TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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お祭りの屋台とかだと普通に家でも食べれるものはなんだか勿体なくて買わないことが多いけど、実際買ってみると家で食べるのとはまた違った趣があって案外ハマったりする。

 アイリスが貧血でダウンした。

 本来であれば今日はちょっとした用事があったのだが、この分ではアイリス抜きで済ませることになりそうだ。

 

 人としての義務(研究)を思い出し、お絵かきロボットから研究者にジョブチェンジしたカンナが報告会を終えるまでの少しの期間。率直に言って────暇である。

 脳内会議では「何しとんねん早く森に帰れや」だの「もっと色々勉強したほうがいいんじゃないの?」だの、百家争鳴、ちびレイン達がぎゃあぎゃあと喚いているのだが、道標もない現状ではあまりジタバタしてもしょうがない。ときおり小さなにいろがおどおど何か言おうとするが袋叩きにされている。お前は早く成仏しろ。

 もう少し焦ったほうがいいような気もするが……危機感とかいう概念、どこかで落としたっぽいんだよなぁ。100%、実家の森である。あそこ時間に対する感覚をすべて奪ってくる。

 

 しかし、このところ人を頼るということを覚えたものの、逆に人に頼りすぎていやしないだろうか。

 生活周りはアイリスに任せっぱなしだし、悩みを解決してくれる先生を探して頼るためにコルキス様を頼ろうとしている。そんでコルキス様に会うためにカンナを頼って……いや本当に人任せにし過ぎだな?

 や、やばくない? もうちょっと自分でできること……僕にできること……

 

 ……よ、夜伽。

 

 はい。

 自分のいいところ、顔と夜伽スキル以外ないかもです。

 

 えっちな漫画の登場人物としては上出来かもですが、あいにくこれ(僕の人生)全年齢対象作品なんです。……いや、R15くらい、かも?(色々思い出している顔)

 危なかった。これで母様に愛されてなかったら絶望して死んでた。定期的に来るな、この手の自分に対する絶望。

 

 まあ母様に愛されているのですべて解決する問題である。考えてもしょうがない。はいやめやめ。

 本題。最初に言った「ちょっとした用事」のほうに取り掛かろう。

 

 学校の宿題……ではない。課題に関しては、慣れもあってか最近はその日の夜のうちに終わっている。嗜好品の少ない(当社比)この世界では、夜はわりと持て余す時間なのだ。

 いーちゃんに会いに行くのもまた別だ。というかそれは「ちょっとした」に収まらないし。いまのところ、コルキス様に会って、外を出歩くのに慣れてから次の週あたりで行くつもりだ。

 

 よって、今日は猫を追います。

 ……はい。猫です。猫を追います。よろしくお願いします。

 

 説明は置いといて。

 さあ、ちょうど窓の隙間から抜け出していくとこが見えた。イクゾー!

 

 

 

 


 

 

 

 

 一人で宿を出ようとする僕に宿のお姉さんが心配する声をかけたが、少し散歩するだけですと言って飛び出した。もちろん被り物で顔を隠して。

 世の中的には休日に分類される今日は、普段より人通りが多くなっている。まあこの宿のあたりは普段人がいなさ過ぎるくらいだけど。大きな通りなら出店もたくさん出ていることだろう。

 

 猫。尾が二股の、真っ白な謎の存在。

 毛並みとかから考えても飼い猫だろうし、名前はつけていない。僕やアイリスの間では、猫とかあの子とか適当に呼んでいる。

 

 いつの間にか……たしか僕が白妙の止り木で気絶したあたりから現れて、ここまでなぜかついてきている。宿のお姉さんは僕らの飼い猫だと思っているらしいが、餌をやっているわけでもない。

 気付いたら隣で寝ているし、逆にそこら辺にいるものかと思ったらどこにも姿が見えないときもある。そういうときは外を散歩しているっぽいのだが、どこに行っているのかも定かでない。

 

 そんなへんてこなペットがウロチョロしていれば、流石のエルフでも疑問というか、不安を抱く。

 せめて普段何をしているのか知りたい。どこでご飯を食べているのか、散歩は実は本当の飼い主の家に戻っているんじゃないか。

 そんなわけで、本来であれば今日はアイリスと一緒に猫の追跡をするはずだったのだ。

 

「ヘイ、オマツリガール!」

「!?」

 

 道路の真ん中をスルスル駆けていく猫を追っていると、いつの間にか大通りまで出ていた。

 横の方から明らかに僕に向けられた声がして、変な悲鳴が出そうになるのを堪えて見れば屋台の店主が手を降っていた。

 

 アイリスと何度か立ち寄ったことのある屋台だ。無視するのも忍びないし、猫の行く方を視界の端に捉えながら、ドキドキする胸を抑えて近寄る。

 

「ゲンキソウネ! 今日ハオマツリマッマト一緒ジャナイノ?」

「??」

 

 あかん、この人方言なのかイントネーションとかキツすぎて何言ってるか分からん。ちょくちょくスラング挟んでそうだし。

 学域内だとみんな丁寧な言葉を使っているからついていけているが、カジュアルに崩された会話をされると途端に頭が真っ白になって認識できなくなる。

 今日、ママ、一緒は聞き取れた。ママ? アイリスのことかな?

 

「……あ、あぅ……、うぅ、……うん」

 

 アカン。

 リスニングのテストは分かるけど、いざ話しかけられたらイエースイエースしか返せない高校生みたいになってる。

 違うんだ。人間の言葉とか全然余裕なんだけど、この大阪弁(推定)になんて返せばいいか分かんないだけで。いやもはや津軽弁だろこれ。

 

「オーゥ……、ハイ、コレ食ベテ元気ナロウ」

 

 そう言って店主はじゃがバターらしきものを差し出した。お金持ってないけどもらっていいのかななどと悩んでいると、無理やり持たされる。

 

「……あ、ありがとうございます?」

「マッマ見ツカルトイイネ〜」

「??」

 

 あっ、これ迷子かなんかと間違えられてる?

 ……まあ、いいか。とりあえずなんか解放されたっぽいし。芋を入手したということで。

 

 小さく店主に手を降って、猫の行った方へ小走りに進む。

 多分まっすぐ行ったと思うんだけど……あ、一瞬なんか見えた。

 

 細い路地裏に入っていったらしい。まあ猫だしな。人混みに突っ込まれるよりはよほどマシだ。

 芋はまだ熱いので紙に包まれたままの状態で手に持っている。人類はもっと猫舌に配慮すべき。

 

「行き止まり……」

 

 確実に猫はこっちへ進んだと思うのだが、路地の先は僕の背丈ほどの塀がそびえ立っていた。

 下に抜け道があるのかなとあたりを見渡すがその様子もない。

 

「身体強化なしだとどうかな〜、……あ、いけた」

 

 恐らくは越えていったのだろう。猫ってジャンプ力あるって言うし。

 周りは住居だろうから壁を蹴るわけにもいかず、魔法も極力使いたくないため、力んでじゃがバターを潰さないよう気をつけながらその場で跳躍して塀の上に乗った。こういうとき、学園都市の制服はどこかに引っ掛けそうな怖さがある。体操着とかないんだろうか。

 

 塀の上に立ったところで、どこかから猫の鳴き声が聞こえた気がした。

 ……おそらく塀を伝っていった先だ。なんだかアスレチックで遊んでるみたいだなと思いながら、音の聞こえる方へ足を動かす。

 

 

 

 


 

 

 

 

 路地裏の長い煉瓦塀を伝うと猫の国であった。石の床が毛皮になった。木漏れ日に野良が丸まった。

 

「わ……、何匹いるんだこれ……」

 

 自然と声を抑えてしまう。薄暗い路地裏から歩いてきたはずが、いつの間にか日差しの潤沢な猫の集会場にたどり着いたらしい。

 一番日差しの暖かそうなところには二股の白猫もいた。なんだあの子、ここの王様なんだろうか。

 

 こうもたくさんにゃんこがいると、モフリストとしての血が騒ぎだす。伊達に前世で猫を追っかけていない。

 まず、初手で大きな声を出さなかったのはグッドだ。さらに、幸いここの子たちは人の姿を見てすぐ逃げ出すほど警戒心が強くないらしい。これは簡単な勝負となりそうだ。

 塀から降りて、そのまま猫たちに近すぎない位置で座る。自然と女の子座りが出るのはもうしょうがない。とりあえず、少しでも猫と視点の高さを揃えるのが大事だ。

 あとはしばらくじっとしているのがいい。丁度じゃがバターが冷めてきたことだし、これを食べてぼーっとしてよう。

 

「……流石に早くない?」

 

 芋に一口かぶりつくが早いか、一番近くにいた猫がすり寄ってきて僕のお腹のあたりを嗅ぎ始めた。それを皮切りに、他の猫たちまで近寄ってくる。芋に来るならまだ分かるが、明らかに僕に興味を示している。

 四方八方を幸せな温もりとやわらかさに包まれる。何だ、ここが天国か。

 

「にゃあ」

 

 白猫が鳴いた。途端に、僕を圧死させようとしているのではと思うほど引っ付いてきていた猫たちが僕から渋々距離を取り、空いた膝の上に彼(彼女?)が乗った。ああ……温もりが離れていく……。

 この白猫、一声で他の猫達を動かせるあたりガチの王様とかボスかもしれん。しかし、なんだ。僕の膝の上を一人だけ陣取って、ここは俺の居場所だとでも言うつもりなのだろうか。

 

「あのですね、白猫さん。いいですか? まずですね、僕は母様のものなんですよ。分かりますか? なので、あなたが何を言い張ろうと、僕の膝の上も全部母様のもので、あなたのものじゃないんです。だからあなたが他の子達から僕の膝……というかふとももですが、そこを奪う権利もないんです」

「みゃあぅ……」

「みゃあぅじゃありませんにゃ。母様が優しいからって、貸し出されてるものを独占するのはいけにゃいんですよ」

 

 白猫の背中を撫でながらしかし口調は厳しく叱ると、最終的に小さくニャと鳴き、それを聞いた他の猫達はまたこちらへと擦り寄ってきた。攻略完了である。

 はい、なんで負けたか次までに考えてきてください。……なんで勝てたんだ今……?




レ「僕は母様のものなんですよ」
母様「私はレインのものだよ」
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