TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
熱い吐息が漏れた。
それでも浮かべたままの微笑を崩さないのは、びくりと肩を振るわせたこの目の前の少女の不安を煽ってしまわないようにするためであった。
少女は気遣うような目でこちらを伺っている。続けて、と囁くと頷いて再び指を肌に這わせた。
はじめ、少女──アンブレラの触れ方はひどくおっかなびっくりしたものであった。
それこそ目の見えない人間が物の形を確かめるように、ペタペタと、そのくせ触れる場所には躊躇がない(胸も腰回りも、他の部位と分け隔てなく触れてくる)のがおかしくて軽く笑ってしまったくらいだ。
「ふふ、ごめんなさい、『触れて』だけでは分かりにくかったですよね。押したり、擦ったり、揉みほぐしたり……、どういう風に触れるとどう反応するのか確かめてみてください」
「これで本当に仲良くなれるんでしょうか……?」
「ええ、アンブレラ様が私のことを少しでも知りたいと思っているのでしたら、必ず」
アンブレラがどこでも触れやすいように、いまやコルキスは割座のまま後ろに手をついて全身を曝け出していた。纏う服もなく非常に扇情的な光景であるはずが、コルキスの美貌に余裕が相まって、何らかの芸術作品のようにも見えた。
ほとんどの人間にとって大金を積んでも触れること叶わないその芸術作品を、アンブレラはゆっくりと、言われた通り色々な触り方で確かめ始めた。(
驚くべきは、少女の学習速度である。
「どう反応するのか確かめて」と言ったせいだろうか。反応のない触り方、部位を繰り返すことなく、着実にコルキスの体が
それは必ずしも性的な意味に限らなかったが、毛布を被っていないにも関わらず体温は高く上昇し、じっとりと滲み出した汗はコルキスの色香を強めていた。
が、同時に。自分の体に触れるアンブレラの手のひらもまた、段々と体温が上がってきているということにコルキスは気付いていた。
生物の体とは、極論を言えば「生殖を行うための物体」である。文化的なコンテキスト、つまりは「記憶」と「知識」がなくとも、本能的に引き起こされる興奮状態というものが存在する。
そしてその興奮状態を、直接的な部位に触れずとも確かめる方法がある。──心因性発熱、体温の上昇だ。
アンブレラは既に、無意識下で興奮していた。
それをコルキスが指摘することはない。しかし、コルキスを真似するようにアンブレラが自ら服を脱いだとき、コルキスは心の中で笑みを深くした。
「わたしのことも、知っていただけますか」
「よろしいのでしょうか?」
「……えっと? これは、仲良くなるための方法なんですよね?」
「……ええ勿論」
上質で、蠱惑的で、芸術的で、人の本能を狂わせる、そんな身体であった。
触れるのを躊躇させる妖しさがあった。賢く理性的な人間であるからこそ気付き、溺れることに恐怖してしまうような、そんな魔性の魅力である。
「コルキス様に触れてみて、たしかにもっと色んな表情を見たいなって思うようになりました。でもこれだと、一方的ですよね。お互いに同じようにしないと、『仲良く』はなれませんよね」
「そんな風に思わずとも、アンブレラ様に触れていただけるだけで私は嬉しくなりますよ」
「それなら、わたしも同じように感じてみたいです! コルキス様に触れられて嬉しくなるなら……同じ気持ちを共有できるなら、それが『仲良くする』ということですよね」
しかし困ったことに、直接触れようとすれば体に目が釘付けになってしまう。
惜しげもなく晒されている乳房は対価もなく見つめてよいのか分からなくなってしまい、スラリと伸びた脚はそれだけでもはや劣情の対象たり得た。
どこか楽しげなそのあどけない表情は肉欲的すぎる肢体とミスマッチしていて、えも言われぬ背徳感を生み出していた。
それならばいっそとコルキスはアンブレラを抱き寄せ、そのまま二人倒れ込むようにしてベッドに倒れ込んだ。アンブレラは無邪気に「きゃー」とはしゃいでいる。
胸と胸が互いに形を崩して押し合う。毛布を手繰り寄せて二人に被せたのは、汗で体が冷えてしまわないようにというよりは不必要にアンブレラの体を見つめてしまわないようにするためであった。
アンブレラの首元に顔を埋める。真似するようにして、アンブレラもコルキスの首元に顔を埋めた。
柔らかく艶のある髪が鼻を覆う。スンスンと鼻を鳴らすと、アンブレラも真似するようにコルキスの髪の匂いを確かめた。
甘い香り──正直なところこの部屋を訪れてから甘い香りばかり感じて嗅覚も狂ってしまっている気がするが、脳を直接揺さぶられるような、そのままずっと嗅いでいたくなるような麻薬にも似た中毒性のある香りに満たされた。
「手で触るだけが触れ合うことではないんですよ」
匂いに触れ、味に触れ、体全体で相手の形を確かめる。
潰れた胸から伝わる鼓動がもはや自分のものか相手のものか分からないくらい密着する。
指を絡ませ、あるいは髪に手櫛を入れる。足を絡ませあえば何かがぬるりと滑ったような気がしたが、コルキスはひとまず汗だと思うことにした。どうせアンブレラも同じようなものを感じているのだ。
なんかもう、このまま本能に任せて快楽を貪ってしまいたいな。
そんな迷いを振り払うかのように、コルキスはがぶりとアンブレラの首元に甘噛みした。
少女は嬌声とも取れる呻きを漏らした。