TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
以前どこかで話した気もするが、水や空気といった大抵の自然界の物質と同じく、魔力というものも世界を循環している。この星においてなのか、この大陸においてなのか、はたまた宇宙を含めてなのか、……つまり魔力の系については不明瞭だけれど。
またもうひとつ、魔力が目視できる身として分かっていることは、循環するものとは言えど、魔力は物質……というより固体に溜まりやすい。更にそれが生物であればほとんど必ずと言っていいくらい魔力を帯びていて、誰々の魔力、何々の魔力と呼ばれるものはそれを指すのだろう。どうして生体に溜まりやすいのかは知らない。
もちろん空気や水、火などの固体でないものも魔力を帯びないわけではない。その濃度が薄いというだけだ。分子運動が活発なほど魔力が離れやすいとかだろうか? てか火って気体……? ガスが燃焼してるわけだから、概念か。火の魔力と思われているものは、燃焼しているガスの魔力だったり空気の魔力だったりするのかもしれない。
精霊みたいなものを見たわけではないけれど、魔力はまるで意思があるかのように振る舞うことがある。まあ、雪の結晶だったりウミガメの涙だったり、人が勝手に神秘を見出しているものと同じ話だとは思うんだけど。
たとえばこの間崖を崩したときも、難解な制御とか一切考えないで適当にやっていた。「なんか、良い感じに崩してください。オナシャス」みたいな。指示が雑なのに理想的な結果が返ってくるのは、魔力がこちらの意図に沿おうとしてくれているように思えるのだ。
魔力に親和性の高い種族であるエルフは、魔力に好かれるとでも言うべきか、魔力が
さて。ここまでつらつらと魔法に関する考察っぽい何かをしてきたわけだが、例の如く現実逃避である。
自分、なんか護送されてます……。
人の消えた農村というのはどこか作り物じみているもので、現実的でない景色に当惑した姫様と僕らの一行は、馬車を停め、落ち着いて辺りを散策しようとした。
そこに現れたのが、天使みたいな翼を生やした人間……人間?……と、頭にドリルを生やした人間……人間?……である。人間ってなんだっけ……。
威圧的というわけではないけれど、こちらまで緊張して警戒してしまうような妙な態度で彼らは立ち塞がり、入国の意図を尋ねてきた。
『この辺りは、立ち入りに関する制限はなかったはずですが?』
不満げにコルキス様が述べると、重要人物の来訪にはそれ相応の対応が必要になってくると天使さんが答え、彼女も納得とまではいかないが理解したという風に頷いた。
続けて天使さんがコルキス様の耳元で何事かを囁くと、彼女はこちらをチラリと見て、残念そうにため息をつきながら引き下がった。
まあ、一国の第一王女である。いくら国でないとはいえ、一つの大きな連合としては彼女を放っておくわけにはいかないのだろう。それなら納得してほしいものだ。
というか、留学してくる王女様に対して迎えの一人や二人くらい寄越すに決まってるか……。
そうして護衛依頼は何事もなく終了し、手形らしきものを渡されてお別れした。何か困ったことがあればご相談くださいと言われたけれど、ほとんどこちらが世話されていただけの護衛だったので反応に困る。
コルキス様が天使さんと去っていった後、ドリルさんに僕らの目的、学園都市を訪れるつもりなのかどうかを尋ねられて、言い淀んだものの頷くほかなかった。
「それは……ちと困ったな!!」
頭を……ドリルを掻きながらドリルさんは唸った。
「ドローネットのアンタがな! ウン、こっち来ちまうと、ちと困るんだわ!」
「……えぇっと、何が困るのでしょうか?」
「いやそれがな、なんつーか、やべーのよ! やべー!」
やべー、何言ってるか全く分かんない。
ドローネットとは人間の言葉での森人の別称か何かだろうか? しかしアイリスやクロさんを含んでいる様子はないらしく、「アンタら」でなく「アンタ」であることからも、僕個人になにか問題がありそうに思える。
「……何がヤベーなのでしょうか?」
「いやな、色々とな、やべーわ! うん、やべーわ!」
……うーん、情報量/Zero!
たすけてかぁさま(涙目)
「……ぐすっ、いろいろ、とは?」
「えっとな、アンタが来ると、困るんだわ!」
もうやだぁ……にんげんやだぁ……きらい……。
れいんおうちかえる……。
振り出しに戻ったことに絶望してアイリスに引っ付いて慰められていると、遠くから蹄の音が聞こえてきた。
新たな人間の参戦である。
「す、すいませんウチのドリルが!」
ドリルさんは身内からもドリルと呼ばれているらしい。あるいは仮名か。真名だったら笑うわ。
頭を下げたのは人間の女性だ。黒髪にメガネという学級委員長テンプレのようなステータスを保持し、頭を下げ慣れているところを見るにしっかりとツッコミ役もやっていそう。偏見が過ぎる。
「いや誰がドリルだっつーの!」
ドリルさんがツッコミかよぉ……(困惑)
もうほんとに帰りたい……。
「ごめんなさい。この人、事故のせいで会話に少し障害があるんです。一番案内役に向いてないのに、あの羽馬鹿は何考えてるのかしら……!」
「にんげんが、しゃべってる……」
「いや話せますよ!? この人が特殊なんです! 私が標準です!!」
うーん……、メガネさん、ツッコミも担当できるらしい。セーフ。帰らない。
でも自分が標準とか言っちゃう辺り、やっぱりボケ担当の波動も感じる。ツッコミ担当というのは主観的ではいけないのだ。
事故というのが気になったので続けて聞いてみると、当然ながらあのドリルは先天性のものではなく、とある魔法の実験中の事故で刺さるだか生えるだかしてしまったらしい。学園都市こわい。帰りたい。
事故の以前は寡黙で真面目な人だったのだとか。それが事故の後は、180度とまではいかないが120度ほど性格が変わってしまったらしく、また脳の言語野も少し損傷してしまい、会話において適切な言葉が出せないそうだ。話し方はこんな感じでも、賢さは変わっておらず、現在も活発に研究をしているらしい。懲りろ。ドリル2本目生えるぞ。
……まあ、鉄骨が頭に刺さって性格が変わった人だとか、頭蓋に弾丸がハマったけど問題なく生活を続けた人だとか、地球にも似たような話はあるし納得しよう。したくない。
「……ということは、あの羽の生えた方も実験中の事故で?」
「あれはファッションじゃないでしょうか。動かしているのを一度も見たことがないわ」
うーんこの……。何かよく分からないけど、凄く辛くなってきた。
クロさんは遠い目をしているし、アイリスは一切理解できてなさそうな表情だ。というか僕も聞き間違いを疑いたい。
とりあえず、このまま混乱していては立ち往生でどうにもいかなくなる。
メガネさんの話を聞いてから、どうして学園都市に入れてもらえないのか、加えて農村に人がいない理由、これらを教えてもらうことにした。
「……ええと、森人さん、貴女がこのまま都市部へいらっしゃると、少し困ってしまうのです」
お 前 も か (白目)