TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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月イチくらいで休みをいただきつつ2年近く書いているわけですが、どの話も当時見た作品、考えていたこと、経験したことにかなり影響受けています。
具体的には忍殺語ハマってた時期とかですね。もはや物語形式の個人日記です。


日本でも、改名するのってそれなりに手続きが必要なわけだけど。ここらへんの話こそ、自分は自分の認知だけに依らないって言われてるみたいでモヤッとするなぁ。

 相談できる人がいない。

 

「う〜、にゃ〜う〜……」

「どうかなさいましたか?」

「うう……、なんでも、ないです……」

 

 悩ましげなうめき声を上げた僕をアイリスがキョトンと見つめた。

 悩ましげ=官能的と訳す辞書も多いが、今回は文字通り悩んでいる。

 

 なんかもう、何が問題かすら分からなくなってきたので一旦まとめてみよう。

 取り急ぎ解決に向けて動かなければいけない問題は2つ。僕の真名のこと、そして学園都市に存在価値を示すこと。

 

 真名のこと。一番わかりやすく言ってしまえば、ただ名前を改名したい。それだけだ。

 でもどうやら、エルフという生き物の構造上改名は難しく、そもそも世の中で真名を変えたという話がない。

 ヘリオ風に言えば、真名を偽ってはいけないのだ。

 僕のことなのに、僕が決めることができない。そんなのおかしいよって言ったところで、この世界で理解を得るのは難しいだろう。よしんば理解を得られたところで、「どうして変えたいの?」と聞かれれば言葉に詰まる。

 

 初めて真名を告げられたときの、怒りや失望にも似た激情が今もそのまま残っているわけではない。でも、ニイロは死んだじゃないか。ニイロは……もういいよ。

 あんな、疎まれて、避けられて、迷惑ばかりかけて誰のことも幸せにできない、そんな子供はもう死んだろ。

 

 たまたま。

 たまたま、発音記号が似通っただけ。女淵にいろではなく、二とイとロが並んだだけの別物。

 そう割り切ってしまうには、レインとして生きすぎた。母様に()()()()()()

 祝福と呪いは紙一重と言うが、まさにその状態なのだろう。

 母様に愛されることがなければ、今の僕(レイン)に、何もかもを誰かに委ねてしまえるような人になれやしなかった。きっとニイロと同じく、独りで、自分を守ることだけを考えて生きた。

 しかし母様に愛されたからこそ、今更引き返すことができなくなった。でも、後悔はない。もしもやり直せたとしても、同じ行動を取る。

 

 だって、僕はレインだ。

 僕が決めた。僕が選んだ。世界がそれは違うよって拒んだところでなんのその。

 

 僕が僕をレインだと断言できる──いや、定義できる理由は、母様だ。

 だから、果たして本当に僕が決めたことなのかとか、僕の意思なのかとかは間違っているのかもしれない。それはもはや個人の定義に関する哲学で、その命題にすんなり答えを出せるほど頭が良くもない。

 でも、僕はレインだ。母様にそう()()()()()から。これまでも、これからも。

 

「なんてこと人に言えるわけない……」

 

 前世がどうとか実の母といっぱいえっちしてますとかなぁ……。

 もう少し頭がおかしければワンチャンだが、最近はちゃんと色んな人と交流して、常識というものを身に着けつつあった。

 

 そしてもう一つの取り組むべき問題。学園都市に僕の価値を示すこと。

 提供されている衣食住が、実はただ実験動物への餌なのかもしれない。最悪の想定はそれだが、そうでなくとも、タダ飯食らいとして過ごしてある日突然「もう面倒見きれません」とあらゆる支援を切られたら、外国で孤立した僕らは路頭に迷う。

 

 まあ、生きていくだけならどうとでもなる。今は折り畳んで仕舞ってある弓を使えば鳥の数匹落とせるし、火や水も魔法がある。

 でも、研究区に入れなくなれば学園都市に来た意味がなくなる。つまりは1つ目の問題を解決するために、2つ目の問題にも向き合う必要があるのだ。

 ……あとはまあ、無償の提供って普通にやだし。タダほど高いものはないみたいな怖さと、責任感的な倫理の問題で。誰もが享受してるものならともかく、やや特権的に与えられているというのが心理的に負担である。

 

「ああでも、アルバイトでもしてお金を貯める手もある……?」

 

 世の中の学生的には、むしろそちらのほうが普通だ。宿を変えれば支払えないほどではなくなるかもしれない。

 絶対に時間が無くなる気はするけど。最終手段として、覚えてはおこう。

 

 なんであれ。

 

 結論としては、自分なりの貢献方法を見つけなければいけない。

 しかし、僕には学園都市が僕に求めていることも分からなければ、そのヒントをくれるような知り合いもいない。カンナは一介の学生であるし、偉い人と繋がりのありそうなメガネ(クラムヴィーネ)はちょっと怖い。

 カンナの友達から何か辿れないかと探ったが、

 

「芸術家はね──孤独なの」

 

 との返答しか頂けなかった。あまりに残酷で、僕はただ彼女の頭を抱きしめることしかできなかった。というかお前研究者だろとは言えなかった。

 

 とにかく、真名の研究に関することや、学園都市が必要とするなにかしらのもの。それらに関する知識もなく、相談する相手もおらず、かと言ってあまり信用もできないような相手に相談するのは足踏みしてしまう。

 ならばと考え、気付いた。

 

 頼りになって、ある程度信じられる。人との繋がりも多そうだけれど、あまり学園都市の内部に関わりすぎていないであろう人物。

 旅の道中では何かと親身になってくれた。聞くところによれば、留学して以来目覚ましい活躍をしている人気者とのこと。

 

「──そうだ、コルキス様に会いに行こう」


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