鼓屋敷…前編
「頼む!!頼む!!俺と結婚してくれよ〜」
俺と炭治郎の鎹鴉に付いて次の任務地へと向かっている道中、田んぼ道のど真ん中で珍妙な光景を目にしていた。田んぼ道のど真ん中で、たんぽぽの様な髪の少年が三つ編みで可愛らしい女の子にしがみついて、結婚してくれと泣きながら頼み込んでいた。たんぽぽ頭の少年から求婚を受けている女の子は困った顔をしながら、しがみついているたんぽぽ頭の少年を引きがそうとしていた。
「亮壱さん...あれは何でしょうか?」
「こんな光景は初めて見る…だが、現状を見ると、嫌がっている女性にたんぽぽの様な髪色の少年が迫っている様に見える」
俺は自分なりに目の前の光景について考え、炭治郎の質問に答えた。炭治郎も目の前で起こっている光景は初めての事だった様で、どうすればいいのかと俺と一緒に考えていた。どうすればいいのか考えていた時、小さな雀が俺達の所に飛んできて、俺の肩に止まった。雀は俺の肩に止まると、俺と炭治郎に何かを伝えようとして、鳴いたり、小さな体を一生懸命動かしていた。
「チュン!チュン!チュン!チュン!!」
「ふむふむ、なるほど...。亮壱さん!この雀はあそこにいる人の鎹雀みたいです!そして、さっきから女性を困らせてるから助けて欲しいそうです!」
「止めに行くぞ炭治郎…」
困っている雀の為に、俺達はたんぽぽ頭の少年に近づいた。炭治郎がたんぽぽ頭の少年を女の子から引き剥がし、俺は引き剥がした拍子で尻もちを着きそうになった女性の後ろに回り、支えた。
「道の真ん中で何をやっているんだ!!その子と雀を困らせるな!!」
「え、お前は最終選別の...」
たんぽぽ頭の少年は炭治郎が最終選別を受けに行った時に居たらしく、炭治郎の同期で今回の合同任務の相方のようだ。たんぽぽ頭の少年を炭治郎に任せて、俺は掴まれていた女の子に話しかけた。
「知り合いが迷惑かけて申し訳ない…。この場は私達が持ちますので、行ってください…」
「はい!ありがとうございました」
「ちょ!その子は俺と結婚するから勝手なことするなよ!その子は俺の事が好─グフォ!!」
たんぽぽ頭の少年は最後まで言い切る事無く...女性にビンタをお見舞された。女性は、頬に一発ビンタをしても満足してない様でビンタの嵐を浴びせ始めた。俺と炭治郎は、慌てて止めに入った…。
「お、落ち着いてください」
炭治郎はたんぽぽ頭の少年を、俺は女の子を軽い羽交い締めでビンタの嵐を抑えて少し距離を取ってから、羽交い締めを止めた。
「何時、私が貴方を好きと言いましたか!!道の真ん中で蹲る貴方を心配して声を掛けただけです!」
「ええ!?俺の事が好きだから声をかけてくれたんじゃないの!?」
「違います!!私には結婚を約束している人がいますので有り得ません!!それに結婚するなら私は貴方より、後ろの方と結婚しますよ!」
「ええ!?」
「そんなに元気ならもう平気ですね!さようなら!!」
一連のやり取りで俺も巻き込まれたが、怒って帰って行く女性を静かに見送った。見送ってから直ぐの事、たんぽぽ頭の少年が俺と炭治郎にしがみついて結婚出来なくなった責任を取れと泣き叫び始めた。
「お前らが邪魔するから結婚出来なくなったじゃないか!!いいか!俺は凄く弱いんだ!俺が結婚出来るまでお前達で俺を守れよな!」
「俺の名は、竈門炭治郎だ!」
「俺の名は…榊亮壱」
「俺は我妻善逸です!」
善逸は、女に騙されて背負わされた借金を育手が肩代わりする変わりに鬼殺隊の世界に足を踏み入れた様だ。善逸は、過激な妄想癖があるみたいで、鬼に生きたまま耳から脳髄を吸われて殺されると、体を大きく仰け反りながら泣き叫んでいた。
「どうして善逸は恥を晒すんだ?」
「言い過ぎだろ!」
炭治郎の中々の一言に、善逸は大声を上げた。俺が関わっている同期は真菰しか居らず、炭治郎と善逸のこういったやり取りが少し羨ましく感じていた。真菰との仲は良好だが、男と女では会話等で少し気を使って話す為、男同士でそういったやり取りをしてみたいと思っている…。
善逸を泣き止ませてから次の任務地へと向かっていた。善逸は今回の合同任務の相手だったみたいで、田んぼ道を三人並んで歩いていた。しばらく歩き続けていると、隣に居る善逸が腹の虫を鳴らした。
「はぁ...。落ち着いたら腹が減ってきた...」
「腹を満たすものを持ってないのか?」
「無いです...」
腹を空かせている善逸の前に、次の任務地に行く道中で買っていた笹の葉で包んでいる三つのおにぎりを差し出した。本当は二つだけ買ったのだが、気前の良い店主におまけと言われて三つになったから善逸に上げる余裕が出来たんだ。
「左から昆布、おかか、梅干しのおにぎりだ。好きなのを一つ選べ」
「いいんですか?」
「腹を空かしているのだろう?これから任務へ赴くのに腹を空かしては戦えない…」
「ありがとうございます亮壱さん!」
善逸は昆布、炭治郎はおかか、俺は梅干しのおにぎりを取り、何処か腰を下ろせる場所に行き、三人でおにぎりを食した。善逸がおにぎりを食い終わると、少しだけやる気を出してくれた様で、泣き言の数が減り、少しだけ静かになった。
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