TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ!   作:Tena

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第96話

「コルキス嬢。『いにしえのまほうつかい』のおとぎ話は知っているかな」

「現代の魔法の始まりに関する伝承ですね。幼い頃に何度か聞かされましたが、それが何か?」

 

 タゲリ──コルキスの配属された研究室の教授は、週に一度研究室のメンバーを集めてホームパーティーのようなものを催す。上司に招かれて断るということは難しく、またさほどタゲリを疎んでいるわけでもないので今のところ毎週参加している。

 宴もたけなわとなった頃、酔いのためか頬を赤らめたタゲリがコルキスに問いかけた。まるで酔った様子のない彼女は、先程まで延々とコルキスの杯に酒を注いでいた輩(今は酔いつぶれて眠っている)から意識を切り、タゲリに向かって首を傾げた。

 

「いやね、我々学園都市(オブダナマ)の研究者こそ尊ぶものの、よその国の方々からはあの話がどう思われているのかと思いまして」

「失伝しかけた魔法を、現代に遺した人々の話でしょう。今の私達の生活に魔法は不可欠です。武勇伝でこそありませんが、とても大切な伝承だと思っていますよ」

「それは……嬉しいものですなぁ」

「嬉しい?」

「ええ……。我々が命を天秤にかけてでも研究に没頭する理由でもありますが、この国家とすら呼べる巨大な都市自体、彼ら古の魔法使いが遺したものなのです。だからこそ、我々は彼らを尊びますし、その物語も同じように扱います」

 

 やや眠たそうな眼をしたタゲリは、懐古するように虚空を眺めながら微笑みを浮かべた。ソートエヴィアーカの祖霊信仰にも通ずるものを感じ、コルキスの中での学園都市への親しみも自然と増す。

 

「祖霊とは少し違うかもしれないね。なにせ、古の魔法使いはまだご存命ですから」

 

 コルキスは「は?」と言いそうになる衝動を必死に堪えた。かすかに感じていた酔いも覚めるほどであった。

 しかし、それだけタゲリの言葉には困惑した。なぜなら、学園都市の歴史は数百年以上前から存在しているのだから。

 

「それは……ご存命とは、一体どのような意味なのですか?」

「どのようなも何も、今も生きているということです。──学園長。彼女は、この都市が始まったときから生きる、古の魔法使いの一人なのですよ」

「なんと──」

 

 それは、初耳だ。

 いくら酒が入っているとはいえ、タゲリは言って良いことと悪い事の分別くらいつくだろう。であるならば、学園都市の最重要機密ではない。しかしコルキスが知らないのであれば、一般常識でもないだろう。国家の上層部が知る知識……つまり、国が意図的にコルキスに伝えなかった知識か。

 内心苦虫を噛み潰したような顔になっているコルキスをよそに、タゲリは上機嫌に続ける。

 

「我々は、魔法を使う者のことを魔法使いとはほとんど呼びません。それは彼女たちを示す特別な呼称だからです。導師などと名乗るのも、実はそのためなのですよ」

「……敬意を込めて、という意味でしょうか?」

「それも。それだけでなく、彼女らにとって魔法とは──」

 

 

 

 


 

 

 

 

 どうも。職業辻ヒール民、副業に次代奏巫女を務めますアンブレラ・レインです。

 ゲームによっては辻ヒールのせいで敵のヘイトを奪ってしまうなんていう悲劇もあるらしいですが、現実世界においては何も問題ないですね! どんどん負傷者は治していきましょう! 敵味方なんて知らん知らん!

 

 ……普段はそんなことを考えている僕だが、正直なところ、現状困り果てていた。

 

「あーちゃん! 大変、この子、酷い怪我してる……!」

「そう、ですね……。どうしてこんな場所に」

 

 実際のところ、いーちゃんが言うほど少年の怪我は酷くない。

 いや、青痣や浅い裂傷はあるのだ。だから当然処置は必要なのだが、気絶している原因も栄養不足からくるものだろうし、放っておけばすぐに死んでしまうような緊急性はない。

 

 以前までなら反射というか無意識レベルで治し叩き起こす場面だ。それを理解しているアイリスは、意外に思っている心情を表すかのようにチラリと一瞬視線を寄越した。

 

「……僕が背負います。安全に寝かせられる場所を探すか、なければ白妙の止り木へ連れていきましょう」

「流石に重いんじゃ……」

「まあ、力持ちになる魔法があるんですよ」

 

 そんなことを言いながら、僕より少し大きいくらいの背丈の少年をひょいと担いだ。

 実際身体強化(力持ちになる魔法)は存在するが、この子ぐらいであれば通常の状態でも運べるのだ。筋トレ(力持ちになる魔法)というわけである。

 

 さて。僕が彼の怪我を治さない、もとい治せないのは、ぶっちゃけると今魔法が使えないからだ。

 正確には、自己以外にはたらきかけるような魔法が使えない。空も飛べないし、崖崩れも起こせない。先日体得した、魔力の放出を止める技術の影響だ。まあその話は、またどこかの機会で。

 

 本来であれば白妙の止り木へ戻るのが正しいのだろうが、この少年がここで倒れていたということは近くに何らかの居住地がある可能性が高い。まさかアルマの時みたく転移の魔道具を使ったわけじゃないだろうし。

 であるならば、それが僕の探している森の洋館(仮称)である可能性も高いわけだ。なんなら、この辺りは夢での見覚えがあるわけだし。

 

 

 

 

 ……が、背負って少し。揺れで目が覚めたのか、意識を取り戻した少年が起きるなり僕の背中で暴れた。

 流石に担いでいられなくて落としてしまう。身体が自由になって少しだけ落ち着いたのか、周囲を見渡し、僕らの存在を視認した。

 まず一番近くにいた僕を見てしばらく固まり、次にアイリスの胸を向いて固まり、最後にいーちゃんを見てホッとしたように息を吐いてから僕たちを睨んだ。

 

「……アンタら、誰だッ」

 

 語勢は強いが、気絶するほど消耗しているためか声が掠れてしまっており怖さは感じられない。

 自分を見てホッとしたような反応をされたことに苛つきを覚えたのか、いーちゃんが不満気に返答をする。

 

「キミを介抱してたのに、そうやって睨むのよくないよ」

「……ッ、余計なこと、すんな」

「余計なことって……、あの、さぁ! キミそんなにフラフラじゃん。私たちは当たり前のことしただけだし!」

「そういうの、ウゼェんだよ。くっそ、訓練、戻んねえと」

 

 にべもない反応。いーちゃんも流石にここまで言われて怒ったのか、何こいつ! みたいな視線で睨んでいる。彼女がここまで怒るのは初めて見る。

 ……にしても、「訓練」。あの怪我は訓練によるものだろうか? 森で倒れていたのも、サバイバル訓練でもしていたのだろうか。……僕らとほとんど変わらないであろう年で?

 

 などと僕が困惑していると、結局ほとんど僕の方に視線を送らなかった少年は、僕らが進んでいた方向へ茂みをかき分けながら消えていってしまった。

 傷を気にも止めない彼が気掛かりで、反射的に後を追い始める。

 

「あーちゃん、あんな子ほっとこうよ」

「え、でも……」

「だって、どうせまた余計なことすんなーって言われるよ。アイリスさんの胸見て顔赤くなってたし、変態だよ!」

「そうなのですか……?」

 

 僕にはあの少年の気持ちがよく分かる(男は万乳引力に抗えない)から何とも言えない。アイリスは慣れのためかそういった視線に鈍感らしく、いーちゃんが口に出したことで初めて自覚したかのように顔を赤く染めて片腕で胸を覆った。強調されて余計エロいだけである。南無。心の珍棒がおっきした。

 

「……やはり、あの怪我でこの森を一人行かせるのは危険です。彼が目的地に着くまで、後ろから着いていきましょう」

 

 僕らは襲われなかったとはいえ、巨大な熊さえ出没する森だ。あれほど衰弱した少年を一人放置するのはいたたまれない。

 なにより、その童貞メンタルが気に入った。彼の行き先が某森の洋館であるなら目的も達成できるわけだし、少し追ってみよう。

 

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