とある科学の超人兵士。   作:バナハロ

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ほとんど後日談。

 テレスティーナが逮捕され、117号を撃退したことにより子供達はすぐに回収できた。

 佐天、初春、美偉、木山は二丁水銃から借りた水鉄砲と美偉の武力によって子供達を上手いこと、奪い返した。というのも、さっさと研究所内に忍び込み、美偉の能力で敵の様子を索敵しつつ、邪魔な相手は奇襲を仕掛ける形で気絶させ、最後に身動きを封じた。

 その調子で、まずは監視室を襲撃し、敵の目を封じてからスピーカーを破壊し、最後に子供達を取りに行った。

 その後、警備員が到着し、研究所の職員を全て逮捕すると共に、木山と共に子供達を起こして無事に解決した。

 その日の夜、黒子は寮で美琴と話していた。

 

「ふぅ……何とかなりましたわね……」

「そうね……。枝先さん達が無事で良かったわ……」

 

 自己紹介は一応、終えていたため、これからまた友達が増えそうである。

 しかし、事が収まったと見たヒーローの奴は、すぐにテレスティーナの護送車の上に乗って追撃を警戒していたため、自己紹介には不参加だった。それが少し気に食わない。

 

「それで、お姉様。結局、あのヒーローの正体は……」

「あー……ど、どうだったかしら……」

 

 ポリポリと頬をかきながら目を逸らす美琴。結局、違うという話に落ち着いてはいるが、あれは「その通りだけど誰にも言うな」ということだ。それを今、破るわけにはいかない。

 

「と、とにかく気にしない方が良いわ。彼は、ヒーローじゃないから」

「そ、そうなんですの……?」

「でも、あんたに『ヒーロー嫌い』みたいなこと言ったのは嘘らしいわ。だから、少しドギマギしてるみたいよ」

「……な、なるほど……?」

 

 そう言われつつも、黒子は微妙に納得できない。というか、出来るはずがない。少し前まで同じ意見だった人にそんな風に言われても。

 

「……とにかく、あのヒーローの正体には言及しない方が良いわ。誰のためにもならないから」

「わ、わかりましたの……」

 

 そんな黒子を見透かしたように言う美琴は、とりあえず微笑みながら頭を撫でてあげた。

 

「大丈夫よ。彼は、悪い人じゃないわ。少しムカつくだけで」

「……は、はぁ」

 

 それは大丈夫なのか少し心配になる所だが、まぁお姉様の言うことだ。危険がないことに関しては信じておくことにした。

 ……とはいえ、だ。非色が危ない事に首を突っ込んでいるなら、それはそれで見過ごしたくない。

 

「……」

 

 明日あたり、とりあえず非色に会いに行こう。そう決めて、今夜はゆっくりすることにした。

 

 ×××

 

「え、今から?」

『そうだ。君、結局すっぽかしたろう』

 

 電話の向こうから聞こえてくるのは、木山の声だ。自分が強敵を相手にしている間に子供達を友達と連携して助けたらしい。

 これで全部終わり……と思いたい所だったが、念のために117号の動向を確認しておこうと思っていた矢先に電話がかかって来たわけだ。

 

「……や、でも俺これから……」

『何か用事があるのかい?』

「い、一応……」

 

 まぁ、あの117号はおそらく、テレスティーナの手下というよりは雇われた殺し屋、という感じがしなくもなかったので無視しても問題は無いのだろうが。

 いや、何れにしても何故、あの実験に生き残りがいるのかはいつか調べなければならない事ではある。

 

『そっか……わかったよ。じゃあ、この変身アイテムは必要ないかな?』

「すぐ行く」

 

 簡単に釣られるヒーローだった。それで良いのかと不安になるほどに。

 とりあえず、ライダースーツだけ着てヘルメットを装着して部屋を飛び降りた。

 とりあえず見かけた事件を片っ端から片付けながら、木山の施設に入った。勿論、入口からではなく通気口から。

 こそこそと中を進むと、一際騒がしいフロアを見かけた。中では、子供達がワーキャーとはしゃいでいる。

 

「……」

 

 入りづらかった。あそこに自分がいて良いのかと。呼ばれている以上は行かざるを得ないのだが……何というか、ヒーローショーみたいな絵になりそうで怖かった。

 

「……すぅー、はぁー……」

 

 深呼吸をすると、とりあえず覚悟を決めた。とりあえず、普通に扉から入るために、通気口から廊下に出て、それから中に入った。

 

「こんちはー」

「っ! ……あ、ヒーローさん⁉︎」

 

 目覚めたばかりでニュースなど見たことがないはずなのに、不審者ではなくヒーローだと認識されていた。誰がバラしたか、など考えるまでもない。あの中坊四人と木山だろう。

 リアクションに困っている間に、子供達はパタパタと駆け寄ってくる。

 

「ほんとだー! ヒーローだー!」

「すっげー! マスク以外だっせー!」

「なんでライダースーツ?」

 

 微妙に貶されている気がするが、まぁ目覚めたばかりの子供達を相手に怒るなんて大人気ないことはしない。同年代だが。

 

「はいはい、どうも……」

「ほら、君達。からかう前に言うことがあるんじゃないか?」

 

 木山がそう言うと、子供達はハッとしたような顔になり、みんなで目の前にズラリと並んだ。何かと思った非色はマスクの下で怪訝な顔を浮かべてしまう。

 が、すぐに子供達の要件はわかった。揃って、頭を下げられたからだ。

 

「「「助けてくれて、ありがとうございます!」」」

 

 言われて、思わず固まってしまっな。何が? と思ってしまうほどに。だが、改めて目の前の子供達は「自分が助けた」と認識出来た。こうして改めて面を向かってお礼を言われると、やはり少し照れ臭いものだ。ポリポリと頬を掻こうとしたが、マスクを被っているので首筋をかいて誤魔化した。

 

「いや……別に俺は何もしてないし……実際に助けたのは、木山先生だから……」

「ふふ、言うと思ったよ。それでも、お礼は素直に受け取りたまえよ」

「……」

 

 木山に言われ、余計に照れ臭くなってしまう。あまりこういうのに慣れていない非色は、どうしたら良いのか分からず居心地悪そうにしてしまった。

 それを察した木山は、すぐに助け舟を出した。

 

「ふふ、みんな。ヒーローさんは割と忙しいらしい。今日は解散にしよう」

「「「はーい」」」

「え、ちょっ……変身アイテムは?」

「そんな簡単に出来るはずないだろう。完成したら、すぐに連絡するよ」

「……」

 

 うまく釣られた事を悟り、非色はさっさと研究所を出て行った。

 さて、今日はこれからどうしようか。まぁ、いつもと同じ様にヒーロー活動だろう。どんなにでかい敵を相手にしたとしても、小さい敵が減るわけじゃない。休みの日、なんてものはないのだ。

 再び、昼間の学園都市を跳ねていると、微妙にお腹が減ってきた。

 

「……先にお昼にしよう」

 

 こういう時、変身アイテムがあると一々、着替えに行かなくて済むのだが……まぁ、その辺の手間は仕方ないと諦める他ない。それに、もうすぐ変身アイテムが出来るわけだし、焦る事はない。

 一度、帰宅して着替えてサングラスだけ持って玄関から出て行った。さて、何処で食べようか。そろそろ自炊も覚えたい所だが、姉がいない間に部屋を火事にするのも良くないだろう。

 そんな時だった。携帯に電話がかかって来た。名前には「白井黒子」の文字。

 

「……げっ」

 

 さて、再びどうしたものか、と悩む場面だ。……いや、今は割と暇しているんだし、出ても良いかもしれない。最近は忙しくて、つい「どう断ろうか」なんて考えるようになってしまっている。

 

「もしもし?」

『あ、非色さんですの?』

「はい」

『よろしければ、これからお昼をご一緒しません?』

「え、お、お昼……?」

 

 まさかの女の子からのお誘いだった。いや、割と過去にそういうのはあった気もするが、こういう何もない時に来るのは想定外だった。困ったことに、普通に嬉しい。

 しかし、向こうはどういうつもりなのだろうか? 最近、黒子はやたらと自分を見て頬を赤らめることが多い。ついていって平気なのだろうか? 

 いや、でもやっぱ女の子に誘われるのは嬉しかったので受けることにした。

 

「い、良いですけど……あまり高いのは……」

『普通にファミレスなら問題ないでしょう?』

「あ、はい。それなら助かります」

『では、今からお迎えに上がります。どちらにいらっしゃいますの?』

「いや、お迎えなんて良いですよ。ここからファミレスまで10分かかりませんし」

『テレポートした方が楽でしょう?』

「まぁ、そうですが……」

 

 正直、スタミナも超人の非色にとって、ここから埼玉まで走ったとしても息は全く上がらない。近くのファミレスに行くくらい、部屋で漫画を読んでいるのと同じくらい疲れないわけで。

 とはいえ、だ。ここまで善意を出してくれているのであれば、それに応えた方が良いだろう。

 

「じゃあ、お願いします。玄関の前にいるので」

『かしこまりましたわ』

 

 直後、目の前に飛んできた。このマンションは自動ドアと認証キーにより建物内に入る事もできないというのに。

 

「こんにちは、非色さん」

「……こうしてみると、泥棒し放題なんだよなぁ」

「結構なご挨拶ですのね」

「いふぁふぁふぁふぁ!」

 

 正直な感想を漏らしすぎて、頬を引っ張り回されてしまった。ビンッと手を離されると、改めて手を繋がれた。急に手を繋がれ、思わずドキッとしてしまう。

 

「え、な、何……?」

「何って……テレポート致しますのよ」

「あ、そ、そっか……」

「さ、行きますのよ」

 

 この時の非色は知るよしもなかった。黒子がわざわざテレポートして来たのは、ほんの僅かな時間であっても手を繋ぐためであった事を。

 ひゅんっとその場から姿が消えて、気がつけばファミレスにいた。席に案内してもらい、とりあえず注文する。

 

「……」

 

 なんか、一人で緊張してしまう非色。女の子と二人で食事なんて中々ないことだから。というか、他に誰かしらいないのかと思ったりもしてしまった。この人なら美琴やら初春やら佐天やら呼んでいるものだとばかり思っていたが。

 

「非色さん、折り合って聞きたいことがあるのですが」

「な、何……?」

「あなた、私達に何か隠していませんの?」

「えっ⁉︎」

 

 思わずドキッと胸が跳ね上がった。

 

「……え、な、何のこと?」

「正確に言えば、危ないことしていません?」

「し、してないよ!」

「……」

 

 黒子は思わず呆れてしまった。こんなに嘘が下手な人間がいるものなのかと。

 

「分かりましたから、本当の所は?」

「な、なんですかホントの所って?」

「……」

「……」

 

 なんてこった、と非色は冷や汗を浮かべる。料理を注文してしまった以上、逃げるわけにもいかない。完全にはめられたわけだ。

 ジッと非色を睨む黒子。目を逸らし続ける非色。

 

「では、最近、木山先生にお会いになられましたの?」

「キヤマセンセイ? だ、誰だっけ……?」

「テレスティーナ、強敵でしたわね」

「外国の人と戦ってたんですか?」

「お姉様を襲った暗殺者……次会ったら叩きのめしますわ」

「暗殺者って……外国の映画じゃないんだから」

 

 うまくかわしているつもりの非色だが、態度があまりにしどろもどろなので嘘がモロバレしていた。なんだか一周回って嗜虐心すら芽生え始めて来た黒子だが、とりあえず仕事中なので何とか抑えた。

 

「……非色さん。私は、あなたの事が心配なんですの」

「え?」

「もし、危ないことをしているのでしたら、風紀委員として……そして友人として放っておくわけにいきませんわ」

「し、白井さん……」

 

 思わず、感極まってしまう。こんな風に自分のことを考えてくれる人は、姉以外にいなかった。

 だから、涙腺は緩みそうになるし目頭は熱くなる。友人関係は、ただどちらかがどちらかに気を遣えば良いっていうものではない。お互いがお互いを信頼し、守り合う仲を指すものだ。

 だからこそ、非色は真顔を維持して答えた。

 

「でも、何の話だかわからない」

「……むきー!」

 

 ポコポコと叩く黒子と、それが当たらない距離まで背もたれに背中を預けて逸らす非色。その後、しつこいくらいに尋問されたが、なんとか全部の質問をかわし続けた。

 

 




なんか半端な形で終わってしまいました。
次から一方通行編です。

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