アクタージュ『銀幕の王』獲得RTA   作:銀幕

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連日投稿(ドヤ顔)







scene18『夕凪、某、空惑い』

 

 

 

 

「う──ん……」

 

 なんというか。

 このままで大丈夫かなあ、とも。

 同時に、不謹慎ではあるけれど、面白くなってきたなぁ、とも思う。

 それも僕が映画監督という立場であるから──撮影の外にいて、映画の中にいるというある種中立に近い立ち位置にいるからだろう。 

 

 灯りを落として僅かに暗い部屋で、プロジェクターから映写された彩り豊かな映像が瞳を焼いた。

 撮影中は控えているアルコールの代わりに購入していたペリエの蓋を開ける。プシュ、と炭酸の抜ける音。軽めの泡が舌の上で弾けた。

 

 僕は映画監督だ。

 映画を作るという創作活動は、僕の頭の中を現実にするという点において一番の担い手であると言える。

 映画の失敗や責任は全て僕が負わなければならないもので、同時に求めてやまないものでもある。

 たった一本の映画のためだけに自分の人生全てを捧げられる。

 僅か数時間にも満たない映画一本で人生を駄目にしてしまう。

 そういうことに人生を懸けている()()()()()()が映画監督なのだから。

 そうやって考えれば、僕は当事者の一人だということになる。

 

 だが同時に、撮影という場所をコントロールしているのもまた僕なのだ。

 役者の暴走を抑え、滞りなく撮影を行えるよう現場を統制し、映画自体が破綻しないよう全体を俯瞰する。

 そういう仕事をこなしているのだから、僕はある種外野の一人であるとも言える。

 ……いやまぁ。

 今回に限って言えば、僕が暴走するよう仕向けている節があるのもまた事実なのだが。

 

「ただねぇ……」

 

 夜凪景。

 穂村元輝。

 ……二人に期待していない、といえば嘘になる。

 なにしろ、あの黒山の懐刀と執心相手だ。

 メソッド演技の極地の一人である夜凪景と、幼くしてあの巨匠に認めさせた穂村元輝。

 比較的使いやすい俳優である元輝君ならばともかく。

 あのブルドーザーみたいな演技しかできない夜凪ちゃんをオーディションで採用したのは、僕が彼女に可能性を見たからだ。

 周囲の考えや見積もりなど知らず、自分の道を進み、周りを変えて、暴走しながらも"誰も見たことがないもの"を生み出していく。

 

 確かにこういうリスキーな選択は僕らしくないな、と薄く笑って、僕は町田ちゃんが画面の中で逃げ惑う様子を見ながら瑠璃色の瓶を傾けた。 

 僕にしては、というよりも『スターズ』の手塚由紀治ならあり得ない選択だろう。

 アリサさんが夜凪ちゃんをオーディションで不採用とした結果内在化しつつあった風潮に逆らってまで、夜凪ちゃんを採用して脚本にねじ込んだ。

 ここまでリスキーなやり方が僕のスタイルではないのは事実で。

 

「────」

 

 ……だが。

 でも、それでも。

 僕は見たいと、思ってしまった。

 

 百城千世子の素顔を。

 百城千世子の仮面が壊れる瞬間を。

 

 同じやり方で、同じ役者を使ってやる映画に。

 僕は“大衆に求められる”百城千世子に飽きていて、そして何よりも“売れる映画を作る”僕自身に飽きていた。

 

 あの時。

 彼女の仮面の下に何かがあるかもしれないと、そう思ったあの時から、僕自身がソレを願っていて。

 だから、黒山が提示したその意見に僕は乗ったんだ。

 

 全てを壊して、まっさらに新しくできるのなら。

 見たことのないものを見ることができるなら。

 夜凪景に賭ける価値はあると、そう思っていた。

 

「手塚監督?」

「──……穂村くんか」

 

 控えめな三回のノックと、木材の軋む音。開いたドアの先には普段は流している前髪をセンターパートにした穂村くんがひょっこりと顔を覗かせていた。

 ……そういえば今日の夜には戻るって話だったね。パイプ椅子に座ったまま体を捻らせると、

 

「や、撮影おつかれさま。そっちは大丈夫だったかい?」

「予定通りでしたよ。これで俺はデスアイランド中に撮影が入ることはないですし、……ああこれお土産のピスタチオです。酒のつまみにでもどうぞ」

「いやいや、流石の僕もこのカツカツなスケジューリングで飲酒はしないよ。ま、でもありがとうね。後でいただくよ」

 

 インポート品のピスタチオが入った紙袋を受け取りながら、僕は目の前に立つ青年の顔を見遣った。

 

 俳優、穂村元輝。

 明神阿良也と同ジャンルの天才役者。

 千世子ちゃんと夜凪ちゃんを足して2で割らなかったような、といえばその異常性が伝わるだろうか。

 各々の得意分野には流石に一歩劣るとはいえ、千世子ちゃんの得意とする空間把握と、夜凪ちゃんの持つ異様な没入感を持つ演技を同時に行うという常人なら頭がイカれてもおかしくない負荷がかかっているはずなのだが。

 

 ポリポリと頰を掻くその様子は、黒山の甥っ子とは思えないほどに様になっている。正直アイツの親族とは思えないレベルの容姿である。似てるところと言えば、クセのある真っ黒の髪くらいのものだ──が。

 今は、それよりも。

 

「──何かあったのかい? スケジューリングの調整ならプロデューサーにも一言言ってくれると助かるんだけど……」

「いや、向こうの監督さんたちが気を使ってくれたみたいで。とりあえずはこっちに集中できそうです」

「そりゃなによりだ」

 

 コレは……どっちかな?

 僕の目的に、気付いて欲しくない、という不安もあるし。

 気付いていて欲しい、という期待もある。

 サングラス越しに眼を細めた僕を見て、流れていた映像に眼を向けていた穂村君が顎に手を当てた。

 

「――――」

「……なにかな?」

「いや、別に大したことじゃないんですが……」

 

 穂村君がここを空けたことで幾つのかの変化が生じてきている。

 一番わかりやすいのは夜凪ちゃんだろう。……微かな依存が見えていた彼女に、自立心が芽生えてきたのは僕としても女優・夜凪景にとっても嬉しい誤算なんだろうけど……。

 それだと予定から少しズレてしまう。

 人のいいと思われる彼のことだ。千世子ちゃんどころか、可能性は低いだろうが夜凪ちゃんに気付かれでもしたら、僕の個人的な目的は完全に頓挫してしまうだろう。

 僕の意図を完全に把握された上で、千世子ちゃんと穂村君の二人がかりで夜凪ちゃんの手綱を握ることになれば、僕にはもうどうしようもなくなってしまう。ゲームオーバーだ。

 

「────監督がやりたいのは作品の完成より、百城さんの仮面を壊すことでしょう?」

「…………ああ、やっぱり、わかっちゃってたんだ」

 

 ……あらら。

 そんな予感はしてたけど、やっぱりバレちゃってたか。

 

「いつから気付いてたんだい?」

「確信はありませんでした。今の監督の反応で、って感じですね」

「僕にカマかけ?

 やるね、黒山の血は伊達じゃないといったところかな」

「……そんな大層なものじゃないですよ」

 

 いや、この段階でそこまでわかってるのは君くらいだよ。千世子ちゃんも僕がやろうとしてることはわかってないみたいだし。

 それにしても、だ。

 ちょっと気付くのが早いな。少し想定外だ。

 彼の観察力でも、ここまで早く正確に見極められるとは思ってなかった。流石は黒山二代目。気付きと確信が予想以上に早い。

 過度の警戒……いや、元々片鱗自体はあった。見極めの甘さが失敗の要因だろうか。

 

「今のところ『あんな』演技しかできない景を採用したんですから予想自体は立てられます。

 大方景を百城さんにぶつけようとしてるってところなんじゃないんですか?」

「……あははは。

 そこまでバレてちゃ仕方ないかな」

 

 想定よりもだいぶ深いとこまでバレてるね。うん、詰みかも。

 千世子ちゃんの仮面の下にあるはずの素顔。

 僕の見たことがないものを、見たことがない百城千世子を。

 僕の心が揺れるもの。百城千世子という女優の素顔がそこにあるのならと、……そんな風に思ってたんだけど、こりゃ駄目みたいだ。

 

「で、どうするんだい? 僕がやろうとしてること、やめろとでも言うつもりかい?」

 

 あはは……。

 ここで頷かれでもしたら、そりゃもう僕が何しようと駄目な奴だ。

 二人とも僕がバレちゃったからってだけで中止するほど諦めがいいタイプじゃないってのはわかってるはず。二人揃って十中八九潰しに来るだろう。

 うん、まあこうなったらしょうがないかな。

 夜凪ちゃんが僕の予測も周りの予想も二人の努力も超えていくのを期待するしかない。

 

 あーあ。

 本日撮影12日目。

 スケジュール的にも折り返し地点はもうすぐだ。

 トラブルはあれど、撮影自体はすこぶる順調。

 けれども撮影には僕個人の個人的な暗雲が立ち込めていた。

 

 ……千世子ちゃんの素顔が見たかっただけなんだけどなぁ……。

 

 

 次の、瞬間。

 

 

 穂村くんの様子を伺うようにして、視線を向けた先にあったのは。

 誰も聞いたことのない、普段とは似ても似つかない表情を浮かべた穂村君だった。

 ────それじゃ、足りないな。

 確信が、ない。

 聞き違いだと思った。

 ゾッとするほど底の見えない瞳で、穂村君が顎に手を乗せた。スリ、と親指と人差し指で顎先を撫でる。

 どこか恐怖を覚えてしまうようなそれも、瞬きのうちにいつもの表情へと戻っていた。

 

 見間違い……かな? いや、でも……。

 両手をぶらぶらさせながら敵意がないことを話す穂村君に驚きと警戒心を高める。

 彼の台詞と表情、今までの動きから予測を立てつつ、僕は小さくため息をつき。

 

 ……まったく。

 君といい黒山といい、君の家系は好き勝手やらないと気がすまないのかい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シヌカトオモッタ……。

 

 地獄みたいだったロケ地までの移動時間を耐え忍ぶとかいうクソイベントから始まる、デスアイランド撮影13日目となりました。

 ホモくんがウルトラ仮面の撮影を終えて帰島してから一夜明けたわけですね。

 SAN値も全快し、手塚監督とのコミュもうまく行って、デスアイランド中は基本的にすべて予定通りだったというのに(例外あり)……なんなんですかこの胃に穴が開きそうな状況は……。

 まさかこれがウルトラ仮面の揺り戻しとでも……?(絶望)

 誰だよホモくんをあの二人の間においたヤツ。

 

 ぶっころがすぞ(全ギレ)

 

 そんなこんなありましたがロケ地に着きました。モウヤダオウチカエル……。

 というか車での移動中に感じたんですが、千世子ちゃんと景ちゃんの二人ともホモくんがいない間に仲良くなって……るとは口が裂けても言えないですけど、景ちゃんが若干距離詰めようとしてないですか? 気のせいじゃないですよねこれ(虚無)

 とは言っても千世子ちゃんが激塩対応から大分塩対応くらいに変化してるくらいなので。ちょっと機嫌が良かったりした時くらいの違いなので変わりないといえば変わりないんですが。……うーむ。

 

 あ、いや。これアレです。

 昨日の夜の電話が普通より長かったからその影響がここに出てきたみたいですね。その影響でしょう。なんだぁチャート通りですね!(目逸らし)

 

 ロケ地についたあとは、とりあえずは千世子ちゃんと茜ちゃんの二人が撮影の準備に入るので、少しだけではありますが一息つけます。

 大抵はここらへんで千世子ちゃん周りの景ちゃんとのコミュが入るんですが……ってあれ? なんかいつもより短い気が……み、短……いやいつも通りじゃねーか。ビビらせんじゃねぇよ(恐怖)

 

「千世子ちゃあん」

「こっち見てー!!」

「天使!」

「千世子ちゃん!」

 

「千世子が出てるってのもあんだろうが、大方番宣目的での公開撮影だろうな。茜さん、空気に当てられてないといいけど」

「うむ。まあ湯島なら問題あるまい。お前もそう心配するほどじゃないだろうさ」

「わかってるけどいてーし声でけーよ」

 

 >すごい人混みだなとボヤいたあなたに、隣に立っていた真咲と武光が言葉を付け足した。僅かに心配を滲ませた真咲の背中をバンバンと叩きながら武光が朗らかに笑った。

 

 ということで(唐突)

 気を取り直して、本日はスケジュール通りであれば茜ちゃんと千世子ちゃんの共演を行います。なので今回は海の撮影となるわけです。

 海辺に立つ千世子ちゃんと茜ちゃんの一対一での会話シーンですね。

 贅沢にも放水車六台を使って撮影を行います。使用するカメラは三台。内訳は二人が向かい合う様子を引いた位置で取るカメラで一台。千世子ちゃんのアップに一台、茜ちゃんのアップに一台となっています。

 

 このカットの内容は、カレンを信じた結果クラスメイトが死んでしまったという事実への責務を、悲哀と自己嫌悪に苛まれながら糾弾する茜ちゃんと、それでもと理想を語り茜ちゃんを諌める千世子ちゃん──というものになります。

 激情に駆られる茜ちゃんと、穏やかに決意を滲ませる千世子ちゃん。

 そういう二人の対比構造となるわけです。

 

 シチュエーションは雨です。

 基本的な演出方針は放水車から水を撒き、雨を演出し、それを大型扇風機で打ち付けるような雨に加工するものです。

 放水車の数はなんと贅沢にも六台。広範囲に雨を降らして、遠くからズーム。

 ライトはかなり拡散させ、二人だけでなく地面や雨にも当て、反射させることで質感を演出する。やっぱりここは相当凝った演出ですね。そうとう雨の質感に拘っているというか、スターズの本気度が窺えるというか……。

 

 雨の質感を出す為に広範囲に雨を降らせての演出ということで、かなり『引き』の撮影です。離れたところからのズームで撮影することになります。

 近くのカメラではなく、遠方からのズームのためカメラの間に入る雨粒の数が増えぼやけが出ます。

 結果として、普通のドラマの顔アップシーンで使われる『眉の僅かな動き』や『唇の僅かな動作』などでの感情表現は、この豪雨の中だと通じにくくなってしまいます。

 

 そのため千世子ちゃんならではの極まった表現技法が見れる訳です。

 まあ色々言いましたが絶対に見逃せないよってことですね。

 

 ……………………。

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 はい、無事もろもろが終了したみたいです(瀕死)

 撮影終了後にも景ちゃんとのコミュだったり千世子ちゃんのコミュ兼メンタルケアだったり景ちゃん千世子ちゃん二人の、お腹にダイレクトダメージのくる会話の観察を熟せば取り敢えず『デスアイランド』での久々の撮影となります(5敗)

 

 今回の共演相手は町田さんと千ちゃんです。

 刀持って追いかけてくる千ちゃんから逃げ惑う町田さんと、数日前に撮影した千世子ちゃんとのシーンで千世子ちゃんと別れたホモくんが遭遇するシーンとなります。

 

「──カツミくん!? ダメ、逃げて!」

「……ッ。お前、か……!」

 

 ……ふふふ。

 さあて、デスアイランド初の殺陣アクトです。

 テメェら! ボッコボコにしてやんよ!(ヒーローにあるまじき発言)

 お前ら二人とも私のストレス発散の的になるんだよォ! ニチアサヒーロー舐めんじゃねぇぞおおあ!!(炎上不可避)

 

 一応羅刹女編とデスアイランド後の案件の兼ね合いもあるので、なんの躊躇いもなく二人ともメンタルフルボッコにすることはできません。ここで役者やめられたらチャートぶっ壊れちゃってもう修正不可になってしまうので、二人のステ上げと役者としての『立ち方』の理解の一助になるくらいにしましょう。

 まあそれくらいに絞っても割とメンタルヤバくなっちゃうことがあるので気をつけましょう。アキラくんレベルでフルボッコには出来ませんね。

 

 やっぱ堀くんが至高なんやなって……(感嘆)

 

 あっそうだ(唐突)

 因みにデスアイランドの脚本ですが、乱数によってだいぶ変化します。クソ脚本であることには変わりないので大差はないんですが……。

 今回はリカちゃんを助けた後に景ちゃん千世子ちゃん組と再度エンカウントした後に二人を逃して死にます(無慈悲)

 結構見せ場作ってくれたので手塚監督には感謝ですね。

 

 あ、撮影アクトが終わったみたいですね。後は寝る前にでも景ちゃんとコミュ取って一先ずは終了です。

 それでは本日はここまでです。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 






仲良くなろうとして空回りしてる景ちゃん。
着々と外堀を埋めてる千世子ちゃん。
ひとつひとつフラグを積み重ねていくホモくん。
そしてとても楽しそうな手塚監督。
ホモくんの見えないところで発生する修羅場と当たり前のように投げ込まれるカオス……

字数の関係で修羅場は次回となります。
そしてその前にアクタージュの甘めな短編の構想が降ってきたんで、ちょっとそっち書きたいので元々遅いのがさらに遅くなります。申し訳ねぇ……。

じゃあ疲れたんで疾走しますね……。

ギャンブル

  • 銀河鉄道編メイン
  • とりあえず先進めて修羅場やっちゃう
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