チャート崩壊の兆候がブンブンすぎて難産だったので実質初投稿です。
全編通して小説形式なのであしからず。
アクタージュ作品増えてウレシイ…ウレシイ…
みんなもアクタージュRTA走って…
──優しい演技だった。
ふわりと羽が舞うような。そんな演技だ。
清潔に手入れされたキッチン。僅かに照り輝く炊きたてのお米を乗せた薄浅葱色のプレートにカレーを乗せ。
ステップを刻みそうなほど楽しげに、チーズをカレーライスの上に散らばらせ、オーブンの中へと入れる。
ここからが本番だ。
ぐつぐつとチーズが焼き上がったのを見計らって、ミトンを嵌めた手でベランダへと持っていく。ステップでも刻むように、勢いよく。でも
木目調の屋外テーブルの上に皿を置き。満面の笑みで席に座ると堪え切れんとばかりに一口、頬張る。顔を綻ばせながら二口。続けてスプーンを動かしていく。汗をかいて湿気った胸元をバタつかせ、それでもやめられないとばかりにスプーンを止めない。
カメラワークを完璧に把握しているからこそ。
撮影範囲の中心から一切動くことなく、そして
「────すごい」
感嘆の声。同時に私はハッと気がつく。コレを撮り逃してはいけないと、気を取り直し──いや。
違う。これは、『俺を撮り逃すな』と言わんばかりのその圧倒的な演技に、息つく間もなくカメラを動かしていた。動かされていた。
穂村元輝の演技は、夜凪景のような"周りを巻き込むような演技"ではない。
そんな、派手な演技ではない。
そこにいるのは等身大の少年だ。
休日の食事を楽しむ、ただの少年がいるだけだ。
たったそれだけのはずなのに、
ただの等身大の少年がいるだけのはずなのに。
ぎこちなさなど、最初の瞬間から一つもない。"カメラに映る自分"を逐次把握しながらそれを調整し、同時に"いつも通りの休日を満喫する少年"を演じる。
ただ、それが恐ろしい精度なだけだ。
末恐ろしい程の精度で、画面の向こう側の人に『カレーの美味しさ』を伝えている。彼が美味しいと思うと、見てるこちらですら"美味しい"と思ってしまう。明るく朗らかで、自信に満ち溢れた所作がカメラを離させてくれない。
「…………相変わらず、か」
墨字さんの呟き。確かに彼女にとって現段階でコレを見られるのは僥倖以外の何でもないかもしれない。
夜凪ちゃんの演技は『観客の想像力を利用して"魅せる"演技』だ。
いや、利用しているというのもチャチな表現かもしれない。この撮影が始まる前にオーディション映像を見せてもらってわかったけど、相手が知らないものを相手に観させる、つまりは"周囲全体の観客に同じモノを見せる"ことができる表現力を持つ演者だ。
だから。
彼女の演技の鬼気迫る様な感情は、メソッド演技ならではのものだ。
"役そのものになりきったような迫真の演技"しかできないであろう彼女が、彼の様な"相手に伝えることに長けた演技"を手に入れたのならば──。
「カット!! オーケーだ!」
本当に、あの役を演じられるかもしれない──
夜凪景にとって、穂村元輝とは一体どんな存在か? と聞かれたら、非常に反応に困るというのが実際のところだ。
知り合いというほど薄い関係性ではないし、かといって友人というほどありふれた付き合いでもない。
じゃあ彼に持っている感情は、恋愛感情のようなもの? とでも尋ねられたとしても、決して恋人関係になりたいだとか、そういう訳ではない、と思う。恋愛がカサブランカ*1やローマの休日*2みたいな感情なら、私のコレはそういうものではなくどちらかといえば親愛とか、シンパシーみたいなものなんじゃないかな、と思う。
小中学校と同じ学校に通っていたし、元輝くんが10歳の頃に引っ越すまでは家も凄く近かったから、偶に登下校を一緒にすることはあったけど。でも学年も違ったからいつも一緒だったという訳でもなかった。
とは言っても小さい頃からの付き合いなのは間違いない。二人で一緒に映画を観てたのはいい思い出だし、お母さんが亡くなった時も穂村家総出で助けてくれた。
三人で生活しなきゃいけなくなってからも、私がバイトで休日に家を空けなきゃいけなかった時は元輝くんがルイとレイの面倒をみてくれてたし、逆に元輝くんのお父さんとお母さんが出張で家を空けてる時はルイとレイを連れてご飯を作りに行ったりもしていた。
そういうのもあってなのか、元輝くんのお母さんとお父さんはよくウチを気にかけてくれている。
実際、今東北の方に単身赴任してる元輝くんのお父さんがこっちに戻ってきた時には、穂村家にお呼ばれしてご飯を一緒にすることもある。
たぶん、こういう関係を幼馴染みというんだろうなぁ、とは思うけれど。
元輝くんのお母さん曰く、高校を卒業する二週間前あたりからすごく忙しそうにしてるとは言っていたけれど、ルイとレイが寂しがってるからそろそろウチに顔出して欲しい。
スターズのオーディションには落ちちゃったけど、髭のおじさんが私を女優にしてくれるって言ってたから後で元輝くんに報告に行こうと思っていたのがついさっきの話で。
「──綺麗」
知らなかった。
元輝くんが、穂村元輝という人間がこんな美しい演技をすることは知らなかった。
目を引く姿勢。
目を奪う所作。
大きな動きを伴う派手な演技をしていないのに、皆の注意を引き付けて離さない。
元輝くんを撮るために用意された『中心』から、一瞬たりとも外れることがない。上下左右三百六十度。どこから見たとしても、元輝くんは綺麗に見えるんだろう。
大きな動きを伴う派手な演技をしていないのに、みてる観客に"カレーのおいしさ"を叩きつけている。
まるで観客と主演の境界線がなくなったみたいに。穂村元輝という人間が、心の中に巣食うような感覚だった。たぶん、他のみんなも同じ感覚なんだろう。
それが私にも分かった。
それは、私が持っていないものだ。
だから。
いつもの様に。
「元輝くん、その演技、どうやるの?」
「いわゆる伝える演技の延長線で、境界線を浮き彫りにするみたいな話なんだせど──って、え、」
「?」
────あ、コップ落とした。
「………………。
……。……なんで、いるのさ」
「こっちのセリフよ。お母さんが最近忙しくしてるっていってたの、撮影してたからなのね。知らなかったわ」
「いや、そうなんだけどさ……」
そーじゃないっていうか、と。なんだかここまで驚いた顔してる元輝くんを見るのも、大分久々な気がする。少なくともここ数年は見てないかしら。
それはそうとね、元輝くん。色々聞きたいことはあるけど──
「私、女優になったの」
スターズのオーディションには落ちちゃったけど、今度シチューのCMに出るのよ。
ふんすー。誇らし気に胸を張りながら両手でピースサインを作る。ぴすぴす。
「……そうだわ。久々にあったわけだし、今日の夜にでもご飯食べに来ない? 今日は特製カレーなの」
「カレーは辛えな」
「今日は中辛よ」
ルイとレイも会いたがってるわ、と。
一月ぶりの会話に花を咲かせていると、素材の確認を終えた墨字さんがこっちに来た。どうやらコレで仕事が終わったらしい。
「なんだお前ら、知り合いだったのかよ。つーか元輝よー、もっと泥臭くてもいいんじゃねぇか、お前の演技」
「ちょっと何言ってるかわかんねーすわ…………たまたまですよ、たまたま」
「……ま、そうかよ。自分でわかってんならいい。
つーかお前この後暇だな。付き合え」
「…………拒否権ない感じ?」
「ない。黙ってついてこい」
「──で、だ。お前、夜凪の演技についてどう思う?」
「どう思う、とは」
「お前アイツと幼馴染みらしいじゃねーか。今までにも何かしらの片鱗は感じてんだろ。お前のことだし。
あー、一応ここにオーディションの時の映像も用意してる。この際何でもいい。思ったことは全部言ってくれ」
「…………ちびちび」
撮影終了後、スタジオ大黒天にて。
バイトがあるからという理由で景は帰宅し──大分渋っていたが、後で元輝が伺うということで納得した──スタジオ内にいるのは墨字さんと
そんな彼に墨字さんがパソコンの画面を向けて、先ほど見せてくれたオーディションの映像を再生した。どうやらけいちゃんの今後について意見を聞いておきたいらしい。
スターズオーディションの大まかな流れはこうなってる。
まずは景ちゃんを含む四人が会場に入ってくる。
背の高いスラッとした前髪パッツンの女の子と、モデル出身の子と劇団出身の子。
前髪パッツンの子は程よい緊張が最高の能力を発揮するのがわかっているからその状態を保っていて、逆にモデル出身の子は何も考えずにリラックスしていた。"私可愛いから最強"とかそんな感じだと思う。
もう一人の劇団出身の子はリラックス状態を程よく保って微笑み、心証を良くしようと努めていた。で、景ちゃんは相変わらずぼーっとしている。オーディション中にこんな自然体なのは流石というかなんというか。
私だったらたぶん耐えきれない。
「……家族連れとはなかなかだな、アイツ」
会場にいたのはスターズ代表の星アリサと息子の星アキラ。墨字さんと審査員の方々。あと子供が二人いる。元輝くん曰く景ちゃんの兄弟っぽい。家族同伴でオーディションとか相変わらず型破りだった。
オーディションが始まった。お題は『野犬』、形式はパントマイムだ。星アリサの概要の説明に、墨字さんがより詳しいシチュエーションを付け足した。
『お前達は深い森へ迷い込んだ。
野犬に出逢うとは運が悪かったな。
鋭く尖った瞳、牙、爪……。
全てがお前達に向けられている。ああ……あと。そいつ、
刹那。
夜凪景が動いて、場の空気が一変する。
夜凪景が"イメージの野犬"を見て。
そのイメージが、世界を塗り潰したのだ。
周りの審査員も。オーディションの競合者たちにすら『森の中で野犬と睨み合う夜凪景』という濃密で確固としたイメージを叩きつけている。
森もなければ、野犬なんていない。
それだというのに。
そこで景ちゃんは噛みつかれる演技をして、野犬と戦って、逃走していく野犬を幻視させる。
そして野犬から家族を守る演技をして、幻の野犬を倒した。
それでオーディションはおしまい。
「もう一回見ます」
じっくりと。黒山さんが説明したところまでカーソルを戻して再生する。二回その動作を繰り返したところで、元輝くんが口を開いた。
「……正直言えば、弱点だらけなのが実際。
演劇関連は主演以外全部無理――馬鹿みたいに目立ちすぎる。
それに表現方法もまだまだだ。伝わる奴にだけ伝わりゃいい──一歩間違えればそういう演技になる。何れにしろ表現技術の獲得は必須」
加えて。
相変わらず暴れてるみたいな演技だよなと薄く笑いながら、元輝くんは続ける。
「今回のCM撮影みたいな"動かない演技"なら問題ないですが、大人数が参加する撮影とかアクションがある演技だと"カメラワークの把握"も必要になると思います。
景はたぶん相当クセがありますから、経験を積んでスキルを獲得するというより、心の持ち方次第で爆発的に伸びるタイプじゃないですかね」
「テメェもそう思うか」
「…………ええ、まぁ」
「…………………………。そうか、わかった」
ジッと墨字さんと元輝くんが何かを探り合うように見つめあっている。墨字さんが大きく息を吐きながら頭を掻く。
パソコンを畳むと、コップの麦茶を大きく煽った。
「明日、夜凪にエキストラの役をやらせる。時代劇だ。そこで"役作り"を学ばせるが、お前も来る──」
「洗濯男の撮影あるんで無理です」
「喧嘩売ってんのかテメェ」
・夜凪景
年齢:16 誕生日:20XX年5月15日
身長:168㎝ 血液型:A型
職業:高校生、女優
好物:魚、納豆、ひじき 特技:短距離走、走り幅跳び
好きな映画:ローマの休日、カサブランカ、風と共に去りぬ。など。
備考:意外にラブロマンス好き
・百城千世子
年齢:17歳 誕生日:20XX年4月1日
身長:157㎝ 血液型:AB型
職業:女優
好物(公式):生クリーム、ビスケット、マシュマロ
好物(非公式):なまこ、このわた、松前漬け
好きな昆虫:オキナワオオカマキリ、ヤエヤママルヤスデ、ロイコクロリディウム
好きな映画:晩春、ローマの休日、時をかける少女(1983)、花とアリス
備考:お気に入りの横型を探している様子
・穂村元輝
年齢:18歳 誕生日:20XL年12月24日
身長:176㎝(成長中) 血液型:O型
職業:俳優
趣味:映画鑑賞、読書、音楽鑑賞
特技:ストップウォッチの10秒チャレンジ
好物:肉料理、人が丹精込めて作った物チャート、夜凪カレー(非表示)
好きな映画(表):
好きな映画(裏): オール・ユー・ニード・イズ・キル、ハッピー・デス・デイ、ローマの休日
備考:なぜか湧く親近感
テンポ
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もうちょっとサクサクやる
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今まで通り
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もっと細かく(他キャラとのコミュも描く)