TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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半日ほど前の話


第167話

 給湯室から騒ぎ声が聞こえた。

 何かと思い覗いてみると、どうやら侍女たちが仕事を巡って言い争っているらしい。

 私こそが精霊様のお世話をしにいくのだ、と。

 

 見目麗しい少女の世話を率先する気持ちは理解できなくはない。可愛いもの、美しいものは女の心の拠り所の一つだ。

 しかし、それだけにしては諍いがやや剣呑な雰囲気で、ヴィオラは仲裁に入った。

 仕事に私情を持ち込んではいけない。

 

 侍女たちは渋々と別の仕事に移り、アンブレラの元へはヴィオラが赴くこととなった。

 なんとなく、コルキスが幼い頃から付き従う彼女たちが、ああも役目を争うというのは少し不思議な気もする。少し問うてもみたが、気まずそうに目を逸らすだけであった。

 

『失礼します』

『あっ、ヴィオラさん……こんにちは』

 

 遠慮がちに微笑む少女は跪きたくなるほどに美しい。

 この笑顔も、部屋を訪れる者すべてに分け隔てなく与えられるのだろう。しかし争っていたのはそのためだろうか?

 

『あの、少し近くに寄ってもらってもいいですか?』

『……? はい、いかがなさいましたか』

 

 内緒話をする子供のように口元を寄せて、少女は囁いた。

 

『いつも、ありがとうございます』

『……っ!?』

 

 少女のしたことといえば、ただ気恥ずかしげに日々の感謝を伝えただけである。

 いつまでも聴いていたくなるような甘い声だとか、そういう定性こそあれど、特別なことをしたわけではない。

 

 だというのに、ヴィオラは奇妙な形で絶頂した。

 どこが気持ちいいだとかの原因や過程がなく、ただ結果だけ与えられたような。唐突に脳が真っ白になって、反射で下腹部が痙攣した。

 声を上げなかったのはコルキスの側付きとしての意地である。

 

『アンブレラ、様、いま、なにか……?』

『?』

 

 してやったりという表情でもない。

 分からない。分からないけれど、この人は確かに()()とは違う生き物で、その能力もまだ計り知れないということだけ分かった。

 

『えへへ、その、わたしなりに感謝を伝えられたらなと思って、……ご、ご迷惑でしたか?』

『……いえ、嬉しく存じます』

『よかった、です。みなさんそう仰ってくれて──』

 

 先程の言い争っていた者たちが頭に浮かんだ。

 彼女たちは、既に何度かアンブレラのお世話をしたことのある者らであった。

 

(もう少しここで問い詰めるべきか、コルキス様に相談するか──)

 

 その場でアンブレラからうまく聞き出すことは叶わなかった。

 どうやって「いま私イったんですけれど何かしました?」と聞けというのだろう。

 

 あまりコルキスから離れるわけにもいかないと戻ろうとして、抜けたままの腰が粗相をしてアンブレラ側に倒れ込む。

 

『もっ、申し訳っ……!』

『大丈夫、ですか?』

『……っ、ぁぁ❤︎』

 

 抱き止めたアンブレラが囁く。

 なぜか反応してしまう体に、顔から火が出るほど熱くなった。

 

 結局平静を取り戻してコルキスの元へ戻るのに時間がかかり過ぎてしまい、しばしの怒りを買うこととなった。

 

 

 

 


 

 

 

 

『お前は室内で見張りをするんだ。これは罰だからな、お前はただ、部屋の内側で、扉の前に立って、私が(なぶ)ってあの子がよがる様を見ていろ』

 

(ああ、そうだ、私は寝具の交換を、し、に……)

 

 ついぞ、コルキスにアンブレラのことを報告することはできなかった。

 羞恥と、情報が不確定なことと、アンブレラに明らかに悪意が見られないこと。

 そしてコルキスへの無意識の信頼。

 

 快楽すら手段と割り切り、武芸のようにそつなく修めた(あるじ)が「嫐る」と宣言しているのだ。

 何を疑うことがあるだろうか。

 

 だから、「信じています」とだけ告げて、それで。

 

「……ぁ?❤︎ ……ぁ、っ……❤︎❤︎ ……? ぁ❤︎ ぉ❤︎ ……ぉぉ、っ❤︎」

 

 勢いよく飛び散った潮の一部が顔にかかる。が、瞬きひとつできない。

 信じていたから。コルキス様がアンブレラ様を嫐って、アンブレラさまは、■クこともしらない、めちゃくちゃにされて。もてあそばれて。じゃあ、わたしはいま、なにをみせられているんだろう?

 

「あん、ぶれら、さま。……なにを、されているの、で、しょうか」

「……? ええと、コルキス様が教えてくださったのですが、これは──幸せです!」

「しあ、わせ」

 

 満面の笑みが、こんな状況ですら美しいと思ってしまう心が、醜くて、泣きながら笑いそうになってしまう。

 価値観を植え付けたのは我々だ。これはきっと、御母堂が逝去なさって以来、初めてコルキス様が失敗をしたのだ。

 

「ほら、幸せを感じると()()が輝くでしょう? だから、光を大きくしてあげたら──きらきら、綺麗」

 

 コルキスの目を覆う、右手のほうを見つめて柔らかく微笑んでいる。

 ヴィオラには何が光っているのかまるで見当もつかない。

 

「コルキス様、本当ですね。──あなたが気持ちいいと、綺麗で、わたしも嬉しくなります」

 

 赤い瞳は薄く細められて、そこにはない「光」を確かに映していた。

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