幽霊に呼吸を習いました   作:星天さん

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リアルの方が忙しくて中々投稿出来ずに申し訳ございません!


鼓屋敷…後編

潜入した屋敷内に鼓の音が聞こえた瞬間、目の前に居たはずの炭治郎達の姿が消えた。炭治郎達が消えただけでなく、さっきまで居た場所とは、異なる内装の部屋に移動させられていた。全員と離れ離れになり、一人になった俺は兄妹が連れ攫われた兄を探しながら、炭治郎か善逸と合流する為に走った。屋敷内を探索しながら走っていると、この屋敷に入ってから鬼の気配を三つ感じていたが、一つ鬼の気配が屋敷内から消えた。

 

「人間だァ!!」

 

「体の大きな鬼か…」

 

鼓の音が聞こえて来る前に兄妹の兄を探すか、炭治郎か善逸と合流する為に廊下を走っていた。俺が居た位置から少し先の方に鬼の気配を感じ、走るのを辞め、その場に立ち止まった。その場に立ち止まって直ぐ、右側から巨漢な鬼がゆっくりと歩きながら現れた。

現れた巨漢な鬼を直ぐに斬ろうと日輪刀の柄に触れようとした時、俺の後ろから誰かが慌ただしく走りながら向かっているのを感じた。目の前の巨漢な鬼に警戒しながら後ろを振り返ると────頭は猪で上半身裸の珍妙な者が猪突猛進と大きな声で叫びながら此方に向かって走ってきていた。

気配は人間だが念の為に透き通った世界に入り、走ってきている者の体の構造を確認した。

確認した結果、正真正銘の人間だった。猪人間の腰周りを見ると、刃を鞘ではなく布で巻いている日輪刀を二振り持っていた。

 

「見つけたぜ鬼!!屍を晒して俺の踏み台になれ!!」

 

我流──獣の呼吸参ノ牙・喰い裂き!!

 

猪人間から聞いた事が無い呼吸の名と独特の呼吸音を発しながら、両脇に差している日輪刀に触れると、巻かれていた布が解けた。布が解け、刀身が顕になった日輪刀は、所々が欠け、大工が使うノコギリの様な形状をしていた。数々の隊士と任務に当たった事があるが、ノコギリの様な日輪刀を持ち、獣の呼吸を使う隊士を見たことは1度も無い。目の前に居る猪人間は、今年の最終選別を乗り越えたばかりの新人隊士ではないかと考えた。俺が考えている間に、猪隊士はノコギリの形状をした日輪刀で鬼の両腕を斬り飛ばし、首を斬った。首を斬られた鬼の体は灰に変わった。

 

「動きに無駄が多いが…中々の動きだ...」

 

猪隊士を評価していると、鬼を斬った猪隊士は俺の方に振り返り日輪刀の剣先を向けた。何故剣先を俺に向けたのか不思議に思っていると、突然走ってきて斬りかかってきた。迫り来る二振りの日輪刀を自分の日輪刀を即座に抜き、迫り来る日輪刀を弾いて距離をとった。

 

「いきなり何をする?隊律で隊士同士の争いは御法度だぞ…」

 

「お前から強い感じがする!俺と勝負しやがれ!!」

 

「待て…。今は屋敷内に居る鬼を討伐するのが優先、お前の相手はその後で受ける」

 

「はぁ!?今勝負って言ったら勝負だ!!」

 

制止も聞かずに猪隊士は、俺に向かって走り出した。猪隊士は俺に接近すると、独特の呼吸音と共に技を仕掛けようとした時だった...。ポン...と、しばらく聞こえなかった鼓の音が聞こえ、今いる位置から再び強制的に移動させられた。

 

「また移「亮壱さん!!」やっと合流出来た…」

 

次に移動させられた部屋で、炭治郎、てる子、屋敷に入る前には居なかった子供が居た。その子供は、正一、てる子の兄の様で、てる子が泣きながら兄の清にしがみついていた。てる子達の兄が鬼達の巣窟に居ても生きられていた理由は、この屋敷の主である鼓を体から生やしている鬼が落とした、強制的に移動させられる鼓を鬼が来る度に叩いて逃れていたらしい。

 

「屋敷内に感じる鬼の気配は残り一匹…。その鬼は徐々に俺達の方に向かって来ている様だ...炭治郎」

 

「はい!何ですか亮壱さん?」

 

「俺が残り一匹の鬼を倒す…。お前はその子達と一緒に居てくれ…」

 

 

────極上の稀血の匂いがする...

 

 

 

炭治郎に子供達を守る様に指示を出した時だった。

正面隣の部屋に眼球が裏返っている鬼が稀血の匂いを嗅ぎつけてやって来た。俺は迎え撃つ為に、炭治郎、てる子、清の居る部屋を出て隣の部屋に移った。隣の部屋に移り、清に鼓を叩く様に言おうとしたら、炭治郎が俺の方に来てしまった。この部屋に炭治郎が入った瞬間に清が鼓を叩いた。

 

「何故…来たんだ炭治郎?あの子達と居ろと言ったはずだ…」

 

「すみません亮壱さん!どうしても亮壱さんの戦いが見たくて!」

 

「はぁ...来てしまったものはしょうがない…。鬼の相手は俺がする…炭治郎はその場から動くな」

 

「はい!」

 

「稀血...。貴様を喰らい...俺は再び十二鬼月に戻るのだ!」

 

日輪刀を抜き、怪我が治りきっていない炭治郎を後ろに下がらせた。体の所々から鼓を生やした鬼は1歩1歩と近づき、部屋の中に入ってきた。鬼は部屋に入った瞬間、腹以外の鼓を手を素早く動かして叩いた。鬼が鼓を叩くと、左右上下に部屋が動いた。

 

「屋敷内を自由に操る血鬼術…。厄介だ」

 

「亮壱さん!俺も手伝います!」

 

「怪我人に手を借りる程…俺は弱くないと思っている。最初に言ったように…炭治郎は大人しくしていろ」

 

鬼殺を手伝おうとする炭治郎の申し出を断り、俺は呼吸を整えた。あの兄弟妹を家に返し、怪我をしている炭治郎を藤の家に連れて行く為に鬼の首を斬ろうと走った。俺が走ると鬼は腹に生えている鼓を強く叩いた。腹の鼓を叩いて直ぐ、嫌な予感がしてその場を飛び退くと、大きな獣が引っ掻いた跡のようなものが元いた場所に刻まれていた。鼓鬼の有する血鬼術を全て理解した俺は、肺に多くの空気を取り込みながら首を斬れる位置まで接近した。

 

「日の呼吸…漆ノ型・斜陽転身」

 

鼓を叩こうとする鬼の腕と共に首を斬った。首を斬ると、鬼の体は力無く倒れていった。鬼の首を斬り、日輪刀を鞘に収めると首だけになった鬼が俺に話し掛けた。

 

「小生の…小生の血鬼術はどうだった?」

 

「鬼にこんな事を言うのは鬼殺隊としてあるまじき行いだが…凄いと思った」

 

「そうか…小生の血鬼術は凄かったか──」

 

鼓鬼の体と首は灰に変わり、目の前から消えた。鼓鬼の首が転がっていた場所は、血では無い何かで濡れた跡が残っていた。




読んでいただきありがとうございますm(__)m

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