TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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テルースぅ! 無理だろ、何じゃこのクソゲー! 人の運命で遊ぶもんじゃないわ! 我反省した! 反省したってば! だから、なあ、助けてえええええええええ!!

「あ゛―! 無゛理゛! これ無理! 上手くいかなさすぎなんじゃが!?」

 

全裸の女が発狂していた。

発狂しているから全裸なのかと問われればその限りではないのだが、流動体とでも呼ぶべき水球の中で叫びながらのたうち回っている姿は、まさしく精神異常者のそれであった。

 

「のあああああぁぁ! ぐがががががぁああ! もぉぉおおおう! 我なんか悪いことした!? 乱数仕事しろ!」

 

しかし彼女が乱れるのにも訳があった。

現代日本人が理解しやすいよう端的に述べれば、(主観的には)完璧なチャートを用意して走ったRTAが、地獄のような乱数を引き続けてしまったために敗走しかけている状況なのだ。

 

生まれた先が奏巫女という特殊な役職の一族であったことは別に良い。

なぜなら、清き巫女が肉棒によってメス堕ちしてくれたら美味しい(シコリティ高い)からだ。

 

生後半年で魔法を操り、さらには自我を持ったまま幼児期を過ごした影響で魔力が目視できるようになったことは別に良い。

なぜなら、そうして天才魔法使いになった先でメス堕ちしてくれたら美味しい(シコリティ高い)からだ。

 

科学の発展していない文化圏で前世の知力を十全に生かして、歴代最高の巫女と民衆から讃えられていることは別に良い。

なぜなら、崇め奉じられる存在が裏ではメス堕ちしてくれたら美味しい(シコリティ高い)からだ。

 

転生のために形質を引き継いでしまった魔力のせいで得た真名を、気に入らないからと否定してついには別の名を騙っていることは別に良い。

なぜなら、最終的には真名を竿役に伝えてメス堕ちしてくれたら美味しい(シコリティ高い)からだ。

 

友達を作ろうと頑張った結果、迷走して男装してしまい、更には同年代の女の子を惚れさせてしまったことは別に良い。

なぜなら、男装の麗人が、結局己は女であると自覚させられながらメス堕ちしてくれたら美味しい(シコリティ高い)からだ。

 

 

 

 

だが!!

 

 

 

 

「なぜ……なぜ、その初めての魔法が、絶頂で失神させた己の母親を癒やすためのものなのじゃ!?」

 

清き巫女になるどころか、母親でもある清き当代の巫女をド変態調教済み雌豚にメス堕ちさせるとは、一体何がどう拗れれば陥る結果なのか。

青春コンプか? 青春コンプが原因なのか? リア充限定で転生元を検索しておくべきだったのか?

 

「なぜ……なぜ、自分を崇める乳母一族の娘にこっそり接吻の仕方を教えようという発想が生まれるのじゃ!?」

 

場合によっては育児のために乳を吸わせる可能性もある乳母の一族が、乳ではなく唇を吸わせるとは何事か? むしろ自分から吸いに行くとは何事か?

乳母の娘が美しい幼子を見て欲情し、鼻血をつい流してしまうくらいなら分かる。それはまああり得る悪乱数のひとつだ。だがその女、前世の母親と同年代だぞ? 

 

「なぜ……なぜぇ、真名を授けるはずの存在を調教済みと見抜き、互いにどっぷり依存しておるのじゃあ……」

 

なんなんだ、調教済みの命名神って。テルースの管轄する世界は頭おかしい奴しかいないのか?

しかも属性クソ盛りだ。エキゾチック褐色黒髪ツインテクソ雑魚傲岸不遜調教済みドMド貧乳娘? こんなん誰でも依存したくなるわ阿呆。共依存で精神と肉体が汚染されていく、地獄のような激しいセックス漬けライフ送りたいわ阿呆。

一人称儂じゃぞ? これでのじゃロリだったら、もはや我の神様キャラが泣いていた。

そしてその他称神を堕とした人の子の手腕。恐れを抱いたし、自分もにいろと呼ぶのをやめようと決心したほどである。

 

「助かっ……助かってねえぇぇええええ!! それにじゃ! なぜ……なぜ、告白されたからと言って、男装を解いて、園児にしちゃ駄目なキスぶちかましとんのじゃあぁぁあああああアアアア!!」

 

あれは本当に訳がわからない。転生させる段階で脳に悪影響が出てしまったことを本気で疑っている。

なぜ幼女の可愛らしい結婚宣言を笑って流さず、逆に幼女が笑えない状況になるまで深く長いディープキスをやらかすのか? あんなん好きだった相手にされたらどんな女の子も堕ちるわ阿呆。というか人の子、お主、堕ちるまで逃げることを許さずキスしていたろう!?

女の子宣言した上で上裸になっておっぱいをさわらせる? 自分も未成熟児だからセーフ? いや、アウトどころか、させられた方の性癖拗れるからな?

 

「もうやだぁ……我、メス堕ちは創作物だけで満足するぅ……」

 

ここに至って、この世の真理に辿り着いてしまった。

 

BLだとか百合だとか、はたまたメス堕ちだとか。

それは現実にないからって駄々をこねるものではないし、たとえどれだけ自分が偉かろうと他者に押し付けるものではないのだ。

創作を読み、自分でも創作し、もしも……もしも現実で目にするようなことがあれば、黙って合掌する。あるいは十字架を切って(恩寵よ感謝します)も良い。

 

絶望しているところで、目の前にサッと誰かが現れた。

 

「大丈夫ですルーナ、乱数調整が足りていないだけです。数回しゃがむのを繰り返してみましょう」

「うぅ……てるぅすぅ……」

 

にいろ(人の子)の転生先、勇者や災厄と呼ばれる存在が跋扈する世界の管理者であるテルースだ。

 

乱数調整! それは頭になかったとばかりに、いそいそと水球から這い出て、スクワットのように立ってはしゃがんでを繰り返す。勿論全裸で。いまは転生者もいないのに、服を着る意味がわからない。

 

「お可愛……ん゛ん゛っ」

 

一瞬隠すように鼻のあたりを手で覆ったテルースだが、次の瞬間には何事もなかったかのように微笑んでいた。

 

「それにしても、にいろさんは相変わらずですね」

「お、おまっ! ……そ、その名をあまり呼ばん方がいいと思うぞ? まさか我らがあやつにどうこうされるとは思わんが、あの他称命名神とやらの虐められよう、見たじゃろ?」

「まだトラウマにされているのですか? お可愛いこと。さあ、落ち込んでいらっしゃると思いましたので、今日も般若湯を持ってきましたよ」

「般若湯……、酒か! てるぅぅすぅううう! 大好きじゃあぁあああ!」

 

酒はいいものである。嫌な気分はすぐに飛ぶし、世界が輝いて見えるようになる。

人の子の前世の世界では一般的ではなかったようだが、魔力を操れる者なら二日酔いの心配もない。

……ちなみに、魔法で酔いを覚ますというのはご法度だ。自分ルールだが。

酔いの回った頭を冷やすことほどつまらないことはない。飲む時はとことん飲んで、ほろ酔い状態をほどよく楽しんだら、その日の気分によっては酩酊状態に入るまで酒を浴びるのがよい。

 

テルースに抱きついてよしよしと頭を撫でられながら、持ってきてくれた酒を共に酌み交わす。

泣き喚いたせいか、いつもより酔いが回るのも早く感じる。

 

そうして次第に柔らかい微睡みに誘われ、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体が、重い。

 

おそらくどこかに寝転がっている。周りの音はほぼ聞こえず、寝転がっている身体を立たせようと腕を動かせば、肩の先についているものが肉塊でしかないように反応してくれない。

視覚に頼って周辺の情報を集めようとするが、目隠しでもされているのか暗闇のほか何も見えない。あるいは、まぶたも麻痺して下がったままなのかもしれない。

 

記憶を掻き漁り、いまがどのような状況か可能な限りの想定をする。

伊達にほぼほぼの全能性を謳っていたわけではない。どのような病気や呪いであろうと、内側から破壊して現状を脱せられる自信があった。

 

体が動かないのならばとひとまず魔力を行使しようとしてみる。

 

しかし、おかしい。

行使以前に、体に存在するはずの魔力が感知できない。

 

まるで、何もないかのように。

 

(……テルースに裏切られたか。しかし、なぜ?)

 

存外慌てることはなかった。それは、自身の焦りの証明でもあった。

 

人の子がメス堕ちするだとかしないだとか、結局そのことは己にとっては余興なのである。

絶対的な余裕。その中だからこそ、窮地になれば喧しいほどに騒ぎ立てるし、酒を酔いつぶれるまで飲んでみせるし、どんな愚痴だってこぼそう。

だからこそ、余裕を抱えて良いときと悪いときの区別はハッキリと素早く判断できるようにしている。そして今は、端的に言ってヤバい。

 

もしかすると、テルースの裏切りではなく、テルースを利用した裏切りかもしれない。彼女は操られており、そして毒を盛らせた。

何にせよ、この悪意の目的と理由が分からない。恨みを買った覚えは星の数ほどあるが、それらすべてが戦争を仕掛けてきたって捻り潰す自身があった。

 

だからこそ、普段は意識的に捨てている理性を限界まで動員し、この状況を冷静に分析するだけに徹していた。慌てている暇など無いのだ。

 

 

 

 

そしてそれが、勘違いであったと知る。

 

慌てている暇は、あった。あり余っていた(・・・・・・・)

 

 

 

 

何も考えなくなってから、一体どれだけの時間が経ったのだろうか。

 

最初は誰かしらが要求を突きつけに現れるものだとばかり思っていた。

そして気付いた。これは暗闇に放置することで、まず精神的に弱らせようとしているのだ、と。

 

割とありふれた手法である。最終的な目的はわからないが、現段階の相手の狙いとして、己を弱らせようとしていることが判明し思わずほくそ笑んだ。

常人なら半日、精神的に優れた人物であっても、体の感覚がほぼない状況で数日暗闇に囚われれば発狂するだろう。

 

だが、その存在……ルーナには、己の能力に対し自負があった。

暗闇に放置されてどうすればいいか? 簡単だ。何も考えなければいい。

俗に言う、無心になるというやつだ。

 

あえて述べておけば、無心になるとは並大抵のことではない。

「無心になれ」と説く教祖ですら、真に無心になるとはどのようなことか分かっていないだろう。

 

人の子の前世いた国、日本でよく知られる仏陀について述べれば、悟りを開いた時一ヶ月前後の座禅を組んでいたという。まああれは、無心というより正しく「無我」だったので、現状と同じとは言い難いが。

 

そしてルーナは、我ならば数年程度放置されても何ら問題ない、と確信していた。

 

 

 

 

そして、体感にして己の生きてきた年月と同じだけ(・・・・・・・・・・・・・・)の時が経った。

 

全裸の女が発狂していた。

発狂しているから全裸なのかと問われればその限りではないのだが、もはや無心からはかけ離れた状態で、息は荒く、過呼吸に近いとさえ言える姿は、まさしく発狂した者のそれであった。

 

既に自尊心や体裁を取り繕う余裕はない。

ろれつの回らない口でありったけの罵倒を叫び、時には己の存在を滅してしまうのではないかというほどの詫び言を呪詛のように呟き、それでも状況が変わらなければまるで赤子のように泣き出して慈悲を待った。

 

そうして何も変化のないことを知って、ひとときの間口を噤み、やがてまた同じことを繰り返した。

 

全裸の女が、発狂していた。

 

 

 

 

「……や、だよ、ゅるしテ、やだ、やだやだやだやだああぁぁぁ…………ァァア、ぁぁ、ぁぁ、はっ…………ァ、ぁぁぁああ、あ、アアぅ」

「……くっ…………ふ、う、ふ、ふふふ」

 

何度目だろうか。ルーナが泣き喚いていると、押し殺したような笑い声が聞こえてきた。

 

初めはまた幻聴だろうと聞き流していたが、次第にそれが己の耳殻に届いた確かな音であると気付くと、怒りとも喜びとも感謝ともつかぬ感情をその相手にぶつけた。

 

「ああ、ああっ! テルースだなァ! お前が、お前のせいで、お前の、あなたの、あなたのおかげでぇぇ、ああっ、救われたんじゃぁ、は、ははははははは、カハハハッ、ひ、いひっ、な、殺して、食べて、だきしめて、な、一緒にな、これからずっと一緒じゃからな、え、へっへへ、にひ、ひひひ」

「ふ、ふふふふふ、ああ、ルーナ、ああ、くひ、クヒャヒャヒャヒャ! ああ、その姿、ね、お可愛いわ。ね、好きよ、ね、ねね。ねえ、好きよ、クヒヒヒヒッ、ヒッ、ヒャヒャヒャ!」

 

もはやルーナに状況を判断するだけの理性も知性も残されていなかった。

テルースが笑って好きと言ってくれる事実だけ受け止めていて、その事実は、ただそれだけ素直に見れば、好意的なものに感じられた。

 

「ね、なんでって、思わない? 思わなかった?」

「ひ、なんでってェ、なんでって、なんで、ナンデ? なぁんデ?」

「その、そのね、その姿。力を失って、這いつくばって、土を舐めて、怒って笑って泣いて叫んで謝って屈服して服従して獣の排泄した糞尿みたいにしょうもなくて情けない哀れで幼稚な姿に堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて堕ちて…………そうして、堕在したあなたがぁ、一番、何よりも、もうコレ以上は考えられないほどに、ね、お可愛いの、ね……」

 

唇に何かが触れた感覚がした。テルースの唇に間違いなかった。

それを受けた瞬間、脳内が書き換わるほどに頭が冷え込んでいくのが分かった。

そしてその次の瞬間には、一転して沸騰した。

 

「テェェェェエエエエエエエエェェルゥゥゥゥゥゥウウウウウウウゥゥスゥゥゥゥウウウウウウウウウウウッッ!!」

「……クヒッ」

 

コレは(・・・)、操られているとか、そういう段階ではない。

彼女の、本質だ。

 

「お主ッ、お主ィィ! 許さぬぞ、この借り、何年経とうと、何百年経とうと、何万年経とうとォォッ! 我に成したこと、そのまま返すだけでは生ぬるい! その体を刻み、食らわせェ────」

「──ハイ、お口チャック♡」

「……っ……!?」

 

積もり重なった恨みつらみを叫ぼうとすれば、テルースが一言話すだけで口から音が発されなくなってしまった。

 

「ね、無力なの、悔しい? 苦しいでしょう? ね、ほんとに、お可愛いこと……。わたくしなら害をなすことさえできないだろうって、わざとらしく酩酊していたルーナが、こんな弱い魔法で何も言えなくなってしまうなんて、ね、いまどんなお気持ちなのかしら? 聞かせて。言えないよね。でも、ね、聞かせて? 言えないよねェッ!? ヒッ、クヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

「……!!」

 

怒りで体中の血管が破裂するのではないかと錯覚するほどに激怒していた。

それなのに体は動かず、その事実が一層己を苛立たせた。

 

「ルーナ、あなたから力をすべて奪って、次には何を失ってもらおうかなって考えて、わたくし、思いついたのですよ……。みんなを見下ろすの、好きでしょう? なので、地に堕として差し上げようって!」

 

褒めてとばかりに頬を上気させて報告するテルースは、何度も愛おしさを噛みしめるかのようにルーナの体に口吻を落としていた。

もっとも、体の感覚がほぼなく、視界も閉じた彼女には確認するすべがなかったが。

 

「あなたを降ろしても平気そうな素体も見つけたの。だから、ね、堕ちていく姿、わたくしに見せてくださいまし」

 

怒りなのか、それともテルースの魔法なのかは判別つかない。

プツリと途絶える意識に抗う術は、ルーナにはなかった。

 

「ああ……本当に、お可愛いこと……」

 




テルース「堕ちた姿、お可愛いこと♡」
サブカルクソ女神改めルーナ「\(^o^)/オワタ」
レイン「う、うんうん、それもまたメスオチだね!(違う)」

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