とある科学の超人兵士。   作:バナハロ

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鬼ごっこは賢い奴が勝つ。

 翌日、黒子は美偉と一緒に書庫で春上の記録について調べていた。が、目新しい事は何も書かれていない。能力は精神感応のレベル2ということだけ。

 

「うーん……違うんでしょうか」

「でも、乱雑解放が起こる前に彼女の様子がおかしくなったのは間違い無いんでしょう?」

「はい。お姉様から聞いた話ですが……」

 

 自分が実際にその場にいればもう少し詳しく状況を把握できただろうに……と、少し後悔していた。

 

「そういえば、白井さん。昨日は弟と遊んでくれてたんだって?」

「え?」

「ありがとね。あの子、いい歳して友達もいないんだから」

「い、いえいえ……」

 

 言えない、花火の最中に能力使って落としたとは言えない。

 

「でも、それなら私も行けば良かったなぁ……」

「次回からはご一緒しましょう。多分、非色さんもそれを望んでいますし」

「ふふ、ありがと」

 

 そういえば、姉の美偉は非色がヒーローかもしれない、という事を察しているのだろうか? いや、知らないとしたらどう思うのだろうか。

 気になるところだが、聞かない。もしかしたら、姉弟間に亀裂を生む事になるかもしれないから……。

 少し悩ましく思いながらデータを読んでいる時だ。

 

「白井さん、これ……!」

「え?」

 

 美偉が指差す列には「特定波長下においては、例外的に能力以上の力を発揮することもある」と書かれていた。

 

「先輩……まさか」

「……ええ、この線で調べてみましょう」

 

 そう決めると、とりあえず行動方針は決まった。

 

 ×××

 

 一方、その頃。美琴は非色の事を尾行していた。前の鍋会で家は抑えていたので、後はマンションの前で張り込んでいれば出てくる、と睨んでのことだった。

 非色はリュックを背負ってマンションの入り口から出て来て、そのまま街を歩く。その後ろを、少量の砂鉄を操り、靴の中にいれて発信器代わりにして後をつけた。

 砂鉄は常に自分の手元に残しておき、非色の居場所を辿れるように道を作る。残りが少なくなるほど遠くにいるということが分かるわけだ。

 

「……」

 

 今の所、彼に目立った動きはない。のんびりと街を歩いているだけに見える。コンビニに立ち寄って揚げ鶏と飲み物を購入して食べ歩きしたり、図書館に立ち寄って化学の本を読んだり、と普通の事をしている。

 ……いや、普通ではない。行動自体は普通だが、本当に今日、これをやる予定だったのか? と問われれば微妙な所だ。まぁ、今日はテキトーにプラプラ歩く、という予定であったのなら、やはりおかしなところは無いが。

 本棚に本を戻すと、非色はトイレに向かう。午前中から揚げ鷄の食べ歩きなんてするからそうなるのだ。

 流石に中には入れないのでしばらく待機する。せっかくなので、図書館にもある漫画を読むこと10分が経過した。

 

「……」

 

 遅過ぎる、と思うのと、発信器代わりの砂鉄の数がかなり少なくなっていた。

 

「マズい……!」

 

 奥歯を噛み締めて、まずは女子トイレに入る。窓から出た、というのは考えるまでもないことなので、自分も窓から出た方が早い。

 隣の男子トイレの窓から砂鉄が続いていたため、砂鉄を回収しつつ後を追う。運動神経は普通の学生以上である自覚があった美琴だが、非色はそれよりも早い。あの体格だから不自然な事ではないが、このままでは砂鉄が無くなってしまう。

 そのため、道に落ちてる砂から砂鉄を作り出しながら走った。

 

「クッ……どこいったあいつ……!」

 

 とにかく砂鉄を追いながら悪態をつく。というか、尾行に気付かれている事に驚いた。砂鉄があったから一定以上の距離は置いていたし、なるべく視線も送らないよう細心の注意を払っていた。まさか気付かれるなんて思っていなかった。

 このままでは引き離される……と、思った直後だ。ふと手元の砂鉄を見ると、量がそれなりに多くなっているのが見えた。どうやら、非色は「撒いた」と判断したのか、足を止めたようだ。

 スピードを緩めているのか、それとも目的地に着いたのか分からないが、とりあえず砂鉄の回収を止めて慎重に後をつける。

 路地裏に入り、しばらく歩いていると、砂鉄が建物の中に入って行った。

 

「……セブンスミスト?」

 

 まさか、まだ尾行されている事に気付いているのだろうか? 流石にあれだけ距離を離されても尚、尾行に気付いていているとなるとお手上げなのだが……いや、大丈夫のはず、と思いつつ、セブンスミストに入った。

 中を歩き、慎重に砂鉄を追う。無いとは思うが、念には念を入れて奇襲を警戒した。電磁波によって奇襲など通用しないが、万が一にも彼の殴打をもらえば一発で気絶する。

 その砂鉄を追って曲がり角を曲がった時だ。ちょうど、そのタイミングで非色が曲がり角から出て来た。

 

「わっ……み、御坂さん?」

「っ……!」

 

 あっさりと尾行対象が姿を現し、思わず身構えてしまった。

 

「何してるんですか? こんな所で……」

「え……えっと……か、買い物! 買い物しようと思ってて……」

「そうですか……」

 

 慌てて砂鉄を隠しながら作り笑いを浮かべる美琴。

 

「ひ、非色くんはどうして?」

「や、なーんかつけられてた気がするんですよ、マンションから。だから犯人が罠にかかるまで待ってたんですけど……」

 

 ドキリ、と美琴の心臓が高鳴った。多分、自分じゃなかったらバレていた。知り合い補正が働いて、自分が犯人だと思われなかったのだろう。

 

「……あれ、でも今は視線を感じないや」

「あ、あはは……」

 

 何という感覚。第六感と言っても過言がないレベルで嗅ぎつけていた。

 まぁ、こうなったらこうなったで、問い詰める方法はいくらでもある。美琴はすぐに作戦を切り替えた。

 

「そ、それよりさ、今暇なの? 暇なら、私の買い物に付き合ってくれない?」

「えっ……あ、いや……暇では……」

 

 すると、急に目を逸らす非色。やはり、これから何かヒーローとして活動するつもりなのだろう。誤魔化すのが下手で助かる。

 

「暇じゃなかったら何なの?」

「い、いや、その……ひ、人と会う約束してて……」

 

 コミュ障の癖に、中々良い断り方をする。だが、想定内だ。

 

「それいつ終わるのかしら?」

「えっ、えーっと……えーっと……」

 

 なんかもう必死になって言い訳を探している姿は愛嬌すら感じるものがあった。その姿を見て、小さく頷いている時だ。

 そんな時だった。非色の携帯がピリリリっと鳴り響く。電話のようだ。

 

「す、すみません……」

「ううん」

 

 非色は携帯を耳に当てて離れる。勿論、美琴は後をつける真似はしなかったが、軽く電波を飛ばした。電話の盗聴は正直、気が引けるが、非色に協力者がいると思うと、やはり話を聞かないわけにはいかなかった。

 

「……あ、もしもし、木山先生ですか?」

『ああ、私だ』

 

 木山、の名前が出た直後、美琴の表情は強張る。捕まったはずの彼女が、何故、もう出所しているのか。

 実際、非色もその話を聞いたのは昨日の夜中だった。寝る前に電話がかかって来て、とりあえず今日、落ち合う事にしたのだ。

 

『何をしているんだ? もう待ち合わせの時間を過ぎているぞ』

「……すみません。ちょっと俺自身も立場を危うくしているみたいで、つけられてました。撒いたと思ったら、今は御坂さんに見つかって……」

『そうか……やはり、この子達を欲している連中がいる、という事だな?』

「おそらく……何に使うつもりかは分かっていませんが」

『……チッ』

 

 木山は小さく舌打を放つ。子供を実験動物にしようなど、正気の沙汰ではない。この街の科学者は何処まで腐敗しているのか。

 

「それで、考えたんですけど……とりあえず、木山先生は子供達のいる施設に向かってください」

『……大丈夫なのか?』

「大丈夫かは、正直分かりませんけど……俺でも二丁水銃でも、今はマークされています。なら、木山先生が冥土返しさんと一緒に『元脳医学者』という体で行動してくれた方が怪しまれませんし、安全だと思います」

 

 少なくとも、学生と医者が一緒に歩いているよりは自然だろう。それも、頭の中まで筋肉に見えるガタイを誇る学生なら尚更だ。

 

「勿論、細心の注意は払って下さいね。おたくの赤いポルシェなんかで移動したらガッツリ目を引きますし」

『あ、ああ、分かってる。では、失礼する』

「はいはい。勿論、俺に出来ることがあれば協力しますよ。多少、荒っぽい事でも」

『ありがとう』

 

 そこで電話を切った。ふぅ、と非色は息を吐く。敵も中々、侮れない。学園都市は科学者の味方なのだ。ならば、いっその事、学園都市自体が敵だと思った方が良い。

 とりあえず、このままの足でMARの事を調べようと思った時だ。

 

「ねぇ」

「ひえっ⁉︎」

 

 急に声を掛けられ、肩が震え上がった。

 

「今の会話はどういう事かしら?」

「か、会話? 何の話?」

「私、電話から盗聴も出来るのよ」

 

 そう言いつつ、人差し指と親指の間に稲妻を走らせる美琴。だが、そんな事は美琴にとってどうでも良い。それよりも重要な事がある。

 

「あんた、まさか……」

「違うよ?」

「何が? まだ何も言ってないけど」

 

 言われる事を予知していたような返しだ。美琴の視線はさらに鋭くなる。コレはまずい、と思った非色は、さっきまでの会話で何を言ったのかを反復させた。

 ……そうだ、まだ「自分=二丁水銃」という事は明言していない。ならば、こうする他ない。

 

「え、えっと……アレだ。実は……俺、二丁水銃と知り合いなんですよ!」

「……はい?」

 

 俺でも二丁水銃でも、今はマークされています。というセリフがネックだった。それでも、同一人物とは言っていない。ここをうまく使えば良い。

 

「二丁水銃さんに聞いた話だと、木山春生さんの生徒を助けるために奮闘していますが、そのためには木山先生と面会する必要がありました。が、面会にあの格好では行けない、とのことで俺に代理人を任せたんです」

「……なんであんたなのよ」

「そ、それは……そう。前に婚后さんを助けた時の喧嘩を見てたみたいで……!」

 

 微妙に整合性は取れていないが、それならあの時から面会に行っていた事にすれば良い。そもそも、ヒーローだって本当に自身の代理人を選ぶつもりならそれなりに時間はかけるだろうし、むしろリアリティがあるかもしれない。

 ……だが、それ以上に美琴の直感が「嘘を言っている」と告げた。まぁ、証拠もないのに友達を疑う事に気が引け、すぐにため息をついた。

 

「はぁ……まぁ、それならそれで良いわ」

「ほっ……」

 

 あからさまに目の前でホッとしている。この子、本当に隠すつもりあるのだろうか? 

 

「……でも、その話には混ぜなさい」

「……はい?」

「だって、私だって木山先生の過去を見てしまったもの。それに、彼女が釈放されているって事も気になるし……無関係ではないわ」

「どうしても?」

「どうしても!」

「……」

 

 美琴は真っ直ぐと非色を見据える。逆に、非色は目を逸らしてしまった。正直、嫌だ。いや、美琴を信用していないとかではなく、単純に敵にテレパシーが使える能力者がいたらバレるということだ。そういう意味でも、やはり知っている者は少ない方が良い。

 そんなわけで、強引な手を使う事にした。

 

「あ────ーッッ‼︎」

「……えっ?」

「っ!」

「あっ、コラ!」

 

 遠くを指差し、釣られた直後に逃げ出した。おかげで、美琴は遅れて非色を追い掛ける。が、そもそもの地力が違った。

 研ぎ澄まされた感覚と五感で一般客をスイスイと躱して行く非色だが、美琴はそうはいかない。砂鉄での尾行をしようとしたが、もう距離が離され過ぎている。

 

「あ、あいつ〜……!」

 

 奥歯を噛みしめ、怒りのあまり電気を髪の毛の先から漏らしかけた時だ。ピリリリッと携帯が鳴り響く。表示されている文字は、白井黒子の文字だった。

 

「あ、黒子? ごめん、逃げられた」

『あ、いえ、その話ではなく。また乱雑解放が発生致しました』

 

 何処となく強張った声だが、今は気にしている場合ではない。

 

「……何処で?」

『また、初春と春上さんが巻き込まれたみたいなのですが……』

「無事なの?」

『ええ。……それで、やはり直前に春上さんの調子がおかしかったみたいですの。明日以降、私と固法先輩で事情を伺って来ますわ』

「え、初春さんは?」

『……さぁ?』

 

 あ、これは……と、美琴は一瞬で察した。何かあったな、と。まぁ、寮で聞けば良いかな、と、思う事にして、とりあえず返事をした。

 

「私はいいわ。……明日こそあんにゃろうを捕まえてやる」

『え……そちらは何があったのですか?』

「何もないわよ!」

『は、はぁ……』

 

 電話の向こう側の黒子も困惑していた。

 

 




そろそろDVD見返さないと内容思い出せなくなって来たんで、明日借りて来ます。
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