中でオールマイトとごたごたしたときに‥‥?
その一般市民の個性には少し見覚えがあった、見覚えしかなかった。
そして助けを求めるように、液体から必死に顔を出し―――。
その瞬間僕は走り出していた。
「バカやろ――!止まれ!止まれぇ!」
ヒーローの制止を振り切って所々燃えてる商店街を突き進んでいく。
「あのガキ!?」
錬金術を使うにはどうしても錬金陣を描く時間を要する、その間にやられては元も子もない。ので僕は丸暗記したヒーローノートの記憶を探る。
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少し躊躇いそうになるがリュックを敵の顔めがけて放り投げる。
運よく目に直撃し、敵が怯んだところを僕は取り込まれそうだった人――かっちゃんに呼びかける。
「かっちゃん!」
「なんで、テメェが…」
「わかんない!けど、足がっ!」
色々理屈はあったけどあの時は。
「君が、助けを求める顔してた」
「や……めろ…!!」
あと少しで手が届くところで僕は手に攫われそうになる―――寸前、誰かが僕とかっちゃんの腕を掴む。
「君を諭しておいて……己が実践しないなんて!!!プロはいつだって命懸け!!!!」
オールマイトが笑顔を僕たち二人に見せて、低く叫ぶ。
DETROIT SMASH!!!
ぶわっ、身体が飛びそうになるほどの風が体を襲う。
風が収まり、地面に着地する頃には僕の意識は飛んでいた。
「君が危険を冒す必要は―――!」
意識が戻った後、案の定僕は怒られた。かっちゃんはヒーローたちに称賛されていた。サイドキックにも誘われていた、本当に尊敬できる。
僕は気持ちを切り替えて、また帰路についた。コンビニに行って何か買おうと思ったけれどマスコミやらなんやらが邪魔で行けそうになかったので諦めた。
リュックの中身には被害が無かったので本当によかった。もし被害が出ていたら僕は三日ほど家に籠ったことだろう。
勉強も始めないといけないし、メニューもこなさないといけないし‥‥。
「私が来たぁ!!」
そう言って角から現れたのはオールマイトだった。軽く血を吹いてあの骸骨のような姿に変わる。
「少年、私は君に礼と訂正、それと提案に来たんだ。君が居なければ、君の身の上を聞いていなければ、口先だけのニセ筋となるところだった!ありがとう!!」
「そんな、‘‘無個性‘‘の僕がでしゃばって邪魔してしまったし…」
「そうさ!私はあの時のだれでもない、‘‘無個性‘‘の君だったからこそ!!私は動かされた!!」
僕は師匠と出会ったときのような胸の高鳴りを感じた。
「トップヒーローは学生時代から逸話を残している……彼らの多くが、話をこう結ぶ。『考えるより先に体が動いていた!』と」
もういない師匠の姿がオールマイトと重なる。
「君もそうだったんだろう!?」
「…ゔん!!」
個性検査の日、お母さんが言ってくれなかった言葉。
出会った日に師匠が僕に言ってくれた言葉、それを目の前の憧れのヒーローが。
「――君はヒーローになれる」
齢5歳にして諦め、師匠がきっかけでもう一度歩み始めた道。
その道は、否定されることもあったけれど二人の最高のヒーローに認められたんだ。
これは僕の、平和をつくり上げるまでの少し長い話。