TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
空は悲しむのだろうか。
いつまで経とうと、雨は止みそうにない。
「離せ! 娘に何かあったらどうするんだ!」
「こらえてくださいキバタン様! 掟を破ってはなりません!」
我が子を案じて半狂乱になる父親。護衛の者たちに体を抑えられながら、いまにも神のおわす場所まで駆けていきそうな様相である。
仮に、これを神が見れば嘲笑うのだろうか。
――嗚呼、なんと愚かなのだろうか、と。
お七夜、命名式は例年必ず一日で終わる行事である。ともすれば数時間で終わることもある。
その年で数え年6歳になった子供が神のおわす場所まで巫女と行き、神から直接名を頂いて帰ってくる。一人あたり30分もかからないのが普通だ。
今年は巫女の娘のお七夜だ。民の間ではもはや常軌を逸した興奮が渦巻いており、今年お七夜を迎えた6歳の子供達は、羨望の眼差しを受けながら緊張で呼吸もままならないようである。
噂が噂を呼び、巫女の娘はとんでもなく可憐な天使のようである、ということになっていた。巫女やキバタンも持ち前の親バカを発揮するものであったから、待ったをかける者がおらず噂は助長されるばかりである。もっとも、この二人の娘が可愛くないわけないという民衆の確信もあったのだが。
はるか昔から一子のみを掟とされてきた
二子を
そんな、膨大な魔力を持つ今代の巫女はと言うと……。
「サルビア、君もなんとか言ったらどうだい!? マナが、夜になっても戻ってこないん……だ、よ?」
「……ウーン……」
「さ、サルビアアアアアアアアアア!?」
「巫女様がお気をやられた!? い、いい、医者、いや乳母様を連れてこい!!」
「巫女様アアアアアアアアア!?」
心配のあまり呼吸がままならなくなり、ついにはプッツンと意識を失ってしまったようである。
そんな貴賓室のドタバタを知ってか知らずか、舞台に集まっていた民衆たちにも不安が広がり始めていた。
「なあ、御子様の命名式って、こんなに長引くもんなのか?」
「さあ? なにせ、俺が100年以上前に当代様の命名式を見たときはまだガキだったから」
「雨だから露店出せるか心配してたんだが……これじゃあ店出すどころか夜になっちまうな」
「うちの子の命名式、今日中にできるのかしら……」
あるいは、舞台上の役者たちにも焦りが生まれていく。
「そろそろ稽古済みの演目も尽きそうなんだが……御子様はまだなんだろうか?」
「他に芸をできるやつはいないか?」
「無茶言わないでくれ、こんな大舞台だぞ」
「カワアイサ、ウミアイサ、駄目だろうか?」
「一時間ぐらいなら」「イケるけど」
「もう半日とかは」「ムリ〜」
一説によると、感情というものは伝播するだけでなく、同様の感情を持つ者同士が集まることで増していくという。
ときに演説が狂気で支配されるように、ときにライブハウスが日常とは大きく乖離した興奮を巻き起こすように、この場所では誰しもの抱える「不安」が煽られていった。
帰ろうとすることはできない。なぜなら、それは御子がここに現れないことを肯定する行為であり、すなわち御子に何かしら不慮の事故が起きたと示唆するようなものだからだ。
誰も、そうであってくれなど望んでいない。何事もない。問題ない、そう言ってほしい。
ならば、なぜ御子は現れないのか?
そんな疑問がふと頭をよぎり、ゴクリと喉が鳴る。
弱いのだ。民衆の心というものは、どうしようもなく。
煽られれば煽られるだけ悪感情は増し、誰か希望を見せてくれとは思えど、自分がそうしようとは思えない。本能的に、自分が目立っても状況が好転しないと信じてしまっているのだ。それは、同調能力によって自然淘汰を生き残った生物としての悪癖とも言える。
近くの者と肩がぶつかってイラッとする。不安を感じ取った赤子が泣き出し、誰かがボソリ「うるせえな」と呟く。
そんな不安と不満、鬱憤が溜まっていく中、テレサは夢を見ていた。
この上なく愛おしい人。彼女がまだ、自分の腹にいた頃の夢だ。
特に話に影響させるつもりはないけど、兄貴たちの物語展開の好みを知りたい!きっと千差万別だよね。
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急展開でシリアス&エロス
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急展開でまったり&えっち
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緩展開でシリアス&エロス
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緩展開でまったり&えっち
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ちんちん(結果開示しろ)