TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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最近は忍殺語の勉強をしています。語学は面白いですね。


アイエエエ!? チャンジャ!? チャンジャナンデ!? チャンジャってなんだよ。タラの内臓の韓国風塩辛だよ。僕は辛いの苦手だからあんまり食べたことないけれど。

「本当に行くの……?」

「あんまり乗り気じゃありませんか?」

「そりゃそうだよ。怒られたくないもん……うわっ、そんなあからさまに落ち込まないで!?」

 

 後日。(くだん)の森の洋館(仮称。そもそも夢で見た感じは洋館などという雰囲気ではなかった。羊羹食べたい。)を探しに散策に行かないかと誘ったところ、ものの見事に振られる、もとい嫌がられた。

 いやまぁ、存在も曖昧なものを探しにわざわざ決まり事を破る(脱走する)のは馬鹿らしいし、少なくとも積極的にやることではないのだろう。

 

 それでも提案したのは、何か特別なことをしたいと思ったからだ。

 

「実を言えば、近いうちに僕は『卒業』して、学園都市の方に行くことになります」

「えっ、課題が終わったの? すごい!」

「いや……はい。まぁ、……そんないいことでもなかったかもしれません」

 

 はしゃぐいーちゃんに歯切れの悪い返事を返す。

 確かに、「課題」については解決した。その結果として得られたものについて少し思うところがあるが、それはともかく、先生方に伝わればここを卒業することになるのだろう。

 課題の達成についてまだ伝えていないのは、このままサラリといーちゃんとお別れするのが踏ん切りつかないと言うか、有り体に言って寂しさのためだった。それでも導師の先生方は魔法の研究を生業としているわけだし、そのうち気付かれるだろう。

 

 何か特別な楽しいことをすれば気持ちも切り替わるかと思ったが、如何せん白妙の止り木は娯楽が少なく、そういう意味では退屈な場所であった。

 お昼寝。お喋り。少しの勉強。ささやかな日常を謳歌する程度の刺激はあっても、それ以上のものは存在しないのだ。そういう環境は少し、いーちゃん達の境遇も相まってホスピスのような雰囲気にも繋がっている。

 

「そういうことなら……」

 

 やった、と抱きつく僕に、いーちゃんは少し照れたようにはにかんだ。

 

 

 

 

 どんな場所なのか、あるいはどんな人がいるのかすら分かっていないのに探索をしようと思ったのは、ひとつに自分の能力に最低限の自信は持っていたからだ。

 アルマと一緒に訓練をしたおかげで基礎的な身体能力は高い。また魔法についても心得ており、身体強化をかければそこらの人間相手なら劣らないと思う。だから多少の危険があってもいーちゃんを連れて止り木(ここ)まで逃げることはできるだろうし、流石に帰ってこれなさそうな場所まで探索に行くつもりはない。

 

 そんなわけで、アリバイ作りのために意気揚々とアイリスに協力をお願いしたところ、難色を示された。

 

「イフェイオン様と二人だけでは、少し心配があります。私もご同行いたしましょうか?」

「そうなると……留守はシュービルに任せますか」

「ひぇ、えっ、ど、ボク……?」

 

 少し離れた場所で我関せずといった風に読書していたシュービルに矛先が向くと、豆鉄砲を食った鳩のように挙動不審に驚かれた。ちなみに僕は現代っ子なので豆鉄砲がどんなものか知らない。

 

「ま、巻き込まれたくないんですけど……」

「お願いします!! 綺麗な貝殻拾ってきますから!」

「この辺りに貝なんていないし……そもそも、ボク貝殻で釣れるって、思われてる……?」

「あ、敬語が外れましたね」

「……っ」

 

 貝殻はともかく、シュービルがタメ口を使ってくれたことを喜んで微笑むと、指摘されたのが恥ずかしかったのか顔を赤くして逃げ出してしまった。

 うん、いける。彼は押しに弱いタイプだ。もう一回頼み込めば頷いてくれそう(確信)

 お土産は綺麗な石ころでいいだろう。男の子だから。男の子は石が好き。

 

 いやしかし、一度敬語を外してくれたからといってすぐに反応してしまったのは失敗かもしれない。こういうのって気付いたらタメ口の回数が増えているのが自然な流れで、途中で指摘してしまうと却って意固地に敬語を使うようになってしまいがちだ。

 ……あとからこうやって反省することはできるんだけど、前世から受け継いだクソ雑魚ナメクジコミュ力のせいで実際に会話してるときに気付けない。コミュ障とぼっちは人との会話の後に一人反省会を開きがち。学習してもろて。

 

 

 

 

 時はキンクリ。……慣用句か枕草子にありそう。

 それはともかく、明くる日、計画を実行に移すことにした。ちなみに計画性は皆無。大切なのは信じることって少年漫画の主人公たちが立証してきたわけだし、特に理由もなく自分を信じていきたい所存。人事を尽くして天命を待つ? 知らんなそんな言葉。

 

人形(デューカ)

 

 土から生成した人形が三体。僕とアイリス、そしていーちゃんの身代わり人形である。

 神様じゃないので流石に自我を持たせることはできない。人形が見える位置なら、一、二体くらいなら人っぽく振る舞わせられるけれど。

 白妙の止り木の子供達の管理はかなりガバガバだ。というのも、みんなが過ごすことのできる場所、というのが一番の目的だからだろう。学び舎としての意味合いは薄く、期日までのノルマなんて概念はほとんど存在しない。

 そういうわけで、一日くらいなら「寝てる」でゴリ押せるのでは? レインは訝しんだ。

 

「うわぁ……ほんとにそっくりだぁ」

「僕が最初に魔法を教わった人が得意だったんですよね」

 

 髪の一本まで拘って作った人形をいーちゃんがしげしげと眺める。

 適当な人形(ひとがた)ならともかく、実際の人物に似せるとなるとその人の身体を隅々まで知っていなければいけない。そのために、アイリスはともかくとして、いーちゃんの身体をよく調べさせてもらった。

 

「えぇ、こんなところまで……? うわ、……うわ、あぅ。……うわぁ」

 

 ペタペタと触りながら、いーちゃんが人形を確認する。

 次第に顔が赤らんでいき、終いには両手で顔を覆いながら覗くようにしてフリーズした。

 

「あ、シュービル。留守は任せますが、この通り土人形は精巧にできていますので、あまり触れたり不埒なことはしてはいけませんよ。キミの善意に任せる形になりますが……まぁ、どうしても我慢できなくなったら僕の人形なら許します」

「はい?」

 

 いーちゃんの人形に触れでもしたらもう許さん。何なら見るのも許せん。シュービルの性格的にまさかそんなことはしないとは思うけれど、彼がムッツリスケベな可能性だって否定しきれないのだ。もし悪戯したら一生ムッツリーニって呼んでやる。

 困惑するシュービルを傍らに、アイリスがあっと小さく声を漏らすのを聞いた。どうしたのかと問うが、何でもないと返される。

 

「なんといいますか、留守番でもよかったかもしれません」

「はあ。まぁ、折角人形作ったわけですし、一緒に行きましょう」

 

 と、次はいーちゃんがうわぁっと叫んだ。なんじゃなんじゃ。チャンジャ。

 

「あ、あーちゃんごめん」

「へ?」

「なんもしてないんだけど、人形が壊れちゃった……」

 

 見ると、いーちゃんが触っていた人形が崩れて土塊に戻っていた。アイエエエ!? チャンジャ!? チャンジャナンデ!? チャンジャってなんだよ。タラの内臓の韓国風塩辛だよ。

 

 が、少し真面目に観察すると分かった。土塊を人形として維持するために与えた魔力が、いーちゃんにすべて吸収されてしまったのだ。

 いーちゃんは持病として魔力に対する親和性が高い。周囲の魔力量と体内の魔力量の相関が強いのだ。そのため、魔力によって構成された人形にずっと触れていると土塊の魔力がいーちゃん側に流れ込むのだろう。

 そもそもとして無機物より生体の方が魔力を含みやすい。それに彼女の体質が合わさって、人形が崩壊するまでに至った。

 

「うぅ……、ごめん、ね?」

「ふふっ、構いませんよ。作り直しましょう」

 

 とりあえず、いーちゃんにはあまり土人形に触れないよう伝えておいて、新たに人形を作った。

 さて、出発しようか。

 




レイン「コミュ力クソ雑魚ナメクジ」
にいろ「キレそう」

にいろ「負けが似合うクソ雑魚ポンコツメスガキ」
レイン「キレそう」

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