お待たせしました、ボチボチ執筆再開していきます。
閉めます(問答無用)
部屋を間違えましたね。
ホモくん、倫理観がしっかりしてる以上、基本的には鍵を閉めているので鍵が開いてる訳がありません。そしてここは撮影所。つまり隣人がいるということです。これ即ち部屋を間違えたことを意味します。
Q.E.D、照明終了。我ながら完璧過ぎる理論武装です。ABC問題ですら霞んで見えます。
勝ったなガハハ、風呂入ってくる。
…………………………。
手持ちの鍵を見ます。205号室ですね。
ドアに彫り込まれたタグを見ます。205号室ですね。ファック(直球)
落ち着きましょう。ここは離島です。ストーカーぶっ殺ルートではないはず(18敗)
……いえ、羅刹女ルートには入ってないとは思うのですが……。
念には念を、ひとまず聞き耳……ここは目星……クッソそんなスキル取ってないよう。初期値しかねえよお。実装されてねえよお(錯乱)
恐怖と緊張でカタカタと手の震えが止まりません。クソ……お前……落ち着けよ……クソッ…………もう──失敗できない……ッ!
止まらない動悸(ガバへの恐怖)
熱くなる胸(オリチャーの弊害)
呼吸が浅くなる(死の予感)
もしかして────恋?
「……元輝、くん?」
オゥゴッジーラ。
なんであなたがいるんですか? 怪獣大決戦ですか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?(錯乱)
そう来ましたか……そっかぁ。ええでしょう、まあええでしょう、ええ対応しましょう。千世子ちゃん再突撃ではない分まだリカバリーが利きますし、今から景ちゃんとのコミュのためにコテージを徘徊する手間が省けたので
はい。うだうだ言っても仕方ありません。転ばぬ先のなんとやら。とりあえず現状の整理といきます。デスアイランド編も折り返し地点を越えてますし、この二週間の動きがこの後に直結してきますが、それでもここから先がこのパートのキモです。気をつけていきましょう。
とりあえずではありますが、今の段階での最優先のタスクは『17日の撮影を完遂すること』です。ホモくんが景ちゃん千世子ちゃん組との問答の後になんやかんやで自死するクッソ熱いシーンですね。原作でも散々伏線を張られ続けていたシーンの種明かしでもあり新たな伏線を張り巡らせる名場面。単行本では見開きで非常にインパクトのあったシーン、チャートを抜きにしても、映画としての成功か否かの分かれ目となる、クライマックス一歩手前となるわけです。
アレですね、ラスボス一歩手前で仲間が死ぬ奴です。今回は仲間とはちょっと言い難いかもですが……。主人公がガチ最終形態になる奴ですよ、ほらブラックカブト的な。
今回の撮影では、後の撮影でもある、なぜか毎回台風が突撃してくるクライマックスシーンの兼ね合いも考えてほぼ確実に評価S以上は取る必要があります。
このチャートに限った話なのですが、今回の撮影では評価A以下を取ってしまうと、景ちゃんと千世子エルの間の修羅場がある程度沈静化してしまいます。それ自体は喜ばしいことではあるのですが、どちらにせよデスアイランド撮影終了時である程度沈静化していれば良いので、ここで沈静化させてしまうと、羅刹女編におけるアクトが12%ほどの確率で微かに下方修正が入ってしまうことがあります。
その為、クライマックスシーンまではある程度仲直りしていたとしても最低限役者としてはバチバチの関係でいてもらう必要があるのです。それにここで仲直りしてしまうとクライマックスまでに胃薬が手放せなくなるレベルで闇落ち修羅場が発生してしまう、ということもあるのですが、どっちかっていうとこっちがメインですね。頼むから2人だけで修羅場ってくれ……。
というわけで、以上が現段階におけるタスクとなります。その為に必要なことはホモくん自身のことを除けば、大きく分けて、
①チヨコエルと景ちゃんを最低限共演可能な状態にする。
②手塚監督の計画と撮影状況の確認。
③スターズ組の説得とコネ作り。
④チヨコエルとゴジラとホモくんの好感度関係が火を吹かないようにする(最重要)
の四つです。
①と④がほぼ同一な感じもしますが、この二つのタスクを完全にクリアしないと本当の意味でチャートがご臨終となりますので気にしないでください。ヤらないとヤられる。それだけなのです。弱肉強食こそがこの世界唯一の真理なのです。
ばっちゃんもそう言ってた。ヤられる前にヤれって。
名言ですね。
時を戻します。②に関しては先ほどのミーティング時に軽く触ってきた感じ、これといって変化は見られませんでした。強いて言えば千世子ちゃんの素顔だけではなく景ちゃんへの期待その他諸々が想定より強くなっていたくらいですが、リカバリー込みでチャート通りです。
③は明日からの行動で全てが決まってきますが、正直なところ景ちゃんと千世子ちゃんの影響が大きいのもまた事実なので如何とも言い難いです。なので最優先としては④というわけです。
それでは今の状況について考えていきましょう。
ここで景ちゃんたちがこの行動をしてくるとなると、考えられる最悪なパターンは好感度調整をミスったという場合です。必要以上に好感度を稼いでしまっていた上に、千世子ちゃんとのアレコレで内心クソ修羅場ってる訳ですね。
……思ったよりヤバいの出てきたな。どうすんだこれ。
大前提なのですが、まずリセはしたくありません。嫌です。
なので続行しますが、羅刹女は召喚したくないです。嫌です。
ですから一先ず話し合おうと思います。命を慈しむのです……たとえチャートボロクソIQ3人間だとしても……。
取り敢えず話を聞いてみましょう。可能性としては好感度ミスは低いですし、基本的にはスケジュールの前倒しで千世子ちゃんと共演できないかも、というケースですが……。
>ドアから顔を覗かせた景に驚きながらも、あなたはどうしたんだと声をかけながら部屋に入った。恐らく悩み事があるのだろう。
>人生相談か? とあなたはからかいの色を言葉に乗せながらテーブル前の椅子に背中を預けた。景もベッドに腰掛ける。
>心地の良い沈黙が流れていた。俯きながら考えをまとめていたのか、ふと景がシルクのような黒髪から顔を覗かせた。あなたの目を見つめながら、徐ろに口を開く。
「……千世子ちゃんって、映画を成功させたい人なのね。
──ずっと。わからなかったの、怖かったの」
ヨシ(現場猫)
なんの問題もないな。
この言葉で始まった以上、ほぼ確定で景ちゃんは千世子ちゃんとの共演をひとまず完遂するだけの下地ができています。となれば今からやることは景ちゃんとのコミュをしっかりとることだけです。しっかり認めて、しっかり対話して、景ちゃんが自意識を再確認することの一助となることだけに注力すれば問題ありません。
「最初は、かわいい子だなって。綺麗な人なんだろうなって、思ってたの。すごく綺麗で、すごく可憐で。でも素顔が全然見えなくて、ホントに天使みたいで、ちょっと憧れたわ。すごく、綺麗だったから。
会ってみて、でも、想像とは違ったの。なんでかはよくわからなかったけど……でも、きっと。私にないものを彼女は持っているのに、大切なものが取られちゃいそうな気がしたの」
>黒髪が、景の顎先に触れた。
>そっか、と。どこかしっとりとした、どこか艶のある瞳を見つめながら。あなたは景の言葉に耳を傾けていた。
「……千世子ちゃんの映画を、何本か見たわ。
千世子ちゃんは、女優なのね。
銀幕を成立させようと、私たちの映画を成功させようとしてくれてるの。そうやって、映画を照らす
だからきっと、怖かったんだと思う。
みんなの為にあそこまで自分を殺しちゃうのが、『千世子ちゃん』を、どうしても私に見せてくれないのが、怖かったの。
でも、きっと。
私は千世子ちゃんと演じれる。まだ怖いけど、でも。映画を一緒に作ってくれる仲間として、きっとこれ以上ない人だと思うから」
────ねえ、元輝くん。
私たち、幼馴染みよね。
こうやって、危険な撮影場所に役者を送り込んできた裏方は、一体どんな気分だったんだろうか。
先人が、僕の敬愛する巨匠たちが、いい作品のために、我が子のように可愛がっていた
僕も、助監督も、スタッフもプロデューサーも。ましてやキャストも主演たちも。
誰も怪我なんて望んじゃいない。
当たり前のことだ。みんなで笑ってオールアップできればいいって、そう思っている。
それで、最高の作品ができれば、完璧だろうと。
「おいビニール足りねえぞ! 台風がいつ来るかわかんねえんだ急げ!」
「道具を最大限に台風に最適化してください! 僕らで出来る限り危険を排除します! 最悪の場合に備えて川辺にネットを! 急ぎましょう、あと三十分で撮影開始しますよ!」
「────本当に」
……ああ、本当に僕らしくない。
いや、『スターズ』の手塚由紀治らしくない、というべきかな。
アーティストとしての血が、騒いでしまった。俳優の覚悟に、その熱意に、突き動かされたんだ。
新しいものが見たいと、僕のエゴとロマンだけで彼女を傷付けていた僕なのに、そんな彼女に、役者に願われて、危険な場所へと送り出している。
酷い矛盾だ。
役者の無事を願って。役者を危険な場所に送り出す。
この場を預かる大人として、酷いことをしている自覚はある。
これじゃあアリサさんに怒られちゃうよ、と。自嘲気味に笑った。サングラス越しに睨んでいた台本から視線を外して、忙しなく動く現場が目に映る。……なんというか、
「──大人失格だな、僕は」
はは、と笑う。
当然最善は尽くした。台風の影響が本格的に出てくるまで後1時間程度。最低限回収しなきゃいけない機材のことも考えれば、撮影できるのは一回が限度だ。
つまり、ここで失敗すれば、この映画は破綻しかねない。
現状を分析して、危険を減らして、やれることを全てやっても尚、僕が負えるのはこの場の責任だけだ。役者たちが負っている身の危険を肩代わりすることはできない。
「ホントですよ、リスケしても結局こうなっちゃうんですから」
「……元輝くん」
「どうも」
自嘲気味にそう呟いた僕に反応したのは、黒いポンチョを目深にかぶった黒山の甥っ子だった。台本片手に黒いチョーカーを首に巻いている、どうやら準備はほぼ終わったらしい。
……少し、申し訳ないね。
子供みたいに自分がやりたいことを追いかけた結果がこのザマだ。天候には勝てないからと、妥協と諦観と、それでも諦めてたまるかというチンケなプライドだけでこんなことをやってる。こんなの大人として失格だ。
全くだよ、そう返した僕にどこか呆れたような表情を浮かべながら、
「でも手塚さん、楽しそうじゃないですか」
「え」
「いいと思いますよ、そういうの」
じゃあ俺は最終チェックあるんで、と言い残して役者組のテントに向かった彼の後ろ姿に呆気に取られる。
は、と軽く息が漏れた。なんとなく自分の頬に手を添えてみれば、微かに笑いを噛み殺したような歪なシワがある。
「────なんというか」
ホントに君たちは。
「似たもの同士だな、全く」
パチンと頬に叩いて、感傷的な意識を吹き飛ばす。
デスアイランド開始より17日目。
天気は最悪、スケジュールはカツカツ。挙げ句の果てには台風がすぐそこまで来てるときた。
取り直し不可。
一度のミスが映画の可否に直結する────
この撮影における第一の山場が、すぐそこに迫っていた。
デスアイランド編、残り二話。
次回、クライマックス。
出来る限り早く出します。
感想くれると作者はアヘ顔決めながら執筆できるようになります。え?
テンポ
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もうちょっとサクサクやる
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今まで通り
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もっと細かく(他キャラとのコミュも描く)