TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
祇園精舎の鐘の声より母様の夜の声の方が無常を感じます。別のものを感じてるんじゃないかって? そりゃあ言わない約束さ! さぁさ無常で世知辛い世間、どうも時間ばかりが経ってくぜ!
「そんなわけで、僕がアルマから嫌われないにはどうすればいいと思う?」
「儂に聞くな、儂に」
中間反抗期という言葉がある。
小学校中学年くらいに差し掛かった子供がかかるものだ。まあ中高生にありがちな反抗期の幼児版とでも思ってくれればいい。何かと「死ね」と言いたがる小学生男子に心当たりはあるだろう? 女の子の場合は賢しく反論してくるようになるらしい。
ちなみに僕の場合は甘やかされて育ったので、低学年の内は親に反抗する気は起きなかった。高学年になってからは反抗期どころではなかったので、中間反抗期はほとんど経験しなかったんじゃないだろうか。
うすうす覚悟していたことではあるけれど、アルマだっていつまでも純粋無垢でお姉ちゃんっ子な子供ではいられない。自立心と言うのは誰しも抱えるもので、そうしたとき今まで依存してきた対象が途端に煩わしく感じられるものだ。
きっかけは彼の将来のために始めさせた戦闘術だった。
勝手な先入観で申し訳ないが、将来勇者とやらを務めるのなら戦いは免れられないだろう。一応母様や他のいろんな人、特に先代勇者と繋がりがあったような人に確認をとってみれば、切った張ったの冒険ファンタジー系勇者の認識で問題なさそうであった。長老会の爺様方(見た目は20代)は御子を甘やかすから、話しかけるとお菓子をくれる。
何はともあれ、アルマが死んだら僕は泣く。エルフも目が飛び出すようなチート級の魔法適性があっても、生き物なのだから胴と首が離れれば簡単に死ぬのだ。
だから、強く育てよう。
勝手に他人の生き方を決めて良いのかと聞かれればそんな権利僕にはないだろうし、お前のためを思ってとか言って子に厳しく当たる親は自分のことしか思っていないと思う。そもそも、
けれど、死んでほしくないのだ。生きていてほしいのだ。
家族だからそう思うのだろうか。わからない。ただ、そう思ったことは本当で、思ってしまった想いはどうしようもない。否定するのも馬鹿馬鹿しい。
矯正するわけではない。ただ、手段と行き先のひとつくらいは与えてやれるのだ。
しかし、そう決めてから困ったのは指南役である。
人間は戦争によって発展した生き物だ。逆に言えば、発展を捨てた生き物たるエルフは、戦争をする場面と縁がないのである。
戦いのない種族に戦闘技術は必要ない。ましてや魔法という手段があるのだ。近接戦闘術を磨く阿呆がどこにいると言うのか?
普通にいた。父様の仕事仲間(建設のほう)の兄であった。
なんというか、うん、反応に困った。「そんな阿呆おらんやろ」とか思って尋ねたら一発で飛び出てくるのである。しんどい。エルフって各方面にHENTAIが一人ずついるんじゃなかろうか。つらい。
齢300を目前にした長老級の人物である。仮名をシロハラミという。惜しい、あと一文字で塩ハラミだった。
僕らはシロ先生と呼ぶ。
なんでもある日突然才能に気付き、ひとり静かに研鑽に努めているという。いまは森の中に一人で暮らしているらしく、危ないので最初は会いに行くべきか困った。
アルマが6歳を迎え、エルフの子なら真名を授かる頃。彼が村を出ていくまで残り10年となり、僕は塩ハラミを尋ねに行く決心を固めたのだった。
戦うための魔法をルーナから習った。たくさん運動をして早々尽きない体力も育んだ。
ネギ塩は自分の足でやってこない軟弱者は相手にしないという。だから、僕とアルマだけで向かった。
もちろん滅茶苦茶引き止められたし軟禁すらされかけた。母様に本気で叱られかけたけど寝技に持ち込んでなんとか認めさせた。最後は脱走のような形で村を飛び出した。
道中獣にも襲われ怪我もしたが、癒しの魔法を使いつつどうにか辿り着くことができた。(この時ばかりは自分の無謀さとアルマを危険に晒したことを深く反省した)
顔を合わせてみると、意外にも牛タンはゴリラ・ゴリラ・ゴリラ(学名)していなかった。なんでも魔力の巡りを良くして自己強化の魔法も覚えれば筋力は十分足りるらしい。
プルコギは鍛錬馬鹿という事前情報がある。「勇者を鍛えれば強くなった彼を相手に組み手できる」という取っておきの条件を提示した僕だったが、大笑いされた。
『勇者は知らん。だがおまんは気に入った、馬鹿じゃからな! 勇者も強くなるなら一石二鳥じゃ、育てたるわい』
彼曰く、足手まといを連れながら子供一人でここまで来るのは本物だと。どうやらバルバコアに本物の馬鹿認定をくらったらしい。解せぬ。
独り森の中で筋トレしてる方が馬鹿だと思うんですよ。
日本人の平均寿命で見てもその4倍を生きる彼は、戦闘技術に関して言えばやはり常人を遥かに凌駕している。
目を見張るものがあるかと言われれば、僕には弓道の心得と選択授業の剣道の経験しかないので、彼の技術の高さを見て理解することができなかった。
ただまあ、武人ってのは誰しも心技体を極めるもので、その内の「心」の素晴らしさくらいは感じられたんじゃないかな。
一言多いけれど、その技への態度は何よりも真摯な馬鹿師匠。それが僕の受けた印象である。
というか、いつの間にか僕も一緒に鍛えられる流れになってんだけど?
逃げたい、逃げよう、逃げられない。
『逃げたいンなら逃げろ、おいの目が腐ってただけじゃあ。ばってん、勇者は育てんぞ』
逃げられないまま4年が経ち。
ちなみにこの間隔日で彼のもとを訪ねていたが、1年ほど経ったある日「おまんらが来るなら人里も変わらん。もう森を抜けるのも負担にならん。村に帰る」と言い放って村の外れに帰ってきた。
アルマ10歳、レインこと僕15歳。
シロ先生はあまり物事を教えない。見て覚えろと言う。
その日も先生が一人でよくわからん稽古をしている傍ら、僕らは二人で打ち合っていた。
で、初めて負けた。アルマ自身も驚いていたが、僕はついにこの日が来たかという心地であった。先生は何も言わず稽古を続けていた。
これが、きっかけなのだと思う。
「だってさ、ヘリオ。アルマが、あのアルマが自分のことを『オレ』だなんて呼び出したんだよ!? それに僕のことも、家の中だと姉様じゃなくってレインって!! うああぁぁぁ世界の終わりだぁぁぁ……」
「お前さまは世界最後の日も能天気に過ごしていそうだな……」
僕は本気で嘆いているのに、ヘリオはもう慣れ親しんだ白髪を指でいじって呆れ顔を作った。
アルマから「姉様」認定を外されかけているということは、「こいつは敬称をつける必要のない弱者だ」と思われているということだ。尊敬される「姉様」でありたいというのに、見限られかけている。いつしか、僕のしょうもなさに彼が気付いて唾棄し、嫌われる日もやってくることだろう。
反抗期、やっぱなくてよかった。なくてよかったよヘリオ。嫌われるくらいなら、健全な成長なんて糞食らえだ。
「なんだ、人の子がまた馬鹿を言い出したか?」
聖域のお庭を散歩していたルーナがひょっこり顔を覗かせた。馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。というか「また」ってなんだ!?
このエセっぱい女神(おっぱいがエセというわけではない)、僕の魔力に余裕ができたからって、最近は泥人形をかつての自分に合わせて作っている。その分の魔力無駄になってんだぞ分かってんのか。というか泥人形なら今そのおっぱい
「おっぱい偽物のくせに馬鹿にしないでください!」
「アァン!? お主最近化けの皮が剥がれてきたな!? 本物の体通りのサイズじゃわ!」
「嘘つけエセっぱい! 先月より若干大きめにしてんの気付いてるんですよ!」
「なっ、なっ、なぁぁああっ! しょうがにゃいじゃろう! や、宿主があんなに貧相では盛りたくもなるわ!」
そう言ってルーナはズビシッと聖域の崖を指差した。
流れ弾が当たった宿主様は吐血する。
「メディーッッック!!」
「アッ……すまん」
癒しの魔法は、精神的な傷に対しあまり効果がないらしい。
「まあ、最近は僕の方が大きくなっちゃったしね……」
「お主は母親に毎晩揉まれとるのじゃろう。とは言っても、ゼロと比べるならどんなに小さな値も大なり記号がつくが」
慰めどころか追い討ちにしかならない言葉を僕が嘆くように呟くと、ルーナが半目でこちらを見た。彼女はわざわざジト目にしなくても普段から目が死んでいる。
というかあなたまで追い討ちするのはやめてやれ。
アルマが6歳になった晩、つまりは僕が11歳になったお七夜の夜。巫女としての役目を終えた僕と母様は一緒に屋台を巡った。
そして祭りの熱にでも浮かされたのだろうか。母様は「もう我慢できないんだ」と言って僕を抱いた。僕が、ではなく僕を、というのは初めてのことである。
今まで僕が母様に教えてきたことをなぞるように、僕の体は隅々まで母様に愛された。すごかった。うん。すごかった。
あの日のことを思い返すと、こうして今でも思考停止してしまう始末である。いやしかし。すごかったのだ。おにゃのこの体って、すごい。
それからは互いに抱いて抱かれてを繰り返すようになった。僕はエルフにしては鍛えている方なので、やられっぱなしということにはならなかったが。
にゃんこは好きだが、ヘリオを虐める機会がなくなったからか、シロ先生に剣術を教わっているからか(言いがかり)、やはり僕は太刀が性に合うのである。
しかし胸の話題もそうだが、この手の僕と母様のにゃんにゃんの話になってもヘリオは落ち込む。
たまの機会に心を痛めてばかりでは良くないので、僕はあからさまに話題を逸らした。
「そ、そういえばもう僕15歳だけど、全然魔力が乖離する予兆とかないね。実は真名ごまかしても問題ないんじゃないの?」
あかん。この話題もあかん気がする。これだから青春拗らせたコミュ弱は。
ヘリオは悩むように口元に手を当てる。ルーナは気を利かせたのか何なのか知らんが、ニヤッと口角を上げてからまた散歩に戻っていった。
「……分からん。だが、真名が
「でも魔法が使えなくなる予兆とかもないんだよね。むしろ、ルーナに鍛えてもらってどんどん扱いが上手くなってるくらいだ」
老化の終わる時期はゆっくりと近づいてきている。個人差はあるが、早くてあと3年、遅くても10年経つ頃には訪れるだろう。
かつての僕は魔法でどうとでもなると思っていたが、魔法への理解が深まれば深まるほどそれは絵空事だったのだと理解する。僕の知っている言葉で魔法だなんて勝手に呼んではいるが、魔法は一般的な物理法則とベクトルを異にしただけの何らかの
その中で、真名と魔力塊の関係はかなり根源的な部分にあたる。それを書き換えるというのは、会話している最中に話す単語の意味を全く異なるものとして扱いだすようなものだ。自分は良くても、相手には伝わらない。理が崩れる。
だからこそ。
だからこそ、いま大丈夫なのだからと楽観しようとする己がいる。いま大丈夫なのだから、明日も大丈夫だ。その考えが正しいものとは言えないことは理解しているが、誘惑を断ち切れるほど人間ができていない。
「んあ、終わったか」
悩んでいたはずのヘリオから、素っ頓狂でどこか冷めたような響きの声が聞こえてきた。
タイムアップだ。いまのヘリオの体にはルーナが宿っている。
「ねえルーナ、あなたは僕が何とかなる方法、知っているんじゃないですか?」
「さあな? 神に手段を問うことこそ悪手じゃろうて。魔法の扱いは教えてやるから、自分で考えるのじゃな」
「……神様って、ろくなやつがいないですよね」
「アァン!? ……あー、まあ、そうじゃな」
キレかけるが一瞬で遠い目をしたルーナ。彼女も苦労していそうだ。
大方、自分を下界に堕とした者のことでも考えているのだろう。
「悩め悩め、人の子よ。求めたって何も与えられぬし、探せども見つからないものばかりじゃ。あるいは、叩かなくとも開かれる扉もあるじゃろうよ。
「ただの性格悪い邪神じゃないですか……」
アドバイス、とさえ言えない。ろくでもない宣託だった。
果報は寝て待て、この言葉が残ったのには意味がある。
なぜなら、果報のなかった者は目を覚ますことがないのだから。
幸い僕は目が覚めているし、むしろヘリオが夢を見ている始末である。
もたらされた果報は邪神の戯言だ。これを信じるか信じないか、問われれば、僕には一つしか選べる選択肢がないことだろう。
さて、どうやったらアルマに嫌われないだろうか?
主要キャラ人気アンケート:"好き"と"性癖"は違うと思うので、ひとまずは一番応援したいキャラへヨロシクゥ!
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テレサ(女神母様)
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ヘリオ(神(笑))
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キバナ(ょぅι゛ょ)
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アイリス(乳母娘)
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ルーナ(エセ女神)