ニワカは相手にならんよ(ガチ)   作:こーたろ

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今話より、個人戦編開幕です!!



……安心してください。団体戦決勝ももちろんやります。


団体戦決勝は原作がある程度進んでから書きたいなあ、というのもあり、先に個人戦予選をやることにしました。
白糸台の能力とかなんか新しいのいっぱい出てきそうで怖くて……(汗

時系列的には、団体戦後のお話となります。
個人戦の形式につきましてかなり悩んだのですが、今回のお話で説明がされています。150人もいるならこれしかなかったんや……。

とにかく、ここから個人戦編!
ガンガン盛り上がっていきますので、よろしくお願いしますね!




インターハイ個人戦編
第90局 新たな戦い


 

 

全国高等学校麻雀選手権大会。

通称インターハイと呼ばれるこの大会には、団体戦ともう一つ、個人戦がある。

 

注目度こそ団体戦に劣るものの、注目選手が高校の頂点を争うこの個人戦は、年によっては団体戦に勝るとも劣らない視聴率を集める大会。

 

そして今年は、圧倒的に個人戦にも注目があつまる年だった。

 

 

 

『チャンピオン!個人戦の目標を教えてください!』

 

「もちろん、インターハイ連覇を目指して今年は練習してきたので、目標は優勝です!」

 

 

パシャパシャとシャッターを切る音が響く。

 

団体戦が終わり、明日からは個人戦。

その前日に、個人戦で注目が集まる選手たちが一同に集められ、インタビューが行われていた。

 

そしてそのなかにはもちろん、去年のインターハイチャンピオン、宮永照がいる。

 

 

 

『今年のライバルはいますか?!』

 

「そうですね。皆さん強いので、誰と当たっても油断はできないと思います」

 

要領良くハキハキと話す照の姿を見て、普段の姿をよく知る菫が、はあ、と一つため息をついた。

 

照は普段かなり脱力したテンションで話すのだが、メディア関係者の前だけは、明るく模範的な生徒を演じる。

そしてその姿が様になっているからこそ、メディアも彼女を流石『チャンピオン』だ、と騒ぎ立てる。

 

今しがたされた質問一つとってもそうだ。

もし個人名を挙げれば、挙げなかった有力候補を「眼中にない」と言っているように捉えられてしまうから、角の立たないような受け答えをする。

 

そんないつもに増して入念にメディアを意識する照に呆れる菫だったが。

 

 

「……でも、そうですね」

 

菫が、照の目が細くなったことに気付いた。

 

内に秘めたはずの闘志が静かに燃えている。

 

 

 

「姫松高校の倉橋さんには、負けられませんね」

 

 

 

『チャンピオン』が、初めて個人名を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個人戦初日。

 

時刻は朝5時。

 

姫松高校のメンバーは団体戦の疲れを癒す間もなく、前日の夜にしっかりと個人戦の準備をしていた。

だからこそ、この時間の起床というのはなかなか辛いものがある。

 

 

「おはよ~恭子……」

 

「おはよう……って多恵ちゃんと服着いや……夏やからってそんなみっともない恰好してたら体調崩すで?」

 

 

インターハイ期間中のホテルは、基本的に2人1組で部屋をとっている。

多恵の相方は恭子。

 

基本朝は強いタイプの多恵だが、昨日夜までメンバーでいたこともあって、いつもよりも早起きが辛い。

ねぼけまなこをこすりながら、恭子が開けてくれた窓から、外の朝日を眺める。

 

夏の日差しが早くも差し込んでいた。

 

 

「インターハイのスケジュールって鬼畜すぎない……?」

 

「去年も同じやったやろ。ほら、はよ着替えて準備すんで」

 

ため息をついた恭子に急かされながら、多恵も制服へ着替えを進めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

ようやく着替え終わった多恵だったが、まだ眠気から解放されてはいない。

 

「ほら、行くで!」

 

「恭子おんぶ……」

 

「ウチは多恵のおかんやないねん!」

 

 

恭子がまた一つため息をついてから、多恵の腕を引っ張ってホテルの食堂へと足を運ぶ。

 

インターハイ出場校用にあてられたこのホテルは、麻雀卓も備え付けてある高級ホテル。

その廊下を、2人はドタドタと歩いていた。

 

 

 

「末原先輩、おはようございます~」

 

「絹ちゃんおはようさん……ってなんや、そっちも同じ状況かいな」

 

たどり着いた食堂の入り口で会った絹は、背中に姉を背負っていた。

 

背中に姉を背負っていた。

 

 

「……き~ぬ~……ウチをどこに売るつもりやあ~」

 

「お姉ちゃん朝やって……すみません、さっきっからこんなんで」

 

「いや、後で叩き起こすからええよ……」

 

恭子はこめかみに手を当てて、本日3度目のため息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

朝食をとったあと、姫松のメンバーはそのままミーティングに移る。

 

会議室のソファに座りながら、恭子が資料を全員に配った。

 

 

「ほな、皆団体戦の疲れとれてへんと思うけど、もっかい個人戦のスケジュール確認すんで」

 

「はいなのよ~!」

 

個人戦とは、各都道府県から県予選で選ばれた1~3人の選手が出れる、文字通り個人ナンバーワンを決めるための大会だ。

姫松高校のある南大阪からの代表は、全員が姫松からの出場。

 

 

「多恵先輩!頑張ってくださいね!」

 

「うん!頑張るよ!」

 

去年の個人戦3位、多恵は今年も県予選を難なく突破して全国出場。

 

 

「お姉ちゃん、気張りや!」

 

「せやなあ~……ま、やれるだけやるわ」

 

洋榎が南大阪2位通過。

1度あった県予選での多恵との直接対決ではトップをとったものの、トータルスコアで稼ぎ負けたこともあり、洋榎が2位通過となっている。

 

 

「恭子ちゃんも、頑張るのよ~!」

 

「……まあ、ウチはおまけみたいなもんやし、さらっとリーグ戦だけやってくるわ」

 

そして3人目は恭子。

県予選では由子とかなりデッドヒートを繰り広げたのだが、最終的に恭子が最後の一枠を勝ち取った。

 

 

「それにしても、個人戦のスケジュールはなかなかハードですねえ……」

 

「まあ、150人近くを一気にふるいにかけるわけだからねえ……多少は時間かかるよ」

 

団体戦と同じように大阪、東京、神奈川、北海道、愛知の5県は2つに分けられており、全部で52地域。

その全てから個人戦の代表が出てくるのであり、とてもではないが最初からトーナメントを組むことはできない。

 

では、どういった試合形式が取られるのかというと。

 

 

「そのためのリーグ戦や。A~Hグループまでの8グループに分けた後、1人5試合程度の対局。そのグループリーグの上位2名が決勝トーナメントに進める……。ま、ここらへんは去年と変わってないわな」

 

リーグ戦。

ちなみにローカルテレビであればこのリーグ戦の模様を放映しているところもあるが、地上波に放送されるのはグループリーグ最終戦から。

つまりは全国ベスト32にならない限り、地上波の放送に残ることは無い。

 

だいたい視聴者が楽しみにしている個人戦というものは、この全国ベスト32以降のものを指す。

 

朝食で食べた串カツの棒を爪楊枝がわりにしながら、洋榎が恭子へ質問を投げかける。

 

 

「逆に去年から変わったことなんてあるんか?」

 

「大きな変更点ではありませんが……今年は、決勝トーナメントは全てメイン会場で対局が行われます」

 

 

おお~、と全員から軽いどよめきが起こる。

 

去年は準決勝からしか入ることの許されなかったメイン会場。

しかし今年はベスト16の段階でメイン会場での対局となるらしい。

 

運営側の今年の個人戦への熱が伝わってくる。

 

 

「グループリーグだけで1日目が終了します。個人戦に出ないメンバーは、申し訳ないんやけどそれぞれのサポートについてください」

 

「「「はい!」」」

 

「多恵はグループB、主将がグループD、そしてウチがグループG……同じグループの主な主力選手と、メンバーの一覧は昨日配った通りです。あとは健闘を祈ります」

 

「「は~い」」

 

個人戦は団体戦と違い、仲間がいるわけではない。

しかし、去年も洋榎と多恵は一緒に個人戦に出場し、途中途中お互いの状況を報告したりしながら個人戦の期間を過ごしていた。

 

去年そんな様子を見ているだけの恭子だったが、今年は自分も出場。

 

明日の決勝トーナメントを迎えられるのは、わずか16人。

 

 

(ウチは、多恵と洋榎と一緒に、明日を迎えられるんやろか……)

 

恭子は自分が当たることになる相手の資料を眺めながら、少しの不安を感じていた。

団体戦で多少は自信がついたとはいえ、今日からは個人戦。

頼もしかった仲間は敵になり、仲間は1人もいない。

 

考えれば考えるほど、自分の背中をつたう汗が気になって仕方ない。

 

 

「多恵~昼飯どないする?最近ずっと弁当やら宅配ピザやらで飽きてきたわあ」

 

「そうだなあ……近くにおいしいラーメン屋があるって聞いた気がするから、調べてみようか……あ、恭子も行くよね?」

 

「あ、え、せ、せやな?」

 

急に話題をふられて、恭子が素っ頓狂な声をあげる。

 

 

恭子の中で、今声をかけられたこの2人が決勝トーナメントに進むのはもはや決定事項。

あとは自分がどうか。

 

もし仮に自分だけ進めなかったら……そう思うと気が滅入る。

 

 

そんな気持ちを知ってか、恭子の両肩に、多恵の両手が後ろからポン、と置かれる。

 

 

「なに恭子、また緊張してるの?せっかくこんなかわいい制服着てるんだから自信もって?」

 

「せ、制服は関係ないやろ!」

 

多恵の手を振り払うように後ろへと振り向いた恭子。

 

恭子の今の制服は、団体戦準決勝以降と同じ、いつものスパッツではなく、スカートを着用している。

 

多恵と洋榎が、恭子に柔らかく微笑んだ。

 

 

「気楽にいこーや恭子。……ウチら姫松3人で、個人戦ワンツースリーもらおうで?」

 

「恭子なら大丈夫!団体戦もカッコよかったんだから!」

 

いつもと変わらない2人。

変わらない明るさ。

 

いつも恭子はそんな2人に元気をもらう。

 

少しだけ、気持ちが落ち着いた。

 

 

(……ま、やれるだけやってみよか)

 

恭子が前を向く。

 

 

インターハイ個人戦が、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『きいいまったああああ!!!!!これにて全グループの4位までが決定!!だい注目の個人戦グループ最終戦はああああああ!!!!お昼休憩の!!!後!!!!』

 

 

バアン!と強く叩いた机の衝撃で、目の前のマイクが倒れる。

しかしこのアナウンサーはそんなことをいちいち気にするようなタイプではなかった。

 

一瞬の、静寂。

 

 

 

『……は~い、ありがとうございました~午後もお願いします~』

 

 

番組ディレクターから声がかかり、午前中の放送は終了となった。

ひとまず放送がひと段落したことに、隣に座る解説の小鍛治健夜は胸をなでおろす。

 

 

「こーこちゃん、お疲れ様」

 

「お疲れ様!いやあ……!すごかったね!」

 

先ほど勢いよく立ち上がった、実況を務める福与恒子は午前中の仕事が終わったこともあり、ひとまず椅子へと腰を下ろした。

 

 

「うん……やっぱり個人戦は団体戦と違った熱があるよね……」

 

「すこやんも20年前は個人戦出たんでしょ?」

 

「そのネタ、カメラ回ってなくてもやるんだ……」

 

げんなりとした顔で、健夜は恒子を眺めた。

健夜がインターハイに出場したのは今から10年前。

 

麻雀を覚えたのは高校生からだったが、圧倒的な才能をもってインターハイに出場し、いまや麻雀好きで小鍛治健夜を知らない者などいないといって良いほどの知名度を誇るようになった。

 

その健夜が、天井を見上げてポツりと呟く。

 

 

「今年の子たちは……後悔のないように打ってほしいな……」

 

「うんうん、アラフォーのおばさんからありがたい老婆心だね」

 

「だからまだ私27なんだけどお?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てのグループリーグが、最終戦を残して全ての対局を終えた。

 

この時点で、まだ残っている出場選手は全国ベスト32。

そしてここから、決勝トーナメントに進むための最後の試練を迎える。

 

 

インターハイ個人戦は、ブロック最終戦を迎えた。

 

予選Bグループ最終戦。この対局で2位までに入れば、決勝トーナメント進出だ。

 

 

 

多恵は既にその卓に腰を下ろし、他の対局者を待っている。

目を閉じ、集中を高めていたが、誰かが来た足音に、静かに目を開けた。

 

 

 

 

 

多恵は知っている。

 

今日この最終戦で戦うことになっている相手を。

現在自分に続いて、グループ内スコア2位をキープし続けている相手を。

 

そして、対局前に必ず挨拶しにくるであろうことも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たね」

 

 

 

 

多恵がその姿を見やる。

 

表情は真剣そのもので、真っすぐな蒼い瞳が多恵を射抜いている。

 

 

 

 

「私は、あなたの麻雀が大好きです」

 

 

片手に抱えたペンギンのぬいぐるみは、力強く握られていて。

 

 

 

「大好きで、誰よりも正しいと思うからこそ」

 

 

綺麗に整えられた桃色の髪が、風にたなびく。

 

 

 

 

「超えてみたい」

 

 

『のどっち』ではない。

ましてやインターミドルチャンピオンでもない。

 

 

清澄高校1年の原村和が、確かにそこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

多恵が、和の言葉を受けて、また少し目を閉じる。

 

 

 

「……いいね」

 

 

これはネット麻雀ではない。間違いなくリアルの対局。

 

あの時交わった矛が、時を経て、場所を変えて。またここでぶつかろうとしている。

 

気持ちの高揚が、抑えられない。

 

 

 

さあ。

 

 

 

 

 

 

「早く、やろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

個人戦予選グループB最終戦、開始。

 

 

 

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