TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
気が付いたときには、ページを引き裂いていた。
このところ衝動的な行動を取ってしまうことが多い。未だ震える手と握りしめられた紙片を睨みながら、コルキスは胸元からメモ用紙とペンを取り出した。
修繕と呼ばれる魔法。物体に宿る魔力というものは、たとえ本のように魔力含有量の少ないものでも時間的な情報、記憶のようなものを持つ。それを利用して破壊されたものを直す、らしい。
効果が有効な期間も短く、直し方も微細な部分を見れば荒っぽいらしく生体には向かないが、破れた本のページをそれっぽく直しておくのには役立つ。どうせ確認するものもいまい。
「何やってんだ、アンタら……」
まだ足りていないのだ。そも、来訪して間もない小娘が知れるような、あるいは知るべきでもないような秘密に誘導したのはタゲリだ。彼がコルキスに何を求めているのかも曖昧だが、こんなすぐに見つかる答えを用意するようには思えない。
『我々が森人について知っていることは、すべて一人の少女が教えてくださったことなのです』
人間と関わらず、幽かの森からも滅多に姿を現さない彼らの体のことを、なぜ学園都市が知っているのか。
それに答えたときのタゲリの表情はどこか遠くを見つめているようであった。昔を懐かしんでいるのかとも思ったが、そう尋ねるとタゲリは首を横に振った。
『もう100年以上前のことさ。……レークシアという名前について調べてみなさい。どれだけ文献が残っているかは分からないが、きっと貴女の疑問を紐解くきっかけになる』
そう。「紐解くきっかけ」と言ったのだ。答えではない。
そしてまた、答えは事実が雁字搦めになって容易に触れられなくなってしまっている。
レークシア。あるいはレクシア。150年ほど昔に彼女はいた。
文献はさほど多くなく、名前が記されているものとなればいまのところ2つしか見つかっていない。しかし居なかった者とするにはあまりに当時の彼女の存在が大きすぎたのだろう。
時代と環境を照らし合わせれば、呼び方は異なれどレークシアであろう人物が浮かんでくる。
少女。貴人。あの人。森の方。女神。……そして、
それからいくつかの文献に目を通し、当時の技術や情勢を鑑みて、コルキスはひとつの結論に至った。
少女が教えてくれた。授けてくれた。共に真理を究明した。表現の仕方は様々だ。
それでもコルキスは確信していた。
学園都市は、レークシアを解剖した。