TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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眠いときって思考の大半が「眠い」に染まるから、油断するとSNSの自己紹介欄とかすぐに「眠い」の言葉に染まってしまう症候群に罹りました。中学生の頃から何も成長していない…

 夢を見た。

 久しぶりに、穏やかな夢であった。

 

 場所はこの世界ではなく、僕にとっての原風景とでも言うのだろうか。かつて日本で生きていた頃訪れた、大会の会場ともなるような大きな弓道場の側にある庭園。

 野原の上で、母様に膝枕をされている。夢の中だというのになお微睡みを感じてしまうほどに穏やかな景色に包まれて、母様の口ずさむわらべ唄に浸る。

 

「母様」

「うん?」

「……テレサ」

「ふふ、どうしたんだい急に」

「なんでもないですよ……えへへ」

 

 名前を呼ぶと返事がくるというのは、なんて幸せなことだろうか。

 もうずっと当たり前のことだったはずなのに。離れ離れになるというのは、それが当たり前でなくなることだ。

 

「外の世界には、色々な人がいましたよ」

「そうなのかい?」

「ええ。猫みたいな人やお姫様。体から色々生えてる人達。病気を抱えている子。最近は、絵描きに会いました。アイリスも絵を描くことに没頭しているんですよ」

「あ、あれ……? 私の知ってる人間は耳の形が違うってことだけだったはずなんだけどな……」

 

 学園都市はまあ、例外なのかもしれませんね。

 道中で他の街に寄っていなければ、僕もこの世界の人間は体から何かしら生えているのがデフォだと勘違いしていたかもしれない。それくらい学園都市には(見た目が)ヤベェ奴が闊歩している。

 

 困惑する母様も愛おしい。

 温度がある、表情が変化する。ただそれだけで、胸が苦しくなるほどに感情が溢れ出る。

 

「人間の、僕らとは違う視点で魔法を捉えている中身を知るのも面白いです」

「そうなんだね」

 

 人間の、だなんて一丁前に別種族っぽいことを言ってしまえるくらいには、彼らとの差異を自覚し始めている。

 生き急いででも一瞬のきらめきを追い求めるような彼ら人間の精神性は、きっとエルフには真似ができない。

 

 圧縮も含め、人間たちの定義する「魔法」というもの(正しいとは言ってない)を知ることで、抽象的なレベルでだが魔法や真名の本質が見えてきたように思う。

 だからこそ、真名を捨てるということの危うさや非合理性が察せられてくる。

 自分が目指していることが果たして正しいのか。知れば知るほど無計画であることが分かる。けれども、根っこの部分から間違っているとは思いたくない。

 

「なんかもう、疲れちゃいました。いつまでもこうして、ゆっくりできればそれだけで良かったのに……」

「うん。お疲れ様、レイン」

 

 髪を梳くのを止めて、今度は優しく撫でられる。

 夢だからこそ、母様が僕にそれ以上の何かを、道標を与えることはなかった。

 当たり前だ。結局は、僕の心が描き出した幻なのだから。

 

「……それでもキミは、進める子だ」

 

 

 

 


 

 

 

 

 うたた寝から目を覚ますと、腕の中には白猫がいた。妙な暖かさはこの子がいたからか。

 そして、アイリスとカンナがこちらを向いて熱心にスケッチをしている。そうだ。ひとまず一緒に絵を描いてみて、お互いの描いた絵を講評しながらカンナからアイリスに絵を教えてもらおうという話だった。

 楽にしていていいと言うから背もたれに体を預けていたら白猫が膝の上に登ってきて、暖かさに段々と意識を持っていかれてしまったのだ。

 

「……ええと、もう動いても大丈夫なんでしょうか?」

「あ、いいですよー。いい時間なので、ここまでにしましょう」

 

 満足にこなせたかどうかはともかく、ようやく被写体から解放されることができた。ん、と両手を上に挙げて背中を伸ばし、眠気と体の凝りを取り払った。

 

 ひとまずアイリスの描いたものを覗き込んでみると、絵を描き始めて一ヶ月とは思えないほどに整った、それでいて書き込みの配分も取れているものが一枚。

 寝顔の僕は、まあうん、どこに出しても恥ずかしくない美少女である。流石僕。自分の顔だからか、なんか間抜けな寝顔にも見えるけど。それでも、母様の血がすべてを正当化してくれる。や↑ったぜ。

 

 これからカンナがこの絵を講評して、アイリスに改善点などを伝えるのだろう。そちら方面の話は僕にはさっぱりなのでさておき、今度はカンナの描いたものに視線を移した。

 うん。なんかやっぱり、どこがとかはよく分からないけど、めちゃくちゃ上手い。なんだろう。アイリスのは「形が取れてる」って感じなんだけど、カンナの絵はもうなんか空間を落とし込んでるように見える。影の濃淡とか、形の精度の問題なのかな?

 

「……あれ? 僕、泣いてましたか?」

「え?」

 

 ほとんど同じ角度から描かれた二枚は、技術的な面はともかく、構図は同じものだった。だというのに、カンナの絵の中で、眠る僕の片方の眼尻からは、頬を伝う一筋の線があった。

 

「……あれ、おかしいですね。私、なんで涙なんて描いたんでしょう……」

 

 カンナも首をひねる。

 やはりアイリスの描いたものが正確らしく、僕も特に泣いてはいなかったはずなのだ。そもそも、怖い夢でもあるまいし泣くような理由ないし。

 

 そっと片手で目元を拭ってみる。

 やはり、水滴はおろか、湿った手触りさえも感じられることはなかった。

 

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