TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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RPGとかで道を塞ぐタイプの植物オブジェクトあるけど、モンスター殺せる刃物持ってるなら流石に植物くらい突破できるのでは?ボブは訝しんだ。

 アニメやゲームには街案内をしてくれるキャラクターというものがいる。特に、アニメのようなキャラが好きに動いている世界では、たいてい誰に頼もうが快諾してつつがなく街を紹介してくれるものだ。

 まあ、街案内を頼まれて返事が分かりませんだと話が進まないからという事情もあるのだろうが、実際普通に生活していた人が急に案内なんて頼まれたら戸惑うだけな気がする。僕が森の案内を頼まれたらどうするだろう。劇場と広場と……あとは自宅くらいしか連れていけないかな。

 灯台下暗しなんて言葉もある通り、観光業者でもなければそうそう上手に案内なんてできないものだ。言い方を変えると、あくまで「その人自身にとっての街」を見せることなのだ。……ああ、今更だけど、もう地元を案内するって考えたときにあの森が思い浮かぶようになっているのか。

 

「思っていたよりも皆様好意的でしたが、それほどこちらに注目もしていませんでしたね」

 

 学域内では学生(オトコノコ)たちからチラチラと視線を向けられることに辟易してきたアイリスが不思議そうに呟く。男の子というか、なんなら女の人も大体最初はギョッとした顔で反応するものなぁ。恐らくは外套を羽織ってきたのが良かったのだろう。体全体のシルエットから凹凸が減るから、人の視線を集めにくくなる。

 

「あはは……ここらの人はみんな、学生に対して凄く親身なんです。憧れや尊敬もあるかもしれませんね、未来の導師様候補なわけですから」

 

 お姉さんの案内は随分わかりやすいものだった。というのも、まず連れて行ってくれたのが街の案内板のある場所、そこでこれから歩く大まかなルートと目的地を説明してから案内してくれたので、僕らの頭の中にぼんやりと地図がある状態で歩くことができたのだ。宿屋の従業員として、これまでも観光ガイドのようなことをした経験があるんだろうか。

 しかし、なるほど。街の人からの反応が好意的なわりに今まで宿などで受けたようなのと違うなと思ったけれど、エルフだからという理由でなく、学園都市の学生だから優しかったのか。だから変に注目もされないと。……僕とアイリスは催事用の被り物をしているわけで、奇妙な集団として視線を集めそうなものだけど。

 

「みんな、慣れたものですよ。学生や導師様の格好をしてさえいれば、動物だろうと鉄塊だろうとさほど気に留めません。催事装くらい、てやんでぇですね」

 

 まあお二人は雰囲気が独特ですから、その分で振り返ってしまう人はいるかも知れませんけど、と小声で付け足した。

 動物というのは獣人という意味だろうか。なんだか、ここ最近の生活を鑑みるに、本当に普通の動物が紛れ込んでいても不思議じゃない気がしてきた。僕でコレなのだから、学園都市でずっと生活している人はもう何があっても驚かなくなってそうだ。

 

「学園都市の方々は懐が広いんですね」

「そうですね。そこは胸を張れるところです。……もっとも、歴代の勇者様のおかげでもあるんですけどね」

「勇者のおかげ?」

「ええ。異種族との仲が悪い時代も多々あったそうですが、勇者様が架け橋となって……あ、見えましたよ! 本日の最終目的地、ヴァイツァーサ転送門です!」

 

 お姉さんが指をさす。遠目でも分かる、横に広い施設がある。人の多さといい石造りの雰囲気といい、門とは言うが日本の東京駅のようだ。

 

「凄い、学園都市に来て見た中で一番立派な建物です……」

「一番多くの人が使いますからね、何度も改築しているので、見た目や構造も常に最先端です!」

「転送門ということは、ここから他の学区へ?」

「ええ。どの学区にもあって、こういった中央の転送門は学区の顔としての役割もあるんですよ」

 

 高層ビルみたいなものかな。前世だと、発展国ほど高さや見た目の立派さを誇る建物を有していた。目に見えてわかる、国力の強さみたいなものだったと思う。あとは都道府県ごとのなんちゃらタワーとかね。

 ゆっくり近づこうとすると、正面からニャアという鳴き声が聞こえた。

 

「……猫?」

 

 視線を少し下げると、白猫がいた。いつもどこかから現れ、どこかに消えていく彼。あるいは彼女。

 駅(転送門)から出てくる人の数は多いと言うのに、猫の周りは不自然に人が通らない。

 

 まあ、とりあえず危ないし連れて行くかと思って抱えようとすると、肉球でテシっと手を払われた。えぇ……(困惑)

 それじゃあと横を通り抜けようとすると、進行方向に立ちふさがってぐるぐる回りながら道を塞いでくる。

 

「あ、あの……通してくれませんか?」

「ニャー」

 

 考えうる限りで一番ゆるい形で道を遮る障害物は、何かを訴えかけるように一声鳴いた。


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