とある科学の超人兵士。   作:バナハロ

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それもある種の逃げだよね。

 唐突に現れた大能力者。頭にヘッドギアをしている男は、ヒーローを視界に収めた。

 

「……ヒーロー……なるほど、弓箭では荷が重い」

「……ええ。超人の恐ろしさは、嫌と言うほど思い知らされていますので」

 

 何せ、自分達のリーダーにも一人、超人の知り合いがいる。その超人の恐ろしさはとんでもない。何せ、引き金を引いた後の銃弾さえも避けられるレベルの瞬発力、片手でトラックを止める膂力、パラシュート無しで高度2000メートルから飛び降りても活動可能な耐久力……と、はっきり言って関わり合いになりたくない相手だ。

 それ故に、誉望の判断の早さは流石の一言だった。

 

「ヒーロー。俺達は撤退する。お前もその女を守りたいのなら、引いたほうが良いんじゃないか?」

「何その頭の奴。何のコスプレ?」

「世界で一番、お前にだけは言われたくない」

 

 というか話を聞いているのだろうか? 

 

「そんなのダメに決まってんじゃん。お前もこの子も捕まえて警備員に突き出す。こんな騒ぎを起こした奴を互いに利があるからって逃すかよ」

「やめておけ。お前の力は俺たちもよく知っている。その上で、その女を守り切って戦えると思うか?」

「ハンデがあっても戦うの怖い人?」

 

 煽って来るものだ。というか、戦う気満々、と言った所か。何にしても、あれだけの殺意を秘められれば、素直に逃してはくれないだろう。

 ……それに、誉望としても悪い機会ではない。超能力者にはトラウマを背負わされるほどの苦渋をなめさせられたが、超人にまでそれをされるつもりはない。

 元々、自分の能力は大能力者以上である事は間違いないのだから。

 

「良いだろう。遊んでやる」

 

 それを聞きながら、ヒーローは身構えつつ、女に視線を下ろす。

 

「立てる?」

「っ、さ、触らないで……!」

「え、臭い? スーツちゃんと洗ってるんだけど毎日……」

「そういう問題じゃないって訳よ! あんた私達が前に、あんたに何したか忘れたわけ⁉︎」

「何って……え、何かしたっけ。もしかして、ファミコンの借りパクとか?」

「……」

 

 声をかけられた女……フレンダは、少しだけイラっとしたように青筋を浮かべる。

 相変わらず口が減らない男だ。何にしても、こいつは本気で自分を助けるつもりらしい。

 ……本当なら、室内にある程度、仕掛けておいた爆弾でなんとかしようと思っていたのだが……何にしても、味方ならこれ以上に頼もしい存在はない。何せ、麦野に勝った男だから。

 

「立つくらい、楽勝って訳よ……!」

「上等。じゃあ、逃げて」

「……は?」

「あいつらは、俺が相手するから」

「ひ、一人でやるつもり?」

「十分でしょ」

「甘く見ない方が良いって訳よ! あいつら、本当に……」

「いいから。逃げて。佐天さんの友達なら、失うわけにもいかない」

 

 そう返しながら、ヒーローは身構える。視線の先では、男が今の会話の最中に能力を使って弓箭の液を外していた。

 これで2対1……本当なら願ったりなのだ、逃げろと言うのは。自分ならこの場を後にするくらい楽勝だ。ましてや、ヒーローなんかに何一つ義理はない。

 なのに、何故……このまま嫌いなはずのヒーローを見捨てて行きたくない、なんて思ってしまっているのか。

 麦野も変わった。多分、ヒーローに当てられたのだろう。任務中も任務後も、自分や絹旗、滝壺を気にかけてくれるようになった。

 ……なら、自分も。妹を守る為に、少しは勇気を振り絞る事が必要なのかもしれない。

 

「……冗談じゃないってわけよ……! あんたなんかに借りを作ったら、麦野に殺されるっつーの」

「うん。じゃあ殺されそうになったらまた呼んで。その時にまた助けるから」

「違うわー! 今のは意気込み! 少しは分かったら⁉︎」

「え、いやそっちこそこっちの気持ちを……」

 

 と、思っている時だ。レーザーが飛んできた。すぐに非色はそれを片手で弾き飛ばす。

 それとほぼ同時、ヒーローは胸から円形の何かを射出。シャキン、シャキンッと金属音を立てて広がったそれは、盾となる。

 それを、投げ飛ばした。狙いは男の方。しかし、その盾は男の前で停止する。

 

「テレキネシス……!」

 

 その直後、炎を飛ばしてきた。それをヒーローはジャンプで避け、そのまま糸を飛ばして吹き抜けを利用して上のフロアへ向かいながら、銃口を向ける。

 

「あ、待ったヒーロー!」

「へ?」

 

 直後、上に行ったと思ったら、近くのぬいぐるみがカッと光る。

 えっ、なんて思う間もない。爆発した。上のフロアには、フレンダが仕掛けていた爆弾が大量にある。相手のヘッドギアの男が発火出来るなら起爆させられると思ったが、大正解だったようだ。

 

「ええええっ⁉︎ あれだけ格好つけてたのにやられちゃった訳⁉︎」

 

 思わず声を漏らした直後だ。その自分にレーザーサイト。やばっ、とすぐに近くの柱に身を隠した直後、その柱の反対側から弓箭が距離を詰めてきた。

 

「! ヤバっ……!」

「再戦です、よ!」

「ちっ……!」

 

 舌打ちをしながら、両手をクロスしつつ後ろに跳び、ガードしながら衝撃を殺した。

 しかし、身体が浮き上がり、弓箭はニヤリとほくそ笑む。ふと悪寒。後ろから誉望が迫っているのが見えた。

 なんだあのヒーロー、全然当てにならない……! と、思った直後だ。今度は3人に影が差した。

 

「!」

 

 降って来たのは、モール内の柱だ。それが、自分と弓箭で囲んでいた柱に直撃してそれをへし折り、柱がフレンダを囲む事により、敵二人と距離を置かせた。

 

「ちっ……やっぱり生きてるか」

「誰だあんなとこに可愛い爆弾置いたのは!」

 

 私です、なんて答える以上に、あれだけの爆風を受けてピンピンしているヒーローが怖かった。

 煙の中から姿を現し、片手から糸を出して地面に落ちている盾を回収しつつ、誉望に距離を詰める。

 

「ちっ……お前の相手は後だ」

「いやいや、俺以外の人の相手はやめてよ。妬けるでしょ」

 

 言いながら、ヒーローは盾を投擲。狙われたのは弓箭だが、その盾を弓箭はしゃがんで避ける。

 その隙に誉望は自身にテレキネシスを発動。空中で身動きを止めさせると同時に、炎を片手に出す。

 

「なんだ、思ったより大した事ないな、超じ……んっ!」

 

 だが、それは放たれなかった。最初に放った盾は、元々躱される予定だったからだ。壁と柱にバウンドし、死角から誉望の背中に直撃。

 演算を乱し、炎は四散してヒーローを拘束していた力が解け、それと同時にヒーローはさらに反射して自分の元にバウンドしてくる盾をキャッチして、正面に構えて誉望を押し出した。

 

「誉望さ……!」

「そこ!」

「っ……!」

 

 フレンダの廻し蹴りが、完璧に弓箭の顎に入った。グルンっと目が上に暗転し、意識を失い、そのまま後ろに倒れた。死んでるかもしれないが、今は安否を確認する余裕はない。

 というか、この高さから飛び出したヒーローがどうなったのか見に行った。ビルの外では、空中戦が繰り広げられていた。

 能力を使って宙に留まっている誉望と、壁に糸を使ってくっ付きながら、直接攻撃を仕掛けようとするヒーロー。

 目撃者が増えそう……と、思ったが、警備員が人払いを済ませている。おそらく、暗部の息がかかった部隊だろう。

 だめだ、流石に外での戦闘に自分は介入できない。とりあえず、下の階に降りて、外での戦闘を見ることにした。

 

 ×××

 

 AIM拡散力場を視認できるモードを起動した非色は、誉望が繰り出す能力を視認しながら攻撃を回避し続けた。

 壁沿いに走りながら、軽くジャンプをして、男の後ろの壁沿いに糸をくっ付け、引き寄せて蹴りを放つ。

 それを能力でガードしつつ壁の方へいなして叩きつけた誉望は、接近しつつゴーグルのコードを伸ばし、ヒーローの頭にくっ付け、電流を流す。

 

「ッ……!」

 

 普通に感電死する量の電気が流れ込んでいるはずだが、最強の電撃使いにやられた事もある非色には耐性がついている。死角から糸を出し、足にくっつけた後、下に強引に引き込んで、壁に叩きつけた。

 さらに、上から液をくっつけて貼り付けた直後、再び糸状にした液を壁にくっつけ、軽くジャンプ。そして、両腕で身体を壁に引き寄せ、両足を揃えた蹴りを叩き込む。

 能力で勢いこそ殺されたものの、そのままガラスをぶち割って再び建物内に入った。

 叩き込まれた誉望は、能力を使って強引に受身をとる。そこで目に入った、コロコロと転がってくる球体。

 

「!」

 

 直後、破裂。グレネードの類と読めていた誉望は、周囲に能力でガードを張る。その判断は正解だった。破裂したのは奴が使う拘束用の液体だったから。

 しかし、それによってガードが薄くなったのは否めない。正面から盾が飛んできて胸に直撃し、後方に弾き飛ばされた。

 

「グッ……!」

 

 正面から飛んできて正面から跳ね返った盾を、後から入ってきたヒーローは殴り飛ばし、さらに誉望の肩に直撃。さらにそれを今度は蹴り返して腹に当ててきた。

 

「調子に、乗るな!」

 

 すぐに正面にガードを張ったが、今度はヒーローは盾に廻し蹴りを放って跳ね返し、柱と壁をバウンドして誉望の後ろから直撃した。

 今度は前に転がされたわけだが、それはまずい。非色の間合いに入ってしまい、ボディに蹴りをもらって柱に叩きつけられた。

 トドメ、と言わんばかりに液が発射され、そのまま柱に括り付けられる。

 

「終わりだよ。もう諦めたら?」

「っ……!」

 

 マズい、と誉望は冷や汗を浮かべる。このままでは本当に警備員の御世話になる。それは裏から手を回せば問題ないが、それ以上にヤバいのはリーダーにバレる事だ。

 スクール二人がかりでこのザマ……しかも、それなりの大きさの騒ぎ。粛清されるかも……と、冷や汗を流す。

 そんな時だった。コツ、コツ……と、ヒールの音が聞こえてくる。ハッとして顔を向けると、そこに立っていたのは自身の組織の一員だった。

 

「随分と手こずったのね」

「っ……すまない……!」

 

 赤いドレスの女……心理定規。他人との心の距離を決められる、恐ろしい能力を持つ女だ。自分達の帰りが遅かったからか、様子を見にこられてしまったらしい。

 

「平気よ。まさかその子が絡んでくると思わないもの」

 

 既に能力を使用しているのか、ヒーローは動かない。ただただ、心理定規の方を眺めている。

 

「動けないでしょう?」

「っ……」

「今、私はあなたとあなたの恋人さんくらい、距離を縮めているの。そのまま動かない方が、あなたの身のためであり、心のためよ?」

 

 相変わらず恐ろしい女だ。強引に人との心の距離を詰めるため、誰であっても動けない。

 何せ、人間は何だかんだ自分のためにしか動かないからだ。目の前のヒーローだって、正義ヅラしているが好きな女がもし悪事に手を染めたら見逃すに決まっている……と、思った時だ。

 心理定規の身体に、液が射出された。

 

「!」

「なっ……⁉︎」

 

 この液を飛ばせるのはヒーローしかいない。つまり、あの男は恋人に向かって自身の武器を飛ばしたことになる。

 

「甘く見るな……! 俺は、彼女だろうと姉ちゃんだろうと、悪事に手を染めてたら迷わず止める……!」

「ちっ……!」

「辛い生き方ね。ヒーローごっこの癖に、自分を殺すだけよ、そんなの?」

「悪党ごっこをするだけの、あんたらよりマシだ!」

 

 そう言って距離を詰めようとした直後だ。ドンッ、と背中に赤い穴が空いた。

 ドシャッ、とその場に倒れ込み、そのまま意識を失う。背中を撃たれたのは初体験なこともあり、修復に時間がかかる……いや、修復が終わる前に死ぬかもしれない。

 

「……そういうことか」

「そう。否菜くんにも頼んでおいたの。……いくわよ。ピンセットの情報は別のとこで見つかったわけだし」

「ああ。弓箭は?」

「もう回収したわ。金髪の子はいなくなっちゃったけど……あんまり関係ないみたいだし、放っておきましょう」

 

 誉望の能力で液を外し、そのまま二人はそのフロアを立ち去る。否菜……もう一人の超人……ピンセット? 何それ……でも、金髪さんは無事で良かった……と、思いながら意識を手放した。

 

 ×××

 

「あーあ……あれだけ格好つけてやられてちゃ、世話ないって訳よ」

 

 そう声を漏らしたのはフレンダ。狙撃を警戒するために、一度スモークを張ってから、ヒーローの体を射線が通らない場所まで動かす。

 本当は死なせたって良いのだろうが、今日は借りがある。背中を止血しながら、ふとフレンダはヒーローの顔を見る。このマスクの下……気になる。

 

「にひひっ、まぁ減るもんでもないだろうし……!」

 

 ニヤリとほくそ笑んだフレンダは、マスクを掴んだ。どうやって脱がすのかなーと、思いつつ、顔をジロジロ見ていると、マスクのフレームの縁にボタンを見つけた。

 

「これ……?」

 

 何度か押してみると、マスクが解除された。その顔を見て、少し目を丸くする。見知った顔だった。確か、麦野と地下のゲーセンにいた時、ツインテールの女とデートしていた男。

 それと同時に、彼女がいたことにも少しだけ驚いてしまったり。

 

「ふーん……」

 

 美味しいネタを手に入れた……と、思いながらも、とりあえず今はそろそろ助けてやることにした。スマホを取り出し、佐天に電話をかけた。

 

 ×××

 

「っ!」

 

 ハッと目を覚ますと、病院だった。背中が痛い。でもこのくらいの痛みは問題ないし、多分もう傷口は塞がっている。入院の必要はないだろう。

 しかし……効いた。あのライフル、特注品かもしれない。否菜、という名前が出た。もしかしたら、常人では耐えられない反動を発する代わりに威力につぎ込んだライフルを使われたのかもしれない。

 

「あっ」

 

 それより、マスク……あれ、自分はどうやってここまで運ばれた? まさかとは思うが、正体がバレ……。

 と、思っていると、病室の扉が開かれた。

 

「非色!」

「非色さん!」

「非色くん」

「っ……あ、ね、姉ちゃん……⁉︎ 違っ……これはやられたんじゃなくて、ひっくり返って背中の下に剣が刺さってて怪我しただけで……」

 

 言い訳も虚しく、無視した美偉にギュッと抱き締められた。

 

「あんた、ホントもうっ……!」

「い、いやいや……このくらい」

「うるさい! 黙ってて! この姉泣かせ!」

「アッ、うん……」

 

 何せ、何日か家を開けて、久しぶりに会えたと思ったらこのザマである。

 

「……もう、お願いだから……心配かけさせないで……」

「……」

 

 そんな風に言われても、もう遅い。あの組織、何の話か知らないが「ピンセット」とやらで悪事を企んでいる。

 それを止めないわけにはいかない。おそらく今回の件、同じ暗部の金髪さんが対立していた所を見ても、学園都市からの依頼、という感じはしない。そもそも、何故佐天を追っていたかも分からないが、明らかに一般人なのに襲っていた時点で、情報不足なのは明白だ。

 その上で、非色は笑顔で答えた。

 

「分かった。もう……危険な真似はしないよ」

「……本当でしょうね?」

「うん」

 

 それを見て、美偉の後ろで黒子と佐天は顔を見合わせる。信用されてない、なんて事は分かっている。自分でも信用しないから。

 それでも、今は姉の気持ちを考慮する時間も余裕もない。

 

「非色さん、あなた……」

「信用してくれないかもしれないけど……じゃあ、マスクの没収でどう?」

「えっ」

 

 それを聞いて、美偉が声を漏らした。

 

「良いの?」

「うん。ていうか、どちらにせよ背中の修復が終わらないと思うし、しばらくは無理。背中撃たれたのなんて初めてだったし、多分、背骨も折れてる」

「……あっそう。じゃ、遠慮なく」

 

 そう言いながら、サングラスを手渡した。非色が何より恐れているのは身バレだ。正体を知っている人たちを強制的に巻き込むことになってしまうから。

 だから、マスクがないとヒーロー活動はしない。しても、ヒーローじゃないフリを出来るレベルの相手との戦闘になると思うから、そんな奴を相手にするのなら問題ない。

 

「これで安心?」

「え、ええ……」

「良かった。じゃあ、明日から休めるね」

 

 そう言って、非色は微笑む。何か企んでいる、黒子と佐天はそんな気しかしなかったが、とりあえずその日は病室を後にした。

 

 ×××

 

 その日の夜、病室の窓から抜け出した非色は、あらかじめ連絡をしておいた女性との待ち合わせ場所に到着した。

 

「こんな時間に女の子を呼びだすなんて、本当に礼儀がなってない子ねぇ?」

「ごめんごめん」

 

 現れたのは、食蜂操祈。最強の精神系能力者であり、なんやかんやで友達になってしまった子……なのだが、全く知らない代理人を操って出て来た。

 

「今日はヒーローの格好じゃないのねぇ?」

「いろいろあったからね。そっちこそ、見ず知らずの人を操ってここにくるのはやめなさい」

「バカねぇ、この時間は常盤台は門限違反なんだゾ?」

「じゃ、日を改めてって断れば良かったでしょ」

「それより、お話はなんなのかしらぁ?」

 

 さっさと本題に入れ、と言うように先に進められてしまった。

 まぁ、それならそれで構わない。

 

「姉ちゃんの記憶を消して。一週間」

「……はぁ?」

「俺に関することだけで良いから。……多分、裏ででっかい事件が起こる」

 

 裏、というのは、この学園都市の裏で暗躍している暗部達のことだ。何か嫌な予感がしている。今回のことがきっかけなのか、それとも既に途中経過の一部なのかは分からないが、たくさんの人が死ぬような、そんな気配。

 止めるしかない。だが、今姉と自分の関係は最悪だ。そんな姉に知られれば、間違いなく止められるが、今はそんな議論をしている場合ではない。

 それを食蜂操祈に頼んだのは、早い話がこちらの意図を話さずとも汲んでくれるからだ。

 頭の中を読んで全てを理解した食蜂は、目を閉じて控えめにため息をつく。

 

「……良いわよ。お姉さんの分だけで良いのかしらぁ?」

「うん。白井さんと御坂さん、初春さん、佐天さん、あと木山先生には話すから」

「あら、進歩したのねぇ?」

「食蜂さんならなんか掴んでるでしょ。次の事」

「ええ、まぁ?」

「だから、誰が相手か、教えてあげて欲しい。ていうか、俺にも教えて欲しいくらいだけど」

「で、万が一にも巻き込まれそうな時、適切に対応できるようにして欲しい、と?」

「そう」

 

 逃げるか、戦うか、保護してもらうか、そのどれかは可能だろう。それに、美琴か黒子が一緒なら何とかなるだろう。

 

「……わかったわぁ。まったく、損な役回りねぇ」

「ごめん」

「気にしないで。……でも、その手の嘘は自分に返ってくるわよ?」

「大丈夫」

 

 それだけ話して、非色は病院に戻った。本当に、姉には申し訳ないと思っている。

 でも、仕方ない。自分が平和に暮らしている間に、誰かが命を落としているのなら、少しでもその人数を減らす努力をしないといけない。それが、力を持つ者の義務だ。

 そう強く宣言して、黒子達に話をするため、明日の予定を空けてもらうことにした。

 

 

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