TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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子供が集められてる施設って大抵の物語でろくなことしてないよね。黎明なあの人とか孤児院のママとかetc…なあ、ニーナとアレキサンダー、どこに行った?

「魔力の過干渉において、生命維持に必須な医療器具への影響が一番の懸念ですね。次点で水道設備の制御装置の一部、その他の道具も、部分的に魔道具的な機構が存在しますのでやはり影響があると思われます」

 

 眼鏡のズレをスチャリと片手で直しながら、眼鏡さんもといクラムヴィーネさんが語った。ちょっと難しい単語が幾つか出てきたせいで分からない部分もあるが、とにかく僕がこの地域の生活圏に踏み込みすぎない方がいいという話だ。多分。

 

 また、彼女らの扱う魔法のひとつに索敵用の魔力検知をする術が存在するらしく、僕が学園都市方面へ向かっていることに気付いて大慌てだったそうだ。ドリルさんが派遣される辺り信憑性があるかもしれない。

 術というのは、エルフ達が自然におこなっている魔力の検知と同様のものだ。要するに、学園都市の人達はスカウターが使えて、エルフは気から戦闘力を察知できる、みたいな。DBでは最終的になんかみんな気を察知できるようになっていたけど、魔力に関しては魔法への適正的な話がある。

 

 では魔力が見えるはずの僕はなぜ魔力垂れ流し状態だったことに気付かなかったか、という話だが、多分あれだと思う、水中にいてどこまでが水のある範囲かわからないよね、みたいな。多分。めいびー。

 思えば、莫大な魔力を有しているというヘリオもその魔力は体に収まっていた。それでもルーナがその方法を教えなかった理由は分かる。あの短期間では習得しきれないのが目に見えていたのだ。

 体を流れる魔力を意識して動かす。その際、周囲からほんの少しだけ魔力を分けてもらってかさ増しする。そういった一連の技術を覚えるだけで精一杯であった。

 

「勿論、ドロー……いえ、アンブレラ様だけでなく、アイリス様も魔力を放出しない(すべ)を学んで頂く必要があります」

「……クロさんは?」

「もう何年人の世を渡ってきたと思っているんだ。……そんな顔するな、教えなかったんじゃなくて、おじさんにはちょっと荷が重くて教えられなかったんだよ」

 

 つまりあれか、「魔力垂れ流してるなー。位置丸わかりだなー」って思われながらずっと旅してきたのか。

 

「そんなわけで、ここから先は別行動。御子とアイリスちゃんはお勉強で、おじさんは悠々と旅行してくるよ。勉強が一度落ち着いた辺りでもう一度だけ顔を出すかな」

 

 連絡手段もないのにどうやってタイミングを図るのかと尋ねたら、僕が魔力を放出しなくなれば普通に分かるとのこと。……あっ、はい。

 

「それじゃあ、クラムヴィーネちゃん。……任せたよ」

「……はい。任されました」

 

 何やら神妙な顔で見つめ合うクロさんとクラムヴィーネさん。目と目が合った瞬間に気付いてしまったのだろうか。言葉以上の何かを交わしたように見える。

 

 てか、僕のこともちゃん付けで呼んでいいんですよ?

 御子て。いや眼鏡さんのことは名前呼びなのに僕だけ御子て。寂しいよそれは。寂しくない?

 学生時代を思い返せば、名前呼びされないの割と慣れてたわ……。

 

 流石に14年近く経つからか、そろそろ元クラスメイト達の名前も思い出せなくなってきている。

 冷静に考えたら元々覚えていなかったかもしれない(遠い目)

 

 

 

 


 

 

 

 

 ドリルさんが鼻歌交じりに人力車を引きクラムヴィーネさんに案内された場所は、辺りを林に囲まれた森の洋館とでも呼ぶべき白い館であった。

 本来ならば魔力で駆動する乗り物(なお遅い)があるらしいのだが、これも壊しかねないので使えず。馬数頭分の力はあるんじゃないかという軽快さでドリルが征く。魔法だろうか。身体強化の類なんだろうけど、僕が同じ事やったら効果が切れたあと死ぬぞ? 頭からドリル生えてると丈夫になるんだろうか。

 

「お二人には、これからしばらくこの場所で魔法について学んでいただきます。森人の方であればむしろ私達が学ぶことのほうが多いとは思いますが……人間が生み出した技術を習得していただくならば、人間の体系に準じるのがもっとも近道と思われるためです。どうかお気を悪くなさらずに」

 

 あ!? 人間がエルフに魔法指導!? 舐めとんのか! ……とか言うエルフがいたら、よほどの老害だから住処の家樹ごと燃やしてしまえばいいと思う。

 普通のエルフなら、「おもしろいことしてるなぁ」と思って、それで終わり。それを学ぶかどうかは人それぞれだが、魔法はプライドではなく、在り方なのだ。

 

 むしろ、対価もなくこんな学ばせてもらっていいんだろうか。

 何も言ってこないが、これ流れ的に衣食住も保証されてるくさいぞ。あの姫様もそうだが、至れり尽くせりな感じが怖い。まああれは依頼だったけど。

 

「えぇと、こちらの施設──『白妙の止り木』と呼ばれますが──は補助金で運営されているため確かに無償ですが、学園都市(O.D.O.)に入るのであればいずれかの研究室に所属することが求められます。また所属の条件として、多くの場合何かしらの成果を上げることが求められるので、対価はそちらでいただくことになりますね」

「成果」

「はい。ですが実際のところ、アンブレラ様のような潤沢で良質な魔力をお持ちの方の場合、たとえば魔力を研究に提供するとおっしゃれば成果に関係なく所属できると思いますよ」

 

 血液無尽蔵のドナーかな?

 一瞬、血液袋としてチューブに繋がれながら拘束される自分の姿が頭を過ぎった。いかんいかん。マッドレインになってしまう。クラスメイトのことよりあの映画の方が記憶に残ってるの凄いな。

 アイリスに「提供なんてしませんよね?」と目配せされる。シナイヨ。レイン嘘ツカナイ。多少ヒモっぽくて良いなとか思ったけど。思ったけど!!

 

 はー、ヒモになりてぇ。

 あるいは母様養うためなら働ける。

 中高生にありがちなヒモになりてぇ欲求は、養ってあげたい相手がいないからこその感情だと思う。

 あー。

 

 母様……。

 

 あぁ……。

 

 会いたいな。

 帰らないと。

 生きないと。

 

 よし、頑張ろう。

 

「それでは、アンブレラ様、アイリス様。白妙の止り木へようこそ。お二人に近い境遇でここで生活している他の子供達と、皆さんの監督者兼教師の者を紹介させていただきます」

 

 魔道具の類を置いていないからか、どこか古めかしい作りの白い館。

 開かれた扉の中へ、ゆっくりと入っていった。

 


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