TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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引き続きヴィオラ視点


第166話

『貞操は外交の道具だ。無駄遣いはできんが、……しかし男を知らないというのも勝手が悪い』

 

 次にコルキス様が求めたのは、男体でした。

 側から見れば異常で、痛々しさすら感じさせる言葉です。侍女の中には止める者もいました。

 

 その者らにとっては都合の悪いことに、それを調達するのはそう難しいことではありません。

 奴隷や罪人を使うという選択肢もあります。しかしこの時、コルキス様の元には年に数度間者が差し向けられていました。

 子供相手、また暗殺目的であるためか本格的な襲撃はありませんでしたが、毒、荒くれ者による誘拐未遂、過失に見せかけた事故……枚挙に(いとま)がありません。

 

『半分は父上だろうさ。試練を与えたつもりなんだ』

 

 ソートエヴィアーカ王のご意志も私には理解できません。

 かのお方は継承権に対して中立的な態度を示しています。能力の高さや第一子であることを理由にコルキス様を贔屓するわけでなく、第一王子であるからと弟様を贔屓するわけでもありません。

 

 捕らえた間者を前に、私はコルキス様に上申しました。

 

『ここまで……御身を穢すようなことまで、する必要がありますか』

『ふむ、穢す。穢すか』

 

 それに対しコルキス様は、激昂するでもまごつくでもなく、あらかじめ用意してあったかのように理路整然と述べました。

 

『私も世間は理解している。なるほど俗物の陰茎に触れる王女がどこにいるだろう。……人は、綺麗なままでありたいと願い、自身の最良を目指して努力するよなあ。──だが、母上が去ったいま、私の最良の日々は過ぎたんだよ』

 

 言葉は平静です。

 しかし感情が昂るのか、ご母堂が亡くなって以来初めてコルキス様が声を震わせていることに気がつきました。

 

『ですがそれが今のご自身を蔑ろにして良い理由には──』

『──少女としての最良は失った。だから、次代の王として最良を。武芸の鍛錬も、学の探究も、耐毒の獲得も、性技となんら貴賤ない。言ってしまえば、すべて等しくくだらないし必要だろう』

「そんな……」

 

 捕らえた間者は、3日ののちに処理されました。

 そこから数日、コルキス様は夜を一人で過ごされています。

 

 

 

 


 

 

 

 それからも幾人か、男を捕らえるたびに同様のことがありました。

 それは性行為などよりはむしろ、研究者が生き物の解剖をするような、そんな観察に近い行為だったと思います。

 

『口淫? していない。技巧を磨くというよりは男体の構造を知る目的だからな』

 

 その言葉に少し安堵したのを憶えています。

 

『分かってきたが、快楽に関しては男も女もそう変わらないなァ。便利で強力だが、万能じゃあない。裏切らねぇ奴は限界まで口を割らないし、限界を迎えりゃ言葉も覚束なくなる』

 

 限界のない人間はいない、という結論にも至ったようです。

 私も試された経験があるだけに分かりますが、限界を迎えた以降というのは、その、とにかく辛いです。辛い、という表現が適切か分かりませんが、何よりも体力と呼吸が奪われるのが辛いです。

 ただ辛いだけではなく、確かに快楽の中にはいます。理性を手放し快楽に身を委ねればただ幸せを享受できるという感覚もあります。

 しかし理性を手放すというのは非常に恐ろしいものです。自己同一性、というものが保証されない未来へ躊躇せず進めるでしょうか。

 

 一度そうして理性を手放すと、それ以降どうにも本能的に相手に逆らうことを避けるようになります。

 理性で逆らうことは可能かもしれません。しかし、体が触れるとどうにも服従したいような心地になるのです。……私だけではなく、一般的だと思います。

 

 仮に。

 私は教養程度の学しかなく、ほとんどコルキス様の仰っていたことではありますが。

 仮に人の価値観というものが「気持ちよさ」を基準に決まるのなら。

 更新しながらも、「気持ちよさ」の経験を元に組み立てられているのなら。

 

 度を越した快楽は、その人の元の価値観のすべてに優先するように人を変えてしまうのではないでしょうか。

 いえ、麻薬などのことを思えば推測というよりは、自然の原則なのでしょう。

 

 薬物。飲酒。芸術。権力。そして快楽。

 私たちは様々な手段で「気持ちよさ」を得ることができます。

 

 それは、それぞれにデメリットがあって、人それぞれで、並列には語れなさそうな機微の違いがあります。

 でもきっと、「気持ちよさ」で語れるのなら比べる方法、指標があるはずで。

 

 一番「気持ちよさ」を与えられるのは……いえそれ以上に、その指標でいちばん大きな値があるのなら、それはどれだけ「気持ちいい」のでしょうか。

 それはどれだけ人を変えてしまうのでしょうか。

 

 

 

 


 

 

 

 

 言われた通り、主人が部屋に入ってから半日の経つ頃に寝具等の替えをワゴンに載せてきた。

 

 重い防音の扉を開ける。

 むせかえるほどの甘酸っぱい匂いがする。たしか催淫性の香を炊いていたはずだが、それとは関係なく部屋に満ちた香りに、ズシリと下腹部の重みを感じ、内腿を水滴が伝った。

 

 部屋は存外静かであった。

 それでも「ぁ」と小さく甘い喘ぎ声が天蓋の内から聞こえてくる。

 ほとんど意識のない者が反射的に喘ぐ時のうめきだ。

 

 嫌な予感がした。

 それでも命令は絶対遵守であるから、そっと天蓋のついたベッドに近づいた。

 

 

 

 

 横たわった少女が仰向けで膝枕をされている。

 瞼と腹部に手を添えられて、愛撫をされているわけでもないのに絶頂が収まらないのか、海老反りのまま痙攣して時折潮を吹く。無様で滑稽にすら映る。

 だらしなく半開きになった口からは涎が溢れ、先ほどから聞こえていたか細い喘ぎ声はそこから漏れているようだった。

 手で覆われて見えないが、その瞳は焦点も合わずあらぬ方向を向いているのだろう。

 

 その肢体は、よく見慣れたもので。

 

「……ヴィオラさん? どうかされましたか?」

 

 膝枕をしている者の体躯は、思わず顔を背けてしまうほどに淫猥な、未熟さと妖艶を絶妙な塩梅で共存させるそれだった。

 見ているだけでこちらが罪悪感を感じるような、そんな蠱惑的な光景だ。

 

 それが、恥じらう様子もなく慈愛を浮かべた表情で、こちらに微笑んでいる。

 天使と淫魔、どちらと言われてもまるで違和感がない。

 

「こる、きす、さま」

 

 ヴィオラは、天使の膝の上で痙攣する主人を呼ぶことしかできなかった。

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