彼には何も無い。
何の才能も─────無い!!

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努力すれば何でも出来る。
だから出来るまで努力して♡


痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。

 飯戸(いいと)小梨(こなし)は、努力家だ。

 何故なら何をするにしても、初めてやることで成功した事がない。

 人の数倍どころか数十倍努力して、ようやく人並みの事が出来る。

 何の才能も彼には備わっていなかった。

 故に、普通の結果を出す為に、常日頃から努力だけでやってきた。

 

 そんな彼は、何をやるにしても他人より多くの苦労と時間を費やす自分に疲れていた。

 「なんで他の人のようにささっとその場の判断で仕事をやれないのか」と彼の上司は昔は言っていたが、今は諦めている。

 寧ろ、最近は今後仕事に必要になる事を、予め予習して訓練しておくようにと、毎日仕事が終わった後に、課題を出すようにしていた。

 面倒見の良い上司だった。

 

 しかし、その課題を熟すのにさえ、小梨はいっぱいいっぱいになっていた。

 彼は日中は仕事、帰宅後は課題で自分の時間が無くなるということに苦痛を感じていた。

 尚、その課題は常人なら30分あれば終わる事だったが、小梨の場合は4時間必要としていた。

 

 そんな彼は人生に疲れてしまった。

 簡単に物事を解決して周りに尊敬されたい。

 自由時間をもっと多く手に入れて好きな事をしたい。

 そんな分不相応な望みを叶えてくれるのが、『NewWorld Online』というゲームであった。

 

 彼は睡眠時間を削ってそのゲームを始めた。

 名前はそのまんま小梨にした。

 キャラクター名を決めるところを勘違いして、ユーザー登録かと思ってしまったからだ。

 次に武器を選べと言われたのだが、勢い余って『無手』にしてしまった。

 そして続くステータスへのスキルの割り振りも行う事なく次へと進んでしまった。

 

 その結果がこれである。

 

 

小梨

Lv1

HP 40/40

MP 12/12

 

【STR 0】

【VIT 0】

【AGI 0】

【DEX 0】

【INT 0】

 

 

 

装備

頭 【空欄】

体 【空欄】

右手 【空欄】

左手 【空欄】

足 【空欄】

靴 【空欄】

装飾品

【空欄】

【空欄】

【空欄】

 

スキル

【苦行マニア】

 

 それはそうだろう。

 敢えて武器もなし、ステータスも強化しないなどとは、苦行をしたいとゲームの作り手が判断してもおかしくはなかった。

 

 【苦行マニア】の効果は以下の通りである。

 ・今後ステータスは上がらない

 ・今後スキルを入手出来ない

 ・今後レベルが上がらない

 ・死んでも暫くすればその場で復活する

 

 この【苦行マニア】のスキルは、現実での身体能力や思考能力に自信があり、ポイント割り振りによるステータスやスキルが無くとも、現実での能力だけでファンタジー世界に挑みたい人向けのスキルであった。

 

 小梨はよくわからなかったが、取り敢えずやってみることにした。

 するとイノシシがいた。

 イノシシは突っ込んで来た。

 小梨は避けきれなかった。

 小梨は苦痛の中で死んだ。

 

 

──────小梨は死亡しました。

──────小梨は復活しました。

 

 目の前にはイノシシがいた。

 小梨は回れ右をして逃げ出した。

 追い付いたイノシシに後ろから激突された。

 

 

──────小梨は死亡しました。

──────小梨は復活しました。

 

 

 目の前にはイノシシがいた。

 小梨はイノシシに避けようとした。

 イノシシは右に軌道を変えた。

 イノシシに激突した。

 

──────小梨は死亡しました。

──────小梨は復活しました。

 

 

 目の前にはイノシシがいた。

 小梨はギリギリまで引き付けて右に避けようとした。

 イノシシは右に軌道を変えた。

 イノシシに激突した。

 

──────小梨は死亡しました。

──────小梨は復活しました。

 

 

 目の前にはイノシシがいた。

 小梨はまあまあギリギリまで引き付けてイノシシを右に躱した。

 イノシシは軌道を変え…ようとして失敗した。

 イノシシは木に激突した。

 

 イノシシはダメージを受けた。

 小梨にもイノシシの頭の上のバーが減ったのが分かった。

 

 イノシシはまだ生きている。

 イノシシは突進してきた。

 油断をしていた小梨に激突した。

 

 

──────小梨は死亡しました。

──────小梨は復活しました。

 

 

 小梨はこれを延々と繰り返すしか無かった。

 その内に躱すタイミングを覚えて来た。

 更に200回程死んだ頃には、狙って近くの木に激突させる避け方も覚えて来た。

 

 

 イノシシを倒した。

 小梨のレベルが……上がらなかった。

 【苦行マニア】スキルのせいである。

 

 

 

 

 暫くするとまたイノシシが出て来たので、小梨は何度か死にながらもそのイノシシも同じやり方で倒せた。

 

 しかし、今度は大きなイノシシが出て来た。

 今までのイノシシよりも速い上に、木にぶつかっても、ぶつかった木をなぎ倒す。

 小梨は大イノシシに何度も殺された。

 疲れたので小梨はゲームを中断した。

 

 

 …朝になっていた。

 完全に遅刻する時間になっていた。

 小梨は取り柄であった皆勤賞を剥奪されて、上司にガッツリと怒られた。




努力すれば何でも出来る(それが出来る人の場合)

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