TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
基本的に冷静な頭で過去の文章を見直すのはダメージを食らうので、「ハッハッハッ(過呼吸)」「ウッ(心臓発作)」となりながら確認だけさせていただき、適用するかは心がつよいときに判断することにしています。
穴を掘ればそれを頼りに水が流れるように、自然法則に従うことでこの世界すらも狙ったように操ることができる。人が他の動物よりも繁栄したのは、その法則の理解・継承という点において優れていたからだろう。もちろん操れる範囲に限度はあるけど。
エルフの「魔法は雰囲気ゲー」理論と違い、人間にとっての魔法はそのような法則のひとつであった。全然「魔」法じゃないな。广+マでマ法って書くタイプの何か。
つまりは地球で言う科学の範疇にマ法が入っていた。確かに魔法陣使うと出力安定するし、法則を破ってる感じがない。でもそれは魔法陣がおかしいと思うんです。
というか、人間の魔法の使い方全般が気に入らない。【圧縮】とやらも、魔法陣も。前世で言う地下資源の過剰消費に近い危うさを本能的に感じてムカムカする。これについてはアイリスも困り眉を作って同意してくれたから、見当違いではないと思いたい。
けど郷に入っては郷に従うタイプの日本人だからね……。「人間風情が」みたいな強気な態度とかプライドも備えてないです……。なんかその、良くないと思うんですよ(小声)が限界。我ながら雑魚すぎる。
教科書の最初にも書いてあることだが、魔法陣というものは魔力の濃度差を利用している。生体は魔力を溜めやすく、液体はほとんど含まないみたいな。
だから、鉛筆で紙に魔法陣を書いただけでファイアーボール召喚!みたいなアレはない。そもそもファイアーボールなんて魔法もないが。
まあそんなんで発動してたら魔法陣の教科書とか書いてらんないよね。
かと言って、白妙の止り木でバカみたいに量産していた魔力を貯める鉱石、ヤァヒガルみたいなものはあまり無駄遣いすることができず、
血とか体液とかは一応生体のくくりなのか魔法陣に使えるらしいけどね。ほとんど水だろと思うんだけど、化学物質以外の何か違いがあるのかもしれない。でも歌うためだけに血を使うのは流石に引きます。
そんなシャイな学生たちに人気なのが、いまカンナがやっているような、くり抜くように魔法陣を地面に描く手法だ。
「よーし、描けたわよ! 我ながら美しすぎる曲線ね……」
「本当に全然歪みがありませんね。弘法は筆を選ばずに近いものでしょうか……」
「KOBO? ま、水流しましょ。ここで一気に流すのが大事なんだからね」
水路で魔法陣を描くのではなく、堀によって切り立った土堤で魔法陣を描く。
ここで堀に水を流し込むことで、水が溜まった部分と土が出ている部分で僅かだが魔力の密度に差が生まれ、人間が「魔法陣」と呼ぶ魔力の流れが生み出される。僕の場合は魔力を視れば一発だ。不均一だが特に法則性もなく漂っていた魔力、辺りの草木に含まれていた魔力が、魔法陣の部分だけその形に沿って光るようになる。
しかし、土なのだから水を流せば当然染み込む。染み込むよりも早く堀を水で満たすことが大事なのだ。
せーの、と掛け声をして僕とアイリス、カンナの三人が一斉に水を注ぎ込んだ。流れ始めは少しずつ土に染みていく水が、掘られた穴全体に行き渡って少し経った辺りで水位を下げることなく張られた状態になった。
ふっ、と風の音、木の葉のざわめき、鳥の声が遠くなる。
「うん、成功!」
カンナが腕を組んで大きく頷いた。
視界をずらして魔力を視ると、水の張っているところは暗く、それに囲まれた部分は記号を描きながら輝いている。魔力というものは安定した状態になったらそれを保とうとするらしく、魔力が周囲より多く宿っている魔法陣の部分が水を弾いているのだ。水と油みたいな感じなのかは知らないけど。
そんなわけで、水が染み込むより先に堀を満たしてしまえば魔法陣が長時間発動するのであった。多分水の蒸発とかは防がれてないだろうからそのうち切れそうだけど。でも、どことなく不思議な、前世では目にすることのない光景である。
「これ、どのくらいまでの音が聞こえるんでしょうか……?」
「ふっふっふ、先輩に頼りなさい。魔力の濃度差と魔法陣の精度が分かれば、その効果範囲も大体が計算できるのよ」
おお、なんか分かんないけどカッコつけてる。すごい。えらい。
「すごいです、えらいです!」
「カンナ様、流石です」
「うぐっ……、う、うん。……アンブレラ、教科書の最後の付録に濃度に関する定数があるでしょう? それ読み上げて頂戴」
とりあえずエルフたちは脳死で褒めた。一周回って馬鹿にしてる感すらあるけれど、心の底から称えていることを信じてほしい。
褒められてなぜだかしおらしくなったカンナは、流石に細かな数値までは覚えていないのか必要な定数を調べるよう僕に指示した。草が生えている土と、水の場合について読み上げる。
「精度に関しては大体描く人ごとに一定なのよね」
「そうなんですか。カンナはいくつくらいなんですか?」
「大体85%くらい? どれだけ綺麗に好条件で書いても、90%は越せないそうよ」
「……あの、ちなみに付録には一般的に精度は40~60%とあるんですが?」
「絵描きならこのくらい当たり前よ」
なんか多分EKAKIとか別の種族なんじゃないですかね。バケモンが軽率に当たり前って言葉使わないでもらっていいですか?(震え声)
定期的にカンナから絵を教わっているアイリスは、やはり絵を描くことは素晴らしいのですねと羨望の眼差しでカンナを見つめる。やばい、尊敬度で抜かされる。見限られる。最近特になんか褒められるようなことしてないから忠誠心のチの字も怪しい。チュウで朝起こされることはあるから怪しいのはセの字あたりかもしれん。
「ま、まあ…………、ぼ、僕は可愛いですけどね!?」
「えっ……? あっ、そ、そうね。……ど、どうしたの急に? まあ、貴女ほど綺麗な人はいないでしょうから、口さえ開かなければ…………いえ、もしかしたらこの言動だからこそ一層可愛い……?」
なんか誇れることはと探し、ドヤ顔でやらかした。
言ってから「うん? 頭ネジタリナーイ?」って自分でもなった。カンナは何やらぶつくさと思考の海に潜ってしまったが、それでもとんでもなく気を使われたということだけは分かる。困惑しながら肯定されるのが一番キツい。
しばらくはドヤ顔のまま助け舟を待ったが、沈黙に耐えきれず、赤くなった頬と耳を隠すようにアイリスの胸に泣きついた。頭ナデナデされて背中トントンされた。ばぶぅ……。
「う〜ん、まあこんなものかしらね」
しばらく幼児退行しながら、地面でガリガリ計算するカンナを眺めていた。
計算が終わったらしく、大体効果範囲は魔法陣の端から3メートルずつくらいとのこと。
魔法陣にも範囲を指定する部分があるらしく、そこはヤァヒガルであれば軽く30メートルは越す範囲になる値に設定したそうだが、土と水ではその1/10も効果が出ないということだ。まあ、踊るには狭いけど口ずさむ程度なら十分だろう。
ああ、てかよく視ればこれか。おおよそ境界かなという辺りの魔力が、すごく薄くだが膜、あるいは線を形成している。
「アンブレラ、外に出て何か言ってみて」
効果自体は環境音が減ったことで感じるが、人の声についても念の為ということだろう。
頷き、魔力の線が示す効果範囲から外に出る。カンナは試しにと口を大きく開いて手を降っているが何も聞こえない。いや、よく耳を澄まして、目の前の人から声が発されていると意識すれば何となく聞こえそうな、小さな虫の羽音程度の声が聞こえる。
さて、こちらからは何を言おうかと考える。
折角なら普段は言えないようなことを言うべきである。変に取り繕っているというわけでもないけど、幼女時代にやらかしすぎたと気付いてからはある程度言動や振る舞いに気を使うようになったのだ。気を使えてるよね……?
魔法陣の範囲内ではカンナが何か叫んでは笑っている。あまり大声ではないのだろうけど、カンナに乗せられてアイリスまで口に手を添えて何か言っているようだ。無垢な笑顔を見ていると、不思議と心の中でムクムクと立ち上がるものがあった。欲望のままに。
「おにゃのこと戯れたいです!!」
ふぁぁ……!
なんかこう、背徳感やばい。
魔法陣切れてたらとか、実は二人が読唇術使えたらとか、スリルと自然の中の開放感で背中のあたりがめっちゃゾクゾクした……。
やめよう、そのうち露出狂とかになりかねない……。
ベンチに戻って、二人が特に何か気にするような素振りを見せないことに安堵しながら、元々の目的であった歌を何か歌おうと頭の中でいくつかの曲を思い浮かべた。