TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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個人的にずっと書きたかった話です。
お七夜編にチラッと出てきた、とある姉妹の秘密。
時系列的にはお風呂回の前くらい。


日常編/幕間
秘密ってのは誰しも持ってるもので、それは無闇に探るものじゃないと思うんだ。だからね…秘密を知る時は、一方的なものじゃなくてこちらも何か差し出さなくちゃ! 何が良いかな…ってそれはアカァァン!?


とある家樹(かじゅ)で産声が上がった。

 

「あぁ……あぁ……こんな、ことって……」

「……」

 

産婆は夫婦に気を使って外へ出ていた。

母親は運命の悪戯に嘆き、父親はあまりのショックにか言葉も出ないようであった。

 

「父さん、母さん、ご先祖様、私は、いったい、どうしたら……」

「アズラー、嘆いてばかりで、どうする。俺たちの子が生まれたんだ、喜ばねば──」

「無理でしょうッ!?」

 

宥めようとする父親に、アズラーと呼ばれた母親は静かに激昂した。

分かっていない。この男は、舞姫達が背負ってきた責任と歴史、そして役割を理解出来ていない。

こうしてアズラーと夫婦(めおと)になって、世の中一般の人々よりかは知っているのだろうが、「知る」と「理解する」はまるで違う。

そして、舞姫でなければ「理解する」ことは到底かなわないだろう。

 

アズラーの胸には清潔な布に包まれた双子が抱えられている。

その二人が、母親の怒りを感じ取って再び泣き出した。

 

「あぁ、ごめんなさい……。あなた達は何も悪くないの……。ごめんなさい、大丈夫よ……大丈夫、だから……」

 

あやす声はまるで自分に言い聞かせているかのようで、思わず父親は顔を背けた。

 

エルフの出産において双子というのはかなり珍しい。一つの世代に一組存在するかどうか、といった具合である。

三つ子に至っては過去に例がない。原理的には有り得るが、有史以来エルフの村で確認されたことがないのだ。

 

そして双子の不幸として挙げられるのが、その魔力量の少なさによる伴侶の見つけにくさである。

 

これは双子が魔力を共有しているために起こる病気のようなものだ。

母親の腹の中で魔力を循環させる際、双子の場合は母親から一人へ、そしてその一人からもう一人へ、そして母親へというように魔力が循環する。

その流れの中で、魔力は二人を「一人」と錯覚してしまう。そのため扱える量も半分になってしまう。

結果的に生まれた子供たちに、お互いの距離的な制約が生まれるといったことはない。これは魔法が物理法則に縛られていないことを示唆するが、その話はまた別の機会に。

 

兎にも角にも、魔力量の少なさは結婚に直接影響する。

しかし双子は社会の問題でもあり、最近では親類を辿って許嫁を決めておくなどといった場合も多い。

 

アズラーもそんなことは大して問題になると考えていなかった。

問題はもっと、舞姫の家として根深いものであった。

 

「ねえ、どうして、こんな…………どうして、私の時に限って……? 私の体が、できそこないだから……?」

 

ついにアズラーは泣き出す。

不幸が起きたとき、自分自身に原因を求めることはとても簡単なことだ。たとえどのようなことであっても、確率的に起こりうることはいつか起こるから仕方がない、そう割り切れるのはごく一部の「強い」ひとだけだろう。

 

だが自虐(それ)を見せられる側としては(たま)ったものではない。

自分の愛する人が、何も悪くないことに自責の念を感じていたら誰だって庇いたくなるものだろう。

だから、アズラーのベッド脇の椅子に腰掛け、父親は静かに語りかけた。

 

「なあ、アズラー。昔の話を一つしようか──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、やはりアイサ姉妹が演じると、どんな退屈な演目も神話のごとく心に沁み入ってくるね」

「キバタン、あなたは彼女らが演じる時以外観劇しないだろう? 舞台改築の話も、条件にアイサ姉妹が出演する際は自分の席を確保する旨を取り入れていたそうじゃないか。そんな条件がなくったって、あれほどの大樹、喉から手が出るほど設計に携わりたかったくせに」

「ボクだって他の人の劇を見たことぐらいあるさ、若い頃にだけれど。でもアレは駄目だね。たとえ作り物だからって、台本に書いてある言葉をなぞるだけでは『演劇』の域を出ないよ。心意気とかの話じゃない。アイサ姉妹の舞台は、観客を『その場』に連れて行くんだ。まさにこう、飲み込まれるってやつさ」

 

他の劇も、普通に眺める分には楽しめると思うんだけどね、と母様がぼやく。

 

今日は母様も父様も休暇が被ったので、家族全員とアイリスで舞台を観に来ていた。

アルマはすやすや寝てしまっていたが、僕としてもかなり引き込まれる良い演劇だったと思う。ありふれた脚本だが、「舞姫」の名を冠するアイサ姉妹が主演だったため客の入りは上々だった。

 

ウミアイサ、カワアイサ。アイサ姉妹と呼ばれる二人は世にも珍しい双子で、舞姫とは、日本で言う歌舞伎役者のようなものである。世襲式の伝統芸能一家が舞姫を名乗るのだ。

と言っても僕は父様のように暑苦しく語るほど彼女らのファンではない。だって母様のほうが素敵だし。

父様としては、自分の設計した舞台の構造を完璧に把握し、それを120%活かしきってくれる二人にべた惚れらしい。建設家冥利に尽きるってか。

あ、やべえションベンしたい(頻尿並感)

 

「母様、少しお手洗いに行ってきてもいいですか?」

「ん、ああ。キミくらいの歳の子には、休憩を挟んでも舞台は長いよね。いいよ、アイリス、着いていってもらえるかい?」

「勿論です。さ、御子様はぐれないよう手を繋いでいきましょう!」

「はい」

 

迷子を心配されるのは子供扱いされているようで癪だが、実際に子供だし、今日は人が多いので迷うのは普通にありうる。

ウッキウキのアイリスと手を繋ぐと、上の方から「おててぇ……」という声が聞こえた気がするが気のせいだろう。おっぱい以外清楚系の彼女がそんなこと言うはずない。

 

今日は奏巫女として来ているわけではないので貴賓室は使っていないが、「キバタンルーム」とかいうふざけた名前の部屋を使わせてもらっている。

これが、社の大樹改築プロジェクトを受ける条件として父様が提示した条件の一つらしい。本物の変人というのはこういうところで判別するんだろうな。アホとしか思えない。そして、そのアホの血が僕にも流れてるんだよなぁ……(絶望) 僕の命名センスがないの絶対この人の遺伝だよ……(言いがかり)

 

さて、当時の若々しいHENTAI父様は、仕事の息抜きにこの部屋を使うことしか考えていなかったらしく、ここは半VIPルームなのにトイレが存在しない。

 

そんなわけでお手洗いは必然一般客も使う場所を使うのだが、距離的に近いからって舞台出入り口近くのトイレを選んだのが悪かった。

 

「アンブレラ様も観ていらっしゃったんですね! やはりアイサ姉妹の演劇は素晴らしいでしょう!」

「あの、わたし直にお会いするの初めてなんです! 握手してください!」

「や、久しぶりです御子様。この間は来店いただきありがとうございました」

 

母様の親しみやすさと人気の影響だろう。僕にまで、なにかと人が群がってくるのだ。

まあファンサみたいなものだと思って、握手も応えるし笑顔だって振りまく。母様が培った評判を無愛想な娘のせいで失わせてたまるか。おい今FANZA(ファンザ)って言ったやつ出てこい、怒らないから。

 

しかし尿意はたまるもので。

 

「あ、あの、すいませんが道を……」

「みなさん、御子様はトイ────」

「アイリス、すとっぷっ!!」

 

穏便に道を開けてもらおうとしたらアイリスがトイレコールしかけた。

この子はアホなのか!? 公衆の面前でんなこと言われたら僕は羞恥で出るもんも出なくなる!!

 

「ですが、御子様」

「は、恥ずかしい、ですから……」

「んフッ……」

 

何やらアイリスは目元の辺りから顔を手で覆った。どうした、立ちくらみか。

 

しかし女児の身体ってのは膀胱が大して強くない。こんな会話をしている間にも限界ラインに尿意が迫ってくる。

致し方ない。アイリスはここに捨て置き、楽屋の方にあるトイレまで風魔法で加速しながら突っ走ろう。あちらは一般客が入れないよう制限されているが、次代奏巫女のピンチともなれば許されるだろう。僕むしろ舞台に立つほうが多い側だろうし。

 

「アイリス、ここは任せました! みなさん、失礼します!!」

「えっ……御子様!? 御子様ァァアアアア!?」

 

魔法というのは魔力塊同士のコミュニケーションのようなものだ。

ヘリオから教えてもらった空気の総称(エイム)を呼んでやり、僕の魔力を差し出しながらお願いすれば空気中の魔力塊が僕を持ち上げ、トイレの方まで皆の頭の上を通って連れて行ってくれる。

 

「……飛んだ」

「お七夜の時もそうだが、次代の巫女は飛べるのか……」

「パパ、ボクもあれやりたい」

「パパもやりたいけど……あんな、無茶だ」

 

飛び去った後で人々が呆然としていたことは僕が知る由もない。

当然、安らかな顔をして微笑むアイリスのことも。

 

「少し……見えました……」

専属乳母(イドニ)家の。鼻血出てるが、大丈夫か?」

「ええ……ええ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間に、合えええぇぇぇぇぇぇええええええ!!」

 

姫を助けるべく駆けつける勇者はこのような心持ちなのだろうか。

あるいは、オリンピックでゴールテープを切らんとする短距離走選手。

 

そのどれにも劣らないほどの緊張感、間に合わなければ(社会的&精神的に)死ぬという闘争の中、僕は勝利を掴んでみせた。

トイレの入口まで到達したのだ。ほとんど誰にも出会わなかった。あとはおしっこで優勝していくだけである。

だが、人というのは早々学べない生き物のようで。

 

油断しきった僕は、トイレRTAの最後にガバをした。

出てくる人影に気付かなかったのだ。

 

「ファッ!?」

「「えっ!?」」

 

風の魔法で加速していた身体は、トイレに到達したため減速していたとはいえ、人にぶつかればそこそこの威力を伴うらしく。

トイレから出てきた二人組……カワアイサと、ウミアイサ、特にカワアイサの方に激突し、上に乗る形になってしまった。

 

「すっすいません……っ悪気はっ」

「……い、いや、大丈夫だよ」「……って、次代巫女?」

「えっあっ、はい、次代巫女です、アンブレラです…………あれ、なんか、足にあたってる?」

 

カワアイサのお腹の上にうつ伏せに倒れていた僕だが、彼女の股のあたりに当たってしまっている足に感じる違和感。

混乱していた僕は、例のごとくとんでもない行動に出た。孫悟空よろしく、カワアイサの股に手をペチッと当てたのだ。

 

「珍……棒……?」

「「あっ」」

 

ぶつかった衝撃か、相手に怪我がないと安堵した拍子か、あるいは久々の珍棒の感触にか。

僕の身体をぶるっと震えが走り、お腹から下の部分がどうにも力が入らなくなった。

……端的に述べよう。

 

レインの防水ダムが、決壊した。

 

「あ、ああぁ」

 

ちょろちょろと言うよりかは、シャアアと言った音で。アズナブルではなく。

我慢した分だけ当然気持ちいいのだが、今回に限っては快感よりも先に理性がフル稼働する。

いや、理性が稼働しようとも、思考は停止してしまっているのだが。

 

というかアイサ姉妹って「姉妹」じゃないのかとか、そういう判断もできず。

二人の青くなった顔にも気付かず。

 

人生初の、公開お漏らし(ぶっかけ)をした。

 

 

 

 

「「「ぁぁぁぁぁぁァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!??」」」

 

 

 

 

いやぁ………死にたい(婉曲表現)

 




父様「アイサ姉妹にぶっかけ? …閃いた!(名案)」
母様「初めてのぶっかけを、私がもらい損ねるだと…!?」
アイリス「私が不甲斐ないばかりに…(建前) 羨゛ま゛し゛い゛い゛い゛!!(本音)」

レイン「ア゛ア゛ア゛ア゛!!(絶叫するビーバー並感)」
カワアイサ「ア゛ア゛ア゛ア゛!!(絶叫するビーバー並感)」
ウミアイサ「ア゛ア゛ア゛ア゛!!(絶叫するビーバー並感)」

**連絡欄**
ウミアイサもカワアイサも男性名なんだけど、そんなことに気付けた兄貴はいねえよな。

主要キャラ人気アンケート:"好き"と"性癖"は違うと思うので、ひとまずは一番応援したいキャラへヨロシクゥ!

  • テレサ(女神母様)
  • ヘリオ(神(笑))
  • キバナ(ょぅι゛ょ)
  • アイリス(乳母娘)
  • ルーナ(エセ女神)

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