技名叫んでから殴るBLEACHが降ってきたり、かみんな目玉焼き大好きだったので実質初投稿です。
あと五千字に収まらんな?
「クハハハ!! かかってこいガキ共! カチンコソードだオラァ!」
「アハハ、ちんこだって!」
「よいしょっと……」
「ってコラ! 仕事道具で遊ばないの!」
正義は必ず勝つのだー! と叫びながらポール片手に墨字さんに突撃するルイくんとそれにカチンコで応戦する墨字さんに頭を抱える。またたくまにレイちゃんに電源コードで簀巻きにされて、ポール*1で突かれていた。
ふん、まいったみたいね、正義は負けないのよ。とレイちゃんが誇らしげに胸を張りながらドヤ顔していた。その横でルイくんもぴょんぴょん跳ねている。かわいい。
「まったく……」
けいちゃんと元輝くんが二人とも『デスアイランド』の撮影に出張っている約一ヶ月間は、ルイくんとレイちゃんの面倒を『
……いやまあ、だからといって正直ここまで墨字さんと仲良くなるとは思わなかったけど。墨字さん、一ヶ月弱の間面倒見るのが決まった時は「えーやだーめんどくせぇー」とか言っていたけど、なんだかんだしっかり面倒を見ているあたりやっぱり子供は好きなのだろう。
まったくもう。相変わらず正直じゃないんだから。くすりと微笑みながら、私はティーカップに入れた紅茶をすすった。
穂村家でも面倒を見てくれてるらしいし、ずっと私たちがやらなきゃいけないわけでもない。なんにせよ、毎日とは言わないまでもスタジオがほんわかした空気になるのは悪くなかった。
よきかなよきかな、そんなことを考えつつ備え付けの時計を見る。時刻は6時手前だ。撮影がスケジュール通りに終わってるなら──。
「今頃撮影二日目も終わってるか。
…………二人とも、大丈夫かなあ」
「なんだ柊。心配してんのか?」
墨字さんがうつ伏せのまま、ルイくんにガツガツと黒いポールで背中を突かれていた。そのままの体勢のまま顔だけ上げる。
ぽりぽりと頬を掻いて、右手に持っていたティーカップをテーブルに置いた。
「そりゃまあ。元輝くんはともかく、けいちゃんが無事に撮影出来てる気はあんましないですし」
「アイツらの母親かよテメェは。そんな気になるんだったら電話でもすりゃあいいじゃねえか」
墨字さんがぐるぐる巻きにされたコードを解きながら口を開いた。戦隊ごっこに飽きたのか、レフ板*2の周りを回っている夜凪弟妹の横で、墨字さんがパンパンと腕についたホコリを払った。
座り直しながらごきりと首を鳴らした墨字さんにジト目を向けた。
「ダメでしょ。撮影中だったらどうするんですか。迷惑なことが何なのかくらい考えてっていつも言ってますよね」
「ああ? 誰が困ろうが俺の知ったこっちゃねえよ。ていうかな、撮影してんだったら流石のアイツらも電源切ってんだろ。常識だろうが。
……なー、ルイとレイも姉ちゃんと話したいよなー?」
「姉ちゃん! 話したい!」
「お姉ちゃん大丈夫かな……友達できたかな……」
「……うーん、レイちゃんのけいちゃんへの心配が母親のソレ……」
ニヤニヤという笑みを浮かべなら墨字さんがルイくんの髪の毛をくしゃくしゃと撫で回した。
むぅ。子供を使うとかこれじゃあ断り辛いじゃないですか。ていうか墨字さんに常識説かれるのはなんかムカつく。
はあ、とため息を吐きつつスマホをバッグから取り出した。余り気は進まないけど……ええい、もうなるようになれだ。
パパッと操作してトークアプリを立ち上げて履歴を辿った。手早くアカウントを開く。
「じゃあけいちゃんに掛けますねー」
「おう。
あ、いやちょっと待て。今は元輝にしとけ」
「? どうしてです?」
「どっちでも変わらんからいいだろ」
……別にいいですけど。そう呟きながら画面を軽くスクロールした。元輝くんのアカウントはっと──ん、これかな。手早く操作して電話をかけた。撮影が伸びてないといいけど。
三回目のコールでブチっという回線の繋がる音共にガサゴソという音がした。どうやら撮影中ではなかったみたいだ。ほっと一息つく。
『穂村ですが』
「あ、元輝くん。今大丈夫?」
『……柊さん? ええと、ちょっと待って下さい……あ、大丈夫です。
柊さんから電話してくるとか珍しいですね、どうかしました?』
何か問題でもありました? と電話の向こうで首を傾げている様子が目に浮かぶ。くいくいとジャージの袖が引かれた。下を見ると夜凪兄妹が上目遣いにこちらを見ていた。少ししゃがんで目線を合わせる。
「兄ちゃんと話してるの?」
「うん、そだよ。すぐ代わるからちょっと待ってね」
「はーい」
『あれ、ルイとレイも居たんスね。
すみません、柊さん以外に頼める人いなかったんでホントに助かりました。お詫びって訳じゃないんですけど、今度何かしら買ってきます』
「いいっていいって。こういう時はオネーサンを頼りなさい。
墨字さんも子供好きだし、全然迷惑じゃないから」
「好きじゃねーっつの」
またまたぁと半笑いを浮かべがら墨字さんを見遣ると、胡座をかいた墨字さんがふんっと鼻を鳴らした。意識を通話に戻した。
「大したことじゃないんだけどさ、けいちゃん何か問題起こしてない? ちょっと心配で……。
あれ、そういえばけいちゃんいないの?」
『景ですか? アイツならゲロ吐いて寝込んでますよ』
「…………。ごめん、今なんて言ったの?」
『ゲロ吐いて寝込んでます』
……………………。
「なんでッ!? なんでけいちゃん吐いてるのッ!?」
「おい。なんだそれ傑作じゃねえか。ゴジラかアイツは」
「ちょっと不謹慎ですよ墨字さん! え、それで大丈夫だったの!? ノロとかじゃない?」
『…………。まあ、大丈夫ですよ。一晩寝れば全快するはずです』
「その間不安になるなぁ!!」
元輝くんの言葉に安心しながらゲラゲラと笑っている墨字さんにキツめの視線を送った。
ヒーヒー言いながら、ちょっと代われ、と言って手を差し出してくる墨字さんに、変なこと言わないで下さいよと釘を刺しながらスマートフォンを手渡した。
ねえねえとルイくんが私の手を引いた。純粋な瞳をキラキラさせながら、
「姉ちゃんゴジラなの?」
「……うーんそれは違うぞー」
「準備できたしさっさと行くか」
「うむ」
「了解」
朝飯を食い終わったら、意外と直ぐに撮影三日目の撮影だ。
衣装に着替えて外に出ると、じめっとした海風が頰を撫でる。今日も快晴だが、相変わらず南の島らしい湿度の高い天候は変わる予定がないらしい。
ちくしょうめ、暑いのは好きじゃねえ。
「気温が高く湿度も高い……ふむ、南の島らしい気候だな!」
「オメーもな」
「俺が熱い男なのは沖縄出身だからな」
「それって関係あるのか?」
「ねえだろ」
武光の台詞に首を傾げる元輝を尻目に、俺はため息を吐きながらロケバスを待つ。今回の撮影場所はここから大分離れた沿岸部だから移動手段は必須だ。……意外とこういう移動時間が、俺たちみたいな俳優だと撮影の大半占めてたりすんだよな。今日も出番ほぼねーし。
てことで今日メインで撮影する茜さんと夜凪は、先に出発したロケバスでロケ地に向かってる。昨日の撮影で嘔吐してた夜凪のコンディションが若干心配だったが、そんなんしてたかってレベルで良さげだから問題ねえだろう。スケジュール通りなら今ごろ特殊メイク施されてる頃じゃねーか?
「全員乗りました? じゃあ出発しますね」
「ウス」
スタッフさんの回してくれた車に乗り込んだ。一番後ろの席に
15分くらい車に揺られりゃあすぐ着く。その間に今日の撮影内容だけ確認しとくか。台本を取り出して付箋を貼ってあるところを開いた。
今日やる撮影のメインとなるシーンは竜吾が殺された次のシーン、逃走シーンだな。大まかな流れとしちゃあ、殺されると思った茜さんたち三人が丸腰で逃げていて、それを刀持って追い立てる和歌月──っていう流れになる。
和歌月が木梨を斬り捨てるってのでワンカットだ。で、茜さんと夜凪の二人は海に飛び込むシーンを後で合成する……らしい。詳しいことはわからねえが、そんな感じだって茜さんが朝飯のとき言ってた。
で、それとは別に三人が廃校舎から出て来るシーンを別に撮って終わり。
あとは細々とした撮影があるかもしんねえが、基本的にはこの3カットがメインだ。だから俺たちの撮影は今日はほぼない。
……ん、着いたな。
スタッフさんにお礼をいいながら外に出た。ボキボキと音を鳴らしながら背骨を逸らす。相変わらず長期撮影の最初は環境が変わりすぎて直ぐに慣れない。
「竜吾さん昨日でもう今週はクランクアップでしょ、何してんですか」
「昨日のシーンの続きだろ、今日。
お前がそこまで言うなら夜凪の芝居もう一度見て帰ろうと思って。負けんなよ、和歌月」
「あ、当たり前です」
……あれ?
機材とか置いてあるテントを挟んで向こう側には竜吾と和歌月がいた。竜吾は昨日でクランクアップじゃなかったか? ……まあいいか、長期撮影じゃあそういうのもあんだろ。桐山漣*3とか確かそんなエピソードあった気がするし。
……つーか問題はそれじゃねえ。
朝飯の時もそうだったが、竜吾が夜凪のこと嫌ってるあたりにわかりやすく現れてるが、なんというかいつの間にかスターズ組とオーディション組の間に対立関係が出来始めてやがる。
あんまりいい状況じゃねぇな。
スターズ俳優ってのは俺たちと違ってヒマじゃねぇんだ。こんなのが続いたら面倒になる。
スターズの対抗馬みたいな感じで『夜凪組』とか出来なきゃいいんだが……。喧嘩になったら撮影どころじゃなくなっちまう。
あ、でも木梨とかそれやらかしそうだな。一気に不安になってきた。
「監督のとこ行ってくる」
「あいよー」
お腹を押さえつつ周りを見渡していると、俺の後に続いていた元輝がそう言って、手を振りながら監督のとこに歩いて行った。俺たちも行くか。そう武光に声をかけて特殊メイクを終わらせた茜さんたちの方に近付く。
軽く手を振りながら声をかけた。
「茜さん」
「あれ、真咲くん、もう来てたんやな」
「今さっきだけどな。調子はどうだ?」
「……問題ないで。
うん、ウチも景ちゃんに負けんように頑張らんとな」
「が、がんばるわ」
「そんな緊張せんでええのに」
「いやどんだけ仲良くなってんだよ」
そう言って笑い合ってる二人に、俺は今までの面影どこいったよと嘯きながら小さく笑みを浮かべた。
ぐっと両手で握り拳を作っていた夜凪だったが、クエスチョンマークを頭に浮かべながらキョロキョロと周りを見渡した。ねえ、と武光に声をかけ、
「武光君、元輝くんは来てないの?」
「うむ。アイツなら監督のところに行ったぞ。話があるとか」
「ふーん。なんの話なのかしら」
「すまないがわからんな」
「そう……よし。今日こそ上手くやるわ」
「その調子だ」
ぐっと意気込むその様子に、俺と茜さんは目を見合わせて静かに笑った。
がんばれよ、二人とも。
「はい、本番いきます」
「よーい」
カチン、とカチンコの音が鳴った。
撮影開始だ。同時に所定の位置から、茜さんたち3人が走り出して、その後を、刀を持った和歌月が追いかけ始める。
ジッとその様子を見つめる。……やっぱりスターズ組は基礎体力が高いな。刀という重しを持って走ってんのに、追われる3人と同等のスピードに走ってやがる。……残念だけど俺にはできねえな。やっぱり個人の筋トレの量もっと増やすべきか?
……いいぞ茜さん。息を切らせながら言葉を吐く演技。音声は後で吹き込みになるだろうけど悪くねーぞ。
刀を小脇に抱えながら和歌月が姿勢良く3人を崖側に追い詰めていく。
「行き止まりだ……!」
「飛び込んで!」
……うし、最後の台詞終了。
ここで監督がカチンコ鳴らして、このシーンの撮影は終わりだな。後は3時間後に廃校舎での撮影か。こういう開けた場所じゃ太陽光の誤魔化しが利かない分最初に回した為、ここの部分の脚本が前後してるのか。……室内とか森の中ならある程度はライトアップでなんとかなるもんだからな──
「飛び込む瞬間は東京で別撮り*4するから。
本当に飛び込まないでね、あはは、なんて──うん?」
……は?
ザボンという水飛沫が跳ねた音がする。
……。……夜凪、飛び降りたよな。
いやマジで飛び降りやがったぞアイツ!? 正気か!?
「あら」
「夜凪くん──くそ、僕が助けに!」
監督の横で撮影の様子を見ていた元輝とアキラが飛び出しかける。それを手塚監督が手で制した。無駄にサングラスを光らせながら、
「待って。カットかけるの忘れてた僕のミスだけど。せっかくカメラ回ってるし勿体無いから続けて貰おう」
「ですが……!」
「監督」
「大丈夫だから安心してくれ。
「──えい!」
……おいおいおいおい。
嘘だろ、茜さんまで飛び込みやがった。続けざまに水飛沫が上がる。隣の武光が可笑しそうに笑った。
「はっは、夜凪にあてられたな!」
「何してんだよ茜さんまで、マジかよ」
「うっ」
「クッ……待……待て!」
和歌月が木梨を斬り捨てて、木梨さんが倒れると同時に崖から飛び降りた。……あーもう。めちゃくちゃじゃねえか。これでスターズ組とオーディション組の確執が酷くなっても俺知らねーからな。
内心頭を抱える俺の視線の先で、アキラと元輝の胡乱気な視線に晒された監督が、なんとも言えない雰囲気を漂わせながら指示を飛ばしていた。
「はい、カット!
早く様子見てきて! 何かあったら大変だよ!」
「は、はい!」
撮影三日目、予定より3時間遅れて終了。
「オーディション組の子達は主に原作に準じた役。スターズ組は普段のイメージそのままの当て書き*5。
原作ファンと俳優ファン、どちらもターゲットにって感じかな。……極端だけど手堅いなあ手塚さん」
三日目の夜。
私はパチパチと二台のノートパソコンを同時に操作しながら今までの映像を確認していた。
森を歩くカット、全員が集合するカット、堂上さんのミスでリンが殺されるカット──そういう20シーン96カットを一つずつ精査して、撮影現場と俳優たちのズレと私の把握しているその流れの差異と俳優一人一人の評価を微細に訂正して、私の認識と実際の数値をすり合わせていく。
「……手堅い人だと、思ってたんだけどなぁ」
実際のところ。
今回の撮影、正直あまりいい流れとは言いにくい。撮影自体は順調に消化しているとはいえ、スターズとオーディション組の間の対立が悪化し始めてきた。
夜凪さんの"底の深さ"が、二人の女優を引きずり込み、結果として撮影全体に影響を及ぼし始めている。最悪、このままだと制御不能になってしまうかもしれない。
それは監督の撮ろうとしてる映画が撮れなくなることであり、誰も望んでいなかった映画が完成することを意味する。
それは避けなくちゃならないことで、そんなことは手塚監督が分かってるはずだ。分かった上で、采配してるはず。
となると。
「……私に夜凪さんを焚き付けてるってとこかな」
夜凪さんが海に飛び込んだトラブルでも、スタッフこそ驚いてたが、監督の指示で皆が崖から落ちてから助けに行く流れは、とてもスムーズだった。
その上、手塚監督の"せっかくカメラ回してるし、続けてもらおう"というセリフ自体がまずおかしい。
仮に撮影を続けたとしても、湯島さんが飛び降りなければ撮影を続ける意味はない。
湯島さんと和歌月さんの二人が飛び降りなければ、崖の前で立ち止まるだけなんだから。夜凪さんが飛び降りている以上、二人のシーンは合成で済むものの筈。
……だからアレは期待だろう。
続いて飛び降りてくれるかもしれないことへの期待。
──ピタリ、と手が止まった。
……このシーン。
夜凪さんが嘔吐してしまった、和歌月さんが竜吾くんを斬り捨てた時のカット。
「…………」
推測でしかないんだけど、ここで夜凪さんは和歌月さんが竜吾くんを斬り捨てて、鮮血が飛び散るところから死んでいく瞬間まできっちりイメージしていたんだろう。
夜凪さんは、
口元の血を拭う所作で、嘔吐しそうなことを隠す所作だった。
つまりあれは、竜吾くんの血が、口元にかかったことを想定した演技だった。
メソッド演技。過去の自分を投影する演技。
だから彼女が、実際に見たことがないであろう彼女が、知識でしか持っていないであろう"殺される瞬間"を具現化したということは、つまり──。
一瞬の芝居だ。時間に直せば二秒にも満たない芝居だったけど。
……知っている。
夜凪さんの演技がそういうものだと、私は知っていたはずだ。私が憧れたのは、そういう女優だったのだから。
見たことがない人に見たことのないものを見せる演技。周囲全体の観客に同じモノを見せる──観客の想像力を利用して、ありえない景色ですら見せるのが夜凪さんの芝居。
夜凪さんが嘔吐した理由はわかる。
肌の感覚、視覚、聴覚──五感において人が殺される感覚をトレースしたからこそ、夜凪さんはあの瞬間に嘔吐した。
カメラの撮影範囲に嘔吐した瞬間を映さずに、すぐ立ち上がった演技をしたように見せるその演技が行えたということは。
つまり。
夜凪景は。
俯瞰技術を、手に入れたということだ。
冷静に、正確に。撮影範囲の隙間に滑り込んでそこに余分なものを置いてくる。
『吐いてしまう自分』を変えることが出来なかったから、不都合な芝居はカメラの外側で演じてしまおうとしたのだろう。自分自身の主観の他に、カメラ三つ。四つものマルチタスクを同時にこなすことで、自分自身を俯瞰する──。
……私がどうしたって、出来なかった演技法だった。
このシーンで、夜凪さんが台詞を言うのは、少し早い。
そのせいで、予定されてた他の人の台詞は言うこともできなかったけど。
でもそれは自然なことだ。人が殺された瞬間に居合わせて、まだこの人がこう言っていないから叫ばないなんてことは、現実には到底あり得ることではない。
人が斬られたその瞬間に叫ぶ方がリアルだ。だから夜凪さんは、予定の台詞をスキップして堂上さんが斬り捨てられたその瞬間に、なりふり構わずに叫んだ。
だからこそそれは、リアルで、名演で。
「……」
くしゃり、とスーツが少し歪む。
私はふう、と息を吐いた。
「……外の空気、吸いに行こう」
「元輝くんかな、アレ」
ガコンと、アルミ缶の落下する音。
自販機でお茶を買いにコテージの外に出ると、コテージの目の前にある海岸沿いに元輝くんが座っていた。
暇そうに一人背中を揺らしている。周りに誰もいないけど、何かしてたのかな。
そんな彼の様子にくすりと微笑んで、私は自分のお茶の他にもう一本追加した。元輝くんの好きなのはこれだったよね。
忍び足で元輝くんの後ろまで行くと、彼の首筋にペットボトルを充てた。冷たっといいながらぶるりと身を震わせた。首元を摩りながら後ろを向く。
「誰だこのやろ──って、百城さん?」
「やっほー元輝くん。暇してた?」
「いや、暇といえば暇してましたけど」
「紅茶の無糖でよかったよね」
「覚えててくれてたんですか」
「当たり前だよ」
「……むっ」
昨日の焼き直しのような言葉の応酬に、ふふっと私は少しだけ笑みを溢した。相変わらずのポーカーフェイスに驚きと喜びを半々でミックスした感情を浮かべながら、元輝くんが微かにくしゃりと目尻を窄める。
「なにかしてたの?」
「ちょっと夜風に当たりに」
「そっか、私と一緒だ」
笑いかけながら、少しだけ間を空けて私は元輝くんの隣に腰を下ろした。三本のラインの入ったジャージの袖を少し捲る。両膝を立てて体育座りの要領で座り直すと、ぷしゅっとプルタブを開けて、紅茶を喉に流し込んだ。
それを見ながら、隣で元輝くんもペットボトルの蓋を開けている。琥珀色の液体を喉に流し込んでいた元輝くんが、そういえばと私の方を向こうとして。
……ああ、この場所、誰かに渡したくないなあ、なんて。
思わずそんなことを考えながら、私はこっちを向こうとした元輝くんの頬に指を這わせた。人差し指が元輝くんの頬を突く。
「……なにするんですか」
「なんでもないよ」
「なんですかそれ」
散々悩んでたのが馬鹿らしいほどに、簡単なことだった。
私が『
それだけでいい。単純明快な答えだった。
むすっとした表情をポーカーフェイスの端に微かに滲ませるその様子に、私は微笑んだのだった。
この後めちゃくちゃ虫の話した。
最後のシーンの時系列的には、ちょうど竜吾くんが「認めねえよ」って言ってる辺りですね。反省会してるくらい。
〈以下補足という名の蛇足〉
チヨコエルの内面全部書くとドロドロ過ぎて胸焼けしそうだったので爽やか風味にしたらわかりにくくなったので補足しておきます。
千世子自身は、ホモくんの景ちゃんの嘔吐に対する行動についてはプロとして割り切っているのでそれほどではありません。プロですからね(目晒し)。
その為NICE BOATされるほどではありません。ホモくん自体はクソが突くほど善人なので心配以外の感情がなかったのも大きいんですが。
どちらかといえば、自分の技術盗んだ挙句にホモくんに迷惑をかけた景ちゃんへの敵態度がやばいですね。
もう奪う気満々ですよ。コイツはやべえや……。
雪ちゃん先輩書いてたら止まんなくなって5000字に収まらなくなってきたので失踪します(今更)
長くても別にいいよな?(思考停止)
ギャンブル
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銀河鉄道編メイン
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とりあえず先進めて修羅場やっちゃう