『闘牌インターハイ!』
毎日夜10時半からお送りしている、『闘牌インターハイ』!
いよいよ、大会も目前に迫ってきましたね。
2470校の頂点を決める戦いが、ついに始まろうとしています。
全国の高校麻雀ファンの方も、期待が高まってきた頃合いではないでしょうか。
さて、今日も毎週出場校にお邪魔している、『密着!インターハイ!』のコーナーから!
インターハイ目前の今日、密着してきた高校は。
『姫松高校』
優勝候補筆頭とも言われる、関西の強豪、姫松高校です。
去年個人戦3位の倉橋多恵選手を先鋒に据え、今年は、去年のインターハイを経験した3人が先鋒、中堅、大将を務める盤石のオーダー。
去年の悔しさを胸に、日々、努力を重ねる選手たちの様子に密着してまいりました。
今年の姫松高校は、その盤石のオーダーの中に、今年入学したばかりの1年生が名を連ねています。
今回はその1年生を中心に、取材をさせてもらいました。
悲願の全国制覇を目指す姫松高校。
それでは、どうぞ。
南大阪代表、姫松高校。
伝統的な麻雀の強豪校である姫松高校。
部員数は100人を超え、全員が切磋琢磨しあいながら麻雀に打ち込んでいます。
全国制覇の経験こそないものの、過去最高順位は去年の準優勝。
現在監督を務める善野一美監督が現役時代の時も、全国制覇の夢は叶えることができませんでした。
未だに手が届かない、全国制覇。
部室にも大きな文字で『全国制覇』と書かれているように、姫松高校にとって『全国制覇』は悲願なのでしょう。
今日も部室では、多くの部員が対局を行っているようです。
お、あそこにいるのは、1年生でレギュラーを勝ち取った上重選手です!
「こんにちは!あなたが、上重漫選手、ですよね?」
「え?……あ、あああ?!あ、はい!そうです!上重漫です!」
上重漫選手。
1年生ながらにして、強豪姫松高校のレギュラーを勝ち取ったこの少女は、今年は次鋒を務めます。
今日はこの入部して3ヶ月ほどの上重選手に、先輩たちのことをたくさん聞いていきたいと思います。
「上重選手、姫松高校ってずばりどんな高校ですか?」
「そうですね……一言で表すんやったら、努力の高校やと思います」
「努力……ですか」
「部員の中で、誰一人として努力していない人がおらんと思うんですよ。それは私みたいな1年生もそうですし、先輩方もそう。あのへんとか見てみてください」
そう上重選手が指さす先には、一つの自動卓がありました。
その対局を後ろから見つめるのは、今年の大将を務める、末原恭子選手。
「ストップ。今の場面、ホンマにリーチが最適解か?一局終わったところやし、ちょっと皆手開いて検討してみようや」
一つの卓に、自身も交ざりながら検討を始める末原選手。
「上重選手、あれはレギュラーの子たちの卓ですか?」
「いえ……あれは1、2年生が主体の卓です。せやけど、ああいった風に、主力のメンバーの先輩方がしょっちゅう自分の時間削ってまで指導してくれるんですよ」
「それは……後輩としてもやる気が出ますね」
「ちゃんと努力して勉強してれば、先輩たちは認めてくれますし、それをわかってるから、皆努力する。これが姫松の強さなんかな、って私は思います」
そう語る上重選手の目は、とても真剣でした。
「では、今度は今年のレギュラーの先輩方一人一人について聞いていきたいのですが、まず、先鋒の倉橋選手。彼女は上重選手にとってどんな存在ですか?」
「多恵先輩は……恩人、ですかね」
「恩人?」
「私がレギュラーに入れたんは、間違いなく多恵先輩のおかげなんですよ」
上重選手の視線の先、こちらも後輩達と同卓しながら、指導をする倉橋選手の姿が。
「ポンコツで、全然目立たなかった私を買ってくれて、面倒見てくれて……感謝しかないんです」
「そうなんですね……雀士としては、どんな風に見てらっしゃいますか?」
「めちゃくちゃ強いですよ!!多恵先輩に勝てる人なんていません!先鋒に多恵先輩がいてくれるから、私も安心して打てるんやと思います!」
「なるほど、信頼が大きいんですね!……では次に中堅の愛宕洋榎選手について、お聞きしてもいいですか?」
「部長は……あ、いました。洋榎先輩は、多くは語らない方で、普段はふざけてばっかりなんですけど……今年にかける想いは、誰よりも強いんじゃないかなと思います」
部室の奥の扉から出てきた愛宕洋榎選手。
何故つまようじをくわえながら出てきたのかはわかりませんが、彼女こそが、この姫松高校の部長です。
「去年悔しい思いをしてるのは間違いないですし、今年のインターハイで絶対に団体優勝したいという想いは、言わずとも皆感じていると思いますよ」
「なるほど……貫禄がありますね。愛宕選手の麻雀については、どのように思っていますか?」
「……尋常じゃないほどの読みが、洋榎先輩の強さですね。ネットとかだと、『守り』の部分で取り上げられることが多い気がするんですけど、ウチは洋榎先輩の強さは、客観的に自分の実力を見れている、ってことやと思うんです」
「客観的に?」
「あの、よくおるやないですか、麻雀極めたつもりで、自分が1番麻雀上手いと思ってしまう人。……姫松の先輩方みんなに言えることなんですけど、そういった驕りがかけらもなくて……みんな常に高みを目指しているんですよね。自分たちは、まだ麻雀を極める途中も途中なんだって、よく多恵先輩も言ってます」
「志が皆さん高いんですね……!では、副将を務める、真瀬由子選手についてお聞きしてもいいですか?」
「ゆっこ先輩……真瀬先輩は、誰よりも道具を大事にする人なんです。麻雀に対する心がすごいというか……ほわっとしてる感じの可愛い先輩なんですけど、気持ちの部分は、ものすごく尊敬してます」
真瀬選手の姿は見えませんでしたが、どうやら点棒表示がおかしくなってしまった自動卓の整備をしているらしいですね。
「真瀬先輩は、麻雀している時は安心感しかないんです!無茶なことしないですし、着実に冷静に。あんな安定感、ウチも欲しいなぁってよく思います」
「真瀬選手は公式戦でのマイナス記録が無いことで有名ですからね!……では最後に大将の末原選手についてお聞かせ願えますか?」
「末原先輩は……正直入学当初は、少し苦手やったんです」
ちょっと言いにくそうに苦笑いする上重選手。
大将も務め、後輩たちの面倒を1番見ているという末原選手が、なぜ苦手だったのでしょうか。
「ウチの麻雀部には、筆記式の課題みたいなんがありまして。末原先輩は、それをウチにめちゃくちゃ出してきたんですよ。何も言わずにですよ?てっきりウチは嫌われてるんやと思って、なるべく顔を合わせたくないなぁって」
ここで、姫松高校に伝わる筆記式課題を少しだけ見させてもらいました。
点数計算から条件確認、牌理の何切る問題から、リーチ判断まで。
理由を書く欄まで用意されていて、とても本格的なものでした。
「……けどある時多恵先輩が、恭子は漫ちゃんに期待してるんだよって言われて。……確かに言い方が厳しい事もありましたけど、末原先輩も監督にウチのこと推薦してくれて……本人は絶対その事ウチには言わないんですけどね」
嬉しそうにはにかむ上重選手。
どうやら末原選手と上重選手の間には、大きな信頼関係があるようです。
「麻雀もホンマに強いんです。末原先輩は。あれだけ強い先輩方が、大将は恭子にしか務まらんって言うんですよ。ウチもそれに同意見やし、後輩たちも皆そう思ってるんです」
「信頼されているんですね」
全員の話を聞かせてくれたあと、上重選手は自身の練習へと戻っていきました。
午後7時。
「明日の確認事項はこれで終わりや。来週からついにインターハイが始まる。レギュラーは最終調整、控え組も、ウチらの練習に付き合うんやなくて、自分のレベルアップに使って欲しい。ウチらがいなくなった後も、姫松高校麻雀部は続くんやからな……明日は午前オフ、午後から練習開始。ほんなら、今日は解散や」
「「「「「お疲れ様でした!!」」」」」
全体ミーティングを軽く行ったあと、今日の練習は終了になりました。末原選手が号令をかけたあと、選手たちが次々と帰路に就きます。
私も密着取材を終わろうとしたのですが、どうやらここからが姫松高校の強さの秘密であったようです。
ほぼ全員の選手たちが帰る中、先鋒の倉橋選手が自動卓の電源をつけて、対局の準備を開始しました。
「あれ、今日の練習は終わりじゃないんですか?」
「あ!すみません、帰りの見送りも付けずに……今下までお送りしますね!」
「いえいえ!それは大丈夫なのですが……皆さんは帰られないんですか?」
「あー、私達は居残って練習です。いつも全体練習が終わった後のこの時間に、2〜3時間ほど練習してから帰ってるんです」
そう話す倉橋選手の元に、部長の愛宕選手と、末原選手。そして真瀬選手もやってきました。
「お!なんや!ウチのカッコイイ煽りシリーズがついに収録か!」
「部長は黙っといてください……」
「ウチも頑張って煽るのよ〜!『一緒にしてもろてもいいのよ〜!格は皆同じなのよ〜』」
「おいゆっこ、それウチに向けた煽りやろ」
雑談を挟みながらも、彼女たちは麻雀に打ち込みます。
なぜ、まだ練習を続けるのでしょうか。
「私達、3年生じゃないですか。今年が最後。来年から、私たちがいなくなったあと、姫松弱くなったな、って言われたら悔しいじゃないですか。だから、全体練習の時間は、できるだけ後輩育成に時間を割いてます。……あ、もちろんそれが私たちの勉強にもなるんですけどね?」
そう言った倉橋選手。
他の方々も、どうやら意見は同じようです。
「せやから、ウチらは今から練習するんです。……今年は絶対に負けられません。姫松のみんな、地元の皆、応援してくれる姫松ファンの方々のため、そしてなにより、自分たちのために」
末原選手の目は、真剣そのものです。
今年にかける強い思いが、全員から感じられました。
「今年は必ず、ウチら姫松が優勝する。アナウンサーはん。これだけは覚えとってください」
「自信があるんですね!」
「自信なんて、たいそうなもんやないですよ。……絶対に、優勝する。それが、ウチらの使命。……欲しいんです」
愛宕洋榎主将の表情は、飢えた獣のようでした。
そう、彼女たちが求めるものはただ一つ。
「
選手全員の気持ちを背負って、監督の思いを背負って、応援してくれる全ての人の思いを背負って。
そして、去年悔しい思いをした他ならぬ自分たちの想いを背負って。
勝利に飢えた『常勝軍団』が、頂の景色を見に、出陣です。