とある科学の超人兵士。   作:バナハロ

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裏の裏をかかれた系男子。

「み、御坂さん! 一体、何がどうなって……!」

「説明は後! ……ていうか、あいつなんで出ないのよ……!」

 

 非色に電話している美琴は、スマホを耳にあてがいながら佐天の手を引いて走っていた。

 それに、気になる。非色対策で美琴の電磁波の範囲は大きく広がったが、それに何人か引っ掛かっている。つまり、つけられているわけだ。

 それが何者なのか、そして目的が何なのか分からないが、このままなのは良くない。

 そんな時だ。ようやく応答があった。

 

「もしもし⁉︎」

『わっ、とっ……ほっ。そらっ!』

「聞いてる?」

『聞い、てる、けど! こいつ……! オラ!』

 

 どうやら、戦闘中のようだ。引き返そうとも思ったが、とりあえず指示を待った。

 

「どうしたら良いの⁉︎」

『木山、先生の研究施設に、行ってください! 子供達を起こそうとしています!』

「子供達……え、もう起こせるわけ?」

『はい! ですが……っと、しつこい!』

「あ?」

『あ、いえそっちではなくて……っと、このっ……! 敵が、木山先生のラボに、来るんで……ガードを!』

「分かったわ。死なないでよね」

『分かってます!』

 

 そこで、通話を切った。さて、そうと分かれば、まずは追手である。今は相手をしている場合ではない。つまり、撒くしかない。

 

「佐天さん、ちょっと失礼」

「え……きゃっ!」

 

 佐天を引き上げると、自分の両腕の上でお姫様抱っこをした。直後、両足の裏に再び砂鉄を集めると、ジャンプして街灯の上に降り、磁力を利用して大きくジャンプした。

 その磁力を使った高速移動によって、さらに先へ進んでいく。電磁波の包囲網から追手の姿が消えたのを確認すると、一先ず一息ついた。

 

「ふぅ……こんなものかしら?」

「御坂さん……やだ、惚れそう」

「そういうのは黒子だけで十分よ……」

「えへへ、冗談ですから……」

 

 実際、佐天にまであんな風になられたら、もう何も出来ない。黒子と違って丈夫ではないかもしれないし、遠慮なく電撃は無理な話だ。

 

「それで、何がどうなってるんですか?」

「え? あ、あー……」

「どうして、非色くんが狙われているんですか?」

 

 目を逸らした美琴が言いづらそうに口をつぐむ。なんて説明したら良いのだろうか。どんな風に説明しても長くなってしまう。

 とりあえず、要点だけを何とかまとめて言ってみた。

 

「えーっと……実は、非色くんと二丁水銃が木山先生に手を貸しているの。木山先生の子供達を助ける為に」

「え、ひ、非色くんとヒーローさんが⁉︎」

「けど、今はその子供達が危ないから、助けに行く所って事」

「な、なるほど……」

 

 一応、正体はバラさないでおいた。これは後で貸しだ、と思いつつ、速度を上げた。

 

「少し飛ばすわよ。しっかり掴まってて!」

「は、はい……!」

 

 ちなみに速度を上げた理由は、それ以上質問をされないためだったりする。

 

 ×××

 

 電話のために逃げに徹していた非色だが、ようやく本領を発揮した。目の前から来るナイフを構えた暗殺者を前に、拳を構えて対応した。

 立体駐車場の屋上から中に入って殴り合いを続ける。攻めているのは暗殺者の方だが、非色も押されているわけではない。

 ナイフを手にした猛攻を、回避と両手でガードし続けた。

 顔面に突き刺しに来る右手のナイフを左手でガードすると、手に持っていたナイフを落として左手でキャッチし、再び首を落としに来る。それを反り身で避けると、まるで避けられることを予期していてように同じナイフでもう一度払って来た。

 それをガードすると、今度は顔面に普通のパンチが来る。モロに喰らったものの、大きなダメージはなく前を向くと、今度はナイフがまた顔面に来ていた。

 それを届く前にガードすると、今度は右足で左膝の外側からローキックを放たれた。

 

「ッ……!」

 

 ガクンとしゃがみ込んでしまった。隙ができ、容赦なくナイフを突き刺しに来るが、ナイフが刺さる前に突進を仕掛け、足を持ち上げて掬い上げた。

 暗殺者は前方に転がるが、すぐに立ち上がって非色にナイフを振った。

 同じように前方に転がって受け身をとっていた非色は、そのナイフを持つ手に手刀を放ち、ナイフを手離させる。が、暗殺者の蹴りが正面から直撃し、後ろに蹴り飛ばされ、壁に背中を強打した。

 

「ぐあっ……!」

 

 手放されたナイフを空中でキャッチした暗殺者は、太もものホルスターから拳銃を抜き、壁まで蹴り飛ばした非色に発砲した。

 

「あぶっ……!」

 

 真横に転がりながら回避しつつ、近くに止まっている車の影に隠れる。その後も、銃による射撃が続く。車に銃弾がめり込んだ直後、ガソリンが漏れていることに気付いた。

 

「やばっ……!」

 

 直後、爆発。爆風にやられ、さらに後方にまで吹っ飛ばされ、背中で別の車のフロントガラスを叩き割ってしまったものの、下半身を強引に振り上げて車の上で受け身を取りつつ、隙だけは作らないように対応した。

 予想以上に強い。おそらく、自分とは違って本格的に武道なり暗殺術なりを習ったのだろう。

 

「……こんな事なら、俺も風紀委員に入れば良かったかな」

 

 そんな心にもない独り言を漏らしつつ、次の一手を警戒した。幸い、サングラスの熱源感知のお陰で、暗殺者が何処にいるかは暗闇でも分かる。

 

「……ふぅ、はぁ……」

 

 深呼吸をして、警戒したまま胸に手を当てた。

 今の今までの戦闘は、能力に頼ったバカ達を殴るだけの作業だった。そもそも、能力を戦闘に応用するには、まず自身の戦闘力を鍛えなければ意味がない。何せ、能力とは切り札でもあるのだから。

 美琴ほどの能力なら、むしろ能力を軸に戦闘を行うのは当たり前だが、手元に炎を出す程度の能力者が最初から火を出して戦うなど、それだけで素人臭がするため、簡単に制圧できた。

 が、目の前の男は自分と同等レベルの力を持っている上に、今の今まで能力を使って来ていない。つまり、自分がタイマンで負けるかもしれない相手、ということだ。

 負け=死に繋がるというのに、何処か非色の胸は高鳴っていた。ピンチが、これから「戦い」を始められるという自覚が、高揚感を感じさせていた。

 

「……面白くなって来た」

 

 そう呟くと、今度は非色から攻めた。自身が隠れている車を、思いっきり蹴り飛ばした。それが暗殺者に直進する。

 その車をジャンプして天井にナイフを突き刺して張り付いて躱し、抜きながら天井を蹴って突撃した。その一撃に対し、非色は上半身を後方に倒しつつ、両脚を振り上げてオーバーヘッドシュートのように自分の後ろに暗殺者を蹴り飛ばした。

 駐車場の外に蹴り飛ばすと、すぐに追撃を行った。自分も駐車場から飛び出し、ラブホテルの壁に背中を強打した暗殺者に飛び膝蹴りを放つ。

 その膝をキャッチし、脇腹に拳を叩き込んで非色を殴り飛ばす暗殺者。立体駐車場の壁に背中を打ちつけながらも、壁の上を転がるというよく分からない受け身を取りつつ、構え直して次の一撃に備えた。

 そのまま、空中戦が展開され始めた。立体駐車場とラブホテルに挟まれた地形から抜け、別のビルの屋上に移った。

 

「……だーもうっ! しつこいったらない!」

「……」

 

 しかもお喋りに付き合ってもくれない分、退屈さが増した。実際、戦闘中にお喋りするような奴はいないが。

 暗殺者の武装は残り、ハンドガンとナイフのみ。ライフルもマシンガンも駐車場に捨てて来た。が、それでも十分、厄介だ。

 ハンドガンの銃弾を回避しつつ、近くの変電設備に身を隠す。銃弾がめり込み、バチバチと稲妻が走り、爆発した。

 その直後、非色は爆発の中に突っ込み、炎の奥にいる暗殺者にタックルをかました。

 

「っ……!」

 

 勢い余って、屋上から二人揃って落下した。壁に2〜3回、バウンドして落下した。

 一気に地面まで落ちた二人は、すぐに向かい合って構える。が、暗殺者からプルルルルっという呼び出し音がする。非色がマスクの下で眉間にシワを寄せるのと、暗殺者が耳元の通信機のスイッチを入れるのが同時だった。

 

「なんだ? ……了解」

 

 暗殺者が構えを解いたのを見ると、非色は怪訝な顔をする。直後、目の前で暗殺者はボールを地面に叩きつけた。それが、ボフンと音を立てて大量の煙に変わる。

 だが、煙幕は今の非色に有効とはとても言えない。煙の中であっても猛然と一直線に走る。

 

「逃すか!」

「チッ……鬱陶しい奴め……!」

「それが売りだからね」

「だが良いのか? 俺にばかり構っていて。うちのボスが、お前の仲間に王手をかけたらしいが」

「えっ……?」

 

 非色の動きが止まる。その一瞬の隙を突いて、今度は閃光弾を叩き付けた。閃光弾となれば、サーモグラフィーは関係ない。何せ、暗闇で見えないとか遮蔽物で見えないとか、そんなレベルの視覚阻害ではないから。

 

「さよならだ、116号」

「ーっ……!」

 

 そう言い放つと、暗闇の中から暗殺者は消えていった。追おうと思えば追える……が、追っている場合ではない。慌てて木山達の元に向かった。

 

 ×××

 

 一方、その頃。施設に到着した美琴と佐天は、勢いよく扉を開けた。直後、木山は慌てて顔を向ける。冥土返しの姿は無かった。

 

「……何故ここが?」

 

 声を掛けられ、答えたのは美琴だった。

 

「非色くんの代理で来たのよ。佐天さんは成り行き」

「代理だと……? 君達は我々が何をしているのか分かっていて言っているのか?」

「子供達を起こそうとしてるんでしょ? けど、悪いんだけどそれは中止してくれる?」

「どういう事だ?」

「非色くんは今、敵に襲われて戦っている。その仲間がここに向かってるかもしれないって彼が……」

「あら、それは誰の事かしら?」

 

 新しい声が聞こえて後ろを見ると、テレスティーナが部下を引き連れて後ろに立っていた。

 

「て、テレスティーナさん⁉︎」

「何で、あなたがここに……?」

 

 佐天と美琴が驚きの声を漏らし、木山は奥歯を噛み締めてしまう。

 そんな三人を見て、テレスティーナは実に余裕の笑みを浮かべていた。

 

「つけていたのよ。あなた達をね」

「……どういう事かしら?」

「固法非色が『幻想御手事件主犯、木山春生』と接触しているのは分かっていたから、その彼をつけていたの。その後、あなたに命令を出したのを聞いたから、尾行したのよ」

 

 まずった、と美琴は奥歯を噛み締める。非色の読みでは、既にこの場所を敵が特定したと見た上で、今日、起こすことも理解していたのだろう。それを阻止するために暗殺者に足止めを頼んだ……と見ていた。

 しかし、実際はあの暗殺者も囮。分断させ、非色よりも尾行しやすい自分達を追って来た、ということだ。

 いや、まだ慌てる事はない。そもそも非色の言う「敵」がテレスティーナとは限らない。

 

「……何故、木山先生を追い回しているんですか?」

「答えるまでもないわね。彼女は今、異様なスピードで釈放された上に、置き去りの子供達を確保し、一部からの情報によればキャパシティ・ダウンを作って武装集団に渡した、なんて噂もあるのよ?」

「キャパシティ・ダウンを……?」

「……何の話だ、それは?」

 

 木山が片眉を上げると、テレスティーナはニヤリと薄く微笑んだ。

 

「簡単な話よ。私達が掴んでいる情報によると、特殊な音によって能力を封じる『キャパシティ・ダウン』を開発し、スキルアウトに渡したのはあなたである可能性が高い、と聞いているの。『音』によって『能力』を惑わす物の開発者であるあなたをね?」

「なっ……よ、よくもそんなデタラメを……!」

「そういう情報が来ている、というだけよ。勘違いしないでくれるかしら」

 

 木山からのセリフも封殺してしまう。が、木山もここで引くわけにはいかない。

 

「そもそも、君はこの子達をどうするつもりだ?」

「勿論、検査するつもりよ。幻想御手事件の主犯であるあなたが子供達を使って何をするつもりなのか知らないけれど、犯罪者に何かされようとしているその子達を保護しないわけにはいかないもの。警備員として、ね」

「クッ……!」

 

 そんな二人の言い合いは、もう美琴も佐天も完全に蚊帳の外だ。

 こんな修羅場に佐天を巻き込んでしまった美琴は、少し申し訳なく感じつつ、どちらにつくべきかを考えていた。

 片方はMARの隊長であり、初春と春上を助けてくれた張本人。乱雑解放の事件に尽力している方だ。

 もう片方は、以前の幻想御手をひき起こし、異常なスピードの釈放、そしてMARの人が言うには厄介極まりなかったキャパシティ・ダウンの作成だ。怪しいことには怪しい。

 

「っ……」

「あの……」

 

 どうしようか悩んでいると、隣の佐天が口を挟んだ。

 

「私は、木山さんが悪事に手を染めているとは思えません」

「へぇ、根拠は?」

 

 テレスティーナが挑戦的に聞くと、佐天は真っ直ぐな瞳を向けて言い返した。

 

「非色くんと、ヒーローさんが協力しているからです」

 

 それを聞いて、思わず美琴はハッとして目を見開いた。その通りだ。非色であれヒーローであれ、いつも彼がしている行動は正しい。なら、少しは信じてみるべきなのかもしれない。何せ、自分の友達を何度も助けてくれているのだから。

 

「ふふ、それは根拠とは言えないわよ。あなたが信じたい方、でしょ?」

「うっ……そ、それは……そうですね……。あ、いえ別にテレスティーナさんを疑ってるわけじゃないんですよ⁉︎ ただ、非色くんとヒーローさんも同じくらい信用できる、というか……」

 

 何も分かっていない佐天は、アワアワと言い訳を始める。能天気なのも困りものね、と美琴は内心で毒づきながら、テレスティーナに言った。

 

「悪いけど、私も非色くんを信じるわ。……この子達は、渡せない。どうしてもって言うなら、まずは木山先生の治療を受けてからね」

「御坂くん……」

「へぇ……?」

 

 テレスティーナが、ほんの一瞬だけ好戦的に笑ったのを、美琴は見逃さなかった。この女は、間違いなく敵だ。

 

「悪いけど、力づくにでも出て行ってもらうわよ」

 

 ようやく戦の始まりか、と言わんばかりに、美琴はニヤリと微笑んで身体から電気を発するが、テレスティーナの余裕の表情は崩れない。

 

「残念ながら、そうはいかないわ。あなたの能力をここで使えば、どうなるかくらい分かるわよね?」

「舐められたものね。私が周りに感電しない程度の加減が出来ないとでも?」

「ええ。だからこうするの」

 

 直後、嫌に耳に残る音が脳にまで響き渡った。つい最近、こいつの威力を身をもってして味わった最悪の兵器だ。

 キャパシティ・ダウン。能力者の行動を封じる音響兵器だ。

 その直後、美琴は頭を押さえて蹲ってしまう。

 

「うぐっ……あ、あんたぁああああッッ‼︎」

「運び出せ」

 

 美琴を無視して、テレスティーナは部下に命ずる。このままでは子供達は連れ去られてしまう。佐天もテレスティーナも動けない。

 が、これはもはや、本性を出したと言っても良いだろう。木山が奥歯を噛みしめながらテレスティーナを睨んだ。

 

「これがキャパシティ・ダウンか……!」

「そうよ? スキルアウトが持っていたものを回収して、組み直したの。もしものために持ってきて良かったわ」

 

 完全にすっとぼけているが、誰が見たって「元々、持っていたものを持ってきた」ようにしか見えない。佐天ですらそう思ったくらいだ。

 しかし、そういう事になっている以上、証拠はない。ましてや、向こうは警備員だ。テレスティーナの部下は駆動鎧を着込んでいる。下手には動けない。

 

「貴様ぁああああっっ‼︎」

「き、木山さん⁉︎」

 

 しかし、激情に駆られた木山はテレスティーナに突っ込んだ。思いっきり掴みかかるが、ぬるりと躱され、ボディに膝蹴りをもらう。見事に鳩尾に入り、その場で咳き込んで倒れてしまった。

 

「フグっ⁉︎ ゲホッ、ゲホッ……!」

「今の『公務執行妨害』は大目にみてあげるわ」

「ク、ソ……!」

「早く連れ出せ」

 

 そう言って、クリスティーナの指揮の元、子供達は運ばれてしまう。その間、佐天が美琴と木山を担いで壁際に寄った。

 子供達が回収され、研究所内は一気にガランと寂しくなってしまった。唯一、無事でいられている佐天も、駆動鎧が何人もいるようでは抵抗のしようがない。パンチしても自分の手が折れるだけだ。

 全て回収され、去り際。テレスティーナは残された三人に顔を向けた。

 

「じゃあな、ガキども。あの世で、永久にヘラヘラ笑ってろ」

「っ!」

 

 そう言った直後、近くにいた駆動鎧が銃口を三人に向けた。咄嗟のことで、佐天が思わず目を強く瞑った時だった。

 ヒーローが、研究所の天井を壊して舞い降りて来た。

 パラパラと瓦礫が落ちて来て射撃者の視界を塞ぐと共に、佐天達の前に立ち塞がる。瓦礫にかまわずに乱射を始めた直後、落ちてきた中で一番大きい瓦礫を掴み、盾にして三人をカバーした。

 

「ひ、ヒーローさん……!」

「このまま待ってて」

 

 盾を構えたまま、非色は突撃した。盾が崩れないまでが勝負だが、直線移動なら2秒かからずに敵に突撃出来る。盾ごとタックルをかまし、駆動鎧を突き飛ばした。ふと横を見ると、もうそこにテレスティーナの姿は無かった。

 逃げられたか、と息を巻いたのも束の間、目の前の駆動鎧は非色に拳を叩き込んだ。それを、非色は右手で受け止める。

 

「っ……あっぶな! そっか、人間じゃないのか……」

『死ねッ!』

「やだね!」

 

 ストレートにお断りしながら、ゼロ距離から乱射されるガトリングガンを上に向けさせつつ、駆動鎧のボディに思いっきりアッパーを放った。

 

『ッ……‼︎』

 

 メキメキっ、と鋼鉄のボディを突き抜けて衝撃が走り、身体がふわっと浮き上がる。鉄で身を包んだ身体が、天井に殴り上げられた。

 一撃で気絶させることが出来たが、非色は右手の拳をプラプラと振った。

 

「ってて……かったいなぁ……。あのリクルートスーツ、どこの会社に就職するためのもの?」

「ひ、ヒーローさん!」

「や、佐天さん。怪我ない?」

「な、ないですよ」

「よかった。ナイスガッツ」

 

 佐天の頭に優しく手を置く非色。本当に仮面をつけてると雄弁な奴である。お陰で佐天は頬を赤らめ、嬉しそうに「えへへ」とはにかんでしまった。

 

「ひ、非……二丁水銃! 奴らを追って!」

「分かってる。御坂さん、復帰したら二人を風紀委員の支部で保護してあげて」

「わ、分かったわ」

 

 すぐに非色は追跡を始めた。

 

 


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