TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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そうか、つまりはタダより高いものはないってことか! 人間こえー! あやうく、ドキドキ学園都市生活〜(内臓)ポロリもあるよ♡〜なR18(G)展開になるところだった…

 カンナは怒っている。

 ときどき勝手に脱線してさらには逆ギレまでしてくるが、それはそれとして、僕が自らの置かれた環境に対し無自覚でいることを問題視している。叱り方に躊躇がないというか、どこか手慣れているのは弟や妹でもいるのかもしれない。僕も弟いるんだけどな……。

 僕に誰かを叱った経験がないのは、人としてそもそも成熟できていないか、あるいは他者に対する認識の仕方がズレているからだろう。

 

 ……これもだ。きっと僕は、自己分析や内省という点においては平均よりは高い能力を有している。けれども、どのように認識がズレているのか、なぜ(レイン)あるいは僕ら(エルフ)は人間から優遇されるのかが分からない。だってそれは、他者の思考を知って初めて答えが出せることだから。

 だから聞いたのに、カンナは「まず自分で考えろ」と言う。自分で考えることに意味があるのだという。そんなの運ゲーで、おおかた間違った答えしか出せないだろうに。

 

 けれども。自分の中で意味が見出せなくても。

 少なくとも、「友達がそれを望んでいる」という意味は与えられている。だから考えるのだ。意味というのは、自分だけでなく他者によっても与えられることのあるものだから。

 

 人間は僕、あるいは僕らに下手(したて)に出て、学習の機会を与えることはおろか生活の場所さえ提供する。いくら学園都市の人間が研究キチばかりとはいえ、学びたい者誰でもウェルカム! みたいな社会制度はしていないだろう。少なくとも、白妙の止り木から脱走した時に見た少年のような存在があることだし。なんだっけ……ハマダみたいな名前のツンケンした子。

 

 であれば、この優遇には下心があると考えるのが普通だ。うん、どう考えても「人間のみなさんは、優しい人ばかりだから」なんて結論は出ませんね。僕が日頃いかに脳死で生きているかが判明した。いや僕というかエルフの習性が悪いのであって、前世の僕はもっとちゃんとしてた……はず(疑心暗鬼)

 さて、下心と一口に言っても種類がある。何らかの理由で恐れているから取り入ろうといったものから、物的な対価を期待するものなど。あとは知識とかも対価たりうるか。

 

 もう嫌になるほど思い知ったことだが、人間とエルフでは魔法に対する理解の仕方も違うし、行使の手段も違う。人間は物凄い縛りプレイをすることでその微小な魔力量で魔法陣をやりくりしている。魔法陣というパッケージ化された形でしか魔法を知らないから、その理解も浅い。と思う。まあエルフはエルフで魔力量でゴリ押ししているところあるけど。

 ああ、となれば魔力量も対価としてあり得るか。たとえばヤァヒガルに魔力込める作業しまくったけど、あの石に自然に魔力が貯まるのを待つのではエネルギー資源としてそれなりに貴重なものとなる。……なんだ、なら白妙の止り木にいた時点で対価支払ってたのでは? まあ、魔力の扱いの良い勉強になったから異存ないけど。

 一番怖い発想としては、実験動物として使われる未来である。流石に今まで関わってきた人間の性格からしてそんな倫理観……してない……してないよね?(不安) いや、うん、してないと思いたい願いたいできればそうであってほしいと希望する次第でありますけれどもですけれども、エルフは全然人間と交流ないみたいだし、不思議生物として研究意欲をそそっていてもおかしくない。……森に帰っていいですか?(震え声)

 

「あの……カンナ、ぼ、僕の内臓とか脳みそ見たいですか……?」

「えぇ……しばらく考え込んだと思ったらこの子は……いったいどんな脳みそしてんのよ……」

「うぇっ……!? や、やっぱり解剖(バラ)したいんだァ!?」

「ものの例えよアホの子め!」

 

 いいだろう。受けて立つ。

 このまま逃げても魔力が体から乖離して死。あまり長くとどまれば「ヒャッハァ、もう我慢できねぇ!」状態の研究者たちに母様にも見られたことのない場所を見られて死。

 まあ、後者みたいなことになる場合はメガンテで最後っ屁をかましてやる。練習しておかねば……。いや、僕の場合はマダンテのほうが威力高そう? メガンテって練習=死だし、マダンテの練習するか……。あ、勝手に魔力爆発させたらまた事務員さんに怒られる。

 

 ああ、そうか。

 カンナの言いたいことが分かった。カンナは友達として、こうして「アンタこのままじゃホルマリン漬け一直線よ」と遠回しに警告してくれた。それを自覚しろということは、つまり、学園都市に居たいなら僕を解剖する以上のメリットを提供し続けろということだ。

 

 そして学園都市自体も、今は僕に生かしておくメリットがあるかどうか見定めている。だからこそ魔法を勝手に使っても緩くしか怒られなかった。彼らは、僕が勝手に何かしらの成果をもたらす可能性があると踏んでわざと野放しにしているのだ。

 ただし気を付けなければいけないことは、害獣として認識されないようにすること。今までも散々警告されてきたが、言い方が柔らかいために気が付けなかった。たとえ利をもたらす可能性があっても、それ以上に害をもたらす存在であれば人間は躊躇なく排除するだろう。だから、僕は絶対に人に害を与えてはいけない。殺さないのは当然で、微塵たりとも脅威を感じさせてはいけないのだ。

 多少なりとも人々の生活を脅かせば、そのときはバラリ……。

 

「カンナ、分かりました。僕はまるで自分の立場というものを理解していませんでした」

「……! ほんと? アンブレラ、本当に分かったのね?」

「ええ。とりあえずは、僕にできることを探そうと思います。今は許されている状況ですが、それに甘んじているわけにもいかないでしょうから」

「──そうっ。そうよ、やっぱり貴女って賢い子ね!」

「いえ、カンナが諭してくれなければ気付ませんでしたよ」

 

 ゆっくり学んでいれば真名と魔力についてそれなりに知識も深まるだろうと思っていたが、現状の人間たちを見る限りそこまで深い知識が一般的に共有されているとは思えない。しかし、ヘリオがこの場所を勧めたからには、何かしら答えが見つかる場所として一番可能性が高いのだろう。

 ならば、学園都市の人の繋がりについて知るべきだ。特に、研究室。どこが何を専門としているかを調査すると同時に、僕が何かしらの利益を提供できる場所の検討もつける。

 それはそれとして、学園都市の人間怖いから、今度コルキス様に会いに行ってやばいとき助けてもらえるよう交流深めておこう。ちょっと距離感近いけど、だからこそ人情味溢れる人だと思うのだ。

 




コルキス「おっ、釣れた」

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