TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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人嫌いって中高生になると自称する人が急増するけど、結局単なるコミュ弱っていうオチが殆どなんだよね…。でも人間が好きって言うとそれはそれでなんか黒歴史になりそうで、もうどうすればいいですか…?

 とかく、人は忙しない生き物である。

 

 大路を往く人をしばらく眺めた感想がこれだ。誰も彼もとまではいかないが、どこかへ急ぐかのように駆ける男性や、途切れることのない往来を観察しているとそう思わずにはいられない。

 これがエルフだったら、なんなら大路の隅にハンモックを吊って誰か寝ているまである。僕ももはやそちらに染まりきったもので、こうしてずっとぼんやり眺めていられるのも種族的な特色だろう。

 

 しかし、同じエルフでもクロさんはどうも人間臭い。流石は人生の殆どを外界で過ごしているだけある。

 朝に宿を出ていく時「夕方には帰る」と言っていたから、プラマイ6時間くらいで見積もっていたのだが、きっちり五時の夕暮れ時に帰ってきた。時間間隔ガバガバな自分が恥ずかしくなってきた。

 

「市井の噂、実際にあった事件。信用度はマチマチだが、とりあえず全員に共有しておきたいことを話そう」

 

 そう言って、クロさんは今日まで町で集めた情報の中から、僕達にも知っていてほしいものを選んで語った。

 

 まずひとつ。治安については、悪化の一途を辿るというほどではないが、それでもやはり以前クロさんが外界にいた頃よりは悪化しているらしい。

 根本的な原因は災厄による被害なのだろうが、故郷を失って行き場のない人達や、火事場泥棒、戦争孤児など、犯罪に手を染めるようになる人の種類は様々である。

 このあたりでも、街を離れれば盗賊や山賊なんかが現れることもあるらしく、見境なく己の欲望に忠実に動く集団らしいからエルフの僕達も注意しましょうとのこと。言葉は濁していたが、まあ、男は殺し、金品は奪い、女は犯すということだろう。以前練習した珍棒を斬り落とす風の魔法がようやく日の目を浴びるかもしれない。

 

「本来、このあたりの国はエルフに手を出さないよう勧告を出しているらしいんだが。……堕ちきった奴らにとっては、国も災厄も関係ないのだろう」

 

 まさしく、今日明日の自分の快楽のために生きているのだろう。長期的な損得勘定ではなく、その場限りの判断で動く輩はどうにも手に負えない。

 

 また、別の情報として、三大勢力の相互関係も未だ崩れていないそうだ。まあそりゃそうだよな。三大勢力でバチバチに喧嘩してるような環境下だったら、キセノさんがあそこまで自由に国境を越えてないだろうし。

 あとは、紹介状を携えて学園都市を訪れれば問題なく受け入れてもらえそうだ。何事も問題なくて何よりです。まあ、紹介状が効力ゼロだったらもう笑うしかないんだけど。そうなったら森帰って久しぶりにヘリオ泣かせたるわ。褐色白髪調教済みのメスガキにかける慈悲はない。

 

 ……そういえば、キセノさんと言えば。

 

「クロさん。人探しをしている方がいたのですが、金髪碧眼の、人間の女の子を見ませんでしたか? 特徴は……ええと、騒がしいそうです」

「……見た」

 

 もの凄い苦々しい顔をしてクロさんが首肯する。

 

「だがその前に、御子、お前はもっと警戒心を持て。なぜお前を選んで話しかけてきた? 相手の素性はどれだけ分かっている? それは本当に探しているのか?」

「で、でも、本当に困っていそうでしたし……」

「いいかお姫様。お前が今まで接してきた人とは比べ物にならないほど、外界の奴ってのは碌でもないやつが多い。笑顔で人を殺せるし、息をするように嘘を吐く輩がごまんといる」

「僕、お姫様じゃないですよ」

「うるさい。お前がどう思うにしろ、周りからすればそういう認識をしている」

 

 い、いや、もうちょっと他人を信じてあげてもいいんじゃない……? 僕が言えたことじゃないけど、それでも他人を信じることの大切はよく分かってるつもりだよ?

 お姫様呼びに不平をこぼせば、一刀両断された。そんな、守られる側ではないはずだ。力だってあるし、何なら先程注意された盗賊なんかも、仮に襲われたとてひとりで切り抜けられる自信がある。もちろん、前世合わせてもこの中で一番若いガキなんだけど。

 口をとがらせながら、この人ですよう、と貰った名刺を取り出した。

 

「これは……また、嫌な奴を引き当てたな。『なんでも屋』か。ってことはやっぱ、あのガキも近寄らなくて正解だったか……」

「有名な人達なんですか?」

 

 な、なんなら悪い人だったりする?

 

「良い悪いじゃなく、本当に『何でも』やるやつらだ。タイミング的に、俺らに探りを入れることが目的の可能性もある。あまり関わるな」

「お、同じ宿らしいのですが……」

 

 そう言うと、クロさんは頭痛を覚えたように天上を仰いで、最後に深く溜息をついた。

 

「……おじさん、疲れた。寝る」

「えっ!?」

 

 えぇ……。

 瞬く間に自分の部屋へと消えていくクロさんをポカンと見送りながら、少し思うところがあって、アイリスに一つ尋ねた。

 

「……クロさんは、昔から()()なんですか?」

「……いえ、(わたくし)の幼い頃はもう少し人との関わりを好む方だったと思います。いつからか、あのような人嫌いになっていました」

 

 そっか。そっかそっか。

 クロさんも人嫌いなのか。彼は、僕を嫌ってくれるのか。

 

「……御子、様? どうかなさいましたか……?」

「あっ、いや、ううん。なんにもない、です、ます」

 

 アイリスに呼ばれて慌てて口元を引き結ぶ。危なかった。

 流石のアイリスと言えど、こんなことで笑っているのを見られたら変態扱いされる。

 

 もはや、懐かしさすら覚える、嫌われているという状態。

 この身体に生まれてからというもの、本当に誰も彼も無条件に好意を向けてくるものだから、自分の常識を疑いかけてすらいた。

 

 この世界には、ちゃんと、僕を嫌ってくれる人がいる。

 そのことでどうしてか、無性に嬉しくなった。

 

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