ニワカは相手にならんよ(ガチ)   作:こーたろ

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第48局 確信

インターハイ準決勝第二試合先鋒戦。

まだこの先鋒戦には東の風が吹き荒れていた。

 

 

東3局 1本場 親 多恵

 

 

「ツモ!!」

 

 

気合の入った、甲高い声が響く。

 

 

優希 手牌 ドラ{⑧}

{②③④⑧⑧⑧4445688} ツモ{7}

 

 

「メンタンツモドラ3……!3100、6100だじぇ!!」

 

まだ東3局。東の風が吹いている内は、優希の力は激しさを失わない。

この局も、何度も聴牌を外し、やえの支配を振り切って和了りをモノにした。

優希は点棒を点箱に収めると、対面に座る、多恵の様子をチラリと伺う。

 

 

(2回戦であのトンデモ眼鏡侍と打ったのが、活きてる……。この姫松のロボット騎士も強いけど、あの侍ほどじゃないじょ……!)

 

ロボット騎士とは、多恵のことである。対局中の映像を優希が見ていて、あまりにも無感情に麻雀を打つので、そう名をつけた。

 

この和了りでまた、優希だけが原点以上の点数を持っていることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

点数状況

 

清澄  117700

宮守   98000

姫松   90500

晩成   93800

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『東4局に入りますが、未だ片岡選手の勢いが止まりません!誰がこの展開を予想できたでしょう!』

 

『いやー意外と2回戦を見てた人達からしたら、そんなに意外でもねえんじゃねえの?ま、このまま南場も同じようにいくとは思えないけどねい』

 

 

晩成と姫松の殴り合いになるだろうと想定されていた先鋒戦。

しかしここまでは宮守と清澄を、晩成と姫松が追う展開が続いている。思わぬ展開に、にわかにざわつき始める観客たち。

まさかこのままいくのか、と誰かが言えば、いやいや、このまま終わるはずがない、と誰かが言う。

 

予想を言い合う観客の言葉と気持ちが伝播し、会場全体が異常な雰囲気に包まれる。

 

その結果、先鋒戦の注目度はとどまることなく上がっていく。

 

 

 

 

 

東4局 親 やえ

 

 

サイコロを回すボタンを押しながら、やえは静かに下家に座る優希を見やった。

県予選の映像を見ていると楽し気に打つ姿が印象的だと思っていたが、今はその元気さはなりを潜め、かなり真剣な表情をしている。

 

その様子を確認して、やえはため息をついた。

 

 

(ウチの1年があれだけ打てるんだし、1年を侮ることはしてない。それにしても東場での速さと打点は、かなりのものね……1年後2年後が思いやられるわ)

 

少しだけ、後輩達の心配をするやえ。

言ってしまえば、とんでもないルーキーの登場なのだ。この先相手をすることになるであろう後輩たちのことを思うと、少し心が痛む。

それでも負けるとは思っていない辺り、やえの後輩への信頼も大きくなったのだが。

 

しかし、心配は心配である。だからこそ今やえができることは。

 

 

(その芽を摘んでおかないとね)

 

凶暴な瞳が優希を貫く。東場だからといって好きにさせる気は毛頭ない。

 

 

 

5巡目 優希 手牌 ドラ{二}

{赤⑤⑥⑦2477二三四七七八} ツモ{六}

 

 

(タンヤオ赤ドラの聴牌……だケド……この{七}は切れるのか……?)

 

5巡目での聴牌。ダマに取るかリーチを打つかは置いておくとしても、この聴牌は普段なら喜ぶべきところだ。

しかしこれを手放しに喜べないのが、この卓。

 

優希は恐る恐る上家に座るやえの手牌に視線をやった。

 

 

 

 

 

同巡 やえ 手牌

{⑨⑨⑨55一二三四赤五六八九} 

 

 

 

 

 

(切りなさいよ。余るんでしょ?{七}。叩き落してあげる)

 

 

やえの手牌を見て、優希は手にとりかけた{七}を自分の手牌の中に戻した。

 

 

({七}は切れない……)

 

優希が選んだ打牌は{4}。しぶしぶといった表情で打ったそれを、やえが不満げに見つめている。

 

そんな仕草と表情を訝し気に見るのは、優希の下家に座る白望だ。

重い手を持ち上げて、山に手を伸ばす。

 

 

同巡 白望 手牌

{②③④赤⑤⑥⑦⑧266三四五} ツモ{6}

 

聴牌だ。本来ならAコースが一気通貫が狙える{①⑨}のツモ。Bコースが{2}へのくっつきで両面にとれる{3}と、今持ってきた{②⑤⑧}の待ちに取れる{6}ツモ、といったところか。

 

タンヤオもついて3面待ち聴牌。普通ならリーチと行きたいところ。

しかし白望は、またも左手を頭に当てた。

 

 

「……ちょいタンマ…………あ、本当にちょいです……本当に」

 

 

白望は顔を伏せながらも、ちょいタンマと言った瞬間に下家から冷たい視線が送られてくるのを瞬時に察知したので、謝りを普段より2倍マシで伝えておいた。

 

ふう、と息をつき、状況を整理する。

 

 

(昨日の特訓が……効いてる)

 

白望の頭は、普段よりもずっとクリアに働いていた。それを誰よりも感じているのが、白望本人。

最高の状態で、最高の舞台を迎えられていると、自分でも思う。

 

 

(……前まで、こんなこと思うようになるなんて、思いもしなかったな……)

 

ダルい、動きたくないで生活している白望が、チームの勝利に全力を尽くそうとしている。

それは、2回戦で、絶対に勝ちたいと自身の身体と精神を犠牲にしてまで尽くした親友の雄姿を見たからかもしれない。

 

麻雀という競技は、不思議なほど気持ちに牌が応えてくれる。その想いが、本物であればあるほどに。

 

 

「……これで」

 

そうして切り出した白望。

また、切った牌から波紋が生まれていた。

 

 

その後、すぐさま多恵がツモって牌を切った。

やえも同じようにツモ切り動作。

 

 

 

優希 手牌

{赤⑤⑥⑦277二三四六七七八} ツモ{六}

 

(来たじぇ……!)

 

聴牌し返した。優希の強い所は、東場であれば手牌を多少崩してもすぐに有効牌の波が来てくれること。

幸いやえは手出しを挟んでいない。で、あれば、自分の宣言牌に追い付いてきている可能性は低い。

 

 

「リーチだじぇ!」

 

勢いよく{2}を曲げた優希。

通ればこっちのもの。まだ流れは優希にあるかに思えた。

 

しかし。

 

その牌から、波紋が広がった。

 

 

 

「ロン」

 

「……じょ?」

 

下家の白望から小さなロン発声。

 

 

白望 手牌

{③④赤⑤⑥⑦⑧2666三四五} ロン{2}

 

 

「……2600」

 

 

今度は白望に阻まれる。

正確な心理と手牌読みが、もたらした和了り。

 

 

 

『和了りをモノにしたのは宮守女子小瀬川選手!!これは完全に読み切りましたか??』

 

『まあ間違いなくそうだろうねい。王者に対応して清澄のコが切ったのが{4}。組み換え直すためにターツを外したんだとしたら、周辺牌である{2}待ちに1巡だけするのは、戦略的にはアリだよねい』

 

(ま、あのコがそこまで考えられるとは、2回戦見た感じじゃ見えなかったケド……強者に中てられて感覚が鋭くなってるのかねい……?)

 

咏が楽しそうにニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーっし!シロ!!」

 

宮守高校の控室でガッツポーズをとるのは、チームメイトであり親友の塞。

 

 

「今のも、新しいシロらしい和了りなのかもね~」

 

「ね!」

 

嬉しそうな豊音の言葉に、同調するのは胡桃だ。

 

 

「付け焼刃ではあるかもだけど、やらないよりはマシだったねえ……」

 

監督の熊倉も満足気に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日のこと。

 

宮守女子のミーティング。各場面ごとに監督の熊倉から勝つためのプランを伝えられた。

 

 

「まず先鋒戦だけど、ここが一番厳しい戦いになりそうねえ……」

 

「……ダル……」

 

分かっていたことだが、ネットなどのメディアも、先鋒戦では白望が数段劣るといった旨の記事が多い。

白望もそれを理解していたし、特にムキにもならなかった。

 

しかしどうやら、チームメイトは違ったようで。

 

 

「ダイジョーブ!」

 

まずシロに振り返ったのは、白望の前に座っていたエイスリン。

とても頼もしいこの留学生は、白望のことをいつも元気づける。

 

今回はホワイトボードに、強くなった白望らしき人物が描かれていた。

 

 

「そうそう。今日やれることはやったわけだし、むしろ目標とか作りたいよね」

 

顎に手をやって考えるのは、塞。

次鋒でエイスリンがいるのだ。気持ちを大きく持って挑んでほしい、という願い。

 

 

そんな塞の言葉に、白望は少なからず驚いていた。

明日の相手は並大抵ではない。それは皆も理解しているはず。

 

だからこそ白望はてっきり、「何万点差以内ならいいよ」という話が出ると思っていた。

 

全員が塞の言葉に納得しかけている中、1人困惑する白望をよそに、追い打ちをかけるように熊倉から衝撃の言葉が飛び出す。

 

 

「厳しい戦いになる……とはいったけど。私も必ず負けるとは思ってないのよ。……いえ、むしろこう言ったほうがいいわねえ……」

 

 

 

 

 

『勝つ気で行ってらっしゃい』

 

 

全員の視線が白望に集まる。塞も、胡桃も、豊音も、エイスリンも。皆笑顔で白望の目を見ている。

 

全員が、期待を寄せている。

 

 

いつも眠たげにしている白望の目も、この時だけは大きく見開かれた。

 

期待してくれる人がいる。

 

こんな気持ちになったのは、白望も人生で初めてのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんとなんと!姫松と晩成以外の2校がプラスで南場を迎えます……!!』

 

『高校トップクラスの実力の持ち主2人が、攻めあぐねてるねい。この先鋒戦、思ったより面白くなりそうだよ?』

 

咏の口ぶりに、観客も熱を増す。

 

南入だ。

 

シロは今和了った感覚を、右手の手のひらを見つめながら確かめる。

 

 

(ダル……けど、このダルさ、嫌いじゃない)

 

そのまま拳を、握りしめる。

チームのために戦うのは、悪くない。

 

 

対して厳しくなったのは優希だ。

東風は過ぎ去り、南の風がやってくる。それは同時に、自らの戦場ではなくなったことを示している。

 

 

南1局 親 優希 ドラ{⑥}

 

優希 配牌

{①③⑤⑨2469三七九東白中}

 

 

(あまり稼げなかった……でも、ここからは、カッチンコッチンだじょ……!)

 

試合前から決めていたこと。

ここからは守る。思った以上に周りが強く、東場で点数を荒稼ぎ、とまではいかなかったが、ひとまずのリードは確保できた。

なんとしてでも、守り切る。固い意志で、優希は手牌から{三}を切り出した。

 

 

多恵 手牌

{③⑦289一二二四四九発南} ツモ{北}

 

(ふむ……流石にそろそろやえの視線が痛いし、頑張りたいところだけれども)

 

先ほどから、「あんたなにやってんのよ早くしなさいよ」とばかりの視線が下家に座るやえから放たれ続けている。

多恵だってなにも手を抜いているつもりはない。それ以上に、東場は周りの速度が異常だったのだ。オリに回るケースが多かったために、見せ場は配牌の良かった1度きり。

 

2回戦で戦った時から、この宮守の白望が強いのはわかっていた。Cブロックの映像も見て、清澄の1年生が東場では強烈なスピードを出してくることも理解していた。

 

だとしても。わかっていたら、止められるというほど麻雀は単純な競技ではない。

 

 

(……これだけ強い人達と戦える。それでもって……)

 

多恵が見渡すのは同卓している3人。真剣な表情はもちろんだが、それ以上にこの3人は。

 

 

(……楽しそうだ)

 

多恵も思わず笑みがこぼれる。

こっちの世界に来た時。多恵は麻雀を楽しむことを忘れてしまっていた。

それは前世のネットで散々な評価を受けたからかもしれない。

勝つための麻雀を勉強し、そして失敗し続けた。

 

 

しかし、こちらの世界にきて、純粋に麻雀と向き合い、楽しむ少女達を見て、多恵の心は少しずつ変化していった。

全力で麻雀を楽しむ少女たちとの対局は、いつだって多恵の心を熱くさせる。

 

 

(やえがいるからかな……少しあの頃の、楽しい麻雀をやっているような気分だ。……うん。全力で、私のすべてをぶつけよう)

 

気持ちは熱く。楽しむことも忘れないが、相手は強い。自分の全てを、ぶつけなければ勝てない。

 

 

 

 

 

8巡目。

 

 

「チー」

 

動き出したのは多恵。上家の白望が切った{三}を、ノータイムで{一二三}の形で鳴いた多恵。

 

優希は早々に店じまいした自分の手と、多恵の河を見比べる。

 

 

多恵 河

{北南98発2}

{③⑦八}

 

 

(チー出しが{八}……一気通貫……?)

 

優希は多恵の役を探る。字牌がパラパラと最初に切れていて、染め手にはあまり見えない。

{98}のペン張外しが明確に手出しで見えているので、チャンタも読みからは消えるだろう。

とすると本命は役牌バック。まだ河に見えていない役牌は{白}と{中}。

 

 

( {①}が全部見えてて、三色は無い。役牌バックかなあ……?{⑦}切りのタイミングでドラ対子固定しててもおかしくなさそうだけど……あの捨て牌、なにか引っかかる)

 

白望も左手の親指を口の辺りにもっていきながら、優希と同じように、多恵の役を推測する。

消去法で行けば、役牌バックか、一気通貫。三色の可能性もまだ消えてはいないが、確率は薄そうだ。

 

だが、よほどドラが固まっていない限り、無理なしかけをするタイプではないのは2人とも理解している。

それだけに、不気味だった。

 

次巡、少し考えて、白望は手牌から{五}を切る。

多恵はその牌に目もくれず山へと手を伸ばす。

 

そして持ってきた牌と入れ替えて、流れるような動作で多恵が河に放ったのは、{二}だった。

 

 

(空切り……?けどこんなところで空切りするとは思えないじょ)

 

優希の考えることも正しかった。相手から役が読めないこの状況での空切りは、相手に余計な情報を与えてしまうこととなる。

とすれば、手牌の牌と入れ替えたと考えるのがセオリー。

これによって、一気通貫の線も薄くなった。本命は役牌バック。

 

北家のやえが静かに、息を吐いた。

 

やっとか、と。

 

やえはノータイムで多恵の切った{二}を合わせた。

 

 

 

 

11巡目 優希 手牌

{④⑤⑤⑥⑥446五七東白中} ツモ{⑥}

 

うっ、と優希が思わず息をのむ。

早々にあきらめた手牌に、まさかのドラが暗刻。と同時に多恵への安牌が尽きた。

 

 

(萬子に反応がなかったし、染め手は考えにくいじぇ。役牌バックなら、ドラが3枚見えてて、赤も1枚河に見えてる。最高で満貫はあるけど、そんなに高くはないじょ)

 

久からの情報で、多恵は必ずしも打点が高いわけではないのは確認している。

安い手で、親を流してくれるのなら、妥協点としては安手の放銃は仕方ない。

 

それでももう一度、多恵の河をゆっくりと見る。

 

ここは時間を使っていいところだ。

 

 

 

多恵 捨て牌

{北南98発2}

{③⑦八二}

 

 

 

捨てる牌を選ぶ優希。

{④⑤⑥}辺りは、いかにも危険筋で切りにくい。役牌バックかもしれないというのに生牌の{白}と{中}は切れない。1枚切れの{東}もだ。

そうなると次第に捨て牌候補がしぼられる。

 

(一気通貫で{五}が必要なら、さっきの宮守のを鳴いてるはずだし、役牌バックだったとしても、鳴かない理由がないじょ)

 

優希が選び抜いた結果、河へと出されたのは、{五}だった。

中筋である上に、前巡の白望が切った{五}に反応していない。役牌バックだとしても、一気通貫だとしても、限りなく当たりにくい牌だ。

 

優希もこの1ヶ月、必死で勉強を重ねた。どんな相手と戦っても、南場でもある程度は戦えるように。

 

 

今回ばかりは、それが裏目に出た。

 

 

「ロン」

 

多恵の背後から生まれた輝く長剣3本が、優希に向かって射出される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多恵 手牌

{四四四四赤五六六九九九}  {横三一二} ロン{五}

 

 

 

 

 

 

 

「12000」

 

 

 

『決まったああ!!1位の清澄から一閃!!姫松の騎士が、見事な清一色で跳満和了です!!それにしても手順からなにから、鮮やかでしたね……!実況が置いていかれてしまいました……!』

 

『これは打った清澄のコは責められないねい……前巡鳴いてない{五}は比較的安全に見える……それに加えてあれだけノータイムで打牌を繰り返して、あげく萬子に反応しなかったら、誰だって清一色だなんて思わない。姫松のコ、おそらくだけど、鳴く牌も全パターン事前に決めてるねい。これは言うほど簡単なことじゃない。……あそこまで清一色を得意とする打ち手は、プロ含めても世界中で一握りだろうねい』

 

 

咏の持ち上げすぎなくらいの解説に、会場は大歓声に包まれる。それだけ、あまりにも鮮やかな清一色だった。

更には実況解説に解説させる暇も与えずに完璧な手順で和了りきって見せたのだ。

 

 

(その河で清一色……?!宮守の{五}には見向きもしなかったじょ……?!こんなの……まるで……!)

 

驚愕に目を見開く優希。多恵の表情は、顔色1つ変わっていない。

 

今の和了りの既視感。優希が思い出すのは、合宿で見た、あの動画のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタッと大きな音を立てて、控室で対局を見ていた少女が立ちあがる。

お気に入りのぬいぐるみが悲し気にコロコロと地面を転がった。

 

少女の目は驚きに見開かれ、心なしか、足も小さく震えている。

 

 

「の、のどか?どうしたの?」

 

「和ちゃん……?」

 

部長の久と、隣で見ていた咲が固まってしまった和を驚いたように見つめている。

優希が清一色を放銃してしまったことによほどショックを受けたのかとも思ったが、どうやらそういった様子でもないらしい。

震える全身を抑えながら、和は口を開いた。

 

 

「……先生だ……」

 

「先生……?」

 

まこも眼鏡をかけなおしながら和に聞き返す。

 

そのワードで久は何かに気付き、瞬時にモニターに向きなおった。

 

モニターには、鮮やかすぎる清一色を和了ってみせた倉橋多恵が、アップで映っている。

 

久は、1つの可能性にたどり着く。

 

 

デジタルな打ち回し。

 

完璧なオリ手順。

 

大会に出ると言っていたこと。

 

清一色への、完璧な理解。

 

 

 

久の頭の中で、つながった。

 

 

「まさか……!」

 

彗星のごとく現れた、麻雀動画の先駆者。

和が師と仰ぐ、デジタル打ちの頂点。

 

 

 

 

 

「クラリン先生……!間違いないです……あの和了り方……先生以外にあり得ない……!」

 

もう1つの波乱が、ここで巻き起ころうとしていた。

 

 


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