ハッピーシュガーソルトライフ   作:ロータスlotes

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ハーメルン初投稿&SSは初めてになります。
至らない点ありましたら、できれば砂糖のように甘くご教授いただければ幸いです。


第一章 砂糖少女はしおを食む
第一話 あの日


燃え盛る炎が眼下に広がっていた。

 

その中に私、松坂さとうは居た。

 

一人・・・・・・ではない。

 

「あのねさとちゃん」

「うん」

 

そう言って私は、しおちゃんをぎゅぅぅっと抱きしめる。

 

キラキラで、ポカポカで、フワフワで。

 

そんな華奢な天使の体に触れているだけで、空虚だった瓶にどんどん甘い甘いお菓子が満たされていく。

 

私の大切なシュガーエンジェル。

 

「えっへへ、さとちゃん苦しよー」なんて言われても離さない。

 

そうしないと今にも舞い散る火の粉と共に風に舞って、どこかに飛んで行ってしまうんじゃないかと思ってしまって。

 

 

「私、お母さんに捨てられたあの日。一回死んじゃってたんだと思う」

 

耳元で寂しそうに、天使が囁く。

 

「でもね、さとちゃんのぬくもりでまた生まれたの!」

 

耳元で嬉しそうに、しおちゃんが叫ぶ。

 

甘い、とても甘い。

 

空虚だった瓶が、シュガーエンジェルの愛で溢れかえる。

 

魂が震え、喉を通って、私は思わず叫んでいた。

 

「私もだよ、しおちゃん!!私もなの!!」

 

思いの丈を言葉に出す。

それでも出したりないと、

 

「なんにもなかった空っぽの私を、しおちゃんが生かしてくれたの!」

 

涙として、雫となって溢れ出ていく。

 

 

「さとちゃん・・・・・・」

「しおちゃん・・・・・・」

 

キラキラした星空のようなしおちゃんの瞳は、笑いながら、お天気雨を降らせている。

 

ああ、邪魔だな。涙で視界がにじむ。するとしおちゃんまで滲んでしまう。

 

そう思っているのに拭っても拭っても涙が溢れてしまう。

 

拾っても拾っても失くなってしまう。しおちゃんから貰った愛が溢れていく、それすらも私は取りこぼしたないというのに、

 

「最初からそうだったね、私たち」

 

しおちゃんが大丈夫だよっと頭を撫でてくれる。

 

それだけで失くなってしまった分以上の愛が溢れてくる。

 

しおちゃんさえいればいい。

 

出来れば、ずっとこうしていたい。

 

 

だけど、

 

ぼわっと火の手が上がる。

 

 

燃え上がった愛の炎なんていうけれど、これは本物の炎だ。

 

 

私もしおちゃんも、

 

今、お互いが確かめあった愛すらも灰にしてしまう。

 

重なる手に当たる金属の感触。

 

指輪が光る。

 

そう愛の欠片であるこの指輪さえ、ひとつ残らず飲み込んでいくのだろう。

 

こいつには、クズも、良心も、思いも、道徳も、かけがえのない宝物さえも関係ない。

 

無秩序で、無作為で、無遠慮で、

 

 

でも、だからこそ平等で、

 

周りにあるものを片っ端から燃やし尽くしていく。

 

 

それに、特別はない。

 

そして、私はそれが何を知っている。

シュガーエンジェル、しおちゃんを持ってしてもまだ浄化しきれない私に残る残滓。

 

 

その(ノロイ)は、叔母さんの愛そのものようで。

 

頭の中にあの声がリフレインする。

 

「これこそが真実の愛なんだよ」

 

 

周りも自分も関係ない、あまねくすべてを受け入れて、身を亡ぼすほどの燃え盛るものこそが、愛なんだよと、それが囁きながら、チロリチロリ、と舌なめずりしながら足元に近づいてくる。

 

 

独りよがりな(アイ)がこちらになんてお構いなく近づいてくる。

 

恐怖は、不思議となかった。

 

なぜなら、

 

「しがふたりを分かつまで」

 

しおちゃんが私の手を握っていてくれるから、それだけで幻影の声が消える。

 

「・・・・・・わかつかな?」

 

ぽろりぽろりと、雫と共に声が出る。

 

「死は私たちを、引き離すことができるかな?」

 

 

しおちゃんは黙って私の言葉に耳を傾けてくれる。

いつもそしてくれていたように、私を待ってくれている。

 

「こんなにも互いを愛おしく思ってるのに」

 

全てを聞き終えて、しおちゃんがこちらを見上げる。

 

まっすぐで、キラキラな、星空みたいに綺麗な瞳。

 

「私やっぱりさとちゃんと一緒にいるときが一番幸せ」

 

しおちゃんの思い、弾ける。溢れる。でも今度は私が聞く番だから、

今だけは、二人だけの世界だから。

 

何にも邪魔されない。されたくない。

 

「だから私、怖くないよ」

 

最後まで聞く。

 

しおちゃんが笑う。

雫が、頬を伝って、流れ星のように煌めいて落ちていく

 

「一緒に死のう、さとちゃん」

「うん!」

 

ゴォオオオオと突如怒り狂ったように炎が突如立ち上る。

 

全てを受け入れ、包み込みたいと、無遠慮に駄々をこねる赤子のように腕を振り回す。

 

 

――――トンッ

 

それに、私たちは、捕まらなかった。

 

 

夜空、苦い、とても苦い何かで覆われた空は残念ながら、星空は見えない。

 

闇色。

 

それでも、全てから、重力と共にしがらみからも解き放たれたような、開放感を感じる。

 

 

 

きらきら

 

 

ぽろぽろ

 

 

甘くて柔らかい、愛の色。

 

 

今、この瞬間だけは二人だけ、私たちの世界の色に包まれる。

 

しおちゃんと手と手を取り合う。体を重ねる。

 

ああ、私はなんて幸せなの。

 

そうこれこそが、私の求めていた―――

 

 

―――愛ってなに?

 

心が囁く。

 

そんな簡単なこと。

 

私はそれに答えようとする。

 

 

愛っていうのはね。

 

愛っていうのは、

 

温かいの?

 

甘いの?

 

キラキラしているの?

 

どれも間違ってない。しおちゃんが私にくれた愛。

 

それには違いない。

 

だけれども、

 

 

急速に世界が早くなる重力が再び私たちを包み込む。

 

抱き殺そうとしている。

 

あれっ、なんで?!

 

愛が導き出せない。

 

もう答えは出ているはずなのに。

 

まって、そんなのやだ。頭がぐるぐるする。

 

もっと時間が欲しい。

 

しおちゃんとの時間が、

 

「さとちゃんっ」

 

しおちゃんの笑顔。

 

ああっ、待って。お願いもう少しでいいから、

 

私ね、分かったよ。

 

分かった気がするの、愛っていうのはね―――

 

 

 

――――ぐしゃりっ

 

衝撃が走る。視界が赤く染まる。

 

体は動かない。何にも感じない。

 

 

し、お、ちゃ、ん・・・・・・ど、こ、にぃ・・・・・・

 

 

 

そして、私は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しおちゃん!!」

 

 

目を醒ました。

 

 

「うっぷ・・・・・・」

 

口の中が、苦い、苦くて苦くて溜まらなかった。

 

「はぁ~はぁ~はぁ~」

 

妙な既視感。

 

嫌な夢だ。悪夢と言っていい。

 

それはまるであの日、あったかもしれない、そんな気がして。

 

 

ぶるりと、体が震えた。

 

 

寒い。

 

体中から汗が吹き出す。いや、そんなことよりも、

 

 

「しおちゃん!!!」

 

私はそう叫んでしおちゃん、私のシュガーエンジェルはとあたりを弄るとすぐに見つかった。

 

 

指に伝わる確かな感触。

 

ぷにぷにで、ふわふわで、ぽかぽかな、柔らかなほっぺ。

 

あっあと安堵のため息が出る。

 

横で寝るしおちゃん。

 

ぎゅぅぅっと抱きしめる。

 

ここにいる。

 

私の隣にいる。

 

しおちゃんは何処にも行っていない。

 

 

だって、そうだよね、私たちはあの場から逃げおおせたのだから。

 

冷え切った体がだんだんとポカポカとしてくる、全身に愛が廻っていくのを感じる。

 

 

 

「むにゃ~、う~ん、さとちゃん」

 

ぽわーとしおちゃんが寝息のように声を上げる。

 

か、可愛いいいい。

 

寝ぼけていて、目がトロンしているしおちゃん、可愛い!

 

どうしよう、胸がドキドキする。

 

もっとぎゅぅぅっとぎゅぅぅっとしたい。

 

「どぉしたのー?」

 

とっ、いけない。

 

 

どうやら起こしてしまったようだ。

 

「ごめんね、しおちゃん。起こしちゃって。私ね、すごくすごく怖いを見っちゃったんだ」

「怖い夢・・・・・・」

「そう怖い夢。恐ろしい夢。あってはならない夢。だから私ね―――」

「―――さとちゃん、ぎゅぅぅっと」

「し、しおちゃん!!」

 

しおちゃんはそう言うと、全身で包み込むように、私の頭を抱きしめてきた。

 

 

 

 

「さとちゃん、それなら私が守ってあげる。もう怖い、夢、なんて見ないよ・・・・・・」

「し、しおちゃん・・・・・・」

 

 

温かい。

しおちゃんの、心臓の鼓動が聞こえる。

 

すると、耳元にしおちゃんのスヤスヤとした寝息が聞こえてきた。

 

どうやら、そのまままた寝付いてしまったようだ。

 

「ふっふふ」と幸せが口から洩れる。

 

ありがとう、しおちゃん。

 

 

しおちゃんに埋もれたまま、深呼吸。

 

しおちゃんの甘い香り。それに交じって磯の香りが漂ってきた。

 

耳を澄ませば、ザァーザァーという波の音が聞こえる。

 

 

 

ここには誰も私たちのことを知っている人はいない。

 

そう、ここは名も知れぬ寂れた港町。

 

それが確認出来て私は安心する。

 

 

もう今日は寝よう。

 

きっともう悪夢は見ないはずだから。

 

 

甘いお城にアクセントを加える磯、塩の香りが充満する。

 

始まった逃亡生活。

 

甘いことだけじゃない、きっと大変なこともあるだろう。

 

それでも私としおちゃんの二人ならどこでだってやっていけるはずだから。

 

おやすみ、私のハッピーシュガーソルトライフ




あらすじにも記載しましたが、9巻の指輪を取りに戻らずに逃げおおせた後の、

二人の逃亡生活の物語になります。

そのうち三人なる予定、ごにょごにょ。なため、原作改変する部分がありますので
ご容赦とお楽しみいただければ幸いです。
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