とある科学の超人兵士。   作:バナハロ

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一方通行編
なんだかんだ一緒にいて楽しいのは同性の友達だから。


 固法美偉は、完璧超人と言えるレベルの学生だ。炊事洗濯家事全般、全てできる上に、能力者でありながら、風紀委員に所属して戦闘力も高い。運動も勉強も出来るのだ。

 そんな彼女は、当然料理の腕も抜群だ。

 

「んー……美味っ」

「そう? それは良かった」

 

 美偉の手料理を毎日のように食べられる非色は、とても幸せだった。忙しいので決して毎日とはいかないが、それでもこの世の誰よりもそれを食べる機会は多い。

 

「そうだ、姉ちゃん」

「何?」

「そろそろ、俺も手料理の一つくらい作れるようになりたいんだけど」

「電子レンジがあるじゃない」

「や、そういうんじゃなくて……」

「あと給湯器もあるわよ」

「だからそういうんじゃなくて! てか、分かってて言ってるでしょ⁉︎」

 

 そう言うが、前科がある自分を料理に関しては信用出来ない気持ちはよくわかってしまった。

 

「良い? 非色。人には得手不得手があるの。無理して出来ないことをして大きな被害を及ぼすより、できることをして行きましょう?」

「料理は如何に才能がなくても、いつか出来るようになるでしょ!」

「……」

 

 確かに、得手不得手があると言っても限度はある。肉と野菜を適当に炒めるくらい、誰にだって出来るものだ。

 しかし、それで自分の家に被害が出るのはゴメンだ。特に、夏場はどうしてもエアコンの利用で電気代が重なるというのに。

 

「うーん……じゃあ、せめて他の人と特訓でもして来たら?」

「え?」

「佐天さんとか、白井さんに教わって来たら良いじゃない。私はいろいろ忙しいからね」

「うーん……」

「せっかく、出来た友達なんだから、少しは遊んで来なさいよ。頼ったり頼られたりするのも、立派な友人関係よ?」

 

 そんな風に言われれば、非色としても頷かざるを得ない。友人が出来たことのない非色は「そういうものなのか?」と納得しかけていた。

 ただ、非色的には最近、異性とばかり一緒にいたから、なるべくなら同性と友人関係を深めたいと思う所もあった。

 

「うーん……あ、そうだ」

「どうしたの?」

「一人いた、男友達」

 

 そう言うと、非色はスマホをポケットから取り出す。

 

「あら……そうなの?」

「友達って言って良いのか分からないけど……」

「……ぐすっ、あなたにも……友達がたくさん……!」

「だから泣かないで⁉︎」

 

 もう少し友達を増やした方が良いのかも……そんな風に思えてしまう非色だった。

 

 ×××

 

 さて、その男友達と連絡を取り、待ち合わせした。なんか補習があるとかで午前中は無理らしいので、午後にお昼を兼ねて、部屋にお邪魔することになっている。

 で、手土産だけ購入して、今は待ち合わせ時間になったので、高校の前で待機している。少し早めに着いてしまったが、まぁ待つのには慣れているし問題無いが。

 10分ほど待っていると、その男が出てきた。

 

「あ、固法。待たせちまったか?」

「上条さん! すみません、急なお話で」

「いやいや、気にしないで良いですことよ。インデックスが前に世話んなったしな」

 

 世話、という程ではない。たまたま一緒に飯を食べただけだ。それも、常盤台でのただ飯だから、本当に世話ではない。

 

「あ……これ。つまらないものですが」

「え、何?」

「姉に、お世話になる時は茶菓子を持って行きなさいって言われたので……」

「や、そんな気は使わなくて……」

「ポテチを買って来ました!」

「あれ? それ茶菓子……? や、受け取るけど」

 

 取り敢えずお菓子を手渡すと、上条家に向かった。二人で並んで歩きながら、とりあえず気になったので非色が聞いた。

 

「上条さんって、勉強苦手なんですか?」

 

 ピシッと固まる上条。どうやら、地雷だったようだ。

 

「そうですよ……上条さんは、万年補習常連のダメな高校生ですよ……」

「あ、いやそんなつもりで言ったんじゃなくて……!」

「良いんですことよ。分かってるから……」

 

 これは、死んでも自分が超成績優秀であることは話さない方が良さそうだ。苦笑いを浮かべながら目を逸らしつつ、とりあえず話を続けた。

 

「で、でも料理は出来るんですよね? 俺は出来ないから羨ましいです」

「料理なんて誰でもできるだろ」

「いや、そんな事ないですよ。い、いくら学年トップでも、料理で家を火達磨するようじゃ世話ないですからね!」

「……へぇ、学年トップ」

「……あ」

 

 本当に学力が活きない中学生である。戦闘と勉強にしか応用できないのか、とツッコミを入れられそうなものだった。

 いや、まだ諦めるのは早い。自分が学年トップとは言っていないのだから。

 

「い、いや俺じゃなくてね⁉︎ 黒井白子さんっていう人がいて!」

「お、おう……すごい名前の人だな」

 

 モデルは言うまでもない相手だし、ちょうどどこかで見たテレポーターがパトロールしている所を通り掛かったが、非色は気付かずに続ける。

 

「その人がもうホント応用力無い人で、なんかヒーローを捕まえようとしてるらしいんですけど、もう半年近く追いかけていまだに捕まえらんないらしくて」

「ああ、いま話題になってるやつ?」

「そうそう。前に二丁水銃とその白井……じゃない、黒子……でもなくて、黒井さんとの戦闘を見たんだけど、そりゃもうボッコボコに逃げられてて……」

「へー。二丁水銃って無能力者なんだろ? やるなぁ」

「いやいや、黒井さんの頭が弱々なだけで……」

「へぇ? 面白いことおっしゃいますのね。今度、その黒井さんという方のお話、私にも聞かせてくださる?」

 

 唐突に、首筋に氷水を首筋にぶっかけられたようにヒヤリとした。今、一番聞きたくない声が聞こえた気がする。いや、でもまさかこんなタイミングで漫画みたいなことあるはずないでしょ……と、思いながらも大量に汗を流しながら振り返ると、いた。黒井白子さんが。

 

「げ……し、白井さん……」

「え、何? 友達?」

「はじめまして。黒井白子ですの」

「あっ……(察し)」

 

 全てを察した上条は、そっと非色の肩に手を乗せ、その場を後にした。

 

「じゃ、俺は近くの自販機の前で待ってるからな」

「置いて行くんですか⁉︎」

「痴話喧嘩は、上条さんの知らないところでどうぞ」

「痴話喧嘩じゃな……!」

 

 この後、こってり絞られた。

 

 ×××

 

「わっ、ひいろ! 久しぶりなんだよ! ……でも、頬が腫れてるんだよ?」

「……気にしないで良いから」

 

 インデックスの元気な挨拶に、憂鬱気味に答える非色。超人である非色の頬を腫れさせるとは。やはり女性が一番、力を発揮する時は男性に怒らされた時である。

 

「じゃ、固法は手を洗ってこい。インデックス、悪いけど昼飯少し遅くなる」

「ええー! どうして?」

「固法に料理教えるからだよ」

「りょうり? ひいろ、できないの?」

「出来ないの」

「ふーん……そんなにムキムキなのに?」

「筋肉関係ないから」

 

 ムキムキなだけでなんでも出来るなら、この世の人間は全員、筋肉ダルマになる事だろう。

 

「でも……確かに筋肉すごいな……ほんとに中一?」

「いやぁ……あはは」

「っと、悪い。料理だよな。手を洗おうか」

 

 そんなわけで、手を洗いに行った。

 まずは清潔さが一番、とのことで手や野菜、調理器具を洗う事を教わり、包丁の使い方、冷凍した肉の解凍、炒める際にフライパンに投入する食材の順番など全てを教わった。

 元々、地頭が良いだけあって、覚えるのはすぐだった。それどころか、上条が「まぁ何が先に火が通りやすいかはやってりゃ覚える」と言ったのに対し、非色は「にんじんとかじゃがいも系は火が通りにくいわけですね?」と経験せずにカンパして見せた。

 今回はほとんど上条が作ってしまったわけだが、大体覚えた。後は家で練習あるのみだ。

 

「わぁ! おいしいんだよ!」

「それは良かった。……作ったのはほとんど上条さんだけどね」

「いやいや、俺は塩と胡椒まぶしただけだよ。フライパンを振ってたのも油を敷いたのも全部、固法だろ?」

「うん、ひいろが作ったご飯、おいしいんだよ!」

「そ、そう……?」

 

 少し嬉しいものだ。料理を褒めてもらう、というのも中々、悪くない。

 とにかく、今はお礼を言うところだ。

 

「いやー、ありがとうございました。上条さん。おかげで、これから先、もう少し姉に楽させてあげられると思います」

「気にしないで良いですことよ。上条さんもこういうお手伝いなら大歓迎」

「こういうお手伝い?」

「や、何でもない。さ、食おうぜ」

 

 非色にとっても、久々に安堵してお昼を食べることが出来た。やはり、一緒にいて楽なのは男の人だ。今度、疲れた時はまた上条に構ってもらうことにして、とりあえずそのまま昼食を続けた。

 

 ×××

 

「あー! むかつきます、むかつきますのー!」

 

 荒ぶっているのは、やはり白井黒子。そしてそれを聞かされているのは、初春飾利だ。

 本当は、口を挟みたくない。しかし、聞かないと延々に「むかつく」という言葉を連呼され、それはそれで鬱陶しいのだ。

 

「また何かあったんですか?」

「ありましたわ! あの男、私のいない所で私の陰口を仰っていましたの! 私の! 陰口を!」

「あー……」

 

 これは非色くんやらかしたな、と心の中で察する初春。実際、あの子が黒子をどう思っているのかは分からないが、多分、悪い感情を抱いている事はないだろう。

 それでいて悪口を言ったのは、話の流れでそうなったのか、あるいは照れ隠しか……何れにしても、本心ではないのだろう。

 

「……こうなったら、とことん調べてやりますわ……!」

「え、何をですか?」

「あの男が、ヒーローの正体だという証拠を掴んでやりますの……!」

「ええ……」

 

 なんか急に闘志を燃やし始めていたので「手伝ってくださいな」と言われる前に逃げる事にした。さりげなくいじっていたパソコンの画面を消し、携帯と財布を持って席を立つ。

 

「お手洗い行ってきまーす……」

 

 あくまでしれっとさりげなく告げて、扉の外に出た。さて、ここから先はダッシュでなるべく遠くへ……! 

 

「逃がしませんわよ。手伝いなさい?」

「……」

 

 そろそろ本気で下克上を考えようか、なんて思いながらも、とりあえず手伝ってしまう初春だった。

 

 


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