プロローグ
ある春の日の夜......。
寝付きが悪かった俺は部屋を出て縁側の方に行き腰掛けていた。空を見上げるとそこには真ん丸の綺麗な満月が光を照らしながら浮かんでいた。
「眠れないのかい亮壱?」
しばらく満月を眺めていると隣にお盆の上に湯呑みを乗せたお祖母様が立っていた。
「はい、少し寝付けなくて月を見ていました」
「そうかい。お茶を持ってきたから飲みなさい」
お祖母様から湯呑みを受け取り、湯呑みに入った温かいお茶を一口飲んだ。
春とはいえ、夜は少し肌寒くお祖母様が入れてくれたお茶が冷えた体の温度を上げホッと一息が溢れ出た。
「少し肌寒かったので丁度良かったです。ありがとうございますお祖母様」
「ふふ、それは良かった。春とはいえまだ冷えるからちゃんと暖かくして寝るんだよ?それじゃ、婆はもう寝ますね」
「はい、おやすみなさいお祖母様」
お祖母様は自分の部屋に戻り、俺は縁側から動かずにしばらく月を眺めながらお茶を飲んでいた時だった...。
♪〜♪〜♪〜
突然、何処からか笛の音が聞こえてきた。
その笛の音は時々音を外す時があるが何か惹き付けるような音色だった。
俺はその笛の音は誰が吹いているのか気になりお祖母様を起こさないように草履を履き、藤の花の御守りを持って屋敷を出て音色の場所へと向かった。
♪〜♪〜♪〜
笛の音を頼りに走り続けいると近所にある桜が満開に咲きほこる場所に辿り着いた。
この近くで笛の音が聞こえ辺りを見回して探してみると周りの桜と比べ一際大きく満開に咲きほこっている桜の木の下に男が立っていた。
桜の木の下立っていた男を見ているとこちらに気付いたようで話しかけて来た。
『私が見えているのか?』
「はい、見えてますよ?俺はその笛の音を聞いて此処に来たんです」
『そうか見えているのか.....私はお前とは違い生きている者では無い』
男は自分の足元を指さして見るようにと言い、足元を見ると透けていた。
目の前にいる男は継国縁壱と言う名で戦国時代に亡くなったと言っていた。
最初は少しだけ驚いたが直ぐに驚きは引っ込み継国縁壱さんの事が気になり色々と話を聞かせてもらった。
継国縁壱さんは元鬼殺隊で全ての始まりの呼吸『日の呼吸』を編み出した凄い人だったり、兄が鬼になったりと色々語ってくれた。
「もし、よろしければ縁壱さんが心残りにしている事を俺に託してくれませんか?」
『亮壱?』
「俺は拾ってくれた祖母の為に夜脅えることの無い鬼の居ない平和な世界にしたいと思っているんです。祖母にはしっかり話して鬼殺隊に入る許可をもらったので明日、育手を紹介してもらおうと思っていたんです。それで今日貴方と話して思いを受け継ぎ...」
『日の呼吸を教えて欲しいと』
「はい!」
縁壱さんは自分が大層な人では無いとか言って渋っていたが何度もお願いをしていたら了承してくれた。
『教えるからには生半可には教えずに厳しく教えるつもりだが覚悟はいいか?』
「はい師範!」
明日から始まる修行に胸を躍らせ屋敷へと帰った。
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