TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
自身のことが嫌いだと嘯く者がいる。
あるいは、ひっそりと心の内でそう思い、自分を好む者を疑い、時には自分を傷付け、その命に何の価値も見いだせないと苦しむ。
それでは、自身の名前を忌み嫌い、その肉体を受け入れることを拒んだ女淵にいろは、彼ら彼女らと同じく自分嫌いと呼んで良いのだろうか?
母様としばしのお別れをし、ロウソクの灯りだけを頼りに暗い通路を歩いていると、どうしたというわけでもなく少し黄昏れたくなってしまった。
それはきっと、真名を知るということへの期待から生まれたものでもあったのだ。名を明らかにすることで、自分はようやく前世から卒業できる。女淵にいろから脱却できる。
けれど、この感情は自分を嫌っているというのとはまた別だ。
むしろ逆。きっと自分は、自分が好きで好きでしょうがないのだ。
嫌うしかなかったのだとしても、自分を嫌える人を見ると羨ましく思える時がある。その人達は、しかと己を受け入れているのだ。
その身体を、その境遇を、その心を、その名前を、その弱さを、自分自身でちゃんと受け止めて、ついには抱えて立ち上がることができなくなり、「自分が嫌いだ」と泣きながら、それでも抱えたものを捨てずに生きていく。それはもう立派な「強さ」ではないだろうか。人間としての尊さを、兼ね備えることができているのではないだろうか。
自分は己を受け入れられなかった側の人間だ。
「自分」が大好きで、けれどその外枠に納得がいかずに、こんなのは自分じゃないと、気に入らないなら変えてしまえと逃避した人間の屑だ。
客観視すればこうも卑下できるが、主観、本心ではどう思っていることやら。ともすれば、
身体はすでに新しいものになり、環境も一新され、お七夜では神から真名を、両親からは仮名をもらう。
まっとうに生まれ変わったのだ。別に、前世からのしがらみをこの世界で抱え続けなければいけない道理もない。今度こそは、自分の全てを受け入れ、ちゃんと愛してやれることだろう。息子は失ったけれど、その代わりに多くのものを得させてもらった。等価交換だ。
しかしそういえば……神、か。母様や父様はごく自然に神様って呼んでいたけれど、実際のところどうなのだろう?
そもそも、自分にとって神様ってのは母様だ。女神母様、ウンいい響き。
まあ次点で付け加えてやるとしたら、自分をこの世界に転生させたあのドチャシコっぱいエセ女神だろうか。当時は「神……さま。そうか、自分は、死んだのか……」とか言ってしまったが、母様が女神なのだからあのメスはエセ女神に過ぎない。あ゛ー、エセっぱい揉みしだきてえなぁ。乳母様並みにデカかった。
さて、それに比べて此度の命名神とやら。なにやら真名を聴くだなんて特殊能力を持っているらしいが、母様とおっぱい女神に比べれば大したことはないように思える。
最近知ったが、世のエルフたちには緑のポワポワ、もとい魔力は見えないらしく、せいぜいがどこらへんにあるか感じられるだけらしい。食べるもんでもないとか。
なら、そんな特殊能力持ってる自分も神名乗れるんじゃね? でも自分は神じゃないんだよなあ……(呆れ)
そんなわけで、命名なんたら=サンのことは、神(笑)と呼ぶことにした。
ニュアンスの問題だし、気付かれるまい。モノホンの神ならバカにしてる信者の一人くらい見抜いてみろってんだ。やーいやーい。
既に、歩いている場所は通路から洞窟染みた見た目に変わっていた。まあ神(笑)が人工物の中で暮らしてたらそれこそ失笑モンだしな。神(笑)ならしょうがないのかもしれないけれど。
やーいやーい、お前んちおっばけやーしきー。
何だかんだ長い距離を歩いたような気もするが、実は自分の部屋も、我が家の玄関から考えれば、ここと同じくらい奥の方に存在している気がする。
まあそれだけ御子の秘匿性を上げたいんだろうが、これもう実質自分も神なのでは?(名推理) 実質ゴッド、実ゴだよ
向こう側に光が見え、段々とそれは大きくなっていく。おお、やっと着いたか。
眩しさに一瞬顔をしかめる。長いトンネルを抜けた先に待っていたのは、当然雪国などではなく、どこか日本の神社然とした場所であった。
別に、鳥居が立ってるとか狛犬がおいてあるとか、社殿建築に従っているというわけではない。石畳だって碌なもんがないし、何より紅白衣装の巫女さんおらんし。
空の大きく開けたその空間は、面積で言えば小学校の体育館ぐらいの、円形に近い広場だった。様々な緑の植物が生い茂る中どこからか水の流れるような音が聞こえ、中央には幼児が積み木をしたかのような下手くそな岩の構造物がちまっとある。
通路からその構造物まで、大きさの揃わない平たい石が距離をおいて敷かれていた。
「雨……久しぶりに見たな」
実に5年ぶりである。
そもそも、外に出ることが滅多に無い自分だ。母様に沢山お願いしてたまに日の当たる場所へ行けることもあったが、それだって天気の良い日に限る。そういえば、時々連れて行ってもらってた場所にここ似てないか……? ま、まあ、まさかね。
ふと頭によぎる動揺を振り払うようにして、洞窟から一歩踏み出した。
それ、ずぶ濡れに変えてしまえと、雨が自分に降り注ぐ。
嗚呼、思えば5年という月日はあまりに長すぎたのだ。
忘れていた。否、忘れたつもりでいた。もうすべて無かったことにできたつもりでいた。
そんなわけがないのに。
細く降りしきる雨の中に、ビニールの傘を、赤色を幻視する。
濡れた薄めの着物が肌に張り付き、否応なく体温を奪っていく。
あのときの痛みが、時間の経過など関係ないかのように思い出される。
体が震え、ごめんなさいと口を動かしかけて、すんでのところで堪えた。
「……ッハ……ハ……大丈夫、大丈夫だから……大丈夫」
体の芯が冷える感覚と言って分かるだろうか。
本来なら内側ほど温かい人間の体が、中心がどうしても冷えてしまって、震えが止まらない。フラッシュバックする光景に、吐き気すら覚えた。
けれど……大丈夫だ。もう大丈夫なのだ。自分は別の人間だ。この体は、その名前は、かつてとはもはや異なるものだ。
そう言い聞かせれば、次第に震えは収まっていった。
「でもこれだけ雨に降られたとなると、明日は風邪ひきそうだな……。なんだってこんな屋外に神域を作るんだ……」
まばらに並ぶ石畳の上を歩いていく。
雨で霞んでしまい他の障害物と見分けられなかったが、近づくと石の構造物(祠?)の前に誰かが立っているのが見えた。
大柄な壮年の男性で、顔の見える距離になるとその野趣な表情が伺える。フード付きのポンチョを被っているが、そこから覗く眼光は鋭く、しかし知的な奥深さを秘めていた。
「こんにちは、神様(笑)」
そんなわけで、ひとまず初手煽りを敢行してみた。
先ほどまでの震えを誤魔化した強がりではあったが、同時に相手を試す意味も込めている。
「待っていた。次代の巫女だな」
ほう、と少し面食らった。これは、気付いていないとか、あえて無視したとかではないように感じる。意に介していないのだ。大海に向かって石を投じたところで、その小さな漣は何の影響も生まないように。
神、神か。なるほど。納得できなくはない……が、この機械的ともいえる印象からすると、仙人の方が近いのではないだろうか?
「ええ、そうです。お七夜のために参りました。それにしても、随分粗末なところに住んでいらっしゃるんですね」
存在が特別である、ということが分かるのは、常人には見えないと言われる
普通のエルフは身体を埋め尽くす魔力なんか見えない。体内に保有する魔力というのは、おそらく空気中に漂っているものとは違う状態なのだろう。せいぜいオーラのように纏って見える程度だ。
だがこの男は違う。魔力の塊そのものだ。そして祠が本体なのか、魔力の線が祠と身体を結んでいた。粗末なところに住んでいると言うより、ここでしか生活できないのではないだろうか?
「真名が分かればそれは大きな力となる。だが一方で、力は畏れられる。人の世には馴染めない物だ。……ところで少女、その足をどけてもらえるかな。アレシアが泣いている」
「……花?」
「アレシアという名だ」
言われた通り片方の足を上げると、どうやら小さな紫の花を踏んでしまっていたようである。どけてやると、アレシアはまるで男に礼を言うかのように、降りしきる雨の中軽くその身を揺らした。
「真名が、アレシア」
「その通り」
ふと口から飛び出た言葉に男は首肯する。
この花をアレシアと呼ぶことは、その静かに咲く姿を見るともっともなことのように思えた。
自分は気付かぬうちに、この男のことを認めつつあった。
「真名とは、いったい何なのですか?」
真名の存在を知ってから、さらには母様に「神だけが真名を聴ける」と聞いてからずっと思っていたことだ。何を以て真とするのか?
「そのもの本来の名だ」
「本来とはおかしな話でしょう。どんなものだって最小単位によって構成されます。物体の本質なんてあって無いに等しい、みんな同じなんだから」
「お前は、どこでそれを……まあ良い。真名とは言葉で理解できるようなものではない。そうでなければ、誰もが使っている」
目の前の小娘には理解させられないと思ったのだろう。神(笑)は説明することをやめ、どこか遠くを見るような目をした。
「真名を与えよう。もう少し、こちらへ。そう、そこに立って、ゆっくり息を吸いなさい」
そういって神(笑)は祠の方へ更に近づき、振り返っては自分に指示を出した。
真名の下りは正直納得行かないが、早く帰って母様とニャンニャンしたかったので黙って従う。おら、あくしろよ。はよ真名よこせ。んで早く帰らせろ。
心を悟ることなんかはできないのだろう。不躾なことを考える私を他所に、神(笑)は静かに真名を告げた。
「……お前の名は、ニイロ。ニイロだ」
「……ぇ?」
……嗚呼。
嗚呼、嗚呼、嗚呼。
何だ、これは?
何を言われた?
「……む? 聞こえなかったか? お前の真名はニイロだ。これから、一生を通じて共に過ごす名だ、大切にしなさい」
どうして
ただ聴こえた通りの真名を伝えたのだろう。
だけど何故? 何故? 何故、何故、何故、何故ッ!?
「どうしてッ!?」
「ニイロ、どうした、ニイロ?」
どうしてその名が、
自分が一体何をした?
自分は、どうして。
自分が……。
……ああ。
単純なことではないか。
名前を捨て、身体を捨て、生まれ変わった。
けれども結局、いままで捨ててこなかったものがあったのだ。
たしかに、こればかりは自身の意志でなければ中々捨てられなかっただろう。
――
「ねえ、神様」
「ど、どうした……?」
大海だと思えた男は、いまはひどく狼狽してしまっていた。
嘲る言葉も必要ない。それすら勿体ない。
「ちがうよ」
結局、こいつはなんなんだ?
神ならば自分に新しい身体と人生をもたらした。あるいは愛を教えてくれた。
けれどこの男は違う。ただ、過去を喰らおうとしているようにしか思えなかった。
「そんなものは真名じゃない」
誰も与えてくれないならば、しょうがないから真名も己で与えるしかないのだろう。
何が良いだろう。もう、どうでもいい。なるべく適当なのがいい。
ふと思いついた言葉は、今日の日に良い言葉であった。
「
男を特別視しなくなった途端気付いたことがある。
なんというか、僕は騙されていたのだ。危うく真名まで騙されるところであった。
「……ニイロ! 駄目だ、それだけはいけない!」
「レインだってば」
「
これが真名の力だろうか。男が力を込めて名を呼ぶと、身体が拘束されるような気分がした。
でも関係ない。それは僕の名とは何も関係ないのだから。
「レインと呼べよ、偽物。お人形遊びも終わりにしよう」
「なっ……!」
男を構成する魔力に僕自身の魔力を混ぜる。すると、男の体は泥のように溶けてしまった。
祠へ伸びる魔力を辿る。ちょうど僕らの裏側、死角になっていた場所には、涙目で青ざめた少女が座り込んでいた。
「巫女から隠れるだなんて酷いじゃないか神様。こんな可愛らしい本体がいるだなんて、僕でもなければ気付けなかったよ」
「……っあ…………は、はは」
偽物の神様は口をパクパクさせる。
暗い肌にエルフ染みた耳。可憐な少女だ。ともすれば、中3くらいの見た目だろうか。この世界では初めて見る黒髪をツインテールにしているが、存外似合っていて可愛らしい。民族じみた文様の描かれた肌と、体に対し大きめの衣服の相乗効果か多少扇情的だ。下卑た視線を送ってしまったかもしれない。
「…………孕まされりゅぅ……」
……だからって、それは酷いんじゃないだろうか。
にいろ改めレイン「そんなわけで、レインですよろしく」
エキゾチック神様「ふえぇ…」
**連絡欄**
そんなわけで、ヒロイン追加です。
幼馴染は!? 姫様は!? 短小勇者くんちゃんに巨乳女神は!?
うるせえ! エキゾチックダークエルフの方がシコいだろ!
特に話に影響させるつもりはないけど、兄貴たちの物語展開の好みを知りたい!きっと千差万別だよね。
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急展開でシリアス&エロス
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急展開でまったり&えっち
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緩展開でシリアス&エロス
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緩展開でまったり&えっち
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ちんちん(結果開示しろ)