TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
にいろ君の珍棒の大きさ決めてた頃に戻りたい
「あァ、世話になったな。死んじゃいないとは思うが、うちの奴らの回収も任せていいか? いや、うん、勿論報酬は別で払う」
右手に握った立方体状の魔道具に向かって語りかける。
学園都市の学者連中が生み出した、世紀の大発明とも評価されている通信用の魔道具。オーパーツに並ぶ能力を秘めたそれは、しかし市場価値の維持のためか技術の隠匿のためかほとんど世に出回らず、各国でもそれなりの地位にある人物か、表裏両方の世界で名を知られるような大物でもなければ触れることさえかなわない。
もちろん、かつて滅んだ文明にだってこのくらいの技術はあったのかもしれない。しかし一度は忘れられた技術を、全く別の角度から別の人物が発明したというのならば、それは人類が今日も進歩を続けていることを保証してくれる。
いつかは、古代文明の技術だってすべて追い越せるのかもしれない──災厄との生存競争に、負けてしまうことがなければ。
「いや、間違ってないさ。回収だよ回収。……あの姫サマ、崖ごと全部崩しちゃってね。笑えるだろう? その後も、崖を元通り戻した上でケロッとした顔で平気そうに振る舞うんだ。いやはや、羨ましいね」
森人とは皆が皆あんなふうにできるものなのだろうか。
勿論、ドローネット──いや、アンブレラが学園都市の連中が腰を抜かすような飛び抜けた量の魔力を保有しているというのは噂に聞いていたが、崩れた崖を直す様子を、仲間二人も大して驚きもせず眺めていたのだ。
誰でも、とは言わないが、あれぐらいならほとんどの森人には特別な魔法ではないのかもしれない。更に言えば、アンブレラはやろうと想えば山一つ崩壊せしめるかもしれない。
かつての人々が「森人とは争わない」というスタンスを選んだのは、このようなところに理由があるのだろう。
「──だがまァ、『政治』は知らないと見た」
力がある。美貌もある。決して愚かではないのだろうし、状況に対する冷静な分析もできるくらいには賢い。
だが、「こちら」のやり口に馴染みがない。それこそ、「
「アンタの言う通り、あの姫サマはお人好しだな」
全員が
「なに、悪いことはしないって。アンタのとこのお嬢様がいつもやってることと同じさ。なァ?」
アンブレラと同じ金髪でも、あのメスガキは煮ても焼いても食えない。だが、そのやり口は非常に学ぶべきものがある。
「あァ、なんでも屋。私は全身全霊、たっぷりの愛情と友情、ちょっぴりの私情を混ぜ合わせて、神の導きのままにドローネットと
通話相手の引き気味の返答をカラカラと笑って受け流して、通信を切った。
このセリフを心の底から信じ切って言い放てるあのメスガキは、やはり生来の気狂いなのだろうななどと思いながら。
軍事国家のお姫様(くっ殺してそう)に何の気なしに問いかけたところ、視界の端でクロさんがピクリと反応するのが見えた。何か気になることでもあったのだろうか。言葉遣いだろうか。勘弁してくれ。これでも結構勉強したんだ。流石に敬語は怪しいけど。
が、クロさんが何か言うより先に、くっ殺してそうなお姫様、もといコルキス様が、条件反射とでも言えるくらいサラリと、特に考える様子無く返答した。
「まあ! アンブレラ様が仰るほどのものではありませんが、お国柄、私達も戦いの作法は学んでいます。それを見抜けるなど、アンブレラ様はご慧眼ですね」
「身近に強い人がいたので、近くで見ればなんとなく分かるのです」
体幹とか、歩き方とか、パッと見での体つきとか。
なお、身体強化をしていない僕のフィジカルはクソ雑魚ナメクジである。……いや、訂正しよう。多分それなりに鍛えられているとは思うのだが、アルマやシロ先生といった頭のおかしい脳筋達が近くにいたせいで、基準が壊れてしまっている。
アルマが転移の魔法を使わないのであれば、このお姫様や護衛の騎士の人といい勝負になるだろう。見た目や雰囲気でわかる強さなので言い切れはしないが。
「では、率直に聞きます。アンブレラ様から見て、私の強さはどれほどのものでしょうか」
「えぇ……、訓練されていないゴロツキ相手なら、そちらの騎士の方と背中を合わせて戦えば、10や20なら簡単に切り抜けられそうですね」
「そう、ですか。……実は、私は賊と正面で切り結ぶような経験が、今まで一度もなかったのです」
そう言って、コルキス様は自らの汚点を語るかのように物憂げに視線を落とした。
誰にでも踏み込んでほしくない領域はある。彼女の背景は知らないが、僕は自分がそこに踏み込んでしまったかのような感覚を得た。
「恥ずかしいことに、私が戦闘技術を学んだのは同志達からばかりで、実際に相手を前にして身がすくむような心地がしました。戦うための準備というものができていなかったのです」
勇ましげであった柳眉は垂れ、恐怖を思い出しているのか、カタカタと震える手は僕の手を取って胸元でギュッと握られる。あの、おねえさま、おっぱいがおっぱいでおっぱいされていましてよ(錯乱)
「御者は戦いを知りません。それを庇いながらあの大勢の男達と向かい合うなど……! 情けなくも、少しでも大勢の中にいたいと人は思ってしまうのです……」
唇を噛み締め眼尻に涙を浮かべる姿は軍事国家の王女様とはとても思えない姿で、けれどだからこそ、僕達が彼女の守るべき「人類」という対象でないからこそ、ついぞ漏れてしまった本音のように思えた。
僕達と彼女の間に信頼関係があるから見せてくれたわけでは決してない。だからこそこれ以上この話題を掘り下げるのは憚られるわけで、しかし口下手コミュ力クソ雑魚ナメクジの僕に打開策があるわけもなく、窮して黙るほか選択肢はなかった。
そんな僕を見て話題を変えようと思ったのか、ところで、とコルキス様がニコリと笑いながら口を開いた。ちなみに、僕の手は彼女の胸に触れたままである。王女っぱいの背徳感で脳が痺れている。
「ところで、わざわざコルキス『様』などと呼ぶ必要はないのですよ? むしろ、我々が森人の方々に敬意を表するべきなのです。どうか、コルキス、と」
「い、いえ、流石にお姫様を呼び捨てするわけにはいきませんよ。むしろ、僕の方こそ王族の方から様付けで呼ばれては困ってしまいます」
勘弁してくれ。さっきから、やたらと香る良い香水の匂いや、気品溢れる所作を見せられて恐縮しているのだ。呼び捨てはメンタルが持たん持たん。
「アンブレラ様。コルキスと呼ぶのは……お嫌ですか?」
「……ひあぁ」
コルキス様が顔を寄せて囁く。ガチ恋距離である。
それに合わせて僕の手はさらに王女っぱいの中に沈む。ふわふわや。あれ、コイツ僕に気があるんじゃね? とあわや童貞ムーブまでしかけている。いや、気があるわ(確信) 待て落ち着け理性を取り戻セックス。
「……失礼、少々距離が近いかと」
「あら、ごめんなさい」
横で座ったまま寝てるのかと思っていたアイリスがスッと僕を引き寄せた。
馴染みある柔らかさが背中から伝わってきて安心する。知っているおっぱいと知らないおっぱいというのは実に性質が異なるようである。
「も、申し訳ありませんコルキス様。少し酔ってしまったようなので、隅で休ませていただきます」
ホテル……間違えた、火照る顔と混乱した頭を落ち着かせながら、フラフラっと隅の席に行く。うあぁ、隅っこ落ち着く……。
クロさんに目線で「後は任せたクロえもん!」と伝え、当初の予定通り、姫様との会話はもう全部クロさんに任せることにする。
「……美味しそう」
唇についた飲み物でも舐め取ったのか、チラリと覗いたお姫様の舌が舌舐めずりをしているように見えて、ちょっとエッチだなどとドキドキした。
多分、僕は一生キャバクラに行ってはいけないタイプの人種なのだと思う。
「……実は、私は賊と(賊以外は知らんなぁ)正面で(後方からの指示役?知らんなぁ)切り結ぶような経験が、今まで一度もなかったのです」
「恥ずかしいことに、私が戦闘技術を学んだのは同志達からばかり(※どこでどのようにかは言っていない)で、実際に(山肌を片手間で崩壊させるような森人の)相手を前にして身がすくむような心地がしました。(そもそも戦う必要がなかったので)戦うための準備というものができていなかったのです」
「御者は戦いを知りません。それを庇いながらあの大勢の男達と向かい合うなど……!(黙ったもん勝ち) 情けなくも、少しでも大勢の中にいたいと(弱い)人は思ってしまうのです……(まあ、私はそう思いませんけど)」