幽霊に呼吸を習いました   作:星天さん

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日輪を継ぐ者…③

しばらくの間、炭治郎は声を出しながら溜めていた涙を流していた。炭治郎の泣き声を心配そうに、うどん屋の店主が見ていたが、炭治郎の事は大丈夫だと一声をかけると、うどんの仕込みに戻って行った。

俺の膝に座っている禰豆子も、泣いている炭治郎の頭を一緒に優しく撫でていた。泣いていた炭治郎は、溜めていた涙を流しきった様だ。泣き終わった炭治郎は少し照れた様子で、真っ赤になっている目元に残っている涙を羽織の袖で拭いていた。

 

「長男なのにお見苦しい所を見せてしまいすみません…」

 

「気にするな…。ああいう時は満足するまで泣いた方がいい…溜め込みすぎるのは体にも心にも悪い…」

 

最近の長男は泣いてはいけないのかと不思議に思いながら、うどん屋の店主が煎れてくれた茶を啜った。俺が茶を啜っている間、炭治郎は食べ途中のうどんを一啜りで食べきった。炭治郎が食べ終わり、うどん屋から移動しようとした時…。

 

「にゃ〜ん」

 

「茶々丸…」

 

お子様と婦人を送っている時、俺の前に現れた珠世さんが飼っている猫の茶々丸が再び俺の前に現れた。突然現れた茶々丸を不思議そうに見ている炭治郎を他所に、茶々丸は[着いてこい]という感じで俺を見た後、多分珠世さんが居る場所へと案内をしてくれようと歩き出した。

 

「着いて行くぞ炭治郎、禰豆子…」

 

「は、はい!」

 

「ムー!」

 

俺達は、茶々丸の後を追って走った。幸いにも茶々丸は、俺達に合わせて歩いてくれているお陰で、茶々丸との距離は離されずに一定を保って着いて行けた。

茶々丸に着いて、しばらく歩き続けていると前方に見知った顔が腕を組んで、俺達を見ていた。

 

「久しぶりだな亮壱。相変わらず表情は無表情のままだな」

 

「事実だから何も言えないが、久しぶりに会った者にかける言葉では無いと思うのだが…」

 

久しぶりに会った愈史郎と言葉を交わしている他所で、炭治郎は愈史郎を見て困惑していた。炭治郎は嗅覚が常人より優れているらしく、色々な匂いを嗅ぎ分けることが出来る。だから匂いで愈史郎を鬼と認識しているが、人を食べず、珠世さんが作り出した鬼である愈史郎が他の鬼と匂いが違うと困惑しているみたいだ。

 

「亮壱さん、この方は一体…」

 

「匂いで嗅ぎ取れていると思うが…。目の前にいる愈史郎は、禰豆子と同じく人を食わない鬼だ…」

 

鬼である愈史郎が堂々と鬼殺隊の前に現れた事に対して困惑している炭治郎に、愈史郎は禰豆子と同じ人を食べず生活をしている鬼だと教えた。

 

「炭治郎…。愈史郎に聞きたい事がありそうだが、後にしよう。お前が聞きたい事は、俺達がこれから行く場所に答えてくれる人が居る」

 

「分かりました…」

 

愈史郎に何かを聞きたそうにしていた炭治郎にこの場は耐えてもらい、愈史郎の後に続いて歩を進めた。

 

 

 

 

愈史郎の後に着き、しばらく歩き続けていると愈史郎は何も無い所で立ち止まった。愈史郎は血鬼術を使い、打倒無惨を掲げながら珠世と茶々丸の三人で暮らしている隠れ家を隠している。愈史郎が一度だけ血鬼術を解くと、何も無かった場所に突然、大きな屋敷が現れた。

 

「さっさと入れ」

 

炭治郎と禰豆子を先に中へ入れてから、俺、愈史郎の順に珠世さんの屋敷内に入った。愈史郎は入って直ぐに血鬼術を屋敷全体に施してから、珠世さんが待っている場所へと案内をしてもらった。愈史郎の案内で屋敷内にある和室の中に入ると、珠世さんが俺達を待っていた。

 

「お久しぶりですね、亮壱さん」

 

「お久しぶりです珠世さん…」

 

一年ぶりの再会の挨拶を済ませ、用意されている座布団の上に座った。珠世さんは炭治郎達にも座る様に促し、炭治郎は戸惑いながらも座布団の上に座った。

 

「茶だ。一応、お前らは珠世様の客だからな…」

 

「丸くなったな愈史郎」

 

「うるさい…。黙って飲んでいろ」

 

愈史郎が出してくれた茶で一息ついてから、珠世さんが茶々丸を寄越してまで俺達を此処に呼んだ理由を尋ねた。珠世さんは視線を俺から禰豆子へと変えた。

 

「亮壱さん達を呼ばせて頂いたのは、そちらに居るお嬢さんについてお聞きしたくて呼ばせて頂きました」

 

珠世さんは炭治郎が浅草に入った時、鬼殺隊の人間が鬼を連れて居るのを不思議に思い、此処に連れて来ようと考えていた様だ。珠世さんは炭治郎に声を掛けようと近づいたら、炭治郎が突然走り出してしまい、炭治郎の後を追い、追った先で鬼の首領である鬼舞辻無惨、そして俺を見つけ、この隠れ家に俺と共に炭治郎達を来させる為に茶々丸を案内に出したと話した。此処に連れて来た経緯を聞いてから、珠世さんは炭治郎達に自己紹介をすると炭治郎は自身の自己紹介と禰豆子の自己紹介を行った。

 

「あ、あの!お聞きしたい事があるんですが!」

 

「何でしょうか?」

 

炭治郎は自己紹介を終えると、この屋敷に来る道中で愈史郎に聞こうとしていた事を珠世さんに尋ね始めた。

 

 

 

 

「人の怪我を手当して辛くありませんか?」

 

「人の怪我を手当していてもつらくないですよ?普通の鬼よりかなり楽かと思います。私は、私の体を随分弄っていますから鬼舞辻の呪いも外しています」

 

「かっ、体を弄った?」

 

亮壱さん、珠世さんから食人行動は無いと聞いているけど…鬼になった以上、人の血を見てしまったら人を食べたいと思うのが本能だが、珠世さんは自分の体を改造して飢餓状態にはならず、少量の血だけで満足して鬼舞辻無惨の呪いも外していると話してくれた。愈史郎さんも同じなのかと聞くと、愈史郎さんは珠世さんが200年の歳月と研究によって、たった1人だけ鬼にしたらしい。

 

「愈史郎を鬼にしたのは、死にそうだったこの子を延命措置の為にしました。私は鬼舞辻無惨の様に、鬼を増やそうとは考えていません」

 

この言葉を発した時の珠世さんからは嘘、偽りの無い清らかな匂いがしていた。その匂いで、珠世さんは信用出来る人だと判断した。

 

「珠世さんは鬼を人に戻す方法を知っていますか?」

 

「はい、鬼を人に戻す方法を知っています」

 

「本当ですか!?教えてください!!」

 

鬼を人に戻す方法──鬼舞辻無惨によって鬼にされた禰豆子を人に戻す方法を知っていると言った珠世さんに、その方法を聞こうと近づいたら愈史郎に投げ飛ばされた。

 

「愈史郎...」

 

「殴ってはいません!投げただけです!」

 

「それもいけません」

 

珠世さんから改めて、鬼を人に戻す方法について話してくれた。

 

「どんな傷にも病にも、必ず薬や治療方法があるのです。ただ、今の時点では鬼を人に戻すことは出来ない。ですが、私たちは必ずその治療方法を確立させたいと思っています。治療薬を作る為にはたくさんの鬼の血を調べる必要があります」

 

鬼を人に戻す薬を作るには多くの鬼の血を調べなくては行けないらしく月に2、3回、亮壱さんに鬼の血の採取を頼んでいると言った。

 

「禰豆子は、他の鬼と比べるとどうなんですか?」

 

「禰豆子さんは今極めて特殊な状態です。二年間眠り続けたとのお話でしたが恐らくはその際体が変化している。通常それ程長い間人の血肉や獣の肉を口にできなければ、まず間違いなく凶暴化します。しかし、驚くべきことに禰豆子さんにはその症状が無い。この奇跡は今後の鍵となるでしょう」

 

禰豆子の状態について詳しく教えもらった後、亮壱さんとは何時から協力関係になったのか聞こうとした時だった...。

 

「「伏せろ!!」」

 

 

ドンッ!!

 

 

愈史郎さんと亮壱さんの緊迫した声に全員が伏せた瞬間、突然家の中に毬が投げ込まれた。投げ込まれた毬はまるで生き物の様に暴れ回っていた。生き物の様に暴れ回る毱だったが、亮壱さんに近づいた瞬間、亮壱さんが刀を抜く所を見てないのに毱が細切れに変わった。

 

「キャハハッ、矢琶羽のいうとおりじゃ。何も無かった場所に建物が現れたぞ」

 

「巧妙な物を隠す、血鬼術が使われていたようだな。そして鬼狩り達は鬼と一緒にいるのか?どういうことじゃ。それにしても朱紗丸。お前はやることが幼いというか・・・・・・短絡というか・・・・・・汚れたぞ、儂の着物が丸暗記に頼らないで汚れた」

 

「うるさいのう、私の毬のお陰ですぐ見つかったのだから良いだろう。たくさん遊べるしのう。それに着物は汚れてなどおらぬ神経質めが」

 

愈史郎さんの血鬼術が施されていた札がヒラヒラと地面に落ち、俺達が入ってきた出入り口に二体の鬼が立っていた。




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