秘封二次創作「秘恋映すは少女の瞳」   作:八雲春徒

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こんにちは
今までずっと書きたかった秘封倶楽部の二次創作小説
小説を投稿するのは今回が初めてでして、至らぬ所ばかりだと思いますけれど
温かい目で読んでいただきたく思います。

よろしくお願いいたします。


プロローグ「異能少女と蓮台野夜行」

 プロローグ 異能少女と蓮台野夜行

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

「我々の神々も我々の希望も、もはやただ科学的なものでしかないとすれば、我々の愛もまた科学的であっていけない謂れがありましょうか」

 

 

 

 これは科学が跋扈する世界の晦冥の中で幻想の女神に取り憑かれ、また恋焦がれた一人の男と

 その瞳に隠秘を宿し、さながら運命や宿命の悪戯のままに、その叡智で秘密を暴こうとした少女達……

 

 その因果線の「偉大なる交差点」

《グランドクロス》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。 黒い男が一人

 

 枯れ始めた木々の間から木漏れる月明りの下、それだけを頼りに確かな足取りで苔むした石段を登っていく。

 

 

 京都は洛北、蓮台野。平安時代からの風葬地の一つである。時刻は深夜二時近く

 

 どうして男はこんな時間にこんな場所にいるのだろうか。彼の足取りに迷いは無い、何かに導かれるように、付き動かされる様に草木も眠る山道を進んでいく。

 

 

 

 

 何分ほど登っただろうか。

 長い石段は終わり古びた寺院の山門が見えた。男はその前に立ち、おもむろに携帯電話を取り出す。彼は一枚の画像を見て、液晶の明かりを消した。

 

「ここで間違いない」

 

 男は僅かに笑みを浮かべているようである

 山門に背を向け、来た道を振り返ると開けた木々の隙間から、両の手では覆い隠せぬ程の大摩天楼が聳え立っているのが見えた。

 

 それはまるで地上の銀河か小宇宙のようにその輝きを誇示しているようである。男は思う、個体が創りあげた物もまた、その個体同様に遺伝子の表現系だ。と……

 無数の光その数だけ人の思いがあるのだろう。

 

 

「その思念の総計はいかに多きかな。我これを数えんとすれどもその数は砂より多し、ってな。つまりどうでもいい」

 

 男の見る世界に色は無い、生物学的に言えば至って健康なはずの瞳、しかし彼の景色はモノクロームなのである。

 壮麗な摩天楼も彼にとっては”卒塔婆の群れ”でしかないが、墓地にはうってつけだなと男は自嘲的に笑う。

 

 さて、山門をくぐった先はもちろん広大な墓場である。どうしたものか……。

 男は立ち止まる。胸ポケットから煙草を取り出しては咥え、火をつけた。

 

 見あげた月は紫煙の中に揺れる。

 

 男はいつか 誰かと寄り添い見あげた夜空を思い出していた。白黒の世界でその記憶だけが鮮やかに彩られていた。

 彼はその記憶を追いかけて来たのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが蓮台野の入り口よ」

 

 よく響く声で隣にいる相棒がそう言った。

 彼女は宇佐見蓮子、私をこんな時間に、しかもこんな場所に連れてきた張本人である。

 

 話は二日前に遡る。大学の図書館でぼおっと本を読んでいた私達だったのだが彼女、宇佐見蓮子は突然持ち掛けたのだ。

 

「メリー、蓮台野の入り口を見に行かない?」

 

 

 私たちは秘封倶楽部っていうサークル活動をしている。メンバーはたったの二人。

 よくあるただの霊能サークル、でも除霊や降霊なんかはしない、というか好きではないのだ。

 周りからはまともな霊能活動をしたことのない不良サークルと思われている。

 

「二時五分、急ぐわよ」

 相棒は空を見上げて言った。夜空を時計代わりに使う人間がどこにいるのだろう。

 どうやら蓮子は星の光から今の時間がわかり、月からは自分の今いる場所がわかるらしい。

 

 そう、私たち秘封倶楽部の裏の顔は世界に隠された結界を暴くサークルなのである。

 均衡を崩しかねないという理由で我が国では禁止されているのだけど……。

 開けるなと言われると開けてやりたくなるものである。

 

 そういう私は結界の裂け目を見ることができる。というよりは何もしなくても見えてしまうのである。蓮子は私の能力を買い半ば強引に秘封倶楽部に引き込んだのだ。

 

 

 

 結界を暴くのは楽しくてスリル満点で飽きない、今日だって勇ましく出発してきたのだけど……。山門まで来たところで少し冷静になってしまった。

 

「ここって、墓地なのよねえ」

 

「そんなの分かりきってたことでしょう。さあ目的の墓石が見えるわよ」

 

 目的の墓石とは二日前に見せられた写真の墓石だろう。山奥の寺院、墓場、そして門の向こうにはこの世のものとは思えない景色が映っていた。

 蓮子曰くそれは「冥界」なのだそう、しかし件の墓石をどうすればその冥界が見れるのかは分からない、墓荒らしの真似だけはしたくない。

 

 

 突然蓮子が立ち止まった。

 

「どうしたの蓮子?」

 

「墓石……あれなんだけど……」

 

 蓮子は右前方を指さした。様子がおかしいので蓮子の肩越しにそちらを覗いてみた……

 

 そこには”影”

 

 背格好から見て男性だろうか……。一つの墓石の前に佇んだその影の異様なのは、恐らくその墓から引き抜いたであろう卒塔婆を数本小脇に抱えている事だ。墓荒らしという言葉が浮かぶ。いやそもそも人間なのだろうか。

 

「そこでなにしてるのよ」

 

 勇ましくも相棒はその影に向かって声をかけた。嗚呼、私たちは殺されてしまうかもしれない……。

 一瞬の沈黙、影は答えた。

 

「墓荒らし、にしか見えないよなあ。そんな君たちこそこんな時間に何してる」

 

 意外にも優しそうな声だった。多分生きた人間だ。とはいえまだ怖い

 

「質問を質問で返さないで、私たちは立派なサークル活動よ」

 

「サークル? 肝試しか何かか。もっといい場所あるだろうに、俺はな冥界への入り口を探しに来たのさ」

 

 ……。その男は間違いなくそう言った。まさかその男も私たちと同じ目的でここに来たというのか……。

 

 結界を暴こうなんていう人間が私たち以外にもいたなんて……。

 それを聞いた蓮子は楽しそうに言う

 

「冥界、冥界って言ったわねあなた。どうして冥界だと思ったの。もしかしてあの”写真”見たの?」

 男は驚いたようだった。私がそうだったように

 

「なんだって? もしかして君らもなのか。そうだこの写真だよ。間違いなく冥界だ俺は観たことがある」

 

 彼は端末の液晶をこちらに向ける。蓮子の肩越しに見えたそれは、二日前に見せられた物と全く同じだった。しかし見たことがあるとはどういう事だろう。臨死体験でもしたのか、はたまた私のように不思議な目を持っているのか。

 

 蓮子はやはり楽しそうに笑っている。少し安心した。

 

 

「あはは、それで卒塔婆引き抜いてたのね

 そんなことしたって何も起きないわよ」

 

「だったらどうすればいい? 何か知ってる口じゃないか」

 

「時間よ」

 

「は? 時間だって、時間なら今は……」

 

「2時25分40秒」

 

 蓮子はまた星を見上げて言う。彼は驚いたように自分の腕時計を見つめている。何だかその様子が可笑しかった。

 

「合ってる。どういうことだ? 本当に訳がわからない、何か知ってるなら……」

 

 彼は卒塔婆を戻しこちらに歩み寄る、月明りに照らされてその姿が見えた。私たちとそれほど変わらない年の男性だ。髪が長いからわからないけど多分そうだと思う。その顔には困惑の表情が浮かんでいた。当然である

 

「教えてあげてもいいわよ。その変わりあなたも教えてね。見たんでしょう冥界を」

 

 

「ああ見た。というか実際に立ったのさ信じられないだろうけど……。馬鹿デカい妖怪桜があるんだぜ」

 

 

 

 冥界に妖怪、突拍子も無い話だったけど。

 もう一つの理に手が届く私にはとても説得力を持って響いた。

 

 彼が何を知り、何を成そうとしているかなんて想像もつかないけれど。

 

 もう少し詳しく聞いてみてもいいかもしれない……なんて思った。私の”夢”の話を解ってくれるかもしれない……。

 

「面白いわね。信じないけど、覗いてみたらわかるじゃない」

 

「だからどうやって……」

 

 そうだ彼はそれを知りたがっている。勿体ぶらずに教えればいいのに、それに私もまだ聞いていない。まあ教えろと言われてはい分かりましたなんて性格をしていない事は知り合って間もない私にもわかる。

 

 

 蓮子の言葉は驚くべき物だった。

 

 

「あなた、私たちと活動してみない?」

 

「蓮子!?」

 

 彼女は彼を勧誘したのである。余りにも突拍子もないし、彼だって困るだろう。彼女はどうしてこうも……。混乱した。

 

 ……けれど何だか意味不明が過ぎて呆れてしまう。確かにこれが宇佐見蓮子だ。

 

「え? いやただ教えてくれれば……」

 

 

「私は宇佐見蓮子、秘封倶楽部の会長よ。

 私の目は星の光から今の時間を、月から位置を見ることができるわ。で、こっちは」

 

 蓮子は私を前へ引っ張り出す。いきなりだったので転びそうになった。蓮子の方を睨んだが、気にも留めずに彼女は続ける。

 

「こっちは相棒のマエリベリー・ハーン。長いからメリーって呼んでるの。すごいのよ結界の裂け目が見えるんだから」

 

 初めて彼の正面に立った。月が明るい、風が吹いて私の髪をなびかせた。

 

 彼は蓮子の突然の言葉に驚いたのか目を見開いて固まっている彼の髪もまた風になびき顔がよく見えた。何か呟いたようだけど……。蓮子の言葉に遮られた。

 

 なんだろう、一瞬頭が痛くなった気がした

 

 

「さあどうする? もう時間ないけど」

 

 私はどちらでもよかった。けどもう少し話は聞きたい。

 

「…………」

 

 彼は沈黙の後、諦めたように承諾を示した

 余りにも簡単にメンバーが増えてしまったけど蓮子が選んだならそれでいい、かくいう私もああやって引き込まれたわけだし

 

「いいわ、2時27分41秒、二時半ジャストにその墓石を動かすのよ」

 

 蓮子は彼と私に墓石を持つよう促した。彼も文句を言わず従った。仕方ない、私も墓荒らしの覚悟を決める。

 これで何も起きなかったら蓮子の頬を思いっきりつねってやろう。

 新作のケーキも奢らせないと……。

 蓮子への仕返しを考えていたら、同じように墓石に手をかけている彼が言う。

 

 

「……よろしく」

 

「うん、よろしくね。メリーでいいわよ」

 

 蓮子の声が墓場に響く。

 

「ジャストよ!」

 

 せーので墓石を動かす。

 墓石が四分の一回転した瞬間……

 

 

 

 秋だというのに一面の桜が広がった。

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
どんなご意見も真摯にお受けいたしますので。よろしければ感想などいただけると嬉しいです。

続きも不定期とはなりますが更新していくのでどうかよろしくお願いします。
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