【ポケモン金銀】アサギシティのBGMから始まるクソレズお嬢様が奏でる物語 作:蕎麦饂飩
原作:ポケットモンスター
タグ:ガールズラブ オリ主 残酷な描写 アンチ・ヘイト あなた何様?お嬢様! BGMは添えるだけ 微妙な誰得リアル ジョウト地方 ランターン風評被害
超絶ハーフ美少女のオリビア・シトラはクソレズお嬢様である。
見た目は色白、中身は腹黒、そして立場は女将さん。
今日も明日も艶やかに淑やかに嫋やかに、フルート片手にお金の力でレズ道を進め!!
ラシドミ~レシラ ソラシレ~ドシド♪
この曲を演奏すると、この港町にやって来た日を今でも思い出せます。
父と、今は亡き母の間で、両方の手を繋ぎ、母の療養の為にコガネシティから、母の実家がある町へやって来たあの日のことを。
それから3年して、母は息を引き取りましたが、それまで、母は精一杯生きました。
元奏者であった母が
「オリビアさーん」
振り向いた先には、手を振る私の親友がいました。
このアサギシティで今や知らぬ者はいない、鋼タイプのジムリーダー、ミカンさんです。
私もミカンさんに向かって手を振り替えします。
…あっ、こけましたわね。
「ミカンさん、大丈夫ですか…?」
「少し痛かったですが、砂浜なんで平気です。ほら、シャキーン」
その時は傷口ペロペロも辞さないつもりでしたが。
「ええと、心配なのでもう一度やってみて貰えますか?」
「はい。シャキーン」
…ミカンさん、可愛い。
「骨が折れているかも知れません。もう一度お願いします。」
「骨は折れていないと思いますが…。シャキーン」
ミカンさん、最っ高ですわ。
「そちらの骨は大丈夫みたいですね。
では今度は左右反対で、お願いしますわね」
「シャ…シャキーン」
流石に恥ずかしくなってきたのでしょう。
ちょっと照れ気味のミカンさん。
本当に尊いですわ。
「もう一度」
「シャキーンッ!! これでいいですか!?
薄々気が付いてましたが、あたしで遊んでませんかオリビアさん」
「そんなことはありませんわ」
遊びだなんて心外です。
私は心からミカンさんを愛でているというのに。
「そう、なら良いんだけど」
このチョロさ、とても可愛らしいですが、無防備すぎて心配になりますわね。
…私が管理しないと。
「ところで、どうされたのですか」
「ええと、そうだった。
ネールが新しい源泉を掘り当てたから、マーコットさんが最初にあたし達でどうぞって」
ミカンさんとの混浴…ゴクリ。
落ち着きましょう。ええ、落ち着くのです。
余裕をもちましょう。
エレガントにいくのです。
見た目は色白、内心腹黒、それでも外面お淑やか。
優雅で無ければ獲物に悟られて……少々思考がのぼせていたようです。
私の父、マーコットはちょっとした経営者で、アサギの町に来た時には、母の療養もかねて温泉施設の経営を始めました。
海沿いの町なので、キング…もとい大きなハサミのカニと、海が一望出来る塩化物温泉というのがウリでした。
しかし、これ以上の新館を出すには湯量が心許ないのと、クチバシティとの交流によるカントーからの旅行客の増加につき、新店舗を増やすにあたって、採掘する源泉を増加させる必要がありました。
そこでミカンさんのハガネールのネールを少しの間お借りしていたのです。
そもそも旅館一号店の源泉を掘ったのは、イワーク時代のネールです。
ミカンさんにお借りしたイワークが少しでも採掘しやすいようにと、父の会社で開発したメタルコートを使って貰っていたのですが、ミカンさんにイワークをお返しする時に、進化してしまったのです。
これには、お借りしたポケモンを勝手に変えてしまったと言うことで、ミカンさんには家族一同謝罪させて頂きましたが、ミカンさんはここでシャキーン…もとい鋼タイプの魅力に目覚めたと喜んでいました。
遠いところからウツギ博士や、学界の権威であるオーキド・ユキナリ博士までやってこられて、しばらくの間ミカンさんと進化したばかりのネールは大変そうでした。
本来ハガネールというのは、イワークから進化するにあたって、金属質の多い地域で人間1人の寿命を超える期間を永らえないといけません。
そして、イワークというのは、硬い鉱物を食べはしますが、基本的には掘りやすい土質を好みます。
余談ではありますが、カントー屈指のディグダの生息域はイワークが掘った可能性も高いのだとか。
身体に蓄積した鉱物により、硬化していく事自体は昔からイワーク使いには有名な話だったそうです。
それを、父のシトラ・リゾート社が開発したメタルコートを持ったまま、所有権を交換する際の電子化を組み合わせることで、一瞬に短縮するという出来事はセンセーショナルであり、今も父の会社に大きな利益をもたらしています。
…元は温泉を掘るポケモンの身体の保護が目的だったのですが、今ではイワークやストライク使いのトレーナーの中で、お金持ちの方が買われるものになっておりますわね。
私はアサギに研究者達が挙って集まった時に、未来の女将としてコガネラジオで特集されたこともありました。
今では名実ともにシトラグループ代表の娘として、湯本アサギ本館の女将として働かせて頂いております。
…本日は休暇だったのですが、源泉発掘とあってはいかないわけにも参りませんもの。
「では、ミカンさん行きましょうか」
ミカンさんの柔らかで温かな手を取って、私は新しい源泉を引いた新店舗のオーシャンリゾート・アサギへと向かいます。
本日は、第一号の客として過ごしながら、宣伝用の写真を取ることに致します。
はわ~、ミカンさんのお手々ふにふにですわ~。
頭を下げる従業員に手を振って、ミカンさんと脱衣所に向かいます。
恥ずかしがるミカンさんを余すこと無く視界の端に焼き付けます。
…眼福ですの。
オドシシの意匠の鹿威しなど、ギャグとしか思えな────もとい、和風の随を凝らした本館とは違い、この五店舗目は海外のリゾートを意識しています。
海外のポケモンであろう猛獣の口から止めどなく惜しみなく湯が注がれています。
…あら、新源泉は少々硫黄の匂いもしますわね。
差別化が出来てよいことです。
オープン前には、地元の人に日帰り温泉として一日限定で無料開放して見るのも良いでしょう。
「あの、…本当に撮影するんですか?」
「ええ、勿論です」
少々、経営に頭がいってしまっておりました。
それでも、ミカンさんの言葉があれば、一瞬で思考を切り替えるのが、私オリビア・シトラですの。
ミカンさんが言う撮影というのは、湯船に入った私とミカンさんのバスタオル姿の撮影です。
恥ずかしがるミカンさん、眼福ですわ〜。
あくまで撮影の為のバスタオルですので、営業中はお客様にはバスタオルをお断りする予定です。
湯の色が濃い黒色なので、バスタオルが無くても見えないかも知れませんが、万が一のことを考えてバスタオルを着用しております。
ミカンさん裸体を知って良いのは私だけですので…。
美人フルート奏者と名を馳せた母セトカと、外国人資産家であるマーコットの娘として生まれた超絶ハーフ美少女である私と、宇宙開闢級のキュートさで有名なジムリーダーのミカンさんのツーショットバスタオル姿は、営業用写真としては良いものでしょう。
お友達のアカネさんもお呼びしても良かったのですが、今回は急でしたので間に合いませんでした。
それに、三人で映る写真ですと、どうしても風景の映る面積が少なくなりますので、バラエティ銭湯以外の広報写真としては難しいというのもあります。
加えて、アカネさんの場合、
私の経験上、赤髪のジムリーダーの御方は豊満な肉体の御方が多いですわね。
はぁ、それにしてもカメラ慣れしていないミカンさん可愛いですわぁ。
私がもし男なら、結婚を申し込んでいたのは間違いありません。
結婚…、結婚ですか。
男性には興味はありませんが、シトラグループの繁栄の為に優秀な殿方を何時か婿に入れないといけません。
従業員の方もかなりの数になりますし。
父は再婚する予定もありませんし、私に後を継がせるのは確定だそうです。
優秀な社員に任せるにしても、血縁以外の者に譲渡すると相続税が増えるのが問題ですからね。
相手については、私自身ハーフですから、人種に拘りはありません。
大切なのは相手の能力です。
ポケモンだって同じグループにさえ所属していれば、タマゴは作れます。
合理性だけを大事にするならば、必要なのは個体値と覚えている技だけなので同じですね。
人間も高個体値のメタモンを使って子孫を残せられるなら良いのですが、未だ開発の目処が付きません。
高個体値の人間を大量生産というのは、本来は個人の跡継ぎ問題や田舎の過疎化解決策などではなく、国をあげて行われる規模のプロジェクトなのでしょうが。
…まあ、そのような事は置いておいて、湯で上気したミカンさん。
本当に、ええ、本当に背徳的ですわ。
無垢な清純さと、無自覚な無防備さを兼ね備えて最高に見えます。
私が結婚したとしても、ミカンさんにだけは結婚して欲しくないものですわね。
自分のモノにならなくても、誰かのモノにはしたくない。
…でしょう?
私達
後は、ポケモン達と混浴用の浴室も写さなくてはなりません。
ですが、何と言いますか、適役が少ないのです。
ミカンさんのポケモンは言わずと知れた鋼タイプ。
塩分と硫黄分が多い温泉に浸かったりなどすれば、またいつぞやのように変化したり弱ったりしてしまわないとは限りません。
というより、錆びてしまいそうですわね。
私のポケモンは基本的にモコモコした子が多いので、お湯に浸かると身体が重くなって出られなくなりそうな子が何匹かいます。
ワタッコやメリープなどです。
他には、ミカンさんから頂いたエアームドも先ほど挙げた鋼タイプです。
ギャロップなどはお湯の中に入って炎が消えたら、体温が低下して体調を崩してしまいそうです。
身体が大きいマンタインは海を眺める浴槽よりも寧ろ、目の前の大海原を泳ぎたいでしょう。
それと、一般受けしない見た目のポケモンも駄目ですわね。
色々な消去法で、プクリンとオオタチが残りました。
ミカンさんに湯に浮かぶプクリンの上に上半身の体重を預けて貰い、私の肩口にオオタチの上体を乗せて写真を取ります。
オオタチを私の側にしたのは、私の髪色の方が明るい金髪なので、ピンクのオオタチと髪色が被らないと思ったからです。
言い忘れましたが、私のポケモンは全て色違いです。
ですので、迷子になっても直ぐに分かりますの。
色違いに拘る理由は…、私がこの地方における
その後は料理を食べる訳ですが、やはりアサギのウリは、キングr…大蟹料理ですね。
海外にはロブスターを食べる地域も多いようですが、やはり地産のモノをというのが、我が社のポリシーです。
外来種が繁栄して在来種を喰い尽くす問題については、連れて来た人間が一番悪いのはその通りですが、問題になった外来種を排除しない理由にはなりません。
悪意の無い被害者であろうと、害を及ぼすのなら排除するのは当然でしょう。
そのことは…ええ、よーく理解しています。
蟹の他にはオクタ…蛸です。
どちらも塩気のある高温の湯気で、蒸して頂きます。
その他にも近隣の牧場で育てられた和牛もご用意しておりますの。
…ええ、ご安心を。
勿論、ミルタンクではありませんわ。
ミルタンクは♀しか生まれず、妊娠していなくても乳が取れますの。
♂が生まれると乳が取れないから食肉、または妊娠出来ないから乳が取れないから食肉…ということは絶対にありません。
元よりミルタンクは乳牛ですので、万が一食肉と言うことがあれば、和牛では無く、国産牛と表記しなければなりません。
ですので、ミルタンクを食事に出すことはシトラグループの宿泊施設では絶対にありませんわ。
「今食べているお肉、ミルタンクですわよ」なんて食べた後にアカネさんに言ったら泣いてしまうに決まっていますわ。
…それはそれで見てみたいのですけれども。
……では、和牛とは何かと言われますと、そうですわね、アサギシティの近くの38・39番道路の草むらを歩けば宜しいかと。
わかると思いますわ。
野生では無く、放牧しているので許可の無い捕獲は禁止ですわよ。
アサギの近くにはスピアーが多くいる森があります。
そちらでは、ずつきをつかって巣からポケモンを落として、その間に蜜を巣から採取するという伝統的なアサギの産業があります。
私のところでも、ジンジャーハニーのリキュールやジュースを販売しておりますわ。
といいますか、今では最大手をさせて貰っています。
アサギを牛耳っていると、冗談半分で言われることもありますの。
アサギの町の資本でも、シトラ家の物で無いものは多くあります。
フレンドリーショップなどは、ご存じシルフカンパニーの子会社ですし、ジムもポケモンリーグの資本が半分以上です。
残り半分は、私の個人的な好意として寄付をさせて頂いていますが、融資ではありませんので返済義務は設けておりません。
アサギ食堂は母が生まれる前からずっとアサギにある、おばあさんの経営する名物食堂ですね。
海運事業については、アサギシティの直営となっています。
基本的には、シトラグループの影響力はその程度でしかありません。
小さな旅館業です。
精々、アサギシティの税収の1割程を収めているに過ぎません。
ですが、労働者諸君のお給料はそれなりのものを払わせてもらっておりますわ。
代わりに、それなりの結果を要求しておりますが。
当人は高い要求に見合う給料と、当然の対価と思うでしょう。
私達も、彼らの労働に相応しい額をお支払いしているつもりなので、認識の齟齬はありません。
だとしても、お給料が高いという事は、当人以上に周囲への羨望を生み出します。
やりがいでは飯は食べられませんから、やりがいしか無い仕事の人は、我社の者を羨むようになる。
そしてその結果、優秀な人材ならシトラ社へ行くという風潮を作るのです。
父の会社の収入は、旅館業、通信進化アイテムの開発販売、投資です。
株は良いものですわ。
銀行に預けるより利子が多く、賃貸マンションの様に経年劣化しませんもの。
また、その他へのアサギへの影響力と言うなれば、灯台を外すわけにはいきません。
灯台の明りを担当しているアカリというデンリュウは、元々母のポケモンで、私のメリープのお母さんです。
最近体調が良くないので、アカリ一匹に負担をかけることに依存しない体制を構築中です。
元気を引き出す薬もあるのですが、引き出した体力が何処から絞り出されるかを考えるに、長期的にはそれだけアカリに負担をかけます。
アサギ名物である蜂蜜を集めるスピアーは、女王蜂と働き蜂で大きく寿命が違います。
女王蜂は身体が大きくなり寿命が延びる栄養素を、働き蜂は体力を高速かつ高効率で消費する代わりに運動性能を上げる栄養素を取得することが分かっています。
そして、働き蜂はその栄養素を得た結果、体力と共に寿命を通常以上に早く消費していきます。
今以上の力を引き出す代償は、未来の寿命なのです。
薬に同じようなリスクがあるかは分かりませんが、薬があれば無理をさせて良いものではありませんわ。
アカリは母の形見の1つなので、父もそれには同意しています。
…いずれ私のメリープが後を継ぐ前に、アカリには消耗をさせたくはありません。
健康なまま引退させたいものです。
今のアカリの為にもメリープ未来の為にも、交代要員が必要です。
交代要員のデンリュウの数を確保すると共に、その進化前であるメリープを使った羊毛産業は現在進行中です。
人間の文明による機械的な光も、ポケモンが生み出す光には及びませんが、アカリの役に立てばと建設中です。
また、デンリュウに匹敵するどころか、凌駕する明るさを持つ生き物が、このアサギの海には多くいます。
チョンチーの進化形であるランターンですわ。
アサギの海底の最深部に生息しており、そこからでも明りが水上から視認出来ます。
暗闇を好む水棲生物は水面と海底を避けるほどです。
ランターンがいる地域は、海底は浅海より明るいからです。
現在、チョンチーを大量に捕獲して、ランターンに育て上げさせています。
自然界では進化までに時間がかかりますが、人間が捕まえて只管バトルを繰り返していると、進化までの時間が非常に早まります。
船の周りには、船乗りのランターンを。
浜辺の近くには、アサギシティの市営のランターン達を配置させます。
海底にいて水面まで届く光ならば、水面にあっては周囲を明るく照らし続けるでしょう。
…少々夜の安寧を海から奪ってしまうことになりそうですし、生態系の変化も気になりますが、仕方ありません。
更なる問題は、ランターンが愛嬌のある見た目とは裏腹に、貪欲な肉食生物という点です。
夜には船から海底にいるランターンの光が見えることは有名ですが、光で餌をおびき寄せて丸呑みする様子は知る人は多くありませんの。
昔は明りを発して灯台に見せかけて、近付いてきた小舟を丸呑みした話もあったのだとか。
野生化した場合や、制御を離れて言うことを聞かない場合には、浜辺で遊ぶ観光客が襲われる可能性も否めません。
業者が捕獲して、市に渡されたポケモンということは、市の職員のレベルが低ければ、ランターンは従わないということです。
だからといって、市の職員にバッジを数種類も取得した者がいるかというとそうではありません。
数個もバッジを集められるようなら、よりポケモンバトルに関した仕事に従事しているでしょう。
ですから、父の会社のポケモントレーナーがそれを賄います。
基本的にポケモンは危険な生き物です。
モンスターボールに入れれば、ポケットに入るモンスター。
縮めてポケモン。
言い換えれば、モンスターボールに入っていないのであれば、単なる
それをはき違えたトレーナーが、毎年不幸な事故に遭っています。
それを払拭する為に、ランターンを入れた水槽をアカリの代わりに灯台に置くという発案も出ましたわ。
水槽のランターンが獲物を丸呑みする様子を見せることで、自覚を促すという物ですの。
…しかし、観光客の目玉でもある灯台のマスコットであるデンリュウが、肉食魚と変わった場合のアサギシティへの損失は大きなモノでしょう。
実際、反対意見が多く上がった為に、未だアカリは代わりのデンリュウ達と、照明設備が揃うまでは、どうにか海の向こうから取り寄せた『ひでんのくすり』で仕事をしています。
しかし、灯台の上に水槽を作るのが困難であり、水の交換も難しかった昔とは違い、それらが容易になった今では、デンリュウよりもランターンの方が発光力も高いので効率的と思いますの。
科学技術を直接照明の光に使うより、換気や換水などをして、発光するポケモンを生かす技術に使う方がコストパフォーマンスが良いのです。
照明よりデンリュウの方が、デンリュウよりランターンの方が眩しく、科学技術が灯台の上で水棲生物たるランターンを飼える水準にあるのなら、技術だけで賄うより、技術と生物の融合こそが正解と思うのは、コストパフォーマンスを追求し過ぎでしょうか?
アカリには無理をさせたくないという愛着があっても、ランターンには無いのかと言われると……
それに、結局のところ、金は湯水の様に湧いてくる訳ではありません。
少しでも消費を少なく、利得を多くしなければなりません。
無限に有り余る予算で誰もを助けるなんて、ご都合主義にも程があるのです。
建築費も電気代も出さなくて良い人程、アカリの引退に文句を付けるものですから。
故に、アサギシティの住民の為に、『ひでんのくすり』を使ったアカリの損耗を見過ごしてきましたが、ようやく目処が付きました。
ここまで、随分と長く感じました。
シトラ家が、この町の支配者になるまで、それなりの道程はあります。
ですが父が次の市長選挙に勝てば、ある程度の目処がつくのですから。
そうすれば、ようやく母の形見を、このアサギシティから開放できますわ。
…さて、少々暗い思考になってしまいましたが、そのついでにもう1つ暗い話題を。
以前、ロケット団残党という方達に、寄付という形で資金提供を強請られた事がありますの。
どうなったかは────私も知りませんわ。
ただ、ポケモンが繰り出せないのなら、ただの貧弱な人間です。
もし何か抗争が起きたとしたら、数でも力でも勝る船乗り達に腕っ節で勝てるはず、ありませんものね。
それとこのアサギの近くには、沈んだら二度と浮かんで来ない海溝があるのだとか。
1つだけ言える事は、私の父がそう命じた記録も記憶も無いという事だけです。
詳しい事は私も存じ上げません。
どうなったかは私の知るところでは無いのですから。
全盛期のロケット団ならともかく、その残党の末端など無力。
無力な者に幾ら意思があろうと、結果には結び付く事はありませんわ。
さて、お食事を終えると、後はお休みするだけですわね。
「これが…デラックススイートルーム…。
豪華過ぎて緊張しますね…」
「気になさらなくても結構ですわよ?
ジムリーダーの写真による宣伝効果は、それ以上の利益を生んでいますから」
ミカンさんの庶民的な感覚は可愛らしいものです。
とはいえ、ミカンさんが庶民で無くとも可愛らしいですし、ミカンさん以外の庶民を可愛いとも思いませんから、ミカンさんが可愛いらしいだけですわね。
「ここまで高い所から見ると、鳥ポケモンに空を飛ぶをさせている時みたい」
確かに、ジムバッジを幾つか集めて、ポケモンに乗り空を旅する免許を受けたトレーナーであれば、ここからの景色に似た風景を見る事も十分に可能でしょう。
ですが基本的にターゲットは、トレーナーではない資産家ですから、アサギの海に沈む夕日に希少価値を感じては頂けるとは思いますので、興行的には問題ありません。
夕日を背後にミカンさんの写真を取らせて頂きました。
…逆光でミカンさんが見えにくいのは、問題かもしれません。
「そういえば、今更ですけどジムリーダーが特定の企業に肩入れするのって大丈夫なんでしょうか?」
あら、そこを聞かれますの?
「大丈夫ですわ。
「オリビアさんもマーコットさんも自己肯定する時にいつも海外を引き合いに出しますけど、地域には地域のルールがあるんですよ」
あらあら、それは耳が痛いです。
シトラ家がアサギにやって来た時、その印象は港町には無い資本とノウハウで大きな顔をする“余所者”でしたから。
ミカンさんにそのつもりがなく、寧ろその一部にそう思われている私達を心配してくれているのはわかります。
ですが、
「言うだけで止める力の無い者には、好きに言わせておけば宜しいのですわ」
口で不満しか言えず、抵抗する力も、代案を実行する事も出来ない者など、理想を騙る嘘つきのようなもの。
次第に見限られて相手にされる事も無くなるでしょう。
ヒッピー文化の凋落に近いものでしょう。
「ですが、あたしは!!
オリビアさん達にとっては取るに足らない人達かもしれませんが、彼等にもオリビアさん達を悪く言ってほしくないのです!!」
天使でしょうか。
あっ、天使でした。
ミカンさんは天使。
テストに出るレベルの常識でした。
「ジムリーダーに満足な資金を出せないポケモンリーグにも問題はあるでしょう」
それに、ポケモンリーグにはそれなりの献金をしていますから、文句など出ようがありません。
「…シジマさんの格闘道場や、ハヤトさんやマツバさんの実家の習い事教室の生徒数に、ジムリーダーのネームバリューが影響してないとは言えません。
身近な所ですと、アカネさんのアイドル活動もありますし、カントーのエリカさんのご実家はあのシルフカンパニーですわよ。
ですから安心して、一生シトラの広告塔になって頂いて構いませんわ」
「えっ、それはタンカ君と結婚って意味ですか?
歳が離れ過ぎているというか…、あっ、そういう意味では無かったですか?」
ミカンさんを傷物にする男は、我が弟でも許すまじ。
当然却下です。
ミカンさんがシトラ家のものになるというのは捨てがたいですが、それ以上に私以外の誰かのものになるというのはありえません。
「ええ、うちの愚弟ではミカンさんの相手にはとてもとても」
「いえ、タンカ君は可愛いですよ?」
タンカ!!Fuck'in guy!!
ミカンさんに可愛いと言われるなど、ぐぐぐ。
「ミカンさん、私の方が可愛いでしょう?」
「えーっと、オリビアさんは可愛いって感じはないかな──────」
はい、たった今重度の鬱になりました。
お母様、オリビアは今すぐ貴女の元へ向かいます。
「──────可愛いというより、綺麗です」
鬱? 知らない言葉ですわね。
お母様、お逢いする日までオリビアは頑張ります。
若干、気持ちがそちらに昇りかけましたが、まだ大丈夫です。
「凄く嬉しいわ。ミカンさんも可愛くてお綺麗よ。
では、そろそろ寝ましょうか」
あら、何かお探しですか、ミカンさん。
もう少しお話したいのでしたら、ベッドの中でもお話におつき合いさせて頂きますけれど。
「どうしてそんなにニコニコされているのですか?」
「ミカンさんと一緒にお休み出来るからですわ」
「…どうして、浴衣を脱いでるのですか?」
「私、寝る時は服を着ませんの」
「……どうして、ベッドが1つなんですか?」
「それは、一緒に寝る為ですわ」
ええ、赤ずきんを追い詰めた狼はこんな嗜虐心を持っていたのでしょうか。
狼、良い趣味していますわ。
野蛮な男のメタファーで無ければ。
「…冗談ですわ。
からかってみたくてベッドを1つ隠していただけですの」
「…ヘタレ」
あら?
少し機嫌を損ねてしまったかもしれませんね。
それと私とした事が、ミカンさんの言葉を聞き逃してしまうとは、まことに遺憾です。
お詫びに演奏をお送りしましょう。
奏でるのは、母がこの町に来た時に聞かせてくれた名も知らぬ曲。
キキョウにも同じ様な旋律があるのだとか。
元のルーツは同じなのかもしれませんね。
夜に笛を吹くとアーボックが寄ってくるとか、笛を吹くと食っちゃ寝してるポケモンも起きると言いますが、私はそこまで下手ではありませんし、この部屋は防音で、中でどのような音や声を出しても外には漏れません。
色々と期待の込められた部屋です。
わかるでしょう?
それでは、ミカンさん。
どうぞ一曲、御付き合い頂きませ。