TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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旅先でスマホから書いてるため文体が違います。


第159話

「自分の研究もあるし、ずっとは一緒に居られないわよね…」

 

朝食を作りながら考えた。元は道に迷うであろうアンブレラの案内人として来たつもりが、学園長に捕まり、某国の殿下に捕まり、今では変な塔で生活している。

数日なら良かったのだが、この分ではアンブレラの無事を確認するまで最低でもひと月はかかるだろう。となれば、いくら休養期間とはいえ、カンナも研究室に戻らねばなるまい。

 

『ふぉふぉ、常人ではまず不可能、導師なら30年、才能があれば3年と言ったところじゃがな、森人であれば上手くやるやもしれん』

 

12区の学区長であり、この塔に引きこもっている老獪はカンナとアイリスにそう話した。カンナにとっては、つまり、戦力外通告であった。

 

今のアンブレラのために必要なのは、真名を「聴ける」ようになることだという。それは、カンナが知る限りで言えば、学園長(レントリリー)と学園のいくらかの導師のみが可能とする業である。

逆に言えば、アンブレラが倒れた時にレントリリー様がいたにも関わらず何もしなかったのは不可解だが、他に何かが必要なのだろうか。

 

真名を聴くだけでは足りない。

しかしアプトナディティスはその法しか授けない。(しかと言うには大それたものだが)

どちらにせよカンナにできることはない。

 

ならまあ、研究もあるし、帰った方がいいよなぁとなるのは自明である。

一応。一応は、アンブレラという友人のためにという思いもあって、アプトナディティスの言う「勉強」に取り組んではみた。

 

これは、彼の言うとおり、本当の本当につまらない類の勉強であった。

つまりは暗記である。

 

とにかく、火の真名はなんだ、水の真名はなんだ、草木の真名は…という作業を繰り返すのである。

100程度の真名を覚えたあたりで頭から煙が出はじめ、200の真名を聞いたところで力尽きた。

いや、それで全てならもう少し頑張れる。何がカンナの心を折ったかと言うと、同じ量の新しい真名がほぼ毎日出てくるのだ。

 

友人を「たかが他人」と見捨てるだけの非情さは持っていなかったが、単純に「この量の暗記は自分の能力を超えるな」という確信があった。

カンナの暗記能力は人並み以下であった。

まず、100の単語の羅列と向き合って、自分が記憶しきるまで眠らないというのが無理な話だ。絵を描かせろ、絵を。

試みに真名の音の響きに合わせて絵を描いてみる。なんだか意外と覚えられそうだぞ?1日200個のペースはとても無理だが…。

 

「アイリスさんはどうしてそんなに覚えられるの?」

「…? まあ、乳母ですから」

「ああ…そう…」

 

もう少しじっくり話を聞いてみると、森人の頃から馴染みのある真名がそこそこあるらしい。

互いの真名は秘匿するのに、物の真名は普段から使うのか。私達と逆なのね。

 

塔の下のほうの階には人が住むための部屋がいくつもあり、カンナたち以外にもここで学ぶ者たちが住まう。

12区自体が真名を対象とする研究を盛んに行っているが、この塔で生活する人々は特に真名を「聴く」ことを目的としているらしかった。

ひとつ屋根の下にアイリスのような魅力的な女性が住むのは危ないのではとも思ったが、住まう者はみな内向的なのか悟りを開いているのか、どこかぼんやりとしていて街中の飢えた若者のようなギラギラとした視線は無かった。

 

「学区長様もですけど、どこか仙人じみた人ばかりですよね。凄いわ」

「ふぉふぉ、さてどうじゃろうなあ。正気で狂気の沙汰ができるほど心が強くなかっただけやもしれんし、真名を聴こうとするあまり己の声が聴こえなくなる者も多いからの」

「狂気? 狂っているようには見えませんが…」

「ふぉっふぉっ! 狂った振る舞いをしても願いは叶わないからの!」

 

それはそうだ。気狂いとて体力は尽きるし、最近の気狂いは静かに狂うのがトレンドなのだろう。

それじゃあアイリスさんもそのうち狂うのだろうかと考えたが。

 

「いえ、もしかしてもう遅いのかしら…」

「…? どうかされましたか?」

「私と同じ時間で寝てると思うのだけど、隈が酷くないかしら?」

「あぁこれは…ときおり、夜中に目を覚ましてしまうので…」

 

悪夢にでもうなされているのだろうか。

同じ部屋で寝ていて気付かない私も私か…。

 

実際のところ、一日で何百もの真名を覚えるのは普通じゃないらしい。

普通は、何年も何十年も学ぶつもりでゆっくりと繰り返し体に染み込ませる。

 

そうやって()()()()真名を文字として学んだら、塔を(のぼ)る。アプトナディティスに教えを乞い、実際のモノとその真名を学ぶ。その全てを覚えたら、そこに住まい、毎日全てに真名で呼びかけてやる。

そうして()()()、「ああなるほど、だからこれの名は何某か」と真名が聴こえるようになるらしい。

 

アプトナディティスの本当の仕事は、真名やその聴き方を教えることではなく、その者が生きている間に「いつか」を迎えられる程度の才能を持つか見極めることにあった。

だから、彼はカンナにこう告げた。

 

「ふぉふぉ。君は、どちらかといえば才能があると思うんじゃがの」

「ありませんよ…昔から暗記は苦手なんです」

 

ひとまず、一度アンブレラの様子を見るためにもコルキスの邸宅に戻る準備をすることにした。




明日明後日も雨の鹿児島で続き書く予定…
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