TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
アプトナディティス──12区の学区長への訪問を任せたカンナとアイリスが早々に帰ってくることもなく、二人がコルキスの別邸を発ってから三日が過ぎた。
今のところ連絡はなく、ともすれば未だ面会が叶っていないのかもしれない。追い返される心配はしていないが、あの「今すぐ家に帰ってゆっくり寝たいです」という顔をした
時間がかかりすぎてしまえばアンブレラの症状という意味で好ましくないが、ある程度ここから遠ざかっていてもらわねば困るのもまた事実だった。
……本来の予定で言えば、かなり早まった形になる。
記憶喪失というイレギュラーや、囲い込みが容易にできたというチャンスで変更は致し方ないのだが、それにしたってこのタイミングで手を出すのは想定外だ。もはや賭けに近い側面もある。
焦っているのだろうか……そう考え直してみるものの、三日間アンブレラのことを考えながら執務に徹した体は、既に野生的な本能の抑えが効かなくなっていた。
「……ハハッ」
堕とすなら徹底的にやらなければいけない。5:5の賭けなんていうのは馬鹿のやることだ。
生まれたての赤子のような状態の少女に、価値観が染まるほどの快楽を与える。
記憶が戻ったとしても求めてしまうほどに、体に条件付けで覚えさせる。
「オイ、ヴィオラ、入浴するけど準備は──、あァ? 居ねェのか?」
立ち上がり、唯一の信頼できる従者に向けて声を張り上げるが珍しく反応がない。
普段なら同じ部屋か少なくとも隣接した部屋にいる場合がほとんどだが、はてどうしたことか時間のかかる仕事を与えていただろうかと首を捻るけれども、とんと浮かばない。
生命の危機は感じていなかった。
ソートエヴィアーカからの刺客を一時的に味方として取り込んだ今、コルキスはここしばらくの中でもっとも安全な状況にあると考えており、実際そうであった。
学園都市の者についても、この数ヶ月で張り巡らせた情報網が機能して誰かどうしているか、何を計画しているかをつぶさに把握できている。
おまけに、もしもヴィオラが死に瀕すればコルキスには伝わるようになっている。その反応だってないのだから、少なくとも危機ではない。
ヴィオラがコルキスの側を離れることは滅多にないが、逆に言えばものすごく時々、コルキスが振った仕事を忘れていた場合も含め、全くないというわけでもなかったのだ。
舌打ちを挟み、今度は誰でもいいからと適当に呼びかけた。
しかし反応がない。
「……あァ?」
この館において、現在の護衛対象は二人。
コルキスとアンブレラである。
その対象の近くに、ただの一人も護衛可能なものが居ないというのは異常な事態であった。
コルキスがそう命じたわけではない。しかしそれとは関係なく、従者としての教育を受けた者たちであれば指揮系統が勝手に護衛を配備する。本業が刺客であっても、普段は従者として振る舞うのだからその教育はなされているはずだ。
流石に何か起こっているかと思い、警戒を露わに動き始めたところでバタバタと慌てたような足音がした。
「申し訳ありませんっ、コルキス様。湯浴みの支度は、済んでおります」
「……遅かったな、ヴィオラ。何があった?」
「何も──ヒッ、い、いえその、私の想定ミスです。アンブレラ様の容体を確認するのに時間がかかり、ローテーションにズレが生じました。いかなる処分も──」
「──ふぅン。まあ、処分とかいいってそういうのは。お前にそういうのを課すとしたら夜で、今日からしばらくはお預けだ。そうだな、まァそれが罰になるか。罰だから、いいか、自分で慰めることもするなよ」
コルキスの中には、ヴィオラのあらゆる優先順位において自分が一番上に来るという常識に近い感覚がある。
ローテーションがどうだとか言い訳には興味がなく、少しでも自分に対する優先順位を疎かにしたという事実にのみ苛立ちが募った。
「寛大な処置に感謝いたします……。ところで、ということは今晩からしばらくアンブレラ様のお部屋には護衛を近付けない方がよろしいでしょうか?」
「あァ。一人は必要だが……そうだ、これこそ罰だなァ。ヴィオラ、お前にその間の護衛と従事を任せる。扉の前で見張り、誰も近付けさせるな。んで、半日経ったらシーツや調度品を交換しに来い。その後はお前は室内で見張りをするんだ。これは罰だからな、お前はただ、部屋の内側で、扉の前に立って、私が
「……っ、は、い」
ヴィオラが声を震わせながら返事する。
これから自分が耐えなければいけない地獄を想像したのだろう。これまで寸止めは何度も経験してきたであろうが、自慰すらも禁止された生殺しは初めてだ。
我ながらいい罰が思い付いたものだなぁと少し上機嫌になったところで、恐れるようにヴィオラが口を開いた。
「こ、コルキス様。その、本当に、今晩からなされるのですか?」
「なんだヴィオラ、これだけでは不満か。しかし困ったな、これ以上にお前を苦しませる罰となると、今の私にはなかなか思い浮かばないのだ」
「い、いえ、その……」
「安心しろ。私の方からお前に触れてやることも
ひどく意地の悪いその笑みは、普段の淑女然としたコルキスしか知らない学園都市の学生たちが見れば卒倒するか、あるいは新たな性癖を開拓することとなったであろう。
僅かに残っていた苛立ちも、アンブレラのことを想えばたちまちに消え去った。
堕ちるのは結果だ。コルキスはただ、ただただ、彼女を愛することだけを目的にしてやればいいのだ。