幽霊に呼吸を習いました   作:星天さん

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編集して再投稿させていただきました。
再投稿の理由は、次回話を出すのに少し苦しい感じになってしまいましたので再投稿させていただきました。


顔合わせ

珠世さんと出会ってから、あっという間に1年の月日が経ち、桜の花がひらひらと舞い散る春の季節になっていた。日向から任務の伝令が届かず、藤の家の縁側で暇を持て余していると、空から慌てた様子でこちらに飛んでくる日向が見えた。

 

『亮壱サマ!亮壱サマ!御館サマガ、オ呼ビデス!』

 

「御館様が俺を?」

 

慌てた様子の日向を心配していると、日向は一息整えてから喋りだした。日向は御館様から俺に産屋敷邸へ来て欲しいという伝令を預かって、急いで飛んできたみたいだ。御館様の事は一度も見た事は無いが、一体何の御用で俺を呼ぶのか皆目見当もつかないが、取り敢えず呼ばれたからには行こうと支度をする為に立ち上がった。

 

「直ぐに着替えるから待っててくれ」

 

『ワカリマシタ!』

 

急いで寝ていた部屋に戻り、浴衣から隊服に着替えて紺色の羽織を着て、出掛ける支度を整えていた。支度が終わり、部屋を出ると藤の家の娘さんと出くわした。

 

「もう、行かれるのですか?」

 

「はい...。御館様からの招集みたいで、一晩泊めていただきありがとうございました。楓さんのお母様にもお伝えください」

 

「分かりました。亮壱様、また来てくださいね!鶏大根いっぱい作りますので!」

 

「ありがとうございます。それでは失礼します」

 

俺は楓さんにそう言ってから玄関を出て、藤の家を出た。藤の家を出てから、日向に御館様の所へ案内をしてもらおうとしたら、隠の人がやって来た。

 

「おはよう亮壱くん!」

 

「おはようございます涼音さん」

 

俺の元にやって来たのは女性隠の涼音さんだった。

涼音さんは俺が最終選別を受けた時に居たらしく、隠になっていなかったら、真菰と一緒で同期になっていた。

 

「涼音さんは何用で此処に?」

 

「亮壱くんを御館様の元に連れていく為に来ました!」

 

涼音さんは元気良く、そう言いながら黒い目隠しを取り出して俺に渡してきた。

 

「これは?」

 

「御館様の所への道は、柱か隠以外に覚えては行けないので、目隠しをして御館様の元に行きます!」

 

「目隠しをすると前とか見えませんよ?」

 

「大丈夫です!私が亮壱くんを背負って連れていきますので!」

 

女性である涼音さんに背負われるのは、申し訳ないと思いつつ背中に乗った。涼音さんの背中に乗ってから目隠しをすると、涼音さんは走り出した。

 

 

目隠しをして涼音さんの背中で揺られながら運んでもらっていると涼音さんが急に立ち止まってゆっくりと俺を降ろして目隠しを取ってくれた。

 

「此処が御館様の御屋敷だよ亮壱くん」

 

「水屋敷より大きい...」

 

「じゃあ、私の仕事はここ迄だから」

 

「ありがとうございました涼音さん」

 

「いえいえ、また非番の日にご飯食べに行こうね!」

 

涼音さんはそう言ってこの場を走り去って行った。

涼音さんが走り去ってから、御館様の御屋敷の門に近づいて、門を三回叩いた。門を三回叩いてから直ぐに、門が開かれて中から、何度かお会いしたことがある、あまね様が出てきた。

 

「お待ちしておりました亮壱様」

 

「お久しぶりです、あまね様」

 

あまね様に軽い挨拶を済ませてから門の中に入った。屋敷内に入って、あまね様の後に着いて御館様のいる所へと向かった。あまね様の後ろに着いて歩いていると、人の話し声が聞こえる一室に着いた。

 

「失礼致します...。耀哉様、亮壱様をお連れ致しました」

 

「ありがとう、あまね...。中に入ってくれるかい?」

 

あまね様の後に続いて部屋に入った。部屋に入ると、部屋の中に居る人達の視線が全て俺の方に向いた。

 

 

亮壱は産屋敷耀哉の居る部屋にあまねと共に入ると、その部屋で柱合会議をしていた柱達が一斉に亮壱に視線を向けた。

 

「「亮壱?」」

 

「「亮壱さん!」」

 

柱達の中でいち早く反応したのは、双水柱である義勇と錆兎、霞柱の無一郎と補佐をしている有一郎だった。

亮壱との接点も関わりの無い者にとっては、一隊士が柱合会議場所である産屋敷耀哉の屋敷に居るのか不思議に思っていた。

 

「初めまして亮壱。私は産屋敷耀哉、今日は来てくれてありがとう」

 

「いえ、私の様な一隊士をお呼びいただきありがとうございます」

 

亮壱は膝まづいて産屋敷耀哉にそう言った。

 

「御館様!この隊士は一体誰なのでしょうか!」

 

柱の一人、煉獄杏寿郎が亮壱と関わりある四人を除いて、他の柱達の思っている事を代弁して、亮壱についての説明を産屋敷耀哉に求めた。産屋敷耀哉は、亮壱に確認したい事があるからと煉獄杏寿郎の問いに答えた。

 

 

「俺に確認したい事とは一体何でしょうか御館様...」

 

俺は御館様にそう尋ねた。日々の任務をこなして、隊律違反も起こさずに隊士として恥ずかしくない行いをしてきたつもりでいたから御館様が俺に確認したい事に全く皆目見当もつかない。

 

「2年前の最終選別に亮壱が遅刻してやって来たと、あまねから聞いてね、どうして遅刻したのか理由を聞かせてくれないかい?」

 

「分かりました」

 

最終選別に参加する前に、鬼が女性隊士を襲おうとしている所に割って入った事、鬼と戦闘した事で遅刻してしまったと御館様に伝えた。

 

 

亮壱は遅刻した理由を産屋敷耀哉に話終わると、亮壱を褒める者とそうでも無い者に別れた。

 

「南無...。御館様、この者の遅刻した理由を聞く為に呼んだのですか?」

 

「そうだよ行冥。亮壱の話を聞いて確信したよ、亮壱が遅刻の理由になった鬼は──上弦ノ弐だからね」

 

産屋敷耀哉の発言に柱達は唖然とした。

何人の柱達を屠ってきた上弦ノ鬼、それも上弦ノ弐を退けただけでなく、上弦ノ弐と戦って直ぐに最終選別を受けている事に、驚きを隠せなかった。

 

「それは本当なのですか御館様!」

 

「本当だよ実弥...」

 

納得出来ない風柱・不死川実弥に産屋敷耀哉は優しい声色でそう言った。他にも納得出来ない様子の柱達に産屋敷耀哉は静かに語り出した。

 

「1年前の最終選別の日、上弦ノ弐と戦闘を行った元花柱・カナエに上弦ノ弐の情報を聞いた時に、最終選別を受けようとしている少年に助けられたと言ってたんだ」

 

産屋敷耀哉はカナエからの証言と最終選別の案内を頼んだ、あまねの証言を元に調べて亮壱を特定した。しかし、産屋敷耀哉は、カナエよりも歳下が本当に上弦ノ弐を退けたのか、疑っていた為、亮壱が入隊してから自分の鎹鴉で亮壱の行動を見ていたと柱達に伝えた。

 

 

 

最終選別の遅刻理由を話したら、何故か話が大きくなった。なんでも、あの時の女性隊士は元花柱で、俺が四肢を斬り落とした鬼は上弦ノ弐だったらしい。

 

「御館様、お褒めの言葉をくださりありがとうございます。ですが、御館様のお褒めの言葉は俺には相応しくありません」

 

「どうしてだい亮壱?君は柱が苦戦する上弦ノ鬼を退けたんだよ?」

 

「あの時の鬼が本物の上弦ノ弐でしたら、弱すぎます...」

 

十二鬼月について、鬼殺隊に入ってから真菰や錆兎さん、義勇さんから詳しい話を聞いていた。十二鬼月の上弦は柱が何度挑んでも殺される程強いと教えられた。

 

「え...上弦ノ弐は弱かったのかい?」

 

「はい...。女性隊士にしか興味が無いようなので、女性隊士に気を取られている間に不意をついて四肢を斬り落としました」

 

斬り落とした時の感触が豆腐と似ていると付け足して言うと、御館様とあまね様は引き攣った笑みを浮かべていた。錆兎さん、義勇さん、時透兄弟の方にも視線を向けると御館様と同じ引き攣った笑みを浮かべていた。

 

「最後に亮壱は何の呼吸を使っているか教えてくれないかい?」

 

「俺が使っている呼吸は日の呼吸です」

 

「それは本当かい亮壱?」

 

御館様とあまね様は驚いた顔になり、日の呼吸を教えてある錆兎さん、義勇さん、師範の兄の末裔である時透兄弟以外は日の呼吸を知らないようで首を傾げていた。

 

「あの〜、日の呼吸ってどんな呼吸何ですか?」

 

「日の呼吸はね、炎、水、雷、風、岩の五大呼吸は日の呼吸から派生させた一番最初の呼吸だよ」

 

桃色髪の女性の質問に答える前に御館様が全て言ってしまった。俺の師範は日の呼吸を編み出してから、当時の鬼殺隊士達に日の呼吸を教えたらしいのだが、誰一人師範に着いていなかった。師範は透き通る世界で隊士の肉体を見て、一人一人に合った呼吸を教えて五大呼吸が生まれたと聞いた。

 

「亮壱、日の呼吸は誰に習ったんだい?」

 

俺は御館様に師範の名前と出会い、修行内容を話した。修行内容を話している途中で柱の一人が『幽霊に呼吸を習うなんてド派手に面白い奴だな!』や『ありえない...幽霊に呼吸を習ったなんて嘘に決まってる』とネチネチ言ってるのが聞こえていた。

 

「教えてくれてありがとう亮壱」

 

「今の話を信じてくれるのですか?」

 

「勿論だよ。この世に鬼が存在しているから幽霊だって存在していると思うからね」

 

御館様は微笑みながら信じてくれると言ってくれた。御館様が信じてくれると言ってくれてから、一部だけ信じられないと言った柱達は静かになった。

御館様から柱候補になって欲しいと言われたが、弱い鬼しか倒してこなかった俺を柱候補にしても、強い鬼と出会ったら直ぐに死んでしまうと御館様に伝えたら、引き攣った顔になっていた。

 

「会議はこれで終わりにするね。亮壱、今日は来てくれてありがとう」

 

「礼には及びません。俺はこれにて失礼致します」

 

御館様に頭を下げて部屋を退出した。部屋を退出すると、あまね様も部屋から出て来て玄関まで見送ってくれるらしく、一緒に玄関へと向かった。

玄関に向かっている途中で、あまね様と御館様の御息女様とご子息様達に出会った。顔立ちは五人とも、あまね様にそっくりで礼儀正しいしっかりした子供達だった。あまね様にご子息様は何故女物の着物を着ているのかと聞いたら全員に驚かれた。

 

「凄いです亮壱様!一目で男と見破られたのは初めてです!」

 

ご子息の産屋敷輝利哉様は見破った事に喜んでいた。あまね様から話を聞くと産屋敷家には代々伝わる呪いがあるらしく、男のみに御館様と同じ火傷跡の様な呪いが降りかかるみたいで、産屋敷家で男の子が産まれたら厄除けで13歳までは女の子として育てるらしい。

 

「ひなき様、にちか様、輝利哉様、かなた様、くいな様」

 

しっかりと顔を見て名前を呼んだら御息女様達に何故か驚かれた。驚かれた理由は御館様やあまね様でも時々間違える御息女様達を一人一人顔を見ながら名前を呼んだ事に驚いたらしい。

 

「俺はこれにて失礼致します」

 

「本日はありがとうございました亮壱様」

 

「お時間がある時、是非遊びに来てください!」

 

「亮壱様ともっとお話してみたいです!」

 

「蹴鞠で遊びましょう!」

 

「私は花札をしたいです!」

 

「今、お茶を淹れる勉強をしていますので飲みに来てください!」

 

あまね様達に見送られながら俺は玄関を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってください!!」

 

御館様の屋敷を後にして昼餉を食べに行こうと鶏大根の美味い食事処へと向かう為に歩き出すと、後ろの方で女性の声が聴こえると同時に俺の羽織が力強く掴まれ足を止めた。後ろを振り向き、羽織を掴んでいる人を確認すると御館様の屋敷に居た蟲柱様だった。

 

「強引に呼び止めてしまいすみません」

 

「蟲柱様ですよね?何か自分に御用でしょうか?」

 

「今から蝶屋敷に来てもらいたいのですが、何か御予定がありますか?」

 

蟲柱様に予定を聞かれて、これから昼餉を食べに行くと答えたら、蟲柱が所有している蝶屋敷で昼餉をご馳走すると言われた。何故、俺を蝶屋敷に連れていきたいのかと理由を聞いたら、俺が本当に蟲柱様の姉である元花柱様を助けたのか確認をしたくて連れていきたいらしい。

蟲柱様の真剣な表情に鶏大根定食を夕餉に回して、蟲柱様の隣を歩きながら蝶屋敷に向かった。

 

 

私は一つ歳下の男の子と蝶屋敷に向かって一緒に歩いている。

私に歩幅を合わせてくれている冨岡さんより無表情な男の子は上弦ノ弐に襲われ、絶対絶命だった元花柱・胡蝶カナエ...私の姉さんの命を救ってくれた恩人かもしれない男の子...。

姉さんが手も足も出ない上弦ノ弐を本当に退けたのか、榊亮壱さんを見ていました。隙あらば、脇腹に指で突こうと狙っているのですが──全く隙がありませんでした。他の柱達でも、多少の隙が出来るのに、榊亮壱さんには全く隙がないんです。

 

「どうかしましたか蟲柱様?」

 

「何でもありませんよ榊さん」

 

「蟲柱様である貴女は、俺より上の立場ですのでさん付けはお止め下さい」

 

「分かりました、それでは亮壱君と呼ばせてもらいますね」

 

亮壱君はコクリと首を縦に振って、再び黙ってしまいました。此処で会話を途切らせたら、この子は蝶屋敷に着くまで黙っているのかもしれないと思い、会話を続けようと蝶屋敷に着くまで質問をし続けました。




大正コソコソ話!!
亮壱はあまり異性と関わった事が無く異性である、しのぶの隣を歩いている時は心臓がバクバクさせていた。

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