TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
中高生の皆さんはよく覚えておきましょう。
「わざわざ導師を3人も寄越すなんて、学園都市は随分と出迎えに熱を入れていらっしゃるのですね」
「それは、はぁ、勿論、ふぅ、ドローネット様と、殿下が、はぁ、お越しとなれば……」
息も絶え絶えになりながら話す男を薄く見つめながら、私のことはついでだろうが、とコルキスは心の中で毒づいた。
偽物か本物か定かでないが白い翼を生やしたこの男は、しかし天使とは程遠いような痩せ細った身で(研究のし過ぎなのだろう)、軽く道を歩いただけで体力の限界を迎えているようであった。
お国柄、ソートエヴィアーカの民は屈強なものが多く、こうした学園都市の研究者・魔導士にありがちな虚弱体質は蔑視の対象とすらなりうる。流石に、ほとんど大使のようなものとして留学してきた身であからさまに馬鹿にするわけにはいかないが、どうしても好意的に見ることはできそうにない。
(見た目より年もいってンだろうしなァ……、仕方ないとは分かるが、こりゃまァ……)
何なら、ドローネット──アンブレラの方が、よほど鍛えられた肉体を備えていた。
従者の
アンブレラの体に触れた感じでは、森人はなかなか筋肉の付きにくそうな体質をしているように思われる。というより、筋肉を肥大化させるのが難しい体質、か。
ちなみに、あそこまで艶めかしい声を出されるとは思っていなかったので、躊躇してしまい隅々まで調べることが叶わなかった。
「しかし、ふぅ、まさか、殿下とご一緒だとは、はぁ、考えて、いませんでした。どのような、ふぅ、いきさつで?」
「運命の巡り合わせというものでしょう。偶然、アンブレラ様一行に救われたのです」
「ほぅ、それにしても、随分と仲がよろしかったようですね」
「ええ、素敵な御仁でした」
とは言え、実際のところ人間的な魅力で言えば、「普通」というのがコルキスの見解である。
生きた宝石とでも呼びたくなるようなその美しさに泥が付くわけではないが、アンブレラや他の森人達が、他者を骨抜きにしてしまうような深い人間性を備えているわけではないというのもまた事実だ。
純粋に、ただただその容姿で人を惑わし、時に畏敬の念すら抱かせる。気を抜けば見入ってしまいそうになる引力があるものの、例えば手紙の上なんかにおいては、冷静さを失わずに相手を観察することができるだろう。
旗頭として神輿に担がれることはあっても、万人を扇動して革命を起こすようなカリスマ性は感じられない。幾度かこちらを探るような様子もあったが、城内で繰り広げられる政戦と比べれば幼さすら感じられる。
そう、幼さ。長期間、人間の領土で観測されている
森人というのは誰もがあのような精神性をしているのだろうか。だとすれば、下手に人間と関われば利用し尽くされるであろうし、逆に利用されたことに気付いた時には、癇癪を起こした子供のように猛烈な反発を見せることだろう。
色々な意味で、やはり人間と森人は今のような不干渉の関係が良いように思える。
それを
学園都市の学者というのも、ある意味で純粋な者が多い。しかしそれは幼さとはかけ離れていて(あるいはこれこそが幼さという見方もできるのかもしれないが)、悪意も善意も関係ない方向に突き抜けた行動に走るのが彼らだ。
恐らく、私が一計を案じて森人に近づいたことには気付いているだろうが、アッサリ手放したことについては理解できないと混乱していることだろう。
「折角、はぁ、打ち解けたようでしたのに、あまり、ふぅ、別れも惜しまぬ、はぁ、ようでしたが……?」
ほら。
つまるところ、研究者というのは
為政者との違いはそこだ。
「獣の耳というのは、人間よりもずっと遠くの音まで聞き取れるんですよ」
「……? えぇと、ふぅ、どういうことで?」
「人は情報を求める時に一番情報を漏らす、ということです」
「はぁ……?」
ニッコリと微笑んだ。
『あなたが魔法を操る時、魔法もまたあなたを操る』という古い
それを十分に理解できていないのは、
それにしても、ここで別れることになるとは思わなかったが。
「もう一度会う機会があれば良いのですけれどね」
「それは……、はぁ、ドローネット様が、【圧縮】を覚え次第、ふぅ、でしょうな」
多いとは聞いていたが、まさか魔力の放出が災害扱いされるとは。
政治どうこう以前に、アンブレラを学園都市に連れ込むにはそれを解決してもらわなければ。
レインです。
小学生の頃、友達料金を払いかけたことがあります。
レインです。
野良猫を鳴き真似しながらひとりで追いかけていたら同級生のカップルに目撃されました。
レインです。
中学に入って、すぐ告白されました。……男子校でした。
レインです。
馬鹿神に魔力を増やせば何でもできると聞いたので増やしていたら、増やしすぎて入国制限を受けました。
放射性廃棄物扱いです。
レインです。
レインです……。
レインです…………。
たとえば、ICカードに磁石を近付けるとカードが故障してしまうらしい。
それです。
たとえば、生体に放射性廃棄物を近付けると体組織が故障してしまうらしい。
それです。
なんか、魔道具にレインを近付けると魔道具が故障してしまうらしい。
辛いです。
どっかのさ、馬鹿神がさ、言ってたんだよ。
大抵のことは、魔力さえあれば解決できるって。
だからお前はとにかく回路を拡張して魔力量を増やせって。
増やしたよ。
その結果がこれだよ!
学園都市入れねえよ!
はい。そんなわけで、護送(され)中のノアイディ=アンブレラ・レインです。
ドリルさんといい眼鏡さんといい変な人に絡まれましたが、最終的にどこぞの施設に送られることになりました。
体から漏れ出る?魔力が多いせいで、このまま学園都市に入るとヤバいらしい。
なんなら学園都市周辺の人々は魔道具に頼り切って生活してるから、さっきまでの農村も、奥まで入ると特に精密機器が死ぬらしい。あそこで生活している人達は魔道具を抱えて一時避難中だとか。完全に歩く放射性廃棄物扱い。辛い。
これから魔力の無作為な放出を解決するための施設に連れて行ってくれるらしいし、別に学園都市の人達も悪意があってやってるわけではないんだろう。
それでも、これから始まるであろう学園都市生活に不安を抱かずにはいられなかった。
特に書く予定ない設定ですが、エルフの村と人間社会では魔道具の作りが若干違います。