TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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病院で診察を受けてるとき、お医者さんとこっちで見えてるものが違いすぎて正直どの症状を言えばいいか分からにゃい。でもたまに本気で何も考えてなさそうなお医者さんもいて…もう何も分からにゃい…;;

 今にもはちきれそうな棚の戸からギシギシと軋む音が聞こえた。

 男がそちらへチラリと視線を遣るが、おおかた想像はついているのかさほど気にもせず、眼鏡を掛けた女の方へと向き直る。

 女──クラムヴィーネは気まずそうに顔を逸らし、目の前に座る先生(ハマシギ)が口を開くのを待った。クラムヴィーネにとって片付けとは空間を確保することであり、たとえどれだけ棚の中がとっ散らかっていようと、たとえ再びその戸を開くときには雪崩が起こることが確定していようと、見た目上何も問題がなければそれは「整理されている」と言えるのだ。むしろ気まずさを覚えている分、他の導士に比べて「常識」というものへの理解があるとすら言える。

 

「……まぁ、いまさらキミの整頓能力について言うことはないんだがね?」

「はい……」

 

 クラムヴィーネの指導を長年行ってきたからこそ、(ハマシギ)は向き不向きは人それぞれだということを理解していた。

 汚くしようとしているわけではないのだ。むしろ、努めて整理整頓しようとしている。それなのに何も意識していない人よりも部屋が汚くなる。もはや才能である。

 

「それで、実際に会ってみてドローネットはどうだったかね」

「……」

 

 クラムヴィーネは考え込んだ。

 

 今こうしてアンブレラに関われる立場にあるのは、ひとつには学園から与えられた監視という役目と、同時に自分よりもずっと優れた存在に関わることで何か自分を変えられるのではないかという個人的な思惑が重なったからこそである。

 しかし、実際に会ってみれば、実のところよくわからなくなってしまった。

 

「……天才の類では、あるのだと思います」

「そうだね。いつの間にやら【圧縮】も覚えているようだものね?」

 

 おそらくは、人間が苦労して理論を組み立て、陣を描き、修業を重ねてようやく成功させる技術を、人間とはまったく違う視点で感覚的に実行してしまえる。

 だから天才と呼ぶ分には間違いではないのだ。しかし、ただそう言葉にすることには違和感があった。

 

「ですが、彼女は生きていました。それも、とても純粋に」

 

 クラムヴィーネが自傷しただけで泣き出してしまった。

 同い年の少女と語るとき花開くように笑う。

 

 天才で、化け物だが、違う生き物ではなかった。

 

「そうかね。まあ、私も実際に話を聞いてみるとするかな。診察と言って、ドローネットを呼んできてもらえるかね?」

「……手を出してはだめですよ?」

「キミは私のことを何だと思っているんだね!?」

 

 一応、相手は自分の先生なわけで。

 マッドサイエンティスト、という言葉は流石に飲み込んだ。

 


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