TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
カンナが3週間ぶりにコルキスの邸宅に戻ってきて感じたのは、どこか空気の弛緩した雰囲気というか、以前までの張り詰めた空気が無くなって
たとえば差し向けられていた刺客とコルキスの関係がうやむやになっただとか、何かしら心当たりになりそうな話もカンナには縁がない。
そのため、以前までがたまたま忙しい時期だったか、あるいはアンブレラの記憶が快方に向かっているのだろうかなどと確信のない想像をした。
「あぁ、カンナ様。おかえりなさいませ」
「あ、はい。ヴィオラさん、お久しぶりです……あの、ただの学生に様付けはちょっと恥ずかしくなってくるかなーとか……」
「コルキス様やアンブレラ様、アイリス様のご友人ともなれば、滅相もございません」
部屋に戻る途中バッタリとヴィオラに出くわす。
人から様付けで呼ばれるのは中々慣れないものだが、アイリスやヴィオラは譲ってくれないので、こちらが慣れていくしかないのだろう。
(アンブレラはともかく、私ってコルキス様やアイリスさんと友人関係なのかしら……?)
強いていうなら客人なのだろうが、結構「何でお前ここにいんの?」と聞かれたら困る立場である。
「アイリス様のほうは、いかがお過ごしでいらっしゃいますか?」
「あー、私が発つときは、体調を崩すようなことはなく生活していましたよ。ただ、健康な生活というには少し詰め込みすぎというか、張り詰めすぎてる気もしますけど……」
12区でアプトナディティスと話したことについては、既に伝令とやらによって伝わっているはずだ。
断言ではないが、彼が「治せる問題」と言ったこと。そしてそれが、森人であるアイリスに掛かっているということ。アイリスが真名を「聴く」べく12区の塔で学んでいること。
「頭を埋め尽くせるくらいやるべきことがあるほうが、今のアイリス様にとっては丁度いいのかもしれませんね」
「……まあ、はい」
ヴィオラの言いたいことは分かる。……と、言うか、ヴィオラだからこそより一層分かることなのだろう。
彼女もコルキスの側仕えという意味ではアイリスと似た立場で、主人が傷付けば責任を感じる。
カンナは悲壮極まるアイリスを間近で見たから状態を何となく理解できているが、ヴィオラは見なくとも想像だけで理解できるに違いない。
そうこう話していると、侍女の一人が廊下を急ぎ足でやってきた。
己が半ばニートのような立場のため忘れていたが、冷静に考えればヴィオラは職務中のはずである。
「お話中失礼いたします……ヴィオラ様、こちらのご確認をお願いします」
「……あぁ、頼んでいた件の。…………良いご返事がいただけたようですね。お疲れ様でした」
こういう、明らかに仕事の話っぽいことを目の前で話されると、どこまで聞いていいのか分からなくてムズムズしてくるものである。
流石に部外者に聞かれて困る話は場所を変えてやるだろうが……。コミュニケーション弱者なせいか、こんなときどう振る舞えばいいのか分からなくなってしまう。立ち去るにも声をかけなければいけないし……。
「そうですね、とても頑張ったようですし……えらいポイント3つくらいでしょうかね」
「──え、3!? やったあ! ……あ、えっと、では失礼します」
……えらいポイント?
「すみません、カンナ様。お話の途中でしたよね」
「あ……はい」
なるべく聞き耳を立てないようにしていたのだが、プロフェッショナルな雰囲気のやり取りの中に唐突におままごとワードが生えてきて反応してしまった。
……聞いていいんだろうか。すごい気になる。
勤労意欲ゼロの人生だったけれど、えらいポイントなんていう概念が蔓延っているなら、勤労も悪くないかもしれない。
「……あの、聞いていいのか分からないんですが、えらいポイントってなんですか?」
「……。そう、ですね。えらいポイントは、貯めると褒めていただけます」
「ほ、褒め……? コルキス様から、でしょうか」
「いえ、アンブレラ様に」
「アンブレラァ!?」
3週間で何が起きたのか。
あの、えらいポイントってほんとになに??