幽霊に呼吸を習いました   作:星天さん

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親に捨てられ身寄りの無い主人公を救ってくれたのは、あの藤の家のマッハ婆さんです!


日輪の恐怖

最終選別当日の早朝...。

日が登ってきたと同時に目が覚めた俺は最終選別に向かう為の身支度を始めた。

 

「おはよう亮壱」

 

「おはようございますお祖母様.....」

 

最終選別への身支度を済ませ、あとは鬼を倒す唯一の武器『日輪刀』はどうやって入手すればいいのかと考えているとお祖母様が細長い物を包んだ紫色の風呂敷を持って部屋に入ってきた。

 

「お祖母様、その風呂敷は一体なんですか?」

 

「これは私の夫が生前使っていた物だよ」

 

お祖母様はそう言いながら手に持っていた風呂敷を床に起き広げて包んでいた物を見せてくれた。

紫色の風呂敷で包んでいた物は鞘に納まっている一本の刀だった。

 

「私の夫は元鬼狩りだったんです。私の夫、生きていれば亮壱にとってはお祖父様だった人の日輪刀です」

 

「大事なお祖父様の形見を何故俺に持ってきたんですかお祖母様」

 

「これを最終選別へ行く亮壱に託したくて持ってきました」

 

「お祖父様の形見.....抜いてみてもいいですか?」

 

「どうぞ」

 

お祖母様から許可を貰い刀を鞘から抜くと刀身は普通の刀と同じ色だった。

鬼殺隊についてお祖母様から少し教わった時に日輪刀は別名、色変わりの刀と呼ばれているのだと聞いた。

だが、お祖父様が使っていた日輪刀に色がなかった。

お祖母様がお祖父様は呼吸の適正が無かったらしい、呼吸の適正がないと言われたお祖父様はそれでも諦めずに鬼殺隊に入り命尽きるまで鬼を狩っていたそうだ。

 

「その日輪刀は今日の為に使えるように打ち直してもらいました。あの人の想いも一緒に持って行って欲しい」

 

「分かりましたお祖母様。この刀有難く使わせていただきます」

 

改めてお祖母様から授かった日輪刀を握ると刀身の色が徐々に黒く染まっていき黒い刀身へと色が変わった。

これで全ての支度を終えた俺はお祖母様からお小遣いを貰ったり、最終選別場所である藤襲山までの道や街を通る際に日輪刀を見られないように隠し方を教えてもらった。

 

「それではお祖母様。行ってきます」

 

「行ってらっしゃい亮壱」

 

お祖母様は門の外まで見送りに来てくれ切り火で俺の無事を祈りながら見送ってくれた。

 

 

満月が暗い夜道を明るく照らしている夜に私は大事な二人の妹、しのぶとカナヲに行ってきますと言ってから蝶屋敷を出て花柱である私が管轄している地域の見回りをしていた。

 

「やあ!今日はとても良い夜だね!」

 

見回りをしている私の前に現れた白橡色の髪に虹色がかった瞳の屈託のない笑みを浮かべている男がまるで旧知の知り合いの様に話しかけて来た。

そして...その瞳には上弦ノ弐と書かれていた。

 

「俺の名前は童磨!可愛い君の名前を教えてよ!」

 

「上弦ノ弐に教える名前は持ち合わせてないわ」

 

私は日輪刀を抜き構えて上弦ノ弐の一つ一つの動きに警戒をしていた。

 

「へぇ〜、君、僕と戦うつもりなの?」

 

「私は柱として貴方を逃がす訳にはいかないもの」

 

「こんなに可愛いのに柱なんて凄いね!でも...俺には勝てないよ?」

 

上弦ノ弐が手に持っている扇を構えた瞬間に今まで戦ってきた鬼では感じた事がなかった緊張感がはしった。

先手必勝と上弦ノ弐へ攻撃を仕掛けようと一歩動いた瞬間...

 

「うん!凄く可愛いね!」

 

上弦ノ弐が何時の間にか目の前に接近されていた。

 

「花の呼吸弐ノ型・御影梅!」

 

接近してきた上弦ノ弐を倒そうと技を繰り出したが──

 

ガキィン!!

 

私の刀は上弦ノ弐が持っていた扇によって受け止められてしまった。

私の攻撃を受け止めた扇はただの扇では無く鉄で作られているものだと理解した。

 

「花の呼吸か〜可愛い君にはピッタリの呼吸だね!」

 

ザシュッ!!

 

上弦ノ弐は笑顔でそう言いながら鉄扇で素早い攻撃を放ち私は防ぐ事も出来ずに斬られ血を流し後ろに吹っ飛び仰向けに倒れた。

 

「ごめんね?痛かったよね?でも大丈夫!直ぐにその苦しみから救ってあげるから!」

 

「結構です。それに貴方には救われたくないわ!」

 

私は刀を地面に刺して杖の様にして立ち上がり再び構えた。

正直、目の前にいる上弦ノ弐には勝てないと分かっていても柱として責務を全うしなければならない。

余裕そうに笑っている上弦ノ弐に一太刀浴びせようと走り出し、花の呼吸を繰り出そうとした時だった。

 

「ゲホ!!ゲホ!!」

 

肺に違和感を感じ咳き込むと血を吐き出していた。

 

「あ!言い忘れてたけど俺の血鬼術は氷なんだよね!君が俺の方に来る前、血鬼術使ったからそのせいで血を吐いてるんだよ、俺の前で呼吸は使わない方がいいよ?って言っても遅いよね!」

 

呼吸も使う事が出来ず肺を血鬼術でやられ地面に膝を付き血を吐いている満身創痍の私にもう戦える力と戦う術を失った私は上弦ノ弐が殺しにくるのをただただ待っているしか無かった。

 

「哀れな君を救ってあげるね...」

 

上弦ノ弐が私に手を伸ばした時だった...。

上弦ノ弐は私に手を伸ばしていた手を引っ込めて勢いよく後ろへと下がっていた。

 

 

勝てないのに俺に向かってきた哀れな可愛い女の子を救ってあげようとした時だった。

俺が女の子を救ってあげようと触れた瞬間に首が斬られて飛んで行く様な映像が見えた。

その映像が見えた瞬間に後ろに飛び女の子から距離を開けて前を見ると女の子の後ろから腰に刀を提げてこちらに向かってくる額に黒死牟殿と似ている痣を持つ少年が居た。

さっきの首を斬られた映像は何かの勘違いだろうと決めて少年と女の子のやり取りを見ていた。

 

 

最終選別へ向かっている途中で妙な気配を感じてその場へ来てみたら屈託のない笑みを浮かべている男と血を吐き倒れている女性が目に入った。

屈託のない笑みを浮かべている男が女性に触れようと手を伸ばしていた時、殺気を飛ばすと男は焦ったように後ろへ飛んで距離をとった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ...なたは?」

 

「榊亮壱と申します。最終選別へ行こうとしていたら妙な気配を感じたので此処にやって来ました」

 

「隊士じゃ...無い...の?」

 

まだ隊士では無いと答えると女性は血混ざりの咳をしながら直ぐに逃げるようにと言ってきたが、男として満身創痍で苦しんでいる女性を放って置ける訳が無く日輪刀を抜いた。

 

 

「そこを退いてくれないかな?俺は今からその哀れで可愛い女の子を救ってあげないといけないんだ!」

 

「哀れ?」

 

童磨がカナエを哀れとそう言った時、亮壱は怪訝な顔をして言葉の真意を聞いた。

 

「だって勝てもしないのに俺に向かって来て、今じゃ苦しそうに血を吐いて倒れてるんだよ?哀れで可哀想だから俺が救ってあげないといけないんだ!」

 

「そうか...」

 

ダッ!!ザシュッ!!

 

童磨が笑顔で亮壱に言った時だった、亮壱は誰も目に追えない速さで一瞬で童磨に近づき右腕を根元から切り落とした。

童磨の腕を切り落とした亮壱の刀は赫く色が変わっていた。

 

「びっくりしたよ!凄く速いね君!でも、腕を斬り落としても直ぐに再生するんだよね!」

 

亮壱の動きに驚きはしたが斬り落とされたのは腕だからと甘く見ていた童磨に動揺がはしった。

 

「う、腕が再生しない?」

 

「どうした?焦っているのか?さっきまでの屈託のない笑みが消えているぞ?」

 

童磨は何とも言えない恐怖を感じ距離を置こうと動いた瞬間に亮壱は残りの左腕、両足を斬り落とし、童磨を達磨に変えた。その光景に花柱であるカナエは驚きを隠せなかった。

 

「弱い...弱すぎる」

 

達磨にされた童磨は今までに感じたことが無かった感情が精神を支配していた。

童磨の精神を支配している感情は『恐怖』だ。

今まで自分の力に自信を持っていた童磨は手も足も出ずに一方的に斬られた事が無く、ただ斬られるだけでなく鬼の再生力が使えなく為す術もない状態に追い込まれたことが無かったからだ。

 

「先程の余裕ある屈託のない笑みはどうしたんだ?」

 

「バ、バケモノ!」

 

「俺は人間だぞ?バケモノはお前達鬼だろ?」

 

「な、鳴女殿!!」

 

童磨は大声で必死に仲間の一人である鳴女の名を叫ぶと

 

ベベン!!

 

三味線の音が聞こえてくると童磨の下に襖が現れて開き、達磨状態の童磨はそのまま落ちて行った。

 

「とどめを刺し損ねた.....」

 

 

私は目の前で起きた事が今でも信じられなかった。

上弦ノ弐がまだ隊士では無い、カナヲと歳が近い男の子に恐怖して逃げていった光景に思考が纏まらなかった。

 

「女性隊士殿。俺はもう最終選別へ行かないと行けないのですが肺が一部とは言え凍らされている貴女を置いて行くのは些か心苦しいので、文句等は俺が隊士になった時に聞きますので応急処置をさせていただきます」

 

「一体何を──!?」

 

上弦ノ弐に恐怖を与えた少年は私の前まで来て──唇を重ねてきた。

 

フゥー フゥー

 

唇を重ねてきた少年は私に人工呼吸をしていた。

少年が送り込んでくる空気は熱くて血鬼術の影響で体温がかなり下がった体に熱が戻ってきて、呼吸の方も楽に出来るようになっていた。

 

「血鬼術で凍っていた肺はもう溶けていますので後はちゃんと治療を受ければ大丈夫ですのでこれで失礼致します」

 

礼儀正しく頭を下げて少年は一瞬の内に私の前から居なくなっていた。

 

 

大して強くも無い鬼に時間を割いてしまい最終選別に少々遅れてしまったが藤襲山の麓に辿り着いた。

藤襲山麓に辿り着いたのだが最終選別を受けに来ている人達が見当たらなく、黒子の様な格好人達が数人と白髪の女性だけが居るだけだった。

黒子の格好している人達はどう見ても最終選別を受けに来たには見えず、白髪の女性は黒子達に指示を出しているようで最終選別を仕切る人だと思った。

 

「お話し中失礼致します。俺は最終選別を受けに来たものですが、諸事情で遅れてしまったのですがまだ受けられるでしょうか?」

 

「はい、可能でございます」

 

白髪の女性はあまね様と言うらしく、鬼殺隊の頭の奥方様と黒子の人達が教えてくれた。

あまね様から最終選別合格条件を聞き終わってから俺は藤襲山に足を踏み入れた。




御指摘や改善場所等ありましたら是非教えてください。
今回も読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
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